もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第256話 「闇に走る赤い光明」

「くっ…次から次へとキリがないですね…!」

 

アリーズは自分を中心として渦を描くように地面から鋸の塔を生やし、周囲の人造人間を一網打尽にする。

しかし次の瞬間、なんと地面の中から1体の人造人間が飛び出してきた。

 

(地面の中を移動してきた…!?)

 

その人造人間は肘から伸びるブレードを振りかざし、アリーズの胸に深く突き刺した。

 

「ぐああっ!」

 

「アリーズ!」

 

ヒロイシがその人造人間を切り裂いて破壊し、アリーズを助けるが、今度はその隙をつかれて複数の人造人間からの攻撃を受ける。

 

「ぐっ…」

 

応戦していたミルも群がる人造人間の攻撃によって蓄積されたダメージが尾を引いて限界が近づいている。そして次の瞬間、敵が飛ばした巨大な杭のような針がミルの背中に突き刺さった。ミルは前のめりに倒れ込み、それを好機と見た人造人間たちが一斉に近寄ってくる。

 

(さすがに…ここまでの数の人造人間と戦った事はありませんでしたわ…不覚…)

 

ヒュン…

 

ミルがそう思った、その時だった。彼女の顔の横を何かがかすめていったかと思えば、目の前の人造人間の集団がまとめて木っ端みじんに砕け散る。

それは、ヒロイシとアリーズの目の前でも同時に起こっていた。3人は困惑した。一体、何が敵を一瞬で砕いたのだ?誰がやった?

 

ヒュン ヒュオ…

 

3人はほぼ同時に、その何かが飛んできた方向へ振り向いた。すると、そこに居たのはシロナの姿だった。吹き飛んだ頭部を再生し終え、復活していた!しかし、その場で爬虫類のような腹ばいの姿勢になっており、その顔は先ほどと変わらず、訳も分からず暴走した時と同じだ。

何よりも驚いたのは、なんとシロナの背中から6本ほどの脊椎のような形をした触手が長く伸びていたこと。その脊椎は先端に行くにつれ細長くなり、先端部分は槍のように鋭い。シロナはその6本の脊椎の鞭を振るい、周囲の人造人間を瞬く間にバラバラに粉砕していく。

しかもその鞭の攻撃はミルやアリーズ、ヒロイシら周囲の味方には当たることなくその隙間を縫うようにして繰り出されている。

 

「カアアアア…!」

 

獣のように唸り、まだ暴走から目が覚めてはいないようだが、明らかにミルたちに危害が加わらないように立ちまわっている。

押し寄せる人造人間の群れは、既に半分が駆逐された。山のように溜まっていく残骸を踏み越えて新たにやってくる敵の軍隊も、シロナの振るう鞭の威力によって残骸ごと遥か彼方へ吹き飛ばされる。さらには鞭を振るった際の衝撃が真空波となってずっと向こうの地平まで飛んでいき、こちらへ向かおうとしている敵をも粉砕する。

 

「戦エ…戦エ…」

 

(お前は誰にも負けない。お前は強い子だ…それは私たちが一番よく知っている。いいか…何が正しい事で何が間違っているかなど、その時は誰にもわからない。進んだ先が地獄なのか、それとも楽園なのか…それがどうかも、進み続けた者にしか…わからない。お前は進み続けろ、自分という名のパートナーを愛し、どこまでも)

 

「ススメ…!!」

 

ビキビキ…

 

──そうだ…今はまだ何も結果は分からない。自分の行いが正しいのか間違っているのかさえ誰もわからない。だから、今は進み続けるしかないんだ。全てが終わった後で、自分のやってきたことが正しかったのか、判断するよ。

 

シロナは脊椎の鞭全体に結晶を纏い硬質化を行き渡らせ、それを自身の元へ集約させ力を溜めた後、一気にそれを周囲全体を薙ぎ払うように振り回し、強力な真空波を放つ。

それはミルたち味方には掠る事すらせず、その合間を潜り抜けて人造人間のみを切断し、それらはすべてその場で爆発を起こしながら粉々に破壊された。

 

