もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第252話 「占いババの戦士」

「アンタの思惑通り、例のシロナは8号を倒したってわけ?」

 

人造人間の蠢く居城の内部で、椅子に座りながら新しい手足の手入れをしていたアールは、ソファで目を覚ましたばかりのサニーにそう声をかけた。

 

「まあね。最後の仕上げに、これから出発するところさ…」

 

サニーは立ち上がると、今度は配下を引き連れずにたったひとりで居城の外へ出ようとする。

 

「ふーん、でもさ…いくらあの8号とはいえ、捨てたのは痛いんじゃない?」

 

「大丈夫だよ。スカール様によって造られていない人造人間はウチらでも扱いきれない。前にもせっかくスカール様から頂いた名前を捨てて、ハーレクインなんて名乗ってどこかへ消えたヤツもいたし、持て余すくらいなら残しておいたって意味ないでしょ?」

 

「それがスカール様の望みなら、構わないけどねぇ」

 

「スカール様は部屋にお籠りになられてから一度もウチらにご意向を示したことはないでしょ。ふふふ…材料は揃ってる。あとはシロナを徹底的に叩き壊してやるだけさ」

 

「…悪趣味なヤツ」

 

 

 

──────

───

 

 

ミルとシロナは、人造人間たちの根城の場所を突き止めるべく、南エリアのとある場所へと向かっていた。そこには「占いババ」と呼ばれている凄腕の占い師が住む宮殿が存在し、その占いババにかかればこの世のどんな事でも教えてくれるというのだ。

その情報をひょんなことから掴んだふたりは、早速占いババの宮殿へと車を走らせるのだった。

 

そこで、どのような戦いが待ち受けているのかも知らずに…。

 

 

 

「…着きましたわ」

 

「ここで間違いないんだよね」

 

車を降りた二人の目の前には、砂漠のオアシスのほとりに立つ豪勢な宮殿があった。そして、その宮殿の門の前には自分たちの他にも何人かが訪れているようだった。

 

「私たち以外にも人が来るんだ」

 

「まあ、世界で最高の占い師で何でもお見通しというくらいですから、あれくらい客がいなければ信用できませんわ」

 

だが、シロナ達が門に続く列に加わった時、何かおかしい事に気付いた。並んでいるのは、どれも屈強な体格を持つむさ苦しい男たちであったのだ。男たちはシロナとミルが並んだことに気付くと、気に入らないような顔で睨みつけた。

 

「ちっ、金持ちが…」

 

そしてそう悪態をつくと前に向き直る。

 

「え、なに?」

 

「気にしなくていいですわ」

 

ミルがそう言った瞬間、門の隣の出口から白いスーツを着た裕福そうな老人がにこやかな表情で現れた。

 

「いや~、やっぱりあそこにしまい込んであったか、純金の壺!」

 

老人はそのままスタスタと男たちとシロナらの横を通り過ぎ、停めてあった高級車に乗るとこの場から去っていった。

 

「やっぱり普通の人もいるんじゃん!」

 

「さぁさぁ、お次の方はどうぞお入りください」

 

その時、いつの間にか列の整理をしている者がいたらしく、声が聞こえてきた。だが、シロナはその声の主の方に目を向けるとぎょっとした。

何故なら、その声の主はピンク色をした、デフォルメされた幽霊そのままの姿をしていたのだ。その幽霊に呼ばれた男たちは大声で「オス!!」と掛け声を発すると、気合十分な様子で宮殿の方へと向かっていく。

 

「な、なんかやけに力が入ってるね…」

 

「…ねえ案内人さん…ここは本当に占いババ様の宮殿で間違いないですのよね?」

 

ミルが案内人の幽霊にそう尋ねると、彼はミルたちを見定めるように見ながら言った。

 

「ええ、間違いございません。ただ、貴女方にはあの方に占っていただく資格はないように見えます」

 

「え?どういうこと?」

 

「まあでも占いババ様は気まぐれですからね。一度会ってみる価値はあると思いますよ」

 

「はあ…」

 

その時、なんと先ほど宮殿へ向かっていった男たちの集団が、ボロボロにのされた様子で戻って来た。

おかしい…占いをしてもらうだけでこんな状態になるだろうか?

 

「い、今の人たちはどうしたの…?」

 

「へっへっへ~」

 

しかし、幽霊はもったいぶったように笑うだけで何も教えてくれない。

 

「ささ、次は貴女方の番ですよ」

 

シロナとミルは幽霊に案内されるがまま、宮殿へと足を踏み入れる。

 

「お連れしました~」

 

「うむ」

 

そこでふたりを出迎えたのは、宙に浮かぶサッカーボール大の水晶玉に乗っかった、小柄な老婆だった。黒い三角帽をかぶり、座禅を組んだ足の上に手を置いてにやりと笑いながらこちらへ声をかける。

この老婆こそ、百発百中の占いで知られる占いババその人だ。

 

「おやまあ、ずいぶんと若いのう…。だが、そちらのお嬢様は見た目以上に長く生きているようじゃの」

 

占いババはミルへ見透かしたような鋭い視線を向ける。

 

