もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第280話 「横行覇道パラサイト」

「クソ…今日はなんて日だ。気付いたらこんなところまでぶっ飛んじまってるとは…」

 

ブロリーに殴り飛ばされ、彼方まで吹っ飛ばされてしまったムッチーは、ミューの研究所から遠く離れた場所で、崩れた岩山の下敷きになっているところを自力で抜け出したところだった。

 

「もうじきルード教計画が始まれば、神官としてそっちに行けるはずだったんだがな。どうやらリルドが裏切ったようだし、オレはこれからどうすれば…」

 

そう文句をつくムッチーの耳に、空から何かが降りてくる音が聞こえた。上を見ると、ミューのものと思われる宇宙船がこちらに向けて降下してきていた。

 

「あれは…ミュー様か!?」

 

宇宙船はムッチーのすぐ近くに着陸し、入り口の扉が開いた。そこから出てきたミューはおぼつかない足取りで階段を下り、ムッチーの元へ歩み寄ってくる。その姿はボロボロで、全身に怪我を負っていた。

 

「ミュー様、どうされたのですか?大丈夫ですか?」

 

「問題ない…」

 

ムッチーは心の中で考えていた。最強のマシンミュータントと呼ばれていたリルドが離反し、この有様な状態の創造主の傍に居ても、いずれはあの金髪の侵入者やリルドにやられてしまうのが関の山だ、と。だったら、これ以上面倒くさくなる前に今この瞬間にでもミューを叩き殺してやったほうがいいのではないか。

 

「と、考えてるんだろ?ムッチー」

 

「え…!?」

 

ムッチーの考えを看破したミューの声は、彼が知っているミューのものではなかった。小気味悪い冷酷な囁き声はムッチーの事を何でもお見通しであるかのようだ。

次の瞬間、ミューの胸を内側から突き破って、銀色の液体のようなものが飛び出してきた。それは驚いて固まっているムッチーの口に入り込み、その身体の支配権を奪い取った。

 

「…くっくっく…なかなかのパワーだ」

 

「ベ…ベビー…」

 

まだ息のあるミューが、虚空に手を伸ばしながら掠れた声で呟く。

ベビーに肉体を乗っ取られたムッチーは不敵な笑みを浮かべながら、仰向けに倒れ込んだミューの残骸を見下ろした。そして鞭に変えた左腕を思い切り振り下ろし、その一撃でミューの頭部を潰して破壊した!

 

「お前にベビーと呼ばれるたび、どんなにはらわたが煮えくり返ったか…!」

 

ミューの亡骸は完全に沈黙し、二度と動くことは無かった。

 

「サイヤ人…そして裏切り者め…生きて帰れると思うなよ」

 

 

 

 

「お前は本当にこのままで大丈夫なのか?」

 

惑星M2に戻ったブロリーたちは、マシンミュータントの司令塔で宇宙船のメンテナンスをしてもらい、いよいよ星を発とうとしていた。エンジンをかけた宇宙船の前で、ブロリーとスカッシュはリルドと対話する。

 

「ああ…マシンミュータントになったオレの体も、いなくなった星の住民も元には戻らないが…まあそれでもいいだろう。支配者が消えた今、この星はマシンミュータントが自由に暮らす星とする」

 

すっかり毒の抜けた様子のリルドはそう返した。

 

「そうか…」

 

「オレは昔も今も、この星の住民だからな」

 

「じゃあな!」

 

ブロリーはリルドに背を向け、宇宙船へ乗り込もうとする。

その瞬間だった。どこからか飛んできたエネルギー弾が宇宙船へ命中し、爆発を起こした。

 

「なっ…!?」

 

宇宙船は炎上し、そのままひっくり返った。予期せぬ何者かの襲撃に、リルドも驚いている。攻撃が飛んできた方向を見ても、既にそこには何もいない。

 

「…スカッシュ、お前は宇宙船の後ろに隠れてろ」

 

「あ、ああ…」

 

スカッシュは宇宙船の影に隠れた。

ブロリーとリルドは周囲を警戒しながら様子を探る。気は感じられない…が、どこかに何かが潜んでいるという感覚だけはひしひしと伝わってきている。

その予感を裏付けるかのように、足元の金属の地面が歪み、その中から何者かが高速で飛び出してきた。両腕の鞭を振り回しながらリルドに飛びかかり、その顔面へ叩きつけた。

 

「ぐ…!貴様はムッチー…!」

 

「はああああッ!」

 

ブロリーは超サイヤ人に変身し、エネルギー波を撃ち込む。しかし、ムッチーは鞭でそれをはじき返し、一瞬にして姿を消した。恐らく、マシンミュータントの力を使って地面の金属と同化したのだ。

 

「ふははははは…!この星から生かしては帰さんぞ…」

 

地中から冷酷な声が響く。

 

「この声は…まさか、ベビー…!?生きていたのか!」

 

ブロリーが声の主がムッチーではなくベビーであると気付く。

 

「その通り。くっくっく…オレは細胞ひとつでも残っていればいくらでも体を再生できるんだよ」

 

