もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第278話 「それは生命の胎動たらん」

メタルリルドが操る流体金属の津波がブロリーを呑み込んだ。銀色の波はその場所を通過し、一通り流れ尽きると、元の街並みと合流する。そこにはさっきまでと何ら変わりない、惑星M2の景色が広がるだけになった。

波が通過した後の空中には、ブロリーの体を模した巨大な金属板が浮かんでおり、メタルリルドはそれをキャッチして持ち上げた。

 

「ふっふっふ…」

 

金属板に変化してしまったブロリーを脇に抱え、メタルリルドは司令塔へ帰還するのだった。

 

 

 

一方、場所は変わってドクター・ミューの研究施設。この施設は惑星M2とはまた別の小惑星に存在しており、惑星M2とは時空転送装置を通じて繋がっている。

 

「クッソォ──!!これを解きやがれ!!」

 

スカッシュは叫んだ。司令塔にてムッチーに捕らえられたスカッシュは、床から飛び出した柱に両手と両足を…逆さまの状態で縛り上げられていた。

 

「…何故、逆さまになっておるのだ…?」

 

コンピュータデスクの椅子に座ったドクター・ミューは困惑気味にそう言った。

 

「激しく抵抗されまして…やむを得ずあのような形に」

 

自身が生み出した鞭でスカッシュを縛った本人であるムッチーも静かにそう答える。

 

「まあいい。あの小娘はマシンミュータントに改造したところで大した戦士にはならん。あとでルードの餌にしてやろう。それよりもリルド将軍はまだ例のサイヤ人を送ってこないのか?」

 

 

 

「さあ、これをはやくミュー様の星へ転送するのだ!」

 

リルド将軍は、金属板にしたブロリーを時空転送機の台に設置した。それをカプセルが覆い、周りに仕える科学者タイプのマシンミュータントがスイッチを押すと、中の金属板は光を放ち、やがてパッと消えた。

 

「…頼んだぞ」

 

 

 

「ミュー様、来ました。サイヤ人の金属板です」

 

ミューの研究室に置かれている時空転送機に、リルドの元から送られてきたブロリーの金属板が届く。

 

「おお、でかしたぞリルド将軍!では早速、解析改造装置にセットするのだ!」

 

周りに控えていた科学者M2たちが一斉に仕事に取り掛かる。金属板を広い手術台の上にセットし、ベルトで固定する。ミューはコンピュータデスクの前に立つ。

すると、手術台の天井から様々な手術器具を装着したロボットアームが飛び出した。

 

「おいクソジジイ!ブロリーをどうするつもりだい!?」

 

縛り上げられているスカッシュがミューに対してそう叫ぶ。

 

「誰がクソジジイだ!…ゴホン、見ての通りだ、このサイヤ人の体を隅々まで調べ上げ、肉体のエネルギーを吸い取り、その残りカスを私に忠実なマシンミュータントに造りかえるのだ」

 

ミューはそう言いながらコンピュータを操作する。すると、天井から伸びるアームの手術器具が動き出し、電動メスや細長いドリルが金属板となったブロリーの頭や胸に迫っていく。

 

「はははは…サイヤ人の強大なパワーをどんどん感じるぞ!この時をどんなに待ちわびた事か…」

 

「や、やめろ!」

 

スカッシュが呼びかけるも、ミューは不気味な笑みを浮かべたまま、器具を動かし続ける。

 

「ええい、静かにしていろ!」

 

側にいたムッチーが片腕の鞭を伸ばし、スカッシュを引っ叩いた。

 

「アデッ!」

 

そんな事をやっている間にも、メスの切っ先がブロリーの胸に、電動ドリルの先が頭に刺さろうとどんどん近付いてくる。スカッシュは今すぐにでもやめさせようとしたいが、ムッチーの猛攻を受けているためどうすることもできない。

と、その時、時空転送機にあのリルド将軍の姿が現れた。リルドはミューに対して敬礼をすると、手術台に近づいてゆく。

 

「おお、リルドか。お前に送ってもらったサイヤ人を、これから解析するところだ」

 

「…ミュー様、申し訳ありませんが、この金属板の解析…少々待っていただけないでしょうか」

 

「馬鹿を言うな。貴重な研究材料を入手できるチャンスだぞ、みすみす手放すわけが無かろう。分かったら離れて見ておれ」

 

「そうでありますか…残念です」

 

リルドがそう言った、次の瞬間だった。リルドは拳を振り上げたかと思うと、それを一気に叩きおろし、目の前のブロリーの金属板にぶつけて粉々に砕いたのだった。

バラバラになった破片が周囲に散らばり、スカッシュやムッチー、部屋に居た他のマシンミュータント、そしてミューでさえも何が起きたのか理解できず、口を開けて固まっている。

 

「な…!」

 

「な…リ、リルド…キサマ、何を…!?」

 

「お、オイテメェ…!何してん…何しやがんだ…」

 

