もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第277話 「壁を越えたその先の」

気が付くと、ブロリーは見知らぬ空間に居た。

そうだ…ここは前にも来た事がある。ライチーに半身を吹っ飛ばされたとき、自分はここにやって来た。知らない女の人に半分になった体を大猿の形に作り直され、目が覚めたら自分は現実の方で大猿になって暴れた後だった。その時は深く気にする余裕もなかったが、今回はあの時よりもずっと意識がハッキリしている。

 

「お前は一体誰なんだ?」

 

ブロリーは女性に対してそう問いかけた。女性は既にブロリーの潰された体を作り直し終えたようで、ただ彼の横でじっと立っているだけだ。

 

「…」

 

女性はブロリーの問いには答えない。が、その女性…いや、少女だろうか…雰囲気からして自分と同じサイヤ人であると推測できる。獣の毛皮で作った雑な衣服を着ていて、黒い髪の毛をしているし、その身体から感じる気はカカロットやパラガス、ターレスにも見られたサイヤ人特有の質感があったからだ。

 

「前もお前に助けてもらった事があったよな?何故お前は俺を助けてくれる?」

 

それでも、そのサイヤ人の少女は何も言わない。

 

「もしかして…サイヤ人の神とか…だったりするのか?」

 

もしそうだと仮定すれば、サイヤ人である自分の体を死に瀕した状態から回復させられる力も、未知なる力を与えてくれることにもまあまあ納得がいく。

しかし、そのサイヤ人の少女はゆっくりと首を横に振った。

 

「ははは…そんなわけはないよな。だったら、さっき俺の頭の中に聞こえてきた…”超サイヤ人ゴッド”とやらか?」

 

そう問うも、またも首を横に振る。

 

「まあ…もう何も用は無いんだったら、俺を元の場所に返してほしいんだが…」

 

少女の反応はない。

 

「俺の仲間が敵に捕まった…どうなってしまうか分からない。俺は一刻も早くソイツを助けるために元の場所へ戻らなくちゃいけないんだ」

 

ブロリーがそう言った瞬間、頭上からどデカい落雷が降ってきて、自分に直撃した。自分の体が空高く浮き上がっていくような感覚を覚え、実際に下を見ると今までいた地面がどんどん遠ざかっていく。

 

 

 

────────

 

 

 

カッ …

 

「何だ!?」

 

リルドは突然の出来事に驚きの声を漏らした。ブロリーをドリルで押し潰し、死なれる前に今の状態のまま金属板に変えてしまおうかと考えた矢先、突然空から雷が落ちてきたのだ。天気も悪くはないし、雷が発生するような条件も全く見られない。

その落雷はドリルの下に命中したかと思えば、突然地面が揺れ出した。周囲に大気を振るわせるような闘気が充満し、地面から石が浮かび上がってくる。

 

「ぬ…!」

 

地面に突き刺さっていた巨大なドリルが、リルドの意志に反してゆっくりと持ち上がってくる。それによって出来たドリルと地面の間には、ブロリーの足が見える。

リルドが持ち上がってくるドリルを押し返そうとするも敵わず、かと思えば次の瞬間、目の前で眩いばかりの閃光が炸裂した。

 

「ぬおおおッ…!?」

 

思わず目を逸らしてしまうリルド。同時に自分の巨大ドリルが粉々に砕かれたようで、その破片が自分の真横を飛んでゆく。

 

「まさか…ありえん!確かに貴様を潰した感触はあった…!!」

 

眼下には、傷ひとつ負わず、何事もなかったように立ち上がっているブロリーの姿があった。前よりもはち切れんばかりの筋肉が全身を覆い、その鋭い目は再び白目を剥き、髪の毛はさらに細かく逆立っており、強力になった黄金のオーラに加えてスパークが全身に弾けて舞っている。

ブロリーは黙ってリルドを睨み、向き直る。リルドはあれが決してこけおどしではないと分かり、身構えた瞬間、眼下に居たはずのブロリーの姿が消えた。そして、自身の脇腹に丸太のような腕から繰り出されるパンチが叩きこまれるまで、ブロリーが既に懐に潜り込んでいることに気付かなかったのだ。

 

「がああ…ア…!!」

 

悶絶するリルド。見開いた目は血走り、苦し気に歪んでいる。しかし、それでもリルドは痛みに耐え、反撃のエルボーを繰り出した。

 

ガシッ!