「凄まじいな…」

 

それを見たヒロイシはぼそりと呟いた。なんと、この数の人造人間をほとんどひとりで倒しきってしまうとは。

しかし、安心したのもつかの間、気が付けば周囲は闇に包まれたように真っ暗な空間と化していた。空も地面も何もかもが真っ暗だが、周りにいる者たちの姿だけはハッキリと見える。

 

「なんですかこれは…」

 

「…サニーが近くに来ておりますわ」

 

ミルは先ほどサニーが現れた際と同じ状況になっていると看破する。すると、数メートル離れた位置に、既にサニーの姿があった。何事もないように直立し、ギョロリと回転する大きな眼を瞬きさせる。

 

「驚いた。私が作った1万体の人造人間を一瞬のうちに全て無に帰すなんて」

 

サニーは、腹這いの体勢のまま脊椎の鞭を持ち上げているシロナを見ながら言った。

 

「でも…なんとも醜悪な姿だね。出ないはずの反吐が出そうだよ。その姿じゃあやっぱり人間だって言うのは無理があるよね、キミ」

 

ベキッ…

 

次の瞬間、ミル、アリーズ、ヒロイシ、シロナの両腕が何の前触れもなくへし折れた。そして、サニーは手の指を4本突き出し、それぞれに向ける。そうすると、突然空中に黒い刀のような武器が出現したかと思えば、一気に前へ向かって飛んでいく。

シロナは跳躍してそれを何とかかわすが、他の3人は防ぎきれず、刀が胸に突き刺さる。刀はまるで空中に固定されたかのようにビクともせず、抜くことができない。

 

「ヤメロ…!!」

 

シロナは錆びた金属が軋むような声でそう叫ぶと、一気に飛び跳ねてサニーへ襲い掛かる。が、またもサニーは何もしていないにも関わらず、突然シロナの両足の腿と首に丸い穴が空いた。

シロナは体勢を崩してその場で落下するが、今度は背中から伸びる脊椎の鞭を振るって攻撃を仕掛ける。

 

シャ…

 

が、鞭はサニーの体に触れる前に全てが切断され、届かない。その間に穴を空けられた体が回復したシロナは、今度は硬質化させた拳を振りかぶりながらサニーへ向かっていく。

しかし、続いてサニーは腕を伸ばし、その先の人差し指をシロナへ向ける。すると、どこからともなく空中に大きな黒い刀が出現した。その刀は先ほどミルたちに命中させた刀よりもずっと大きく長く、目にもとまらぬスピードで刃先を前に向けたまま放たれ、シロナの胸に突き刺さって貫いた。そのまま刀はその位置で静止し、シロナは空中に縫い止められて磔にされてしまう。

 

「弱い、弱すぎる。ウチは心底興醒めしたよ」

 

冷酷に言い放つサニー。シロナは磔から逃れようともがいたり、刀を折ろうと力を加えてみたりするが、やはりビクともしなかった。

 

「せめて、その醜い姿のまま死んでくれ。その方が心が痛まない」

 

サニーは両手の全ての指をシロナへ向け、サニーの頭上に10本の刀が出現する。

 

「ガアアアアア…!!」

 

シロナは何とかしてその場から脱出しようと、刀に思い切り噛みついた。硬質化の鎧をまとった顔は、剥き出しになった歯さえも鉱物のように非常に頑強になっており、噛んだ瞬間に歯と刀の間に火花が散った。その時、シロナは何かに気付いた様子で唸り声を止め、火花が飛んでいった先を向いた。

 

「ありがとう、そしてさようなら」

 

そして、10本の刀がシロナの身体を無数の串刺しにしようと一斉に襲い掛かる。

 

「シロナ!!」

 

ミルがそう叫ぶ。

が、シロナは、その場で刀を避けたり、あるいは防ごうともせずに、その両腕の拳を思いきり叩き合わせた。ガチン、という凄まじい音が響き渡ると同時に、拳からはその衝撃と摩擦による火花が大量に散った。

