もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第27話 「急げカカロット!五行山を目指して」

地霊殿を出て、三途の川を渡った先に存在するという五行山目指していよいよ出発したカカロット。庭に居た動物たちに軽く手を振り、急いで駆け出す。

 

「それにしてもさっきから誰か後ろを付けてないか?」

 

しかし、地霊殿を出ようとした時から感じていた、何者かの気配を感じて振り返った。だがそこには誰もいない。

おかしい…確かに、そこに誰かいるはずだ。まさか、透明人間?

そう思ったカカロットは目を閉じ、眉間にしわを寄せる。その何者かの体から発せられる僅かな気配、または妖気を感じ取ろうとしているのだ。

そして…

 

「掴んだ!」

 

カカロットはわずかな気配を感じ取った。その方向へ手を伸ばすと、何かに触れた。すかさずそれを掴む。

そこに居たのは、小さな少女だった。見たことが無い姿だ。その少女はポカンとした顔でこちらを見つめている。

 

「…誰だ?」

 

「カカロットは私の姿が見えるのね!」

 

「お前、何故俺の名前を知ってる?初対面のはずだぞ」

 

カカロットは目の前の少女に対してそう言った。よく見ると、服装があのさとりと似ており、彼女のそばに第三の目、サードアイが確認できる。何故かずっと閉じたままだが…。

 

「私はカカロットの事知ってるよ?ずっと前から見てたもん」

 

「ずっと前?いつからだ?」

 

「アナタがずっと小さいころから」

 

「何だと」

 

その言葉に、思わずカカロットは困惑した。

 

「だって、私が見ててもみんな気付かないんだもん。お姉ちゃんだって気付かないわ。だから私を見ていられるアナタは凄い人ね。今まで会った人の中でも私の気配を捉えられたのは、武泰斗って達人だけだもん」

 

「そんな奴は知らん。だが何故お前の気配はないのだ?」

 

「それは、私が心を閉ざしているからよ。心を無にする、つまり無意識…私の無意識は他人にまで影響するの。だから全く認識されずに行動できる…たとえ私が目の前に立っていても、気付けないのよ!」

 

こいしはさとりと同様にサトリ妖怪であるが、相手の心を読むためのサードアイを自ら閉ざしてしまっている。そのサードアイはサトリ妖怪にとっての心そのものでもあり、それを閉ざした結果、この無意識の能力に目覚めたのかもしれない。

 

「気味の悪い女だな…だがさとりに同族の家族がいたとは」

 

「地上に行くんでしょ?だったら私と一緒にどう?なんて」

 

「お前がか?…まあ別にいいだろう、付いてきても」

 

「ほんとに!?」

 

 

古明地さとりの妹、古明地こいしを加えた奇妙な旅が始まった。

ひとまず地上へ出たカカロットは、三途の川と呼ばれる場所を目指して走り出す。

 

「カカロットは飛べないの?」

 

「悪いな、お前と違って俺は走らにゃいかんのだ」

 

空を飛ぶことができないカカロットは、走って目的の場所へ向かう。こいしはその横を軽々と飛んでいく。

これでも一応無尽蔵のスタミナは持っているつもりなので、幻想郷を何週かしても少し疲れた程度で済ませられるはずだ。

 

「ここが三途の川ってやつか?」

 

二人は山を下ると見えてきた川を辿って獣道を進んでいくと、幅の広い大きな川が目の前に現れた。辺りは深い霧で覆われており、岸には大量の彼岸花が咲いている。なんの音もしない静かな場所で、生き物の声すら聞こえない。

 

「ここを渡るのか…」

 

カカロットがそう呟き、川に足を突っ込もうとした瞬間、後ろから誰かが話しかけてきた。

 

「お前さん、こんなところで何してんだい?」

 

そこに居たのは、物騒なほど大きな鎌を肩に背負った、赤髪の女性だった。背が高く、カカロットでさえもその背丈に圧倒されかけた。

 

「お前は誰だ?」

 

「アタイかい?アタイは小野塚小町。この三途の川で働いてる死神さ」

 

「へぇ、死神。ところで俺は五行山に住んでる太上老君って奴のところに行きたいんだが、お前何か知ってるか?この川を越えた先から行けるらしいんだがな」

 

小野塚小町はそれを聞くと、顎に手を当てて少し考えた。

 

「ア、アンタ死神って聞いても怖がらないんだね…。太上老君…ってアンニン様の事かい?何の用で?」

 

「ああ、超神酒って酒が欲しいんだ」

 

