もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第279話 「ネオ・マシンミュータント」

超サイヤ人2となったブロリーの強力なパワーで殴られることによって、マシンミュータントに改造される以前の脳神経が復活したリルドは、流体金属の中でブロリーと対話する。

 

「とある噂を耳にした。ドクター・ミュー様がすごいマシンミュータントを製造していると。オレはその真相を探るべく、ミュー様に黙って調査した。惑星M2との通信記録からミュー様の研究施設が構えられている星に思念だけを送り込み、プログラムを読んだ。すると、確かにそこには将来的に宇宙を破滅に導くほどの能力を秘めた生命体の情報が記録されていたのだ…」

 

それから、リルドから話を聞き終えたブロリーは、リルドの力で流体金属の中を移動させてもらい時空転送機のある指令室に潜伏、リルドは偽物の金属板を作り、指令室へ戻った。そこからは先ほどの通りである。

 

 

 

「普段は、このオレでさえ容易に立ち入りできないミュー様の研究施設。ここに来るには、ブロリーを研究材料として送ったどさくさに紛れる必要があった…」

 

「なるほど、そうだったのか…」

 

スカッシュは納得する。

 

「俺としてもそんな事は放置しておけない。破滅の芽は早いうちに摘んだ方がいい…」

 

「ミュー様は理解していない。あの生命体が完全体にまで進化してしまえばこの宇宙のあらゆるものを凌駕する危険な存在になる…もしそうなってしまえば、我々マシンミュータントも、そしてミュー様自身もいずれ滅ぼされてしまう事に」

 

リルドはそう言うと、ミューの元にまで近づき、その背後に立った。そして腕を伸ばし、培養装置のメインコンピュータを叩き壊した。

 

「なあッ…リ、リルド…何をするんだァ──ッ!!」

 

ミューは激怒した。

 

「こんな生命体が解き放たれてしまえば、いずれ我々はさんざん利用された挙句にゴミのように捨てられるでしょう。実際に、貴方はこの生命体の為にエネルギーを集めていた…その過程で、惑星コーグを侵略し、マシンミュータントの星に造りかえてしまった…宇宙にとってもよくない事です」

 

培養装置はどんどんとパワーを低下させ、カプセル内を照らしていた光も消え、やがて稼働音もしなくなった。エネルギーの供給を断たれたベビーの胎動もだんだんと小さくゆっくりになっていく。

 

「ベビー…死ぬな…!死ぬんじゃない!」

 

ミューはコンピュータの中に手を突っ込み、機能を修復しようと試みる。

 

「長年の研究を無駄にしてたまるか…ベビーよ、完全体となったお前の勇姿を思い描くのだ!かわいいお前が育ての親である私をゴミのように扱うなど、ありえないのだ!」

 

しかし、破壊されたコンピュータはうんともすんとも言わず、プログラムをいじろうとしてももう何も起こらない。

 

「もう私にはお前しかおらんのだ…頼む…生きてくれ…」

 

ミューは命の胎動を終わらせてゆくベビーのカプセルに縋りつき、座り込んだ。

 

「でもなんか…ちょっと可哀想かもな」

 

そんなミューの後ろ姿を見たスカッシュが呟いた。それはブロリーも思った事だが、それでも惑星コーグを侵略してマシンミュータントの星に変え、住民を滅ぼしたこの男に対しての報いだと思った。ブロリーは戦いが終わったことを悟り、超サイヤ人を解いた。

 

「ミュー様…この生命体がいなくとも、我々マシンミュータントの力は十分です。どうか…」

 

リルドがミューの肩に手を置き、そう言った…

瞬間だった。リルドは見てしまった…こちらに横を見せた状態で培養カプセルの中に浮かんでいたベビーが首だけをグルリと回し、目を見開いてこちらを見ているのを。

 

「なっ!」

 

遅れてブロリーとスカッシュも気付く。

ベビーは十字線の刻まれた双眼を見開き、じっとブロリーたちを見渡すと、突然動き出して両腕と両足を大きく広げる。培養液がボコボコと泡立ち、光を放つ。

 

「そうだ…そうだベビー!ぐんぐん育ち続けるのだ!」

 

ミューはカプセルに手を突き、中にいるベビーを見る。ベビーはカプセルの中で活発に動き回り、不完全だったその身体が急激に形を成していく。

 

「リルドの言う通り…並の気じゃないな…!」

 

どんどん膨れ上がるベビーの気を感じたブロリーはそう呟く。

次の瞬間、カプセルに大きなひびが入り、ベビーはキッとミューを睨みつけた。

 

「シャアアアア────!!」

 

そして甲高い奇声を上げ、カプセルを内側から破壊した。培養液と共に膨大な気がはじけ飛び、光の粒が花火のように全方位へ発射される。それは部屋の天井や壁を破壊し、崩壊させた。研究所の外の本来の空が顔を出し、陽光が射してくる。