その瞬間、ミルとアリーズ、ヒロイシははっきりと見た。シロナが作りだした火花によって周囲が照らし出され、そこには闇の中に隠れるようにして、全身が骨張ったミイラのような姿をした大量の人造人間たちがこちらを取り囲んでいたのを。

さらに、ミイラの人造人間の中にはミルたちに刺さった刀が動かないようにしがみついて固定している者もおり、今こちらに飛んできている刀の正体は人造人間が構えながらこちらへ走ってきている、というだけの攻撃だった。これまでの不可解なサニーの攻撃の数々にも合点がいった。

 

「ウラウラウラウラウラウラ…!!」

 

シロナは自分に刺さった刀を固定している人造人間を一撃で粉砕し、刀を持ってこちらに走ってくる10体の人造人間を一発ずつのパンチで確実に破壊していく。

だが、シロナの周囲を囲うように控えていた人造人間がゆっくりと動き出し、シロナの腕に手を添えると、その腕をベキリとへし折った。

 

「そうだったのか…!サニーが頭の中で命令を送るだけで動く人造人間が大量に闇の中に隠れていたんだ…!シロナは両方の拳を火打石のように叩き合わせることで火花を出し、それを明らかにしてくれた!」

 

「分かってしまえば、こちらのものですわ」

 

ミルたちも、自分たちに刺さった刀を固定していた人造人間を見事破壊する。

が、周囲にいる人造人間たちが口を開けると、そこから野球ボールほどの大きさの空気弾を吐き出した。それはシロナの足に当たると、その部分を削り取って穴を空けてしまった。

だが次の瞬間に既に脊椎の鞭を再生していたシロナはそれを振り回し、周囲の人造人間を一掃する。しかし、サニーは全く動じる様子なく、冷静に口を開く。

 

「…これくらいのトリックを解明したところでどうしたというんだ?肝心のウチを倒せなくっちゃ意味ないでしょ?言っとくけど、ウチはそんな有象無象が居なくたって…一番強いんだから」

 

サニーはそう言うと、凄まじいスピードで移動して姿を消し、一瞬にしてシロナの背後へ現れた。そして両手を交差させるように振り下ろし、シロナの頭部を粉々に砕かんとする。

シロナはそれをしゃがんで躱し、四つん這いになって姿勢を低くする。そして脊椎の鞭を振り回し、サニーへ反撃を仕掛ける。だが、サニーは鞭による攻撃の全てを躱しながら、だんだんとシロナに近づいてくる。

 

「ああっ…!」

 

それを見たアリーズが声を漏らした。

サニーの蹴りがシロナの腹に命中し、突き上げられたシロナは垂直に大きく吹っ飛ぶ。サニーは続けて手の平を空中のシロナへ向け、雷のような鋭いエネルギーを纏った衝撃波を撃つ。

 

「グア…!!」

 

それはシロナに命中し、その身体に張っていた結晶がひび割れ、ダメージが直にシロナに届く。

サニーは地面を蹴って飛び跳ね、空中で体勢を崩したシロナへ接近すると、その顔面を拳で殴り、さらに踵落しを喰らわせて下の地面へ叩き落とした。そこには巨大なクレーターが出来上がり、シロナはその中心でぐったりと倒れていた。

 

「エースとアール如きを退けたくらいで調子に乗ってたんじゃないの?そろそろ地獄へ堕ちちゃいなよ」

 

サニーは片手をシロナへ向け、その手に白い半透明なエネルギー弾を作り出す。そして、それを今にも放とうと目を見開いた。シロナは抵抗しようと震えながら顔を上げ、威嚇の咆哮を上げようとするが、サニーに胸を強く踏みつけられ、気を失った。

 

ガシッ!

