もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第275話 「出陣、最強ミュータント」

惑星M2の司令塔、さらにその最深部に位置する指令室にて、余裕あり気にメガキャノンΣとブロリーの戦いを眺めていたリルド将軍。初めは優勢だったスーパーΣだったが、突然ブロリーに押され始めた様子を見て、リルド将軍は拳を強く握りしめた。

その全身から黒い煙のような怒りのオーラがあふれ出し、周囲に控えていたマシンミュータント達が慌て始める。

 

「もういい。オレが出る」

 

スーパーΣの敗戦が濃厚だと悟ったリルド将軍は立ち上がり、指令室を後にした。戦いを映すモニターでは、スーパーΣがブロリーの一撃によってバラバラに破壊されていた。

 

 

 

「お前は…リルド…!?」

 

リルドの姿を見たブロリーは、思わずそう呟いた。

 

「いかにも、オレは惑星M2総司令…リルド将軍だ。お前のような宇宙のはぐれ者にもオレの名が知れ渡っていたとは光栄だ」

 

ブロリーの知るリルドは、この星を侵略者マシンミュータントから守るための戦いに明け暮れていた戦士だったはずだ。その時は自分とカカロットがリルドに協力してマシンミュータント側の勢力を一時的に大きく損壊させ、ひとまずの危機は脱したはず。

しかし、目の前に現れたリルドの気は独特なものに変質しており、先ほど戦ったスーパーΣと似ている。外見にもマシンに改造されたかのような部分があり、このリルドもマシンミュータントと化してしまっていることを物語っている。

 

「リルド…惑星コーグを守り切ることができなかったんだな…」

 

「何の事だ?オレはこの星のマシンミュータントを束ねている。そして、お前の興味深いパワーを研究するために生け捕りを命じられた」

 

「残念だ。俺は生け捕りになどならない」

 

「では、こちらも手荒な真似をせざるを得ないな」

 

リルドは全身に気を漲らせ、格闘の構えを取る。それを見たブロリーも、苦渋の表情で構える。

スーパーΣなど足元にも及んでいなかったと感じるほどの強い気だ。下手をすれば超サイヤ人になった程度では勝てないかもしれない。

 

「いくぞ!!」

 

リルドは飛び立ち、ブロリーに向かってタックルを繰り出す。それを押さえ込むブロリーだが、不意に放たれた蹴りを受けて後方へ吹っ飛ぶ。

そのまま連続ハンドスプリングで受け身を取り、手の平からエネルギー弾を発射する。が、リルドも不敵に笑いながら手をかざし、銀色に煌めくエネルギー弾を撃ってそれを相殺してゆく。

埒が明かないと思ったブロリーは両手を上に掲げ、ひときわ巨大なエネルギー弾を作り出し、投げ飛ばす。リルドは直立してそれを見たまま動こうとせず、そのまま直撃するかに思えたが、なんとリルドは大声と共に口から衝撃波を発し、ブロリーの攻撃を返したのだ。

 

「オオオッ!!」

 

耳に響く衝撃に顔をしかめながら、目の前に迫る自身の攻撃を躱す。しかし、その隙に背後へ接近していたリルドに気が付き、振り返るも、腹へ強烈な膝蹴りを叩きこまれ、さらに顔面に重いパンチを受けた。

さらにリルドの猛攻が続き、ブロリーはそれに成すすべなく晒されていく。だが、ブロリーはリルドの拳を掴んで防ぎ、こちらももう片腕でパンチを繰り出すが、リルドも同様にそれを掴んで受け止めた。ブロリーが力を込めてもビクともせず、逆にリルドは涼しい顔をしている。

 

「リルド…お前はコーグ王の末裔としてマシンミュータントと戦う戦士だったはずだ…それが何故、奴らの将軍などに寝返った!?」

 

「…もしや、オレがマシンミュータントに改造させる以前の事を言っているのか?」

 

「改造だと…?」

 

「確かに、オレは元はただの人間だったかもしれない…だがな、ドクター・ミュー様のおかげでマシンミュータントに生まれ変わったのだ。この体は素晴らしい…いつでも溢れんばかりのエネルギーに満ちていて、この星ではオレにできないことはない。オレは無敵のミュータントになったのだ!」

 

リルドは口を大きく開き、そこから気功波を吐き出す。ブロリーは顔を逸らしてそれを躱すが、耳の端が少し焼けた。

 

「それに比べて貴様ら人間は愚かな種族だ。か弱く、ひとりでは何もできない。我々マシンミュータントこそが、この宇宙を支配する一番の種族に相応しい!!」

 

そして、ブロリーと組み合った状態のまま少しジャンプして全身から気を放出し、上からブロリーを押し潰そうと仕掛ける。ブロリーの上体が後ろに反れ、踏ん張っている足元の地面がミシミシとクレーター状に凹んでゆく。

 

「どうした?貴様のパワーはこの程度か?」

 

黒目を中心に十字の線が入ったリルドの眼がブロリーを睨みつける。

 

「く…ぐッッ…!!」

 

ブロリーも、負けじと全身から靄のような緑色のオーラを放ち、額に血管が浮き出るほどに力を込める。ブロリーの怒り状態のパワーでは、リルドを打ち負かすことは大分無理があるようだった。…”怒り状態のパワー”では。

 

「…うおおおオオオオオッ!!」

 

