もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第285話 「Killer Queen」

今、シロナは見知らぬ扉の前に立っている。この古い木造のドアは一体何のドアだったか…思い出すことはできないが、それでもシロナはドアの前に立っていた。

 

「シロナ」

 

その向こうから聞こえるのは、聞くと懐かしい気持ちになる女の人の声。

 

「誰?」

 

シロナはそう問うが、返事は聞こえてこない。代わりに、ドアの向こうの声はシロナにこう語りかけるのだった。

 

「こっちへいらっしゃい」

 

ドアののぞき穴の向こうには、綺麗な黒髪に、赤いリボンをつけた女の人がいて、こちらをじっと見ている。

声に導かれるままに、シロナはゆっくりとそのドアに近づいてゆく。そして、ノブに手をかけ、回そうとした瞬間…横から、また別の誰かの手がシロナの腕を掴んで止める。

 

「シロナ、絶対に開けちゃだめだ」

 

 

 

「ハァッ…!?」

 

シロナは目を覚ました。白い天井に、灯された灯り…横を向くと、そこには正座して自分の顔を見ていたミルの姿があった。

 

「大丈夫?ずいぶんうなされておりましたけど」

 

「…平気。ありがとう…助かったわ」

 

シロナは、ミルによって幻想郷から連れ出され、神の宮殿に戻ってきていた。

 

「礼には及びません事よ。それより、何故さっさとスカールを倒してしまいませんでしたの?」

 

「ごめん…」

 

「責めているんじゃありませんのよ。ただ、見ていればどうにも貴女はあの人造人間を攻撃するのを渋っているように見えましたので…。自分が倒すと言ったのですから、討伐は貴女に任せておりますのよ」

 

「うん…なんでだろう。でも安心して…次こそは必ず…」

 

そう言いながら顔をしかめるシロナ。ミルにはどうもその時のシロナの表情が苦しんでいるように見えた。もちろん頭痛や体調の不良にではない、自分の心の苦しみに耐えているように見えたのだ。

 

 

 

 

──────────

 

 

 

「おや?」

 

ハーレクインが気が付いた時には、既に自分は今までと違う場所に居た。灰色の床と天井、そして壁一面には不気味な配線やパイプが張り巡らされており、まるで生き物の体内にでもいるような気分になる。

 

「ねぇ」

 

ハーレクインはそう言いながら後ろを振り返る。すると、そこには3人組が片膝を立てて座り、控えていた。この者たちは、なんとあのパオズ山での決戦でシロナと記憶兵器たちによって倒されたはずのスカール直属護衛軍の3体だった。だがその表情は沈んでおり、じっとしたまま何も言葉を発さない。

 

「なんでウチはここに呼ばれた?ウィロー様のご意志?」

 

「それは我らにもわからぬ」

 

エースが静かにそう返した。

 

「なら、他の”四像”はどこっスか?」

 

「ブラックとクウザンは既にお越しよ」

 

今度はアールが答えた。ハーレクインが遠くの方を見ると、そこにはかつて『ハンマー』の記憶兵器として戦い、シロナを生かすために死んだはずのブラック、そしてスパイク・スラッシャーという機械に巻き込まれて破壊されたはずの人造人間3号が立っていた。ブラックは全身に縫い目のような傷ができており、「クウザン」と名前を改めた様子の人造人間3号は、姿だけは全く変わっていない。

 

「じゃあレイムは…」

 

「私は既にここにいます」

 

ハーレクインが声のする方を見ると、レイムという名の女が、少し離れた場所にあるそこだけ畳が敷かれた一角の上に正座して座っていた。静かに啜っていたお茶の湯飲みを置き、群青色の巫女服と髪飾りを身にまとっているが、自分よりも前方にいるため、その顔はよく見えない。

 

「おお、レイム殿!既にいらしてたんですかい。ウチはてっきりアンタが死んじまったものかと…」

 

「静かに。ウィロー様がお見えですよ」

 

その場の全員がそのセリフにハッとし、レイム以外の三人が汗をかきながら上を見上げる。すると、壁のちょっとしたでっぱりの上にいかにもな姿のロボットが佇んでいた。そのロボットは手に持っていたリモコンを操作し、壁に大きなスクリーンを表示させる。

 

「突然の招集に驚かせてしまったか?」

 

スクリーンには、大柄な体格をしたひとりの若い男性が映っており、こちらを見ていた。もみあげと襟足の長い黒髪で、その鋭い鷹のような目はハーレクインやレイムたちを牽制するかのごとく睨みつけている。

 

「いいえ…滅相もございません、ウィロー様」

 

レイムが深く頭を下げながらそう言った。

 

「ならいい。にして…今回、わしがお前たちを呼び寄せたのは他でもない。もうお前たちは用済みだという事を伝えようと思ってな」

 

ウィローがそう言った瞬間、その場が絶望による沈黙に支配される。

 

「心配するな…何も処分してしまうという話ではない。お前たちは何年もわしによく仕えてきてくれた…おかげで、わしの計画はあと数歩といったところで完遂される。よって、もう貴様らは自由だ。”今のわし”の支配からは解放される…”新しいわし”が現れるまで、貴様らは自由だ」

 

「なるほど…つまりもう一人出てくるウィロー様に従えって事っすね?それまでは自由時間だと」

 

「ハーレクイン…お前はバカだが言われたことはこなすから助かった。ブラック…正直言ってわしはお前を信用していないが…いろいろな情報の提供、感謝する。クウザン…お前の仕事はこれからだ、特別強力な体にしてやったからな。そしてレイムよ…お前だけはまず言われたことをやってもらう。分かっておるな」

 

「はい…既に心得ています」

 

