ガーリックの放った特大のエネルギー波は、宮殿の玉座の間ごとその階を完全に破壊し、天界を揺るがした。床が崩れると、そこに瓦礫と共に霊夢たちは降りていってしまう。
「…奴らめ、隠れたつもりか」
少し辺りを見渡すと、ガーリックも同じく崩れた下の階へと飛び込んだ。
天井が崩れてきたことにより光が差さなくなり、真っ暗になってしまった中で、ウスターは攻撃された時に痛めてしまった腕の関節を治していた。
外れてしまっていた骨を元に戻したところで、突然背後から殴られ、頭を掴まれた。
「どこから…?」
足音が聞こえるが、密閉された空間の中で音が反射してしまい、どこから向かってきているのか分からない。
カカロットがようやく敵の位置を掴んだ頃には、もう遅かった。後ろにまで迫っていたガーリックはカカロットの首を掴み、そのまま走り出した。
もう片方の手にはウスターが掴まれており、必死にガーリックの腹へ蹴りを入れて抜け出そうとするが、微動だにしない。カカロットもガーリックの腕を肘で何度も殴りつけるが、効いているそぶりはない。
「くそっ、コイツビクともしねぇ…!」
「ムグハハハハ!!」
ガーリックはわざと二人を柱や大きな瓦礫にぶつけながら走っていく。
「波──!!」
途中、正面から霊夢の放った気功波がガーリックを襲った。が、その勢いは霊夢の攻撃すら何ともない様子で打ち破り、今度は霊夢に狙いを定めた。
唖然としているところを、胸を使った体当たりで遥か前方へ吹き飛ばす。そして地面に落下するところを蹴り上げ、カカロットと一緒に掴み上げた。
ドガァァァン
そして、宮殿の壁を破壊し、宙へ飛び出した。塔や伸びている階段を突き破り、はるか下のテラスの床に三人を押し付ける。
深いクレーターが出来上がり、割れた床に埋もれてしまった三人。
ガーリックは後ろへ飛んでその場から離れる。
「三人がかりでその程度か?」
しかし、すぐにカカロットたちは起き上がってクレーターの中から脱出する。
「これじゃやばいわね」
「ああ…だがこっちは三人いる。分かるか?」
焦りの言葉を口にした霊夢に対して、ウスターが言う。
「どういうことだ?」
「さっきのガーリック三人衆が居ただろう…奴らの動きを参考にして、俺たちも三人で奴に攻撃を仕掛ける」
「何をゴチャゴチャ言っている?」
ガーリックはそう呼びかける。
「それにしても、私たちとアンタらで一緒に戦うなんてね」
「ふん、勘違いするな。アイツを倒したら…次は貴様らだ」
「楽しみにしてるぜ、自称最強の魔人さんよ。…行くぞ!!」
カカロットが我先にと飛び出した。後から霊夢とウスターが追うように走り出す。カカロットはガーリックへと殴りかかるが、その場から素早く移動し、ガーリックがあたかも消えたように見えた。背後に移動していた巨体は腕を振り上げ、気を込めながらカカロットへ振り下ろした。
だがカカロットもその場へ残像を残しながらそれを避け、攻撃後の隙を見てウスターが膝蹴りを浴びせようと襲い掛かる。しかしまたしてもガーリックは消えるように攻撃を避け、ウスターの頭上から拳を叩きつける。
ウスターはそれを避けると、今度は霊夢が真横から蹴りを仕掛ける。
「はあああああ!!」
その蹴りが命中すると、ガーリックは勢いよく吹き飛んだ。その先へ移動していたカカロットが顎を蹴り上げ、舞い上がった途端にウスターが体を回転させながら強烈な蹴りをガーリックへと浴びせた。
地面へと落下したガーリックに向かい、霊夢が無数のエネルギー波を投げつける。
「ムガァ!!」
しかし、それを強引に振り払ったガーリックは両手を上にあげ、エネルギーを溜め始める。
「ちぇりゃあ!!」
それを見ると、そうはさせるかと言わんばかりにカカロットたち三人がガーリックの周囲を取り囲んだ。そして彼の周りをグルグルと回りながら、素早く攻撃を繰り出した。
ウスターの攻撃を防ぐが、背後からの霊夢の肘打ちを喰らう。今度はそれに対応しようとすれば、カカロットの蹴りが腹にめり込む。
「くああああ…!!」
四方からの攻撃で一方的に攻撃を喰らい続けるガーリック。それを確認すると、三人は同時にガーリックの腹を殴り、そのままの勢いで踏ん張りながら前方へその巨体を力いっぱい押していく。