「超神酒…知らないねぇ。ま、いいさね、とりあえず川を渡らせてあげよう。そしたら四季映姫っていう閻魔様がいるから、その人に言ってみるといいよ」

 

「そうなのか」

 

カカロットは小町に連れられ、粗末な木の舟に乗せられた。小町が慣れた様子で舟をこいで行き、その後ろをこいしが付いてくる。

灰色の三途の川の水面には見た事もない不気味な姿をした魚が泳いでおり、後から聞けばこれは既に絶滅した魚の幽霊であるらしい。しばらくすると、霧の中に反対岸が見えてきた。

 

「ここを道なりに行きな。大丈夫、川を渡ったからって死にはしないさ。特別な方法で連れてきてやったからね。映姫さまだってそれに気付くはずさ」

 

そう言われて船から降りるカカロットだが、小町の言った意味がよくわかってない様子。恐らく、三途の川が死者が渡る川であるという事を知らないのだ。こいしはそれを知っているのかどうかは分からないが、何ともないような顔でカカロットについている。

 

「ま、感謝するぜ。さて、行くか」

 

カカロットは砂利の敷かれた道を歩いていこうと足を踏み出す。しかしその瞬間、突然目の前に何者かが現れ、胸に激突してしまう。

 

「いてて、誰だ!?」

 

「あらすみませんね、丁度暇になった時に不審な気配を感じたので来てみたのだけれど」

 

緑色の髪に、ごつい帽子とごつい衣服。スカートだけは可愛らしいが、威厳と風格漂う雰囲気を漂わせている。

 

「あ、四季様。この者がアンニン様に用があるそうで」

 

「アンニンに?」

 

この者、幻想郷の閻魔大王を務めている四季映姫・ヤマザナドゥ。四季映姫が本名で、ヤマザナドゥは役職に当たるらしい。

映姫は下でしりもちをついているカカロットとこいしを見下ろした。

 

「三人とも、そんなところで何を?」

 

(三人とも?)

 

小町は映姫の言葉を少し不思議に思うが、まあいいかとスルーする。

 

「アンタが映姫ってやつか?超神酒って酒を貰いに太上老君のところに行きたいんだ」

 

映姫はそれを聞くと、手に持っていた「浄玻璃の鏡」と呼ばれる手鏡を見た。そこにはカカロットの来歴やその目的の真意などが洗いざらい表示されており、それを見ると、納得するように頷いた。

 

「なるほど…星熊勇儀を元に戻すために。いいでしょう、付いてきなさい。目指している五行山は、魂の通り道です。私が裁く魂が閻魔宮殿にたどり着くには、五行山を通らなければならないのです。つい何日か前にアンニンと私はガーリックとかいう暴れん坊を地獄へ送ったばかりなので、疲れているかもしれませんが取り合ってくれるでしょう」

 

「あのガーリックをだと…?」

 

それを聞いたカカロットは驚愕した。あれほど強かったガーリックを押さえ込んでしまうとは、この四季映姫とアンニンとやらはよほど強い奴に違いない。

 

「この道を進めば五行山の門に付くはずです。では」

 

「ああ、この先にあるんだな…」

 

 

カカロットとこいしは改めて、五行山目指して歩きだした。二人の頭上を何か半透明な球体がたびたびかすめていき、これが死者の魂か、と思った。

 

「五行山の門だ…」

 

辿りついた五行山の門、「五行門」は、首を真上にあげてもてっぺんが見えない程うず高く、重そうだ。

 

「ふぬぬぬ…」

 

カカロットは門にしがみ付き、力の限り押そうとする。

 

「頑張ってー!」

 

「うるせぇ、お前も見てないで手伝え!!」

 

しかし、いくら押しても扉はビクともしないので、カカロットは仕方なく滅越拳を使おうと力をこめる。紫色のオーラを纏い、その力を倍増させた。

 

ギギギ…

 

結果、門はゆっくりとではあるが開き、五行山の全貌を見せた。目の前には大きな青紫色の岩山が聳え、その周囲には地面から突き出した尖った針のような岩が並んでいる。その岩には人間や動物の亡骸が突き刺さったまま放置されており、過去ここに訪れた生者が何度も命を落としたことがうかがえる。

だがカカロットは滅越拳を解くとそれを怖れることなく、聳える五行山を上っていく。空は真っ赤な雲に覆われ、もうここが地獄であるかのような雰囲気だ。空気も重く、死の気配が漂っている。

 

「辛気くせぇところだな…」

 

「…立ち去れ」

 

