もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第246話 「シュウゲキとハンゲキ」

射出したワイヤーを駆使し、背中から噴射するガスによって空中を高速で移動する人造人間の集団は、空から無数の手投げ弾を落としてくる。

 

「なっ…!」

 

このままではボラの家ごと、彼らは吹き飛んで死んでしまうかもしれない。

ミルはシロナを抱き寄せながら、左腕をドリルに変形させる前段階の長い帯状に変化させると、それを鞭のように伸ばしながら空中の爆弾を絡め取り、そのまま螺旋に変形させて掴んだ。

 

ドォン!

 

その場で爆弾はすさまじい爆発を起こす。周囲の木々が揺れ、衝撃が周囲に響き渡る。

爆発はボラたちの家に直撃はしなかったが…

 

「やれやれ」

 

爆弾を巻き取り、ひとりでそれを抑えこんだミルの左腕は焼けてボロボロになり、吹き飛んでいた。

 

「ミル…!」

 

「私は大丈夫…。向こうではアリーズが戦っているはず…追いますわよ」

 

「待て!何があったんだ!?」

 

その時、目を覚ましたウパとボラが屋根の上に登ってきた。

 

「敵の人造人間が襲撃してきたんだ!ウパさんたちは家の中に隠れてて…」

 

「いいや、シロナ!聖地を守る番人として俺も戦うぞ!」

 

シロナが家の中にいるように促すも、ウパはそれを聞かずに武器の槍を持ちながらそう言った。だが、その後ろにいるボラとピパの様子を見る。

ボラはウパよりも大きく屈強な体格を持つが、年を取っている分息子よりも劣るだろう。ピパは言わずもがな、普通の人間の女性に過ぎない。

 

「わかった…でも、来ていいのはウパさんだけだ。失礼な言い方だけど…ボラさんはきっと満足な戦力にはならないと思う…」

 

そう言われたウパはボラの方を向き、ボラ自身も少し考え込む。

 

「…そうだな、分かった。聖地を守る役はウパに任せよう」

 

「父上…。では、父上はピパをお願いします」

 

「ああ」

 

ボラはピパを連れて家の中に戻っていく。

 

「それでは、行きますわよ。我々記憶兵器の戦いというものを、あの方たちに思い知らせて差し上げましょう」

 

ミル、シロナ、ウパの3人は人造人間を追ってカリン塔のある場所へと急ぐのだった。

 

 

 

一方、サニーによって記憶兵器の始末を命じられたジュラ隊は、夜の森の中を縦横無尽に飛び回りながら標的を探していた。とりあえず、聖地の番人とミルたちは爆弾によって一時的にではあるが動きを止める事が出来たので、この隙に全員でアリーズを仕留めようとしているのだ。

リーダーのアロに、その仲間のマプ、コリト、ノア、ラジャ、アンペロ、そして新入りのスピノ。彼女らは腰の両側にはワイヤーを射出し、高速で巻き取る機関が存在する。射出するワイヤーの先端はアンカー状になっており、一度刺さると自分でアンカーを引っ込めない限りはめったに抜けることはない。そしてこのままワイヤーを高速で巻き取ることによって、空中での素早い移動を可能としている。

さらに、背中や肩の後ろから伸びる管のような部位からは体内に存在するガスを高圧で噴射し、これもスピードに拍車をかけ、方向転換にも利用している。そうして敵を翻弄し、頭上から爆弾を投下したり、体内に内蔵された武装を使用して敵を迅速に仕留める事が、このジュラ隊の主な戦闘スタイルなのだ。これによって今まで何人もの記憶兵器を倒してきた確かな実績もある。

 

「まずはアリーズを探して仕留めるぞ!」

 

「ハッ!!」

 

マプの指示に従って隊員たちは森の中を飛び回り、天高くそびえるカリン塔にまで到達すると塔にワイヤーのアンカーを引っ掛け、その周囲を旋回する。そして、いくら記憶兵器と言えど炎の熱と煙には長時間耐えられないという事から、彼女らは空中から無数の爆弾を投下した。森は幾度もの爆発に巻き込まれ、炎に包まれる。

 

「…1、2…3、4…」

 

しかし、塔の根元の地面の中に身を潜めていたアリーズはのぞき穴の中から旋回する敵の数を数える。

 

「5、6…総数7!」

 

ビキビキ… ドォォン…!

