もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第288話 「イミテーション・ソウル」

ガキィン!

 

シロナの振り下ろした拳が、メタルボディのロボットの装甲に命中する。火花が閃光の如く飛び散り、大きな金属音が鳴り響き、思わず耳を覆いたくなる。

しかし、その巨大なロボットはハサミ状の腕を振り上げ、シロナを弾き飛ばした。が、シロナは胸の前で両腕をクロスさせてガードしており、勢いのままに吹っ飛ばされるが地面にぶつかる瞬間に受け身を取って再び地面を蹴り、もう一度ロボットへ向かっていく。今度は足を突き出し、渾身の飛び蹴りを浴びせる。

 

ギャリィ…!

 

だが…それもロボットにヒットするものの、やはり有効なダメージを与えられている感触はしなかった。ロボットはハサミの腕でシロナをつかみ取り、持ち上げる。

 

「く…!」

 

「キサマが…シロナか…。データとの照合結果、74%一致」

 

ロボットはそう声を発し、赤いレンズの眼でじっとシロナを見つめ、解析する。自身にプログラムされているシロナの情報と照らし合わせ、データとの差異はあるものの、これをシロナと断定した。

 

「私を探してたわけ?アンタ、何者よ」

 

「わしの名はドクター・ウィロー。キサマの肉体を使って我がメインブレインを復活させるために、共にビッグゲテスターまでお越し願おうか」

 

シロナはウィローという名を聞いた時、何かを思い出したように目を見開く。

 

「悪の天才科学者、ドクター・ウィロー…聞いたことがある。昔、この幻想郷で復活して…倒されたっていう…」

 

「その通り。このわしは博麗霊夢らとカカロットによって宇宙空間まで吹き飛ばされ、そこで破壊された。しかし、息絶えてはいなかった…」

 

…損傷したわしの脳だけが宇宙を漂い、ある機械惑星へ漂着した。その機械惑星は”ビッグゲテスター”といい、捨てられた宇宙船や人工衛星が漂流している”宇宙の墓場”にあったコンピューターチップが自らの能力で周囲の物を取り込み、そのエネルギーを吸収することで長い時間をかけ増殖、肥大化した星だった。

 

「わしの脳はその星と接触を果たすものの取り込まれる事なく逆に支配し、我がものとした。今のこのわしはビッグゲテスターの科学力で作りだした仮初の機械の体…メタルウィローとでも名乗ろうか。しかし、本体である脳もビッグゲテスターで補強しているだけで、それも長くはもたぬ…わしは早急に新たなる生身の肉体を手に入れ、乗っ取る必要に迫られた。そこで選ばれたのが…シロナ、キサマというわけだ」

 

それを聞いたシロナは、下へうつむきながら口を開く。

 

「…なるほど、じゃあ私を連れ去って肉体を奪うのが目的だと」

 

「そうだ。一度はわしを倒した博麗霊夢とカカロットの実子であるキサマの体をわしのものにできれば、わしは世界で最も強くそして偉大な…究極のドクターウィローとしてこの世に君臨できる!」

 

「黙れよ。崇高な夢を持つのは勝手だけど関係のない人を巻き込まないで」

 

静かにそう言い放つと、ゆっくりと全身に力を込めていく。ぞわぞわと赤いオーラが渦巻き始め、シロナの髪が緩やかに逆立ってゆく。さらに顔を上げると、その瞳は黄色く変わっていた。

そして次の瞬間、ウィローの手が無理やり開かれ、シロナはそこから脱し、地面に着地する。

 

「わあ、あれはシロナちゃんの怒り状態…!」

 

その様子を半壊した永遠亭から見ていた史奈がそう呟いた。その姿は幾度も強敵を倒してきた、よく知る姿のシロナだった。

 

「ほう…素晴らしいパワーだ。ますます欲しいぞ…」

 

「そう言ってられるのも今のうちよ。すぐに破壊してやる…」

 

「やってみろ!」

 