その波動によってブロリーとスカッシュは吹っ飛ばされ、壁に激突してめり込んだ。リルドは腕を顔の前で交差させ、何とかその場で衝撃に耐えた。だが、それを至近距離でもろに喰らったミューは全身が傷ついてボロボロになり、その場で倒れ込んだ。

ベビーは破壊された培養装置の前で、まるで赤ん坊のように這いずっている。まだ不完全な状態なのか、後頭部や右腕の関節部からはコードのようなパーツが剥き出しになっている。顔を上げ、カバーグラスに覆われた目がリルドと合った。

 

「キエエ───!!」

 

再び奇声を上げ、全身から邪悪な紫色の気を発するベビー。

 

「すごい気だ…まだ成長しきっていないだろうに…!」

 

そのままベビーは立ち上がり、まだ全身の気を高め続ける。

 

「いいぞベビー…サイヤ人を地獄に叩きこんでやれ…!」

 

かろうじてまだ生きていたミューはベビーにそう命令した。ベビーはゆっくりと後ろを向き、スカッシュを見た。そしてもう一度向きを変え、今度はブロリーをまじまじと見つめる。

 

「サイ…ヤ…ジン…?」

 

キョトンとした顔で首を傾げ、口を開く。

 

「そうだ!そのサイヤ人もろとも、ここにいる連中を皆殺しにするんだ!」

 

「サイヤ…ジン…」

 

そしてにったりと不気味な笑みを浮かべ、全身に気を纏ったまま静かに空中へ浮かび上がる。ブロリーに向き直り、その邪悪な気の矛先を向けた。

 

「今だ!」

 

しかしその瞬間、ブロリーが声を上げて合図を出しながら一発の気功波をベビー目がけて撃ち出した。それを見たスカッシュもすかさず気弾を投げ飛ばし、リルドも口からエネルギー光線を発射した。

 

「キヤアア───!!」

 

さらに全身から気を開放し、攻撃を耐えようとするベビー。しかし、ブロリーの気功波が胸から背中を突き抜け、スカッシュの気弾を後頭部へ受けてバランスを崩し、最後にリルドの光線を受けた。その威力に耐えきれずに、ベビーは奇声を発しながらその肉体を木っ端みじんにされてしまった。

 

「ベビィィィィ!!」

 

叫ぶミューのすぐ近くにも肉片がパラパラと降り注ぐ。

 

「やっつけた…のか…?」

 

「サイヤ人共のパワーがこれほどまでだったとは…」

 

ミューはそう言いながら立ち上がると、着ていたジャケットの胸についていたボタンを押した。すると、培養装置があった場所の周りの水面から壁のようなものが伸びてくる。ミューはフラフラと歩きながらその内側へ入り、壁は装置を取り囲んでひとつの宇宙船となった。その瞬間、蠢く液状の塊が、ミューの足の傷口に入り込んでいった。

 

「ミューが逃げようとしてるぜ!」

 

しかし、そう言っている間に宇宙船は浮かび上がり、目にも止まらぬスピードで飛び立っていく。それを狙い撃とうと構えるブロリーだが、既に宇宙船は遥か彼方へ飛び去っており、もう見えなくなっていた。

 

「やめておいてくれ、ブロリー。既にオレがミュー様から離反した以上、あの方はもう…何もできないだろう」

 

「…そうか」

 

 

 

 

ミューの小惑星を飛び立った宇宙船は、あてもなく宇宙空間を彷徨う。ミューは宇宙船のコンピュータの中に腕を突っ込み、目的地の設定と新しい培養カプセルの用意に取り掛かる。

 

「おのれサイヤ人…そしてリルドめ…!まさかアイツまでも私を裏切るとは…。しかし今に見ておれ…このミュー様が本気を出せばものの数か月でベビーを再生することだってできる!…うぐっ!!」

 

しかし、そこまで言いかけたところでミューの体に異変が生じる。苦し気に首を押さえたかと思えばうずくまり、しばらくの間痙攣する。そしてそれが治まると、何事もなかったように立ち上がり、再び宇宙船の操作に入る。

 

「何がベビーだ」

 

そう声を出すミューだが、その声はミュー本人の物ではなかった。

 

「誰が主であるかも忘れた愚か者が。お前を産み出したのも、お前にマシンミュータントの製造方法をプログラムしたのも、全てこのオレなのだぞ」

 

いつの間にかミューの傷口から体内へ侵入していたベビーが、ミューの肉体を乗っ取っていたのだ。

 

「まだ使えそうなマシンミュータントは全て利用してやる。これからはオレ自身がオレを完成させる…”全宇宙ツフル化計画”を始動させるために…」

 

なんと恐るべき化け物、ベビー。マシンミュータントを創造したドクター・ミューでさえも、ベビーの被造物に過ぎなかった。

 

ミューの体に寄生してその肉体を乗っ取ったベビーは、大いなる野望を胸に思い描き、再び研究施設のある小惑星へと宇宙船を戻すのだった…。

 

 

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