その時、上の方から不気味な声が聞こえてきた。しわがれた老人のような声は、幾重にも重なって聞こえる。

上を見上げると、弓を構え、鎧を着こんだ武者のような者たちの集団がこちらを見ていた。兜の隙間は真っ黒だが、目だけが燃えるように真っ赤に光っている。

 

「誰だお前らは!」

 

カカロットがそう叫んだ。すると、武者の集団は弓を構え、一斉に放った。無数の矢がカカロットとこいしを襲う。二人は弓矢を避け続けながら、どんどんと前へ進んでいく。

武者集団は地上へ降り、彼らの前に立ちふさがると、今度は腰から下げていた刀を取り、それで斬りかかる。

 

「お前は後ろへ下がってろ!」

 

カカロットはこいしを無理やり背後へ押しやると、向かってくる武者集団に殴りかかる。しかし、同時に斬りかかられ、中々攻めきることができない。

繰り出される刀の一撃を躱そうとするが、そのうちの一閃が彼の頬を掠った。傷が出来、血が流れているのが分かる。

 

(コイツら相当な腕だ…)

 

カカロットはそう思うと、にやりと笑い、腕を前に構える。

 

「ならば俺のとっておきを見せてやる…!」

 

構えた手に気が溜まる。その腕を腰の後ろまで引き、そこでさらに気を込めた。するとその手の中に七色の気弾が生成され、どんどんと大きくなっていく。

 

「華光玉─ッ!!」

 

そして、エネルギーは柱状の気功波となり、カカロットの手から放たれた。猛烈なエネルギーは容易に武者集団の体を包み込み、圧倒的な威力で彼らを消滅させた!

 

「…よし」

 

だがしかし…

 

「何だと?」

 

武者集団の体が崩れて煙になったかと思えば、その煙は雲のように膨れ上がり、バチバチと雷のようなものを放出した。その雷は一つ処へ集まっていき、大きく膨れ上がっていく。

雷の中から紅い一対の目が覗き、大きな翼、するどい爪を持った強靭な腕が出現する。カカロットたちの目の前で、青い体の巨大なドラゴンが姿を現した。

 

「グオオオオオ…!!」

 

「ええ!?」

 

「何だアイツは…!」

 

吠えるドラゴン。そして気が付けば、背後には先ほどの武者集団が復活しているではないか。

 

「行くぞこいし」

 

二人は武者集団の放つ矢を避けながら、道を前へと走っていく。しかし、前方からは例の恐ろしい巨大なドラゴンが道を塞ぐように立っており、そのままこちらへ向けて歩いてくるではないか。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

カカロットは2つほどのエネルギー弾を作り出し、それをドラゴンへ向けて投げつけた。

が、気弾はドラゴンの体に当たっても、何とかなった素振りは無い。それどころか余計にドラゴンを刺激してしまったようで、大声で雄叫びを上げると、こちらへ向かってくるスピードを速めた。

 

「そ、そんな」

 

その時、背後から迫る武者集団に混じって、何やら見覚えのある者が見える。

青緑色の肌に、尖った耳…大柄な体に、道着とマントを着た姿。

 

「ガーリック!?」

 

あのガーリックが恐ろしい形相を浮かべながらこちらへと走ってくる。

 

「あ、ありえん…ガーリックは死に、さっきは地獄へ送り込んだと言っていたはずだ…!」

 

そう言った瞬間、彼はあることに気付いた。自分の頬に刀でつけられた傷が、いつの間にか消えている。治ったのではない、最初からなかったかのように消えてしまったのだ。

 

(どういうことだ…?)

 

カカロットはこいしの顔を見た。こいしはドラゴンと武者集団を交互に見つめているが、カカロットがなぜそんなに驚いているのかが分かっていない様子。

 

(コイツにはガーリックが見えてない…?まさか…)

 

カカロットは背後から迫る武者集団と前方のドラゴンを見た。どちらも恐ろしい魑魅魍魎に違いない。

だが…

 

(そうか。分かったぜ…心を無に)

 

こいしがいて助かった、と思うと同時に、目を閉じる。

何故傷が消えたのか、こいしと俺で違う物が見ていたのは何故か。全ての答えは心にある。

 

「こいし、つかまれ」

 

カカロットにそう言われたこいしは、言われるがままにカカロットの肩に掴まった。

 

「華光玉!!」

 

そう叫ぶと、カカロットはもう一度華光玉を放った。だが今度は敵に向けてではなく、後ろを向きながら地面に向けて放った。すると反動で二人は前方のドラゴンの方へ向かっていくではないか。

 

「わっ、わっ!」

 

ドラゴンは大口を開き、二人をその口の中におさめた。

 

 

 

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