「それだけだ。では」

 

そう言うと、先ほどのロボットがスクリーンを消し、そのままどこかへと消えていく。

 

「やれやれ、やっと自由時間っすか…。ま、新しいウィロー様とやらが弱かったら、ウチらで始末してやってもいいっすね。なんせ今のウィロー様はウチらの手の届かないところに居るんすから」

 

ハーレクインが首を回しながらそう言う。

 

「口を慎め…ハーレクイン…。ウィロー様は我々を信頼している…が故に…自由時間を与えた…。信頼されたのなら…それ相応の振る舞いで以て応えるべき…」

 

それに対してクウザンが警告した。

 

「別にいいっしょ、御堅いことは抜きにして~。ねぇお三方さん?」

 

「ええ…そうだねハーレクイン」

 

が、サニーがそう返した瞬間、サニーの体が突然後方へ吹っ飛んだ。そしてその先にある壁に勢いよく激突し、めり込んで止まった。サニーの首はもげかかっており、彼女を蹴り飛ばしたハーレクインはにやにやと笑いながら足を降ろした。

 

「…何をするキサマ」

 

そう言いながらエースが掴みかかろうとするが、次の瞬間にエースの両腕がもぎ取られた。何をする暇もなく地面に叩きつけられ、頬を床にくっつける。

 

「前にも敬語を使えと言わなかったっけ?」

 

「…何ですって?人造人間2号」

 

アールがハーレクインに対してそう言った。

 

「その名で呼ぶなよ。もう一度言うぞ、ウチには敬語を使え」

 

「…わかったわよ」

 

しかし次の瞬間、ハーレクインはアールを蹴り飛ばした。

 

「言葉遣いがなってないなぁ、直せよ。それと、サイカニア…お前はもう自分の事”ウチ”って呼ぶの禁止な。キャラが被っててムカつくから」

 

「はい…ハーレクイン様」

 

「…いいや、やっぱもう一発殴っとくか!」

 

そう言いながら、ハーレクインはサニーに接近し、拳を大きく振りかぶって殴りかかる。

…しかし、ハーレクインのパンチは空ぶった。

 

ポシ…

 

「あ…?」

 

見ると、その手首から先がごっそり吹き飛ばされて消えていた。

 

「ハーレクイン…アンタはちょっと度が過ぎるわよ」

 

いつの間にかハーレクインの背後に接近していたレイム。さらに、次の瞬間にハーレクインの全身に拳サイズの穴がいくつも空き、その身体が見えない何かの力によって持ち上げられる。

 

「何も私は人造人間どもの為に言ってるんじゃない…純粋な血の通ってない傀儡共の争いなんか間近で見てても不快なだけだから言ってるのよ」

 

「わ、わかったッスから…降ろして…くだせぇよ…!」

 

レイムはかけていた力を解き、解放されたハーレクインは床に膝をついて崩れ落ちる。

 

「ハーレクイン。私の言いたいことは、わかった?」

 

レイムの方が頭が高く、ハーレクインを見下せる位置に立っているはずなのに、何故か下から圧迫するように睨め上げてくる双眼に捉えられたハーレクインはこれまでに感じた事のないような恐怖と絶望を覚え、このレイムという存在は自分がどうやっても勝てないような別次元の存在であり、同時に言う事に逆らった瞬間自分には破壊されるよりも恐ろしい結末が訪れるであろうことを理解した。

 

「わ、わかったッス…」

 

「他の連中もよく聞いておきなさい。どんな自由時間にも節度とルールは存在するものよ。次のウィローが現れるまでは私がアンタたちを支配する…いいわね。異論のある者は前に来なさい」

 

レイムがそう言うと、クウザンが前に進み出て、腰に下げていた刀の柄に手をかけた。

 

「ウィロー様の目が届かなくなった途端に…そのような幼稚な狼藉…。見過ごすわけにはいかぬ…」

 

「あらそう」

 

しばらくの沈黙が続いたのち、クウザンは一瞬で刀を抜き、虚空に向かって振るった。刀からエネルギーによって具現化した斬撃が発生し、それはレイムに向かって飛んでいく。

しかし、レイムが攻撃に対して目から念力を送った瞬間、その斬撃は弾けるようにしてかき消された。目を見開いて驚くクウザンだが、次の瞬間に腹部に強烈な衝撃を受け、口の端から油を垂らした。

 

「ぐふ…」

 

クウザンの腹は大きく凹んでおり、足がガクガクと震え出し、やがてその場に倒れ込んでしまう。クウザンはハーレクインと同様にレイムの絶望的な圧力に屈服し、それ以上動くことができなかった。

 

「ブラック…アンタは?」

 

「オレはいい」

 

ブラックもレイムの言い分に了承する。

 

「だったら、ブラック…護衛軍のポンコツどもと、この2匹を直してやりなさい」

 

「は…」

 

それだけ言うと、レイムの姿は一瞬でこの場から消えた。

ブラックは外していた帽子をかぶりなおすと、損傷させられた護衛軍の元へ近づくが、一瞥しただけでその横を素通りしていく。

 

「誰が、貴様らなど直すものか」

 

その様子を見たクウザンもあざ笑う。

 

「かつて…最強の人造人間ともいわれた…護衛軍が…哀れだな…」

 

「お前ら全員、ウチがあの燃え尽きる寸前のパオズ山の居城から助けてやったことを忘れないようにな」

 

ハーレクインもそう言い残し、ブラックは二体の人造人間を肩に担いだまま、その姿は消えた。その場に残された護衛軍のサニー、アール、エースの三体は互いに手を取り合いながら立ち上がるしかなかった。

 

 




今回の戦闘力は無しで。後に紹介します。
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