次の瞬間、地面が割れ、その間からムッチー…いや、ムッチーの肉体を奪ったベビーが飛び出してきた。ベビーは鞭を伸ばし、それをブロリーの腕に巻きつけた。しまった、と焦りの表情を浮かべるブロリーの全身を鞭で雁字搦めにし、持ち上げて司令塔の壁に叩きつける。

 

「ぐはァッ…!」

 

背後の壁がクレーター状に凹み、ブロリーは口から血を吐いた。

 

「くはははははは…」

 

そのままベビーはブロリーに巻きつけた鞭の能力を使い、その気を吸い取ってゆく。急激にパワーを失ったブロリーは超サイヤ人の状態を維持できなくなり、元の姿に戻ってしまう。

 

「ブロリーから手を離せ!」

 

隠れていたスカッシュも我慢できなくなり、ベビーに飛びかかってその手にエネルギー弾を作り、投げ飛ばそうとする。

が、ムッチーの頭部の先端からも鞭が伸び、スカッシュを弾き飛ばした。気を失いながらぶっ飛ばされるも、リルドがそれを受け止め、地面に静かに寝かせた。リルドはゆっくりとベビーに近寄っていく。

 

「力が出ない…」

 

「どうだサイヤ人…このオレの長年の恨み、粉々に喰らうがいい…」

 

ベビーはブロリーに向けてそう言い放つ。ブロリーは朦朧としてくる意識の中で疑問を抱く。たかだか1日ほど前に生まれたばかりの生命体から、長年の恨みなどという言葉が出てくるのはおかしい、と。

しかしそんな矢先、ムッチーは側頭部を思い切り殴られ、ぶっ飛んだ。ブロリーを縛っていた鞭は途中で千切れたものの、ブロリー自身は立ち上がることができずその場に倒れ込む。

 

「オレの戦友を痛めつけるのは、このリルドが許さん」

 

リルドは地面に滑りこんだベビーの顔面を掴み、持ち上げてからそう言った。恐ろしい形相にリルドに睨まれたムッチーの顔が恐怖に歪むが、すぐにベビーの余裕あり気にニヤついた顔に戻る。

 

「フ…オレがプログラムしたミューに造られただけの分際で何を粋がっている?お前も、このオレの手駒のひとつにすぎなかったんだよ」

 

「なんだと?」

 

「そしてコイツも、オレがミューに造らせた手駒のひとつだ」

 

ベビーがそう言うと、空の上から何かが降ってくる。リルドが上を見上げていると、空に見えていた点がどんどん近付いてくる。そして、その物体の正体が見えた瞬間、それはリルドの目の前の地面に激突した。

かなりの重量を持っていたようで、地面がクレーター状に凹むと同時に揺らぎ、司令塔が大きく傾いた。突風と土煙が周囲を覆い、リルドも何とかそれに耐える。それが治まり、前を向いた瞬間…

 

「ブォォォォォ…」

 

地響きのようにくぐもった不気味な唸り声が響いたかと思うと、クレーターの中から薄い黄緑色をした巨大な腕が伸び、リルドに向かって手の平を振り下ろした。

慌てて飛びのいてそれを回避するリルド。今まで立っていた場所へ目を向けると、そこには巨大な手形が付いた。

 

「なんだコイツは…」

 

クレーターの底から這い上がるようにして、巨大な”人形”がその全貌を現す。全体的に黄緑色をしたボディに黒い模様を持った頭でっかちな怪物。その体躯には不釣り合いな短い手足があり、頭部からは一対の小さな角も見える。その姿はさながら人間の赤ん坊のようで、不気味なようで愛嬌も感じられる不思議な姿だった。

 

「バォォォォォ…」

 

「ソイツの名前は『ルード』、いくらキサマでも一筋縄ではいかないぞ」

 

その時、ルードと呼ばれた巨大マシンミュータントはその全身を蒸気が湧くほど赤熱させ、パワーアップする。呆けていたようにも見えた表情は怒りを体現した恐ろしい形相へ変わる。

ルードは、リルドを踏み潰そうと足を上げて振り下ろした。リルドはそれを飛んで躱すも、ルードのビンタを受け、遠くの建物の中に突っ込んだ。

 

「ククク…さて、オレはこの星のマシンミュータント共のパワーを頂戴するとしようか」

 

ルードがリルドに追撃を加えようと、吹っ飛んでいった方向へ歩き出したのを確認すると、ベビーは司令塔の中へ入ってゆくのだった。

一方、ビルの残骸に埋もれたリルドは、ダメージを受けながらも驚くほど冷静にルードの足音を聞いていた。次の瞬間、ルードの手が瓦礫ごとリルドを空中へ跳ね上がる。そして大口を開け、そこから深紅のエネルギー光線を発射した。

深紅の光の柱は一直線にリルドへと向かっていき、なんとその頭部の左側から左上半身にかけてを焼き削ってしまったのだった。リルドは地面に落下し、力なく横たわる。

 

「ゴォォォォォォォ!!」

 

ルードは地響きのような雄叫びを上げ、両腕を天へ突きあげる。その様子を見たリルドは、静かに目を閉じた。

 

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