 

「地獄へ落ちるのは貴様の方だ、ガラクタ人形」

 

「…君は…」

 

その時、何者かがサニーの腕を掴み、ギリギリと握りながら締め上げる。サニーが振り返ると、そこには先刻闇の中での攻撃を受けて倒れたはずのウスターがいた。

 

「もっとも、貴様のようなガラクタが地獄へ行けるのかどうかは知らんがな」

 

サニーはウスターのパワーを振り解くことができなかった。顔に血管が浮くほど渾身の力を込めてもウスターの腕はビクともせず、逆に握る力を強められ、手に溜めていたエネルギーが消えてしまう。

 

「一体なんだい…?先ほどの君からはこれほどの力は感じなかった…何故、君のような者ごときが、ウチに振りほどけないほどのパワーを…」

 

「俺は…魔界最強の戦士、ウスター様だ!!」

 

ウスターが体を回転させるとサニーの身体も成すすべなく振り回され、手を離して上空へ投げ飛ばす。ウスターがぐっと全身に力を籠めて紫色のオーラを纏うと、そのオーラは体から分離し、巨大な一対の手を形作る。

その手はウスターから離れても思う通り自在に動き、空中に居たサニーの頭上から打撃を与えて地面へ叩き落とした。その間に、もう片方のオーラの手は倒れていたシロナを掴み、立ち上がったサニーの前へ立たせた。

 

「受けてみろ」

 

そして、なんとウスターはシロナをオーラの腕で思いきり殴りつけ、シロナを貫通した拳圧の衝撃波で後ろのサニーを攻撃したのだ。

シロナとサニーは目を見開きながら悶絶し、よろよろと後ろに下がる。

ウスターは雷のような凄まじいスピードでシロナらに接近し、今と同様にシロナを経由してサニーへ攻撃を喰らわせていく。

 

「グガ…ア…!」

 

「ぎゃあ…っ!」

 

「いいか、シロナ。痛みと共によく聞け」

 

そう言いながら、生身の拳で腹へ一撃。

 

「誰が何と言おうと…お前はまさしく”人間”だろうが!!」

 

さらに膝蹴り。

 

「あの素晴らしかった…カカロットと霊夢の元に生まれたお前は、れっきとした人間だ。どのような魔力に侵されようと、どのような魔族の力を得ようとも、自分が価値のないものと思おうとも。何があっても決して自分を見失うな。そして、哀しみに唾をかけろ!」

 

「い、痛い…」

 

シロナは涙を流しながら、自分の言葉でハッキリとそう呟いた。

それを確認したウスターは少しだけ微笑み、今度はシロナの後ろに居たサニーだけを宙高く蹴り上げた。シロナはその場に倒れ込んでしまう。

 

「お、おのれぇぇぇぇ!!ウチは最強のサイカニアだぞ!!」

 

叫び声をあげ、全身から白いオーラをバーナーのように激しく纏いながら勇むサニーであったが、ウスターの操るオーラの腕にあっさりと身体を掴まれ、その場に固定される。

 

「黙れ。最強は貴様ではない」

 

ウスターは両手を合わせて腰の横にまで引き、その手の中に七色に輝くエネルギー弾を作りだす。そして両手を前へ突き出すと、七色のエネルギーの柱が捩じれながらどこまでも伸びていく。

 

「『華光玉』!!」

 

それは手に掴まれたまま身動きできない状態のサニーに命中し、彼女を呑み込みながら光の筋となって空の彼方へ消えていく。周囲を覆っていた闇の空間は、本体であるサニーが消えた影響なのか消えていく。その時、ブンブンと無数の羽虫が飛んでいるような音が辺りを満たし、周囲の暗闇が歪んでゆく。

 

「あらまぁ…結局、サニーの技の全てがくだらない子供だましだったのね」

 

周囲を包んでいた闇の正体は、99%以上の純度の黒色を持った小型の羽虫のような姿の人造人間の集団が集まって壁を作っているに過ぎない他愛ないものだった。主であるサニーを見失った羽虫たちはその場から飛び立ち、黒い塊となって彼方へ逃げていく。

しかし、ウスターはそれに向かって一発の気功波を打ち込むと、羽虫の大群はその炸裂を受けて一斉に消滅し、その場で燃え尽きた。

 

「ふう」

 

ウスターは息をつき、腕を降ろす。

 

「まさか、あのサニーを倒してしまわれるなんて。貴女の方こそ素晴らしい力をお持ちで…」

 

ミルが近づいてきてそう言った。

 

「…いや、俺もヤツをこの世にひとかけらたりとも残さん気概で消し飛ばそうとしたが、できなかった。ヤツはこの地球の裏側までぶっ飛んでいっただけだ。死んでいない」

 

「それでも、凄いですよ。お名前を聞いても?」

 

アリーズがそう尋ねると、ウスターは少し間を置いてから答える。

 

「ただの、ウスターだ」

 

「はっ!?あれぇ、私寝てた!?」

 

その時、シロナはガバッと起き上がる。既に暴走状態は解除されており、何事もなかったように元に戻っている。

 

「いっ、いててて!なんかお腹がすごい痛いんだけど…」

 

「腹痛か?お前は父親と違って大して食べないようだが気を付けろ」

 

「…あっ!そういえば私、アナタに勝ったよね!?じゃあ私の過去を話してちょうだいよ!」

 

シロナはウスターに詰め寄るが、ウスターはシロナの後ろにいるミルやアリーズ、ヒロイシらを見てその事情を察する。

 

「すまんな…ああ言ったのは方便だ。お前と戦ってみたくて嘘をついた」

 

「そ、そんなぁ!?」

 

「まあまあシロナ。それよりも、私たちには重大な用があったはずですわよね?」

 

「あ、そうだった…人造人間たちの本拠地の場所を占ってもらうんだった」

 

「既に占っておるぞ」

 

振り返ると、そこには既に占いの水晶玉で結果を視透し終えていた占いババの姿があった。シロナ達がこぞって水晶玉を覗き込む。

 

「お前さんは勝負にも勝ち、1000万ゼニーも持って来させた。占わない理由などないわい。…さて、どれどれ…お主らの探し求める人造人間たちの首魁は常に世界中を移動しており、特定の場所に長く留まらないようじゃ。そして、現在駐在している場所は東方に位置する『パオズ山』じゃ!!」

 

水晶玉には、パオズ山と呼ばれている緑豊かな山が映し出されていた。

 

「ここに…スカールが…」

 

ザ…ザ…

 

だが、その時突然、水晶玉に映っていた景色が砂嵐のように荒れる。

 

「な、なんじゃ!」

 

占いババでさえ、これまでに一度も見た事がない現象に慌てている。

 

「ん?誰か、こっちを見ているな?」

 

次の瞬間、水晶玉の中から煙のように揺らいでいる女性の上半身が姿を現した。全員が驚いて息を呑み、固まっている。

 

「もう、消えな」

 

そしてその煙の女性は深く被った黒い三角帽の下から覗いた目でシロナ達を見渡してそう言い放つとその場でスパークを発しながら爆発し、シロナ達は後ろへ尻餅をついてしまう。咄嗟にウスターが庇ったおかげで幸いにも占いババも水晶玉も無傷だった。

 

「うむ…どういうわけか、人造人間たちもわしと同等の占い師を雇っているらしいのう…。わしが占いで位置を探っていたことを逆に知られてしまったわい」

 

「ですが、これで60年間手がかりすらなかったスカールの位置を特定できましたわ。後は任せている準備の方次第ですが…」

 

「ああ…そちらは問題なく進んでいる。確保した護衛軍の肉片サンプルを解析し、スカールの声に乗っている信号とほとんど同じ音声を作成することに成功した。あとは…」

 

ミルたちが口々に人造人間たちとの決戦に備えた会話を進めるが、シロナは全くそれが耳に入らなかった。何故なら、さっき水晶玉から現れた占い師の女性の姿が、記憶の隅に引っかかっていたからだ。あの女性の姿…さっき夢で現れた謎の金髪の女と似ているような気がする。

あれは誰だったか…思い出せない。すぐそこまで出かかっているのに、霧に包まれたようにハッキリしない。だが、かつての自分にとって大切な存在であったことはわかる。

 

 

…60年間も動かなかった歴史の歯車が動き出した。人造人間たちとの決戦の日は近い。

 

 

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