だが、リルドは何も言わない。

その時、またも時空転送機に何者かの姿が現れた。その姿は、正真正銘、たった今粉々にされたはずのブロリーだった。

 

「え…ブロリー!?」

 

「どうなっておるんだ…!」

 

ブロリーはゆっくりとリルドの元へ歩み寄り、ふたりは顔を見合わせると、小さく頷いた。

 

「ミュー様、今砕いた金属板は私が用意した偽物です。本物のサイヤ人はこの者です」

 

と、リルドが言った。

 

「なんだと…?まさかキサマ、この私を裏切るつもりか!?」

 

「裏切るなど…そのようなつもりはありません、私は…」

 

「ええい黙れ!ムッチーよ、サイヤ人と裏切り者を殺せ!お前は私の傑作のひとつだぞ!」

 

「は、はッ!」

 

ムッチーは両手の鞭を解放し、ブロリーに飛びかかる。鞭を振るって攻撃を繰り出すが、ブロリーは片手でそれを掴んで攻撃を防いだ。

 

「な…」

 

ブロリーはムッチーを睨みつけると一瞬で超サイヤ人に変身し、掴んだ鞭をグイッと自分の方へ引き寄せた。そして、勢いに負けて引っ張られてくるムッチーの顔面へ一発のパンチをお見舞いした。

ムッチーは吹っ飛ばされ、猛スピードで天井を突き破って遥か彼方へと消えていった。部屋に残されていたその他のマシンミュータントたちも、リルドが一睨みするだけで怯え、その場でへたり込んだ。

ムッチーがこの場から消えたおかげで拘束していた鞭が消え、解放されたスカッシュも何とか立ち上がる。

 

「助かったよブロリー…」

 

「ああ。無事でよかった」

 

「でもどういうことなんだ…?なんでブロリーがアイツと一緒に…」

 

しかし、その間にミューの姿は消えていた。ミューは部屋の壁伝いに取り付けられている非常階段を上り、恐らく外へ通じているであろう扉の方へ向かっていた。それに気付いたリルドはミューの行く手に先回りした。

 

「ぐぬぬ…!リルド、そこをどけ!」

 

「できません。ミュー様が行こうとしているのは、この秘密の部屋でしょう。貴方が隠していた秘密は…ここで明らかにしなければなりません」

 

「や、やめろ!それを開けるな…」

 

リルドはミュー言葉を聞かず、ドアの横についていたスイッチを押した。鉄の扉はゆっくりと開き、その奥に隠されていたドクター・ミューの秘密の全貌が明かされる。

…ドアの向こう側は広大な湖が広がっている。空は無数の星と銀河が瞬く不思議な空間となっていて、室外なのか室内なのか一見すると判断できない。ドアから湖の中央へ向けて橋が伸びていて、その中央には淡い光を放つ巨大な培養カプセルが設置されていた。

 

「お、おお…」

 

ミューはわなわなと震え、ふらついた足取りで橋を渡ってゆく。中央の培養カプセルの中に浮かぶ、頭の尖った胎児のような姿をした一体の生命体へ向かって。

 

「ベビーよ…すまない…完全体になる前の姿のお前を、このような穢れた者どもの目に晒してしまった…」

 

ベビーと呼ばれたその生命体は、カプセル内の装置と自身のヘソの部分をチューブで繋がれており、ドクン、ドクンとゆっくり胎動している。ミューはカプセルまでたどり着くと、そこあるコンピュータの画面を手で撫でる。

 

「何なんだ、コイツは…あれもマシンミュータントなのか…?」

 

ベビーを見たスカッシュがそう呟いた。

 

「そうだ。だが、あれはオレたちのようなこれまでのマシンミュータントとは全く違う製造方法で造られた、いわば”ネオ・マシンミュータント”なのだ」

 

リルドがそう言った。

 

「じゃあ、ブロリーもこれ知ってたって事なのか?」

 

「いいや、俺はさっき知った。リルドが操る金属の波に呑まれたとき、その中で…」

 

 

 

──時は数十分前、メタルリルドが操る流体金属の津波はブロリーを呑み込んだ。その中で金属に変えられてしまったかに思われたブロリーだが、ブロリーの周囲だけに球体状の空間が作られ、無事だった。もちろん、ブロリーがバリアなどを張って防いでいるわけではない。

 

「これは一体…?」

 

とその時、金属の壁の一部が分離し、それはメタルリルドに変化した。

 

「…ブロリー。黙ってオレの話を聞いてくれ」

 

そのリルドの雰囲気からは、マシンミュータント特有の不思議な気が薄れているように感じられた。

 

「リルド…お前、元に…」

 

「お前のパワーで殴られたおかげで、マシンミュータントに改造される前の脳神経が一部復活した。手短に済ませる、お前に頼みたいことがある」

 

「…言ってみてくれ」

 

そこで、リルドがブロリーに打ち明けた事とは一体…!?

 

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