ウィローのハサミ状の手の間から伸びる砲身からガトリング銃のように無数のエネルギー弾が発射される。シロナは走りながらそれを躱し、ぐんぐんとウィローの足元へ接近する。そこを迎撃しようと尻尾を持ち上げ、振り下ろすウィローだが、その時には既にそこにはシロナはおらず、顔面の真横へ移動していた。

 

「そこか!」

 

そこへ向けて腕を振るうが、シロナはそれをガードした。ビリビリと衝撃が腕から全身へ伝わってくる。

 

「うおおおおッ!」

 

シロナはその腕を逆に掴み返し、抱きつくようにして抱えるとウィローの鋼鉄の巨体を持ち上げる。額と腕に太い血管が浮き出るほどにパワーを込め、抵抗しようとするウィローをグルグルと回転させて振り回す。そしてある程度勢いをつけたところで手を離し、上空へ投げ飛ばして見せる。

が、ウィローは背中から背後へ向けて衝撃波を放ち、その反動で静止すると、今度は体の前面から同じ衝撃波を撃つ。

 

「はあッ!!」

 

シロナはその面積の衝撃波を避けきれずに喰らってしまった。その場で仰け反り、口から血を吐き出す。

それを好機と見たウィローは視覚をスコープ照準に切り替え、シロナをロックオンする。

 

「喰らうがいい」

 

そして次の瞬間、シロナの体が爆発を起こした。シロナは全くの予備動作なしの不可避の攻撃を受けたことに困惑して全身から煙を噴き上げながら遠くへ吹っ飛んでいく。

シロナが攻撃に気付けなかったのも当然だった。ウィローはエネルギー弾を”作って”、”放った”のではなく、シロナの体と重なる位置の座標にエネルギー弾を転送し、その場で炸裂させたのだ。

 

「はははははは!!笑止!」

 

ウィローは次々とエネルギー弾を炸裂させる。だが、シロナも負けじと手からエネルギー波を放った。

 

「効かぬ!…む!?」

 

それを難なくはじき返すウィローだが、その隙に迫っていたシロナ自身の腕による一撃をボディに喰らってしまう。

 

「その程度、この体には効かないと言っている…」

 

しかし、そう思いきや、攻撃を受けた箇所に微かな違和感を感じ、そこを確認するとボディに小さな凹みができていた。

シロナの左腕は鋸の記憶兵器へと変化しており、どうやらこれで一撃を加えたようだった。

 

「…ほう、興味深い。キサマが記憶兵器だったとは驚きだ。その力、さらに欲しくなってきたぞ」

 

「記憶兵器を知ってるの?じゃあ話は早いな…私らは傀儡人形を壊すことが、一番得意って事も知ってるだろうからな!」

 

シロナは続けて右手をカッターに、左足を斧に、右足を錐へと変じさせてウィローに飛びかかる。ウィローは両腕と尻尾を駆使した素早いラッシュ攻撃でそれを迎え撃ち、シロナと激しい攻防戦を繰り広げる。

 

「ぬううううう…!」

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃ…!」

 

攻撃同士がぶつかり合った場所から球状の波動が発生し、大きな金属音が響き渡る。

 

ミシ…

 

その時、ウィローは気が付いた。自分の手の先端部分がへこみ、徐々に削れてきていることに。

 

「バカな…!このわしの体が摩耗しているだと…!」

 

「ウラアアアアア!!」

 

シロナは斧の足で蹴りを繰り出し、その一撃でウィローの手首から先を切断した。よろめくウィローの腕から肩、頭の上へと素早く登っていき、空高く飛び跳ねる。そして、今度は右足に作りだした長い槍のような錐を下に向けて構え、全身から赤いオーラをジェットのように噴出しながら降下する。

 

ザンッ!

 

それはウィローの反対側の腕を根元からざっくりと穿ち引き裂いた。千切れた腕が地面に落ち、バラバラに砕ける。ウィローの破損した部位から電気が漏れ出し、内部の配線や部品がこぼれる。

 

「どうだ…!?」

 

シロナは地面に着地し、ウィローの背中を見た。しばらくそのまま硬直していたウィローであったが、不気味に低く笑い声を響かせる。

 

「ふっふっふっふっふ…」

 

その直後、ウィローの傷口からコードや骨組みが伸びