もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第244話 「ウパとボラ」

「ありえない…まさか、我々を越える動きをする人間がいるとは思わなかった」

 

アールは小さな声でそう呟いた。

ここは人造人間たちの根城である蠢く拠城の内部。アールは椅子に座りながら、主に人造人間の体の修理や改造を行う役目を負った複数の手下の人造人間たちの手厚い修復作業を受けていた。

 

「全くだ」

 

そう言葉を返すエースも、未だにコアである小さなタコの姿のままだった。エースの場合、治せる身体そのものが存在しないので、また新しい身体を製造し直す必要があった。

 

「スカール様のご命令を忠実にこなし、何があろうとスカール様をお守りすべき護衛軍たる我々が、不甲斐なく2人も立て続けにこうも惨敗するとは…これが何か最悪な出来事のきっかけでなければいいが」

 

「そうねェ…これはしばらくは私たちは下手に動き回らない方がいいって事なのかも。スカール様をお守りする者がいなくなったらまずいものね。向かう予定だった聖地カリンには、部下たちだけを送り込んでおきましょう」

 

「だったら、ウチの出番かな?」

 

部屋の隅の方から聞こえてきた声。その時、アールはようやくこの部屋にはサニーもいたのだと気が付いた。

 

「なんだ…アンタもいたの。っていうか、珍しく起きてるのね」

 

いつもは1日のうち、ほとんどの時間を眠って過ごしているサニーがしっかりと起きていることに驚きを隠せないアール。だが、サニーは眠たそうに眼を半分閉じ、眠気に耐えながらウトウトしているようにも見えた。

 

「まあね。今までは気にもしなかった記憶兵器共の動きがここへきて活発になった…次はウチが例の協力者の子供を見に行ってみるよ…ジュラ隊を連れてね」

 

「ジュラ隊…アンタの直属の部隊か」

 

「そ。新しく造った新人の子の初任務としてちょうどいいと思ってね。おいで、スピノちゃん」

 

サニーがそう呼ぶと、どこからともなく現れたのは、外見は人間の若い女性と何ら変わらない姿をした人造人間だった。しかし、彼女はその全身を鎖でぐるぐる巻きにされ、その周りには厳つい屈強な男の姿をした人造人間たちが取り囲んでいる。

 

「サニー様!こんな弱そうな新入りではなく、今日まで身体の強化を怠らず続けてきた我々を戦闘にお使いください」

 

「こいつよりもずーっと使えますぜ」

 

「えぇ?そうかなぁ?」

 

サニーは目を細めながら半笑いで、彼らをからかうようにそう言った。

 

「は…?」

 

次の瞬間、ひとりの人造人間の頭部がもぎ取られ、ゴロンと床に転がった。続いてもうひとりの胴体が何か強烈な一撃を受けて粉々に破壊された。

残ったひとりが気付いた時には、今までスピノが居た場所には絡まった鎖が捨ててあるだけだった。

 

「ど、どこ行った!?」

 

その人造人間の頭上、天井に張り付いていたスピノはそこから飛び降り、トドメを刺そうと攻撃を繰り出す構えを取る。

 

「もういいよ、スピノ」

 

「!!」

 

しかし、サニーの放つ制止の一声が聞こえるとその場から方向を急転換して床に着地し、頭を垂れた。間一髪、助かった残りの人造人間たちは腰を抜かしたまま唖然としている。

 

「は…」

 

「そろそろ行こうか」

 

「アンタも行くの?やめといた方がいいわよ、ハッキリ言ってアタシらみたいに手酷くやられるかも」

 

「それは君たちが正面から戦う事しか知らない脳筋だったからでしょ?ま、今まではそれで何とかなってたからしょうがないとは思うけど…。ウチは戦わないよ、ただ話をしてくるだけ。ジュラ隊」

 

サニーがジュラ隊と呼ばれる自分の精鋭の部下たちを呼ぶと、そこへ7名ほどの人造人間たちがどこからか颯爽と現れ、彼女の前で跪いた。

 

「行こうか」

 

「はっ!!」

 

 

 

 

─────

 

「むごっ」

 

エアカーに揺られていたシロナは眠りから目を覚ました。

 