 

ブロリーはいとも簡単に片腕でそれを受け止める。感情の読めない目がリルドを睨んだ次の瞬間、ブロリーは再び消えた。

今度はリルドの頭上に素早く移動し、渾身の蹴りをその背中にヒットさせた。

リルドは体をくの字に仰け反らせながら成す術なく吹っ飛ばされ、地面に激突する。起き上がらせる暇も与えず、ブロリーは空中からリルドが落ちていった場所へエネルギー弾を撃ち込んだ。さらに一発、もう一発と連続して次々とエネルギー弾を着弾させる。息をつく間もない連撃が襲い掛かり、一発が炸裂するたびに大気が痺れるように震えている。

ブロリーは両腕の手の平を合わせ、それを腰の横で構える。手の平の間に緑色に輝く気の塊が生まれ、それは凝縮されて小さな気弾になる。そして両腕を一気に胸の前へ突き出し、小さな気弾に込めた気を開放すると同時に柱のようなエネルギー波として発射した。

それは黒煙を突っ切ってリルドがいるであろう場所へ直撃し、巨大なドーム状の爆発を引き起こした。宇宙から見てもハッキリと分かるほどの大きさで、それが治まった跡は隕石が衝突したかのようなクレーターが形成されていた。

ブロリーはその縁に降り立ち、下を覗く。

 

「…タフだな」

 

クレーターの中心で立っていたリルドを見て、ブロリーは小さく呟いた。しかし、リルドも尋常ではないダメージを受けた様子で、歯を食いしばって今にも倒れそうな体を無理やり立ち上がらせているようだった。取り込んだはずのメガキャノンΣたちのメカパーツはほとんどが剥がれ落ち、顔の下半分を覆っていたマスクも破れ、バラバラに散らばっている。

 

「ぐっ…があああッ!」

 

しかし、限界が訪れたリルドはその場でしゃがみ込み、頭を抱えてうずくまる。だがその原因は今のダメージだけではなさそうだった。

 

(あ、頭が…割れるように痛い…!)

 

その瞬間、リルドの脳裏には覚えのない記憶がフラッシュバックする。惑星M2らしき星の空を飛び回り、襲い掛かるマシンミュータントと戦う自分。そして、共に戦っている戦士たち…その中には、今戦っていたブロリーらしき者の姿もあった。

 

(まさか、今のヤツの攻撃で…このオレの脳回路に異常が生じた…?)

 

見開いたリルドの眼に走っていた十字のラインが点滅する。

しかし、それも数秒後には治まり、リルドは息を切らしながらも再び笑みを浮かべた。

 

「ふ…ふふふ…少し驚いたが、そう来なくてはオレとしても張り合いがない。今度こそ…貴様を叩きのめすッ!!」

 

今度はリルドからブロリーへ接近し、拳を振りかぶった。メガキャノンΣたちのパーツは剥がれてしまったが、それでもハイパーメガリルドとしてのパワーはほとんど落ちていない。

が、ブロリーは放たれた拳を冷静に見切り、腕でガードする。そしてカウンターパンチを繰り出し、リルドの頬へヒットさせた。

 

「ぐあ…!」

 

──この惑星コーグは貴様らには渡さん

 

芯まで響いてきた痛みと共に、何者かの言葉が頭の中に流れる。これは明らかに自分自身の記憶に基づくものだと、リルドは思った。

 

(なんだ今のは…!?)

 

「ぬおおおッ!!」

 

リルドは口を大きく開き、そこから銀色の特大エネルギー波を発射した。ブロリーはそれを身を翻して躱し、同時にサマーソルトを繰り出してリルドの顎を蹴り上げた。

 

──俺はリルド。かつてこの星を治めていたが失脚したコーグ王の子孫だ

 

「うっ…!」

 

(まただ…)

 

ブロリーがリルドへ向けて手をかざすと、リルドが見えない力で殴りつけられたかのように後方へ押しやられる。その先へ高速で回ったブロリーの腕から気功波が発射され、リルドはそれに晒されながら猛スピードで吹っ飛ばされ、遠くにある街の中に激突した。