「…ええ、私は歳を取りにくい体質ですので」

 

「ほっほっほ…まあよいわい、わしに用があってきたのじゃろう?申してみよ」

 

「ええっと…今から言う事は絶対に誰にも言わないでほしいんですけど…今、世界中で暗躍している人造人間…奴らがこの世のどこかに構えているという本拠地の場所を教えてほしいんです」

 

シロナがそう言うと、人造人間という言葉を聞いた占いババの表情にほんの少し緊張が走った。

 

「いいとも、1千万ゼニーを出してくれたらのう」

 

「い、1千万ゼニー!?」

 

シロナが驚いて叫ぶ。

 

「…申し訳ありませんが、今の私たちにはそのような大金は持ち合わせておりませんの」

 

「ほう、たった2人で来た上に、そちらの年上のお嬢様は上品さと育ちの良さを感じたから、てっきり金で占ってもらうつもりだとばかり…。しかし…」

 

占いババはふたりを値踏みするようにその全身を見渡す。

 

「ほっほっほ…どうやら、お前たちは人間ならざる超常的な能力を持っているようじゃの。面白い…では、ついてこい」

 

ふたりは困惑しながらも、占いババに案内されるがまま、宮殿の裏口を抜けた先にあった、白いタイルを張られた丸い大きな武舞台へと向かった。

 

 

一方で、宮殿の2階の窓からその様子を眺めている人影があった。

 

「…ほう、まさかこんな場所にアイツが来るとはな…カカロットの子供よ」

 

その人影はそう呟くと、眉の吊り上がった鋭い目をシロナへと向けた。

 

 

 

「ここは?」

 

「ここは戦いの場所じゃ。ここでわしの戦士たちと試合をしてもらい、ふたりで全員に勝つことが出来れば、タダで占ってやるぞい」

 

シロナは気付いた。だから先ほどの男たちはあんなにボロボロで宮殿から出てきたわけだ、と。同時に、大量の金をせしめ、それがダメなら戦わせてそれを鑑賞するという決して良いとは言えない趣味を持っている占いババに対し、若干引いた。

 

「で、でも私たちなら楽勝だよ。ね、ミル?」

 

「…それはわかりませんけれど…普段相手にしている人造人間に比べれば、はるかに楽かもしれませんわね」

 

「ほっほっほ、言ってくれるわい。ルールは簡単じゃ、ギブアップするか舞台から落ちれば負けじゃ」

 

「よーし、じゃ私から行ってもいいよね?」

 

シロナはそう言いながら片腕を回して骨を鳴らし、武舞台へ上がる。すると、反対側から現れたのは全身に包帯をグルグル巻いた、大柄な男だった。

 

「戦う干物、その名もミイラくんじゃッ!」

 

「ぐっふっふ…」

 

「あら、アンタが相手なの?」

 

シロナはそう言いながら格闘の構えを取る。

 

「そう言うお前こそ、オレの相手になるのか?まあいい…子供だろうが容赦はしないからな」

 

「はじめ!」

 

占いババの、試合を開始する合図が放たれた。その瞬間、ミイラくんは舞台上を高速で駆け、シロナに接近しながら殴りかかる。そして大きく拳を繰り出した。

 

「…!?」

 

しかし、ミイラくんの一撃は空ぶった。今までシロナが居た場所には何もなくなっていた。

そして彼がシロナの行方を探る暇もなく、その大きな体躯を誇る身体が宙に浮き、気が付けば舞台下の草原に優しくストン…と落とされていた。

 

「へ…?」

 

「そ、そこまでじゃ…、ミイラくんの負けか…」

 

何が何だか分からないまま、負けの判定が下されたミイラくん。

 

「う~む、想像以上にやるのう、あの娘…」

 

「この程度?残り4人全員で…いいや、ミイラくんも復活して5人全員でかかってきても問題ないよ」

 

「な、なにを~…!」

 

「ほっほっほ!面白いわい、では本当に5人全員でかかっても問題がないか、試してやろうではないか」

 

ミイラくんが立ち上がり、占いババの合図と同時に宮殿の中から3人の戦士がぞろぞろと現れる。キックボクサースタイルの衣装に身を包んだ血色の悪い男に、全身が真っ黒で角の生えた悪魔のような姿の怪人に、空中に双眼だけが浮かんでいるように見える不思議な人間…は恐らく透明人間か何かの類いだろう。そして、最後の5人目は…

 

「やめておけ!キサマらではその子供といくら戦っても無駄だ!」

 

宮殿の中からとてつもない大声が響いてくる。それを聞いた戦士たちは恐れおののき、宮殿から舞台へと続いている道を空ける。

そして宮殿の影の中から、マントを羽織った背の高い人影がゆっくりと歩いてくる。

 

「ふっふっふ…久しぶりだなシロナ。俺を覚えているか?」

 

その人影はマントを脱ぎ去り、その下に隠されていた女体をさらけ出した。程よく鍛えられ引き締まった体に、それを強調するかのような露出の多い鎧を身にまとい、銀色の髪の隙間からオオカミのように鋭い双眼が覗き、シロナを捉えている。

 

「あ、アナタは…!?」

 

 

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