「また、よだれが垂れてますわよ」

 

「ああ、ごめん…」

 

ミルがポケットからハンカチを取り出すが、シロナも自分で持っていたハンカチで先に口元を拭いた。その様子を見たミルは複雑な顔をしながらハンカチを仕舞う。

 

「そろそろ聖地カリンへ入るころですね」

 

運転しているアリーズがそう言った。研究所での一件から既に数日が経っている。

エアカーは森の中の舗装されていない道の上を走り、やがてその道が車では通れないほど狭くなると、一行はそこへ車を停めて歩いて奥へと向かう事にした。

 

「…ねぇ、ふたりとも…」

 

「ええ…誰かに見られていますわね」

 

3人は小さな声で囁き合った。車を降りて歩き始めた時から、何者かの視線を感じていた。しかもその視線は一定の場所からではなく、すばやく周囲を動き回りながら彼女らに向けられているのだ。

 

「何者ですか?」

 

アリーズは思い切って立ち止まり、視線を向けている主に聞こえるようにそう言った。すると、動き回っていた気配は止まり、一本の木の上に人影が見えた。逆光によって詳細は見えないが、体格的には男で、その手には長い槍を持っていた。

 

「お前たちこそ何者だ」

 

男のハッキリとした声が響く。

 

「私たちは旅人です。詳しくは言えませんが、この聖地カリンに用があって来ました。ですが、聖地やアナタ方のような住民に対しての害意はありません」

 

「用があるだと?」

 

男の声に、彼らを見定めるような色が含まれる。

 

「それはカリン塔へか?」

 

カリン塔とは、聖地カリンの中心にある、天に向かって高くそびえる塔の事だ。それを登り切ると、頂上には神様が住んでいるという伝説がある。

 

「いいえ、違います」

 

アリーズがきっぱりとそう言うと、声の主の男は木の上から飛び降り、シロナ達の目の前着地した。そのまま立ち上がり、手にした槍を向ける。

 

「立ち去れ」

 

男は若い青年のようで、長い黒髪を後で結び、褐色の肌に筋肉質な上半身を露わにした、インディアン風の青年だった。頬に緑と赤色のペイントが塗られている。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!別に私たちは悪い事をしに来たわけじゃないって!」

 

「嘘をつくな!どうせお前たちも奴らの仲間だろう!」

 

「奴ら…?」

 

「立ち去らないというのなら…力尽くでも追い返してやる!」

 

青年は槍を振りかざし、シロナたちに襲い掛かる。3人はそれぞれ別の方向に飛びのいて一撃を躱すが、青年はその場で片足のつま先を軸にして体を大きく旋回させて槍を振るい、数メートルは距離を置いたはずの3人にその切っ先を掠らせた。

 

「うわっ…!」

 

そのままシロナは後ろへ転んでしまう。尻餅をつき、大きな隙をさらしたシロナを青年は見逃さず、槍を突き出しながらトドメを刺そうと向かってくる。

しかし、シロナは咄嗟に青年の両腕を掴むと、引っ張りながら後ろへ受け流す。青年はそのまま勢い余って前のめりにバランスを崩してしまう。シロナはすかさずにがら空きになった青年の腹をアッパーで殴り上げた。

 

「ぐは…ッ!」

 

青年は宙へ飛び上がり、背中から地面に落ちる。

 

「まだだ!」

 

青年は苦しげな表情で腹を押さえながら起き上がり、再びシロナに攻撃を仕掛ける。しかし、横から接近してきたアリーズが、鋸に変化させた腕で槍をへし折った。

驚く青年の背後から、今度はミルがその首に腕を回して締め上げる。

 

「ぐ…く…!」

 

「おとなしくしなさい、私たちは本当に邪な目的でここへ来たのではなくってよ」

 

ミルがそう諭しても、青年は抵抗を続ける。

 

「その通りだ、やめるのだウパ」

 

その時、森の奥から別の男の低い声が聞こえてきた。シロナ達が思わずそちらに目を向けると、木々の向こう側から大柄なたくましい、やや年老いた白髪交じりの黒髪を後ろで結んだ男性が歩いてきた。

 

「父上…!」

 

青年はその男性を見て、父上と呼ぶ。

 