 

その瞬間、唐突に地面の下から巨大な鋸の刃が7本伸び、飛んでいたジュラ隊に一瞬で届いた。高さ十数メートルにも及ぶ刃は、ジュラ隊のうちラジャ、ノアの2名を正確に打ち上げ貫き、バラバラに破壊した。

 

「そ、そんな…!」

 

ものの数秒の出来事に、スピノは困惑した。さっきまで隣にいたはずの仲間が、一瞬にして物言わぬガラクタと化した。それと同時に、恐怖した。これが、記憶兵器との戦いなのか、と。敵は凶悪だ、我々の仲間を何も思わず、無情に破壊してゆく。

 

「おいスピノ!止まるな!」

 

マプがスピノの腕を掴んで現実に引き戻し、森の中へ退避する。

 

「クソッ、これが最強の『鋸』の力か…!こんな芸当ができる記憶兵器はコイツだけだ…」

 

「あ…」

 

その時、スピノは背後に見た。自分たちに迫るほどのスピードでこちらに接近してくる、何かの影を。一瞬、仲間かと思ったが、人の形にしてはあまりに不自然なシルエットだったので、目を細めてそれを確認した。

 

「マプさん!後から敵です!」

 

それは、右腕のドリルを形作っている渦を解いて細い帯状に戻し、それをロープ代わりに木の枝を掴んで枝から枝へと高速で移動してくる、記憶兵器のミルだった。

 

「ッ…!?」

 

マプは慌てて右腕の手の平から銃の砲身を伸ばし、そこから高威力の空気弾を発射した。しかし、ミルは華麗な身ごなしでそれを躱し、外れた空気弾は木々に穴を空けて真っ二つにへし折りながらどこまでも飛んでいく。

その隙にも、ミルはぐんぐんとマプたちへ近付いており、銃器による応戦は適切でない範囲にまで入って来る。

 

「クソッ…!スピノ、死にたくなければ剣を出して戦え!」

 

「は、はい!」

 

マプとスピノは同時に片腕を鋭く長い剣に変化させ、ミルを迎え撃とうとする。

 

「どこからでも来やがれ!!」

 

剣を構えてそう叫ぶマプであったが、次の瞬間にミルの細長く伸ばした腕の先端がその首に突き刺さった。そのまま腕をドリルの形に巻くことでミルは瞬時にマプへと急接近し、そのままマプの首を捩じるように切断した。血のような黒い油がミルの顔にかかり、その隙間から覗く眼光がスピノを見据えた。

 

「ひっ…!」

 

ミルは次にスピノに狙いを定めるが、次にやって来た別の隊員の攻撃を受けてそちらに注意が向いた。その隊員はアンペロで、右腕の空気弾と左腕の剣を駆使して戦いながらこの場から遠ざかっていく。

 

 

一方、リーダーのアロと、コリトはアリーズの初撃によって他の隊員と分断され、アリーズが地面から発生させた鋸の建造物にワイヤーを刺してその周囲を旋回していた。

 

「どうやら他の記憶兵器共が来たようだ。そいつらはマプやアンペロが何とかしていると考え、我々はアリーズのみに狙いを絞れ!」

 

「はっ!」

 

ふたりはアリーズが現れ次第すぐにでも攻撃ができるように武器を構えながら、眼下を注意深く監視していた。

アリーズは主に不意打ちによる一撃必殺を放つ戦法を取り、これに対応できる人造人間は多くない。何せ何もないと思っていた地面から突然鋸が伸び、彼らの体を野だ貫きながら砕くのだ。しかしその分、アリーズ自身の体力の消耗も激しい。しかもそれを同時に7本も撃ち出せば、しばらくは回復に専念しなければならない程に消耗してしまう。

しかし、アリーズは7本目の塔を作った時にその先端部の中に入り込んでおり、今は鋸の塔の頂上部に身を潜めていた。そして、この場所にとある者の影が接近していることを確認すると、鋸の先端を破壊してその姿を現した。

 

「…なっ!アリーズがあんなところに…!」

 