するとガーリックの足が地面にわだちのような跡を作りながら後退していき、ついにはテラスのがけっぷちにまで追い込まれる。
「これでトドメだ…!」
三人は空中へジャンプすると、それぞれの片腕を中心へ集める。その中へ気を込め、エネルギーを集めていく。
紫、赤、黄色…カカロット、霊夢、ウスターのエネルギーが混ざり合い、カラフルな気功波が生成される。そしてタイミングを見計らい、それを渾身のパワーを込めて放った。
「…ぬ!?」
上を見上げるガーリック。だが、もう遅かった。受け止める間も避ける間もなく、三人の合体エネルギー波が直撃する。猛烈な気の熱と勢いに晒され、ガーリックの肉体が徐々に動かなくなっていく。
「おのれ…この私がこんなところで…!!」
光に覆われたガーリックは、手に付いた自らの血を見つめる。
「ふふふ…だが息子よ…いつか必ず、この父の恨みを晴らしてくれ…魔族の力をお前が次ぐのだ…!!」
そう静かに呟くと、ガーリックは意識を失い、目の前が真っ暗になった。
ドォォォォォン…
エネルギー波はガーリックを通り抜け、遠くの空の彼方で炸裂した。土煙と気の渦が巻き起こり、霊夢たちは衝撃で吹っ飛ばされてしまう。
全てが収まった。宮殿の周囲を取り囲んでいた黄色や赤色をした雲は全て吹き飛び、元の天界のように白い雲と青い空が現れた。邪悪さが消えたこの天界の一角が、息を吹き返したかのようだ。
「終わった…のかの?」
崩れた瓦礫の中から、回復したシュネックが顔を出した。そしてハッとしたように抜け出し、遠くへ居る霊夢たちの元へ駆け寄る。
「まさか…」
三人の前には、仰向けで大の字に倒れ込んだガーリックの姿があった。白目を向いたまま、ピクリとも動かない。
「ガーリックを…殺してしまったのか?」
「…ええ、ごめんなさい」
シュネックはガーリックの目を閉じさせ、その身体に彼が羽織っていたマントをかぶせた。
「…できればお前とは、ずっと友としていたかった…が、これも運命なのだ。いずれあの世で会おう」
その様子をみたカカロットは、思わず目を伏せた。いくら幻想郷を脅かす敵であったとはいえ、このガーリックはシュネックと共に修行に打ち込んだ友であったということは両者のやり取りから知っていた。
「くだらん。所詮はそれまでの男だったという事だ」
ウスターはそう吐き捨てると、空中に浮かび上がり、どこかへと飛び去ってしまった。
「では、我々も戻ろうか」
シュネックはそう言うと、指をクイッと上へ向ける。すると崩れた瓦礫の中から4つのドラゴンボールが出現する。4つとも全て、ガーリックが奪って来た他の賢者の持つボールだ。
それを見たシュネックは一瞬だけ眉をひそめるが、すぐに元の顔に戻り、振り返った。
「これは私が賢者たちの元へ帰してくる。では…達者でな」
シュネックは飛び上がると、どこかへと飛び去る。
「…ところでさ、アンタ」
「ん?」
「さっき、『今の師』って言ってたけど、今度は誰から修行付けてもらってるのよ?」
「ああ、特別に教えてやる。今のは…」
と、カカロットが言いかけた時、シュネックと入れ違うように反対方向から何者かが飛んでくる。
「おーい、やっと見つけたわ霊夢!場所も聞かずに行っちゃうもんだから…」
華扇だ。茨木華扇が飛んできて、そう言いながら霊夢の隣に着地する。
「お」
「って、カカロット。無事だったのね」
「…まさか、今の師匠って…」
「ああ、この華扇の事だが」
「あ、今呼び捨てにしたわね弟子の分際で!」
「ああー!!首をつねるなつねるな!」
カカロットをここまで強くした師匠とは華扇の事であった。それを知った霊夢は、このままではいけないなと思い、これまで以上に修行に身を入れる事を決意するのだった。
…戦いが終わって、幾ばくかの時間が過ぎた。
安置されたガーリックの遺体の前に、小さな影が舞い降りる。
「…そんな…あれほど強く偉大だった父が亡くなられた…!!」
小さな影は怒りに震えながら拳を握りしめた。その顔は青白く、ガーリックと同じようにこめかみのあたりに赤い模様が入っている。
「許さんぞ、博麗の巫女…魔人ウスター…そしてカカロット!だが今の私では力不足だ…いつか力を付けて、お前たちに復讐してやるのだ!!」
小さいが内に秘められたとてつもない悪意が、静かに天界で動き始めようとしているのだった…。