「ウパよ…その者たちに手を出すな。奴らの仲間ではない」

 

どうやら、ウパという名前らしい青年はそれを聞いて抵抗する力を弱めた。それを感じたミルも拘束の手を解いた。

 

「息子の無礼を許してほしい。私の名はボラ…先祖代々、この聖地カリンに建つ塔を守っている」

 

ボラと名乗った男性は、静かにシロナ達に頭を下げる。

 

「最近、物騒なならず者共が頻繁にこの地へ訪れていてな…警戒するのも無理はないのだ。見たところ、君たちは良い性質の者たちだ。これは私の勘だが、間違っていないだろう」

 

「はぁ…それはどうも」

 

「ウパ…この聖地を守りたいという気持ちはよく分かる。しかし、誰彼構わず悪意ある者だと決めつけてかかってはどうしようもないだろう」

 

「はい、申し訳ありません父上…。このたびは、大変失礼をいたしました」

 

ウパはシロナたちひとりひとりに順番に頭を下げていく。

 

「べ、別にいいよ!私たちみたいな怪しさの塊みたいなのがくれば警戒するのも無理ないしね」

 

シロナはちらっとミルとアリーズを見た。

 

「お詫びに飯でもご馳走しよう。昨日は動物をたくさん狩れたから、ウパの妻に言って作って…」

 

バラララララ…

 

ボラがそう言った瞬間、突然何の前触れのなく、どこからかマシンガンの弾丸が無数に飛んできた。一行は咄嗟にその場の茂みに伏せ、弾丸をやり過ごそうとする。

 

「来たか!」

 

「こ、これがウパさんの言ってた”奴ら”…?まさか、人造人間じゃ…」

 

確か、シロナが初めて相手にした人造人間も体内に内蔵したマシンガンを武器として使っていた。あの時と同じようなタイプの人造人間が襲撃してきたという事も考えられる。

 

「懲りない奴らめ」

 

ボラはそう言うと、ウパと共に立ち上がった。そして、ふたりはその強靭すぎる肉体をかざし、全身に無数の銃撃を受けようとも傷一つ付かず、逆に弾丸をはじき返している。

 

「す、すごい…」

 

ボラとウパは走り出し、マシンガンを撃っている敵を発見する。それは、見たところは銃を構えた普通の人間に見える賊の集団だった。

 

「お前らの目的はなんだ!?」

 

そう問いかけるが、賊の集団は何も答えない。

その様子を見たシロナは賊が人造人間であると確信し、ボラたちと同じように立って茂みの影から飛び上がった。シロナの体も彼らと同様にマシンガンの銃弾をものともしない。

 

「人造人間め!」

 

シロナはとてつもないスピードで一番前に居た人造人間の目の前に接近し、その銃を奪ってへし折って破壊し、顎を蹴り上げた。

 

「ぐは!」

 

だが、その手ごたえは今まで相手にしてきた人造人間とは全く違っていた。蹴られた者は地面に倒れ込むと、口から流れる赤い血を袖で拭う。

 

「え?人間?」

 

その間にもボラとウパ、参戦したミルとアリーズもその集団たちの武器を奪って無力化していた。

 

「くそっ、ずらかれ!」

 

ひとりがそう言いながら、煙球を地面に叩きつけた。周囲は悪臭を伴う真っ白な煙で満たされ、一行は賊を見失ってしまう。何も見えない中で、パシュッという何かを射出するような音が何度も聞こえた。

煙が晴れた頃には、この場から賊の姿は一人残らず消えていた。

 

「逃げられた…いっつもこれだ!」

 

「うーむ…」

 

「ミル、アリーズ…今のって」

 

「ええ…今の賊どもがただの人間の集団であることは間違いないですわ。が、撤退していく際にだけ、人造人間特有の気配が現れましたわ」

 

パシュッという音は人造人間が発する何らかの機構音だったのだ。

 

「旅の者よ、私たちの家へ来てくれないか。そこで詳しい事を話そう」

 

ボラは自らの家へシロナたちを案内した。




今、シロナたちがいる世界は幻想郷から見ての「外の世界」ですが、ここでいう外の世界とはドラゴンボール世界の「地球」です。
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