ビル群が倒壊し、吹っ飛ばされたリルドに削られた地面が長く伸びている。やがてその勢いが止まり、ブロリーもそこへやってくる。リルドの姿を探し、追撃を加えようとするも、リルドの姿は見つからない。気を探って位置を特定しようとするも…

 

「妙だな…リルドの気がこの街全体から感じるような…?」

 

「ふははははは!困惑しているようだな、サイヤ人」

 

リルドの声は四方八方から同時に聞こえてくる。ブロリーが周囲を見渡すも、やはりリルドの姿はない。

次の瞬間、驚くべきことが起こった。周囲に立ち並んでいた銀色のビル群が形を変え、まるで溶けだすように歪んだかと思えば、銀色の津波となってブロリーに襲い掛かったのだ。

 

「何だ!?」

 

ブロリーは咄嗟に飛び上がり、津波を避ける。津波に巻き込まれた街は全体が銀色に変わり、湖のように波打つ。まるで街全体が液体金属と化してしまったようだ。

かと思えば、液体金属は再びビルや街灯の形を取り、元通りの街並みに戻る。

 

「どうなってる…」

 

ブロリーが困惑の声を漏らした時、街全体から感じられたリルドの気が一か所に集約しているのを感じ取った。その場所を目で追うと、ひとつのビルの屋上だった。

屋上の一角が波のように揺らぎ、そこから人型の物体が生え、波から分離する。その姿は、全身が銀色の光沢を放つ異様な金属に包まれていた。

 

「これがオレの真の姿、メタルリルドだ」

 

メタルリルドはブロリーに向かって右腕を振り上げる。すると、再び周囲のビル群が流体金属に代わり、柱のように伸びて空中に居るブロリーを狙う。

飛行しながら次々と伸びてくる金属の柱を避けるブロリー。狙いを外した金属の柱は地面になだれ込み、街の外にまで流れ出す。すると、その金属に触れた草木などの植物でさえも銀色の金属に変えられてしまい、元の流体金属と同化して流れてゆく。

その様子を見たブロリーは冷や汗をかいた。もしもあの金属に触ってしまえば、自分も同じ金属と化してしまうだろう。

 

「驚いたか?これがメタルリルドの力だ」

 

ブロリーの目の前に姿を現したリルド。咄嗟にエネルギー弾を撃ち込むブロリーだが、リルドは自身の身体を流体金属に変え、街と同化してしまう。再びリルドの気は周囲に分散された。

どこから攻撃が飛んでくるかと、周囲を見渡して警戒するブロリー。しかし、それをあざ笑うかのように、リルドはブロリーの近くにあった鉄塔の頂上に現れた。そちらを向くブロリーだが、その瞬間に背後へエネルギー波を受け、前へよろめいた。振り返ると、ふたり目のメタルリルドが遠くのビルの上に上半身のみを出現させていた。さらに左右を見ても、またひとり、さらにもうひとりのメタルリルドがこちらを向いて立っていた。街中に何体ものメタルリルドが出現し、ブロリーを見て笑っている。

 

「今のオレは、この惑星M2とリンクしている」

 

そう言葉を発したリルドへ向けて、ブロリーは気功波を命中させるが、メタルリルドは溶け出して地面と同化し、また現れる。

 

「この惑星そのものがオレであり、惑星中の全ての金属が、オレの肉体の一部なんだよ」

 

背後にあったビルが巨大なリルドの顔に変わり、驚くブロリーに向かって口からのエネルギー光線を吐き出す。距離を取って躱したブロリーはエネルギー弾でビルを破壊し、周りに立ち並んでいるメタルリルドを一体ずつ消し飛ばしてゆく。

 

「無駄だ無駄だ。オレを倒すにはこの惑星M2の金属を全て無くすしかない」

 

最後に残ったメタルリルドは、腕を組みながら街と同化して消える。惑星そのものと同化しているリルドを倒すには、この星を破壊するという手もあるが、それでもこの惑星に宿るエネルギー量は今のブロリーでもどうしようもできないだろう。

窮地に立たされたブロリーは”逃げる”という選択肢を取った。全ての気を逃亡のための飛行に回し、高速でこの場から去ろうとする。

 

しかし、甘かった。

 

金属の波は高く高く昇り、空を覆い尽くす。ドーム状に広がった金属の中に取り残されたブロリーは、成す術なく流体金属の高波に呑み込まれるのだった。

 

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