雄叫びと共に、さらに気を放出するブロリー。黄色い瞳が緑色に変わり、纏っていたオーラはバーナーのように激しく噴き出す黄金になる。穏やかに逆立っていた黒髪はさらに逆立ち、オーラと同様にみるみるうちに黄金に変色してゆく。

ブロリーは徐々に起き上がり、逆にリルドの方が地に足を付けて押され始めた。リルドの上体が後ろへ反れ、今度はブロリーが上から押し込むような形に逆転する。

 

「ふっふっふ…」

 

しかし、超サイヤ人となったブロリーに押され始めても、リルドは余裕の笑みを崩さなかった。

 

「素晴らしいパワーだ、練り上げられている。お前もマシンミュータントとなって、共に全ギャラクシー征服に貢献しようではないか」

 

「全ギャラクシー征服だと?」

 

「我々マシンミュータントの最終目標だ。文字通り、銀河の全てをドクター・ミュー様の手中に収め、マシンミュータントが支配する素晴らしき世界へ変えるのだ」

 

「ミュー…そいつがお前たちの親玉か」

 

「その通り。偉大なるドクター・ミュー様のおかげで、俺はマシンミュータントとしての生を受けた」

 

次の瞬間、リルドは超サイヤ人ブロリーのパワーを上回り、彼を思いきり投げ飛ばした。ブロリーは地面に着地し、リルドを睨む。

 

「お前もミュー様の改造によって生まれ変わる。痛みも何もない…気が付けば、お前は全く別の高位存在になっているのだ」

 

今、ブロリーは理解した。このリルドは、以前のリルドではない。嫌々ながら改造されてしまったのか、それとも自ら降伏しその身を差し出したのかは分からないが、本人の言う通りマシンミュータントとして生まれ変わったこの男は、もはや倒すべき邪悪に染まっている。

ブロリーは一気にリルドを押し倒して地面の中にめり込ませ、距離を取る。その時、地面から飛び出していたリルドの腕が唐突に切り離され、ロケットのように炎を吹きながら真っすぐに飛んできた。それはブロリーの顔面に当たり、ロケットパンチはそのまま突き抜けていき、途中で方向を変えて再びブロリーに迫る。

それへの対応が遅れたブロリーは顔面をガッシリと掴まれ、そのまま建物に背中を叩きつけられる。建物は倒壊し、その残骸が次々とブロリーに降りかかる。そんな中、リルドはブロリーを掴んだままの腕を自分へ引き寄せ、元に戻した。

 

「ははっ」

 

しかし、ブロリーは笑うと、リルドの腹へ小さなエネルギー弾を押し付け、炸裂させた。それをもう一発、さらにもう一発。次々と炸裂するエネルギーには、さすがのリルドも苦し気に体をくの字に折り曲げた。

そしてたまらず手を離し、解放されたブロリーはリルドの横っ面を蹴り、距離を取った。

 

「ふふふ…」

 

笑ったのは、リルドも同じだった。今のブロリー以上のタフネスを発揮するリルドは、まったくダメージを受けていなかった。

 

「…悪く思うな」

 

ブロリーはそう呟くと、宙へ浮かび上がる。そしてビルの上に立ち、リルドを見下ろす。リルドは、ブロリーが何をしようとも負けるはずがない、という自信を現すかのように不敵な笑みを浮かべたまま何もしてこない。

ならば好機──…。

 

「フッ…!」

 

大きな興奮もせず、暴走も伴わず、ブロリーは驚くほど静かに「伝説の超サイヤ人」への変身を遂げた。以前、ドクター・ライチーとの戦いの最中に突如として完璧なコントロールに成功したその姿は、初めて変身した時と比べてやや細身、目は白目を剥くのではなく、興奮と暴走を解消したことを意味するように緑色の瞳が宿っている。しかし、その身から発せられる暴力的ともいえる強靭なオーラは、大したことはないと高を括っていたリルドの意表を突いた。

 

「何だと…!」

 

リルドがそう呟いた時には、既にブロリーの姿は視界から消えていた。直後に背中に強い衝撃を受け、目を大きく見開きながら前のめりによろめく。だがリルドも一撃で力尽きるようなやわな戦士ではない。振り返り様にブロリーの顔面に気功波を命中させ、その時に発生した爆炎と煙に乗じて姿を消した。

 

「…やはり大したパワーだ。お前ならば、オレ以上の強さを持つミュータントになれるはずだ」

 

リルドは少し離れた場所で、口の端から流れる血のような液体を拭き取りながらそう言った。

 

「しかし、このオレの進化した姿ほどでは…ないだろうがな」

 

さらにそう続けると、リルドはその場で気を高める姿勢を取る。そしてその全身に眠る圧倒的な気を開放した。

まるでリルドを中心に磁場が収束しているような錯覚を覚え、ブロリーは思わずその場で踏ん張ってしまう。

 

「はああああああああ…!!」

 

そしてブロリーは見た。先ほどバラバラに破壊したはずのメガキャノンΣたちの残骸とメカパーツがリルドに引き寄せられてこの場に集まってきているのを。それらはリルドの背中、頬、胸、足…いたる部位に張り付き、同化してその身体の中へ吸収されていく。

 

「『ハイパーメガリルド』!!」

 

リルドが開放した気が竜巻のようにうねり、天を突くドリルのように空高く昇ってゆく。やがてそれが治まった時、そこには進化を遂げたリルドの姿があった。

 

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