もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第262話 「スパイク・スラッシャー」

「オラァ~~~~!!」

 

シロナは渾身のパワーで拳を放って壁を破壊し、隣の部屋へ殴りこんだ。そこでは、やはりアリーズとミル、そしてバルバルスが互いの記憶兵器を発動させた状態で、今にも戦いを始めようと構えていた。

 

「シロナちゃん!?」

 

「シロナ!?あなたが何故ここに…」

 

突然壁を破って乱入してきたシロナに対して、バルバルスとミルは驚いている。

 

「こぉらァ~~!!みんなで争ってる場合じゃないでしょ!!」

 

シロナに続いてブラックも現れる。

 

「ブラック…貴方もわざわざ壁を壊してここに…?」

 

アリーズも驚いた様子で言った。シロナもブラックも、他の2つの部屋にそれぞれ入っていったはずだ。

 

「そうだ。愚行はやめてすぐに行くぞ」

 

「ほんとだよ、まさかミルやアリーズさんまで奴らの言いなりになるなんて思ってなかった」

 

「まあまあシロナちゃん、俺たちを責めないでおくれよ。残念だけど、俺たちは殺し合うほかなかった。生きてひとりだけをスカールのもとへ送り出すためにね。従うしかなかったんだ…百戦錬磨の俺たちだからこそわかる、とんでもない力量の人造人間に監視されてちゃあね…」

 

バルバルスがシロナの肩に手を置き、遠くの方を見ながらそう言った。

その時、シロナは気付いた。何やら、壁がヤツデの葉の形にベッコリと大きく凹んでいたのだ。

 

(とんでもない圧力で壁が歪んでる…あれは一体…?)

 

続いて、バルバルスが自分らが入って来たドアがある方を見たのでシロナもそちらを見ると、そこには3体の人造人間が佇んでいた。それは護衛軍の3体とは違う人造人間であるようだったが、先ほどの銃人間などとは全く異なる異様さを感じられる。

 

「うむ…奴ら…ようやく我々に…気付いたようだ…」

 

「やめろ、哀しくなる。気付いてもらえぬ方が良かった…その方が、奴らの哀しい未来を想像しなくて済む…」

 

「おぬしら、ルールを破ろうとすれば拙者らが成敗するぞ」

 

3体の人造人間はどれも和風を基調とした外見で、今まで戦ってきた人造人間に比べて物静かな雰囲気がある。

 

「なるほど、人造人間3号、4号、5号か。どれもレッドリボン軍の兵器庫で見た事がある。大方、軍の跡地からサルベージしたものを、スカールが改造したのか」

 

ブラックがそう言った。

3号は長い髪を後頭部で縛った侍のような姿をしていて、腰に刀の武器を下げている。4号は白装束に天狗のような面を被り、手には葉っぱの団扇を持っている。5号は黒装束を纏った忍者の姿で、腕が4本ある。

 

「ほら、分かるだろ?あの人造人間たちは滅茶苦茶つよい…言う事に逆らえば俺たち全員殺される。誰かが生きてスカールの元へたどり着くには、戦うしかなかったんだよ」

 

「…確かに、強そうだね」

 

シロナそう言いながらは前に出る。

 

「でも、もう私が来たから大丈夫…人造人間のくだらないゲームは全部私が引き受ける。皆は行ってよ、私が戦う」

 

シロナの身体から赤いオーラのような闘気があふれ出す。

 

(シロナ…たった少し見なかった間に、何か雰囲気が変わった…?)

 

そんなシロナの様子を見たミルはひそかにそう思った。

 

「あの子供が…護衛軍が言っていた…シロナとやらか…」

 

「どうやら一人で拙者らとやるようだな。では望み通り死んでもらおうか!」

 

侍の姿をした3号と、忍者の姿の5号が同時にシロナへ攻撃を仕掛ける。3号は刀を抜いてそれを振るい、5号はどこからかクナイや手裏剣を手にして斬りかかる。

 

「簡単にはいかないよ!」

 

シロナは拳を振るい、それに応戦する。硬質化した拳は3号の刀を逸らし、回し蹴りは5号の繰り出す無数の斬撃をまとめて薙ぎ払った。

 

「さぁ、今のうちだ!シロナくんが奴らの注意を引いている間に、3人は先へ進め!」

 

ブラックはハンマーを振り上げ、ドアを破壊しようとする。が、それを天狗の姿をした人造人間である4号は見逃さなかった。

 

「やめろ。そのような無駄な事をされると哀しくなる…」

 

ゴウオォッ!

 

4号は離れた位置から、手に持っていた葉団扇を大きく振るった。すると、ヤツデの葉の形をした特大の衝撃波が発生し、物凄い勢いでブラックらに迫ってくる。

 

「あれに気を付けてくださいまし!巻き込まれればいくら私たちと言えど、再起不能に…!」

 

「ぬう…!」

 

ブラックはそれを何とか避けた。外れた衝撃波は背後の壁に当たると、その壁をヤツデの形そのままに凹ませた。

 

「哀しきかな…ではもう一度…」

 

4号は再び衝撃波を放つ。

一方、シロナは3号が刀を振るうたびに発生するエネルギーの斬撃を回避するのに苦しんでいた。刀を一振りするだけで3本以上の斬撃がシロナに向かって襲い掛かり、避けようとするとその先に5号の手裏剣が投げられ、行く手を塞がれるからだ。

だが、横目で4号が葉団扇の衝撃波をブラックらに向けて放ったのを見ると、シロナは覚悟を決めたように目つきを変え、3号の斬撃に体を斬られるのを覚悟で5号へと突進を仕掛ける。

 

「なに…?」

 

そのまま、シロナは全身にクナイを刺されながらも5号にしがみつき、持ち上げたまま4号の衝撃波とブラックらの間に飛び込んだ。

 

ゴパン!

 

衝撃波の直撃を受けた5号はバラバラに砕け散り、それによりいくらか威力を緩和できたものの、シロナにも衝撃が届く。

 

「が…ァ…!」

 

「シロナちゃん!」

 

「大丈夫ですの!?」

 

アリーズとミラが心配の声をかけた。

シロナは口から血を吐きながらその場に倒れ込んだ。恐らく、肋骨は数本砕け、内蔵にも深刻なダメージが与えられてしまっただろう。

 

「わ、私よりも…はやくドアの向こうへ…」

 

ブラックはハンマーを振るってドアを破壊する。

 

「シロナの言う通りだ、ミルたちははやくドアの向こうへ進むんだ!」

 

「…行きましょう、ミル、バルバルス」

 

アリーズはシロナとブラックの意図をくみ取り、ミルとバルバルスを半ば強引に連れてドアの向こうへと進む。ミルは後ろを向き、ボロボロになったシロナを見て何かを思っていた。

 

「さて…オレはシロナひとりに任せるわけにはいかないな…」

 

《記憶兵器は、どうにもルールを破らなければ気が済まないらしいな。ならば、ここでシロナには確実に死んでもらおう》

 

部屋にアナウンスが響き、その瞬間、壁が破壊されてその奥から巨大なローラーのような機械が姿を現し、転がって来た。しかもそのローラーはただ回転して転がるだけではなく、一面に釘のような棘がびっしりと並んでおり、それに巻き込まれれば細切れの肉片に変えられてしまうだろう。

 

「ふむ…『スパイク・スラッシャー』の…お出ましか…。どうやら…護衛軍は我々ごと奴らを轢き潰すつもり…らしいな…」

 

「哀しい…実に哀しい。スカール様によって直接は造られていない我ら、所詮はその程度の扱い。我々は奴らを一刻も早く、スパイク・スラッシャーが到達するよりも先に始末してしまうほかないというわけか…哀しくなるな」

 

4号は葉団扇を振るい、シロナへ向けて衝撃波を飛ばした。

それを飛んでかわそうとするシロナだが、突然頭上に紫色の斬撃が通り、慌てて身をひるがえす。だが、もうひとつ飛んできていた斬撃の先端が肩に突き刺さり、シロナの身体は浮かんで持ち上げられる。その瞬間、シロナは団扇の衝撃波の目の前に放り出され、その直撃を受けた。

 

「ぐ…!」

 

シロナはそのまま吹っ飛ばされ、壁に激突してめり込んでしまう。

 

ゴウオォッ!

 

さらにもう一度衝撃波が放たれ、シロナの側頭部に命中。

 

ゴウッ…

 

そして、もう一発がシロナの右足にめり込み、潰してしまう。足先が変な方向にねじれて曲がり、大量の鮮血が周囲にまき散らされる。

シロナは声を挙げることもできず、ただ苦痛の表情を浮かべたまま床の上へ滑り落ちた。

 

「さすがだな…あれほど護衛軍に脅威としてみなされていたシロナが…ぺしゃんこだ…」

 

「当たり前のことだ。哀しい事に、我々はこの戦いの為にスカール様によって戦闘能力を大幅に強力にしていただいてる。かつての護衛軍に匹敵するのだぞ」

 

と、その時、3号と4号の目の前をブラックが通り過ぎていく。

 

「ブラックさん…?」

 

「シロナ、3分間だけ生き延びろ」

 

ブラックはシロナにそれだけ言い残すと、ハンマーで壁を壊し、その奥へと消える。

 

「なんと哀しきことよ…あの男は仲間を見捨てて行きおった」

 

「そうだな…。では…トドメは私が刺そう…」

 

3号は刀を振りかぶり、今にもシロナに斬りかかろうと構える。

 

「『紫電滅殺閃』」

 

そしてそれを思いきり振り下ろすと、巨大な三日月のような形状をした紫色の斬撃が真っすぐにシロナへと向かっていく。シロナは片足で立ちあがると、硬質化させた両手でそれを掴むようにして押さえ込む。

 

「く…ぐ…!負けるか…!!」

 

「…無駄な事を…。今、楽にしてやる…」

 

3号は紫電滅殺閃による斬撃をそのままに、一瞬でシロナの背後へ移動し、その首を断とうと刀を振るう。

しかし、刃が首に触れる寸前、シロナは三日月の斬撃の軌道を逸らし、同時に3号の刀を白刃取りの要領で受け止めた。その時、シロナは今の3号の行動の違和感に気付いた。

 

「ほう…素晴らしい反射能力だ…。が、それだけのこと…仲間にも愛想を尽かされ…置き去りにされたお前には…もはや勝ち目はない…」

 

「見捨てられた…?愛想を尽かされた…?面白い事を言いやがる…。どうせ私は、最後までひとりでやるつもりだったよ!!」

 

シロナはそう言いながら、刀をベキリとへし折った。カラン、と音と立てて折れた刃が転がり、3号は不意を突かれたように目を見開くが、すぐに元の表情に戻る。

 

「我が…刀を折るとは…。ぬ…?」

 

そしてシロナの顔を見ると、髪は赤く染まり、その顔は青いダイヤモンドのような結晶に覆われ、さながら兜を被っているかのようだった。魔法によって強化された怒り状態へ変身していたのだ。

 

「そのような姿になる人間は…初見なり…面白い…」

 

3号はそう言いながら、折れた刀を捨てた。

 

ザシュ…

 

しかし、次の瞬間には、シロナの全身に大きな切り傷がいくつも出来、鮮血が飛び散る。

なんと3号の全身のいたる部位から刀の切っ先が飛び出しており、血に濡れていた。3号は全身から刀を生やし、それと同時にシロナを斬りつけたのだ。

 

「げ…!」

 

シロナは膝をつき、額を床につける。

 

「今度こそ…トドメだ…」

 

3号は胸の真ん中から突き出た刀にエネルギーを充てんし、そこから斬撃を発射した。

 

「それを…待っていた!」

 

「なに…!?」

 

シロナもほとんど同時のタイミングで、背後から伸びる何か鞭のような物を高速で伸ばした。その瞬間、3号の胴体には何か生き物の脊椎のようなものが巻きついていた。咄嗟に体から生やした刀を操ってそれを切断しようとするが、硬いゴムのような質感によって阻まれてしまう。

 

「さっきの大技の斬撃を撃ったあと、もう一度同じ大技を撃てばいいのにわざわざ手持ちの刀で斬ろうとしてきた…お前は一度斬撃を撃てば、それが消えるまで次の斬撃は撃てないんだろ!そのにょきにょきした刀じゃ威力不足…私の硬質化した体を斬ることはできない!」

 

「ぐお…」

 

グンッ…

 

シロナがスパイク・スラッシャーの方へ向けて走り出すと、3号に巻きついていた鞭が全身の刀に絡んでより抜け出しにくくなる。そのまま走るシロナに成すすべなく引っ張られていく3号はもがこうとする。

その頭の中には、3号がかつて体験した記憶がよみがえっていた。

 

…そうだ、私は…誰か大切な者が死ぬ瞬間に…間に合わなかったのだ。本当に死なせたくない者を…死なせてしまった…それが誰だったかは、ひどく朧げだが…きっと、その者はこんな事をしている私を…許してはくれないだろう。

 

「…ここまでか…。結局…スカールの配下となっても…良きことなど無かったな…」

 

3号は最期に目を閉じ、諦めの言葉を漏らす。シロナは3号を投げ飛ばし、高速で回転するスパイク・スラッシャーに叩きつけた。無数の棘が3号の体をバキバキと凄まじい音を立てて砕き、そのまま転がるローラーはその残骸をぺしゃんこに潰す。

 

「私は哀しいぞ…3号を破壊してしまうとは」

 

だが、4号は未だ顕在している。4号はシロナの目の前に一瞬で接近し、体の自由が効かないシロナを葉団扇の衝撃波でぶっ飛ばす。

 

「こうなれば私もお前もスパイク・スラッシャーで死ぬ…哀しきことだが、先に死んでくれぬかシロナ…」

 

シロナは足からスパイク・スラッシャーに突っ込んでいく。

 

(くそ…私ももうだめだ…)

 

あの巨大な削岩機の回転に巻き込まれれば、いかに肉体を硬質化させたとてほとんど意味をなさないだろう。もちろん、かなりの不死性と再生力を持つシロナでもあれでグチャグチャにされれば流石に死んでしまう。

 

…だが

 

(あれ…?)

 

シロナがぶつかる直前、削岩機の回転がピタリと止まった。シロナは咄嗟に削岩機の棘が無い場所に片足を置き、そこを蹴って勢いよく飛び出す。

 

「何故だ…何故止まったのだ…!」

 

次の瞬間、シロナの放つ拳が4号の顔面から後頭部を貫き、頭部を完全に破壊した。

 

 

「うぐぐ…体が重い…」

 

シロナは血まみれの左半身を庇い、潰れた右足を引きずりながら、ブラックが消えていった壁の穴へと入る。顔に纏っていた結晶の兜は溶けるようにして消え、怒り状態も解除される。

 

「せめて、このデカいのが止まったワケくらいは…知りたい…」

 

そこで、シロナは驚愕の光景を見た。

恐らく、両側から削岩機の回転をコントロールしていた歯車が組み合わさった装置に、何か布切れが挟まっていた。それをたどっていくと、大きな歯車の回転に巻き込まれるようにして潰れているブラックの姿があった。

 

「何とか間に合ったか、シロナ。だから君は…生き延びた…」

 

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