それに気づいたコリトはスピードを緩め、右腕の空気弾をアリーズへと向けた。だがその瞬間、眼下の森の中から飛び出してきた小さな塊がコリトの頭部を掠り、その髪の毛が斬れて宙を舞う。

 

「何だ!?」

 

コリトの注意がそちらに向いた瞬間、彼女の胸に細長い槍が刺さって貫通し、そのまま後にあった鋸の塔に縫い止められてしまう。コリトは最期に、遠くで投げ槍を構え直しているウパの姿を見ると、頭上から降下してきたアリーズの一撃を脳天に受け、真っ二つに切断された。

一方、先ほどコリトの頬を掠った小さな塊は目にもとまらぬスピードで鋸の塔から塔へとジャンプして移動し、アロを追い立てていた。

 

「くっ…!なんだこのバケモノは!まさか、コイツがシロナか!?」

 

アロは空気弾を連続で発射するが、シロナは人間離れした身のこなしでその全てを躱していく。ジュラ隊が持っている腕の空気弾は一定の数を発射すると新しく空気を取り入れて弾丸を装填する暇を設けなければならず、撃ち続けていればいずれその時が訪れる。シロナはすぐにそのタイミングを見切ると一気にアロに急接近し、近接戦を仕掛ける。

 

「フッ!」

 

殴りかかるがアロも上体を逸らしてそれを躱し、左腕の刃で斬りかかる。シロナは鋸の塔に掴まり、一旦動きを止める。がその瞬間、アリーズが頭上から鋸を振るいながら現れ、一閃を繰り出す。アロは間一髪、背中からガスを吹かして軌道を変えてそれを避け、そのまま再び森の中に入り込む。

 

「くそ…何とか体勢を立て直さないと…」

 

その時、自分の横を並走する仲間の姿が見えた。

 

「アンペロか!ドリルのミルはどうした?」

 

「戦っているうちに逃がしてしまいました」

 

「そうか。スピノは?」

 

「姿が見えません。怖気づいて逃げたか…」

 

「…いや、奴は必ず戻ってくる」

 

「は」

 

その時、普通に会話をしていたアンペロの胴体に大きな風穴が空いた。後ろに目線を向けると、ドリルに変形させた腕を前に向けて構えているミルの姿があった。その足も螺旋状になっており、おそらくバネの勢いを利用して高速でアンペロの胴体を貫いたのだろう。

 

(まずい、このままでは…!)

 

残っているのは、行方知れずのスピノとアロだけ。ミルは続いてアロに狙いを定め、まるでミサイルのようにその場から一直線に飛び出してこちらへ向かってくる。

 

「くっ…!」

 

アロは辛うじてそれを躱すが、バランスを崩しかけて足が地面にこすれた。慌てて態勢を整えるが、その時にこちらを見据えながら槍を投げる構えを取っていたウパと目が合った。

アロはその瞬間にウパに向かって空気弾を2発放つが、それは外れてウパの足元に着弾した。

 

「どこを狙ってる?僕の槍の方が正確だぞ!」

 

ウパはそう言いながら渾身のパワーで槍を投げ飛ばした。

が、アロは機能停止したアンペロの残骸を盾にして槍を防ぎながら木の幹に掴まり、腰からワイヤーをウパに向けて射出した。

 

「いっ…!」

 

ワイヤーの先端のアンカーがウパの肩に刺さって背中から突き抜ける。続いてワイヤーを高速で巻き取ると、それにウパも引き寄せられてしまい、途中でアンカーが抜けるも勢いそのままにはるか後方へぶっ飛んでいき、アリーズの作った鋸の塔に背中から思い切り激突した。

ウパは気を失い、塔を伝って地面へと落ちる。

 

「よし…!…!?」

 

しかし、自分の真横から唐突にシロナが現れ、その拳がアロの顔面を捉えた。殴られたアロは吹っ飛んで後ろの木の幹にぶつかり、追ってきたシロナの蹴りを腹に浴びて胴体がバラバラに砕け散る。

 

(…しかし、これでいいのですよね…サイカニア様)

 

アロは機能停止する寸前に笑みを浮かべたが、シロナはそれに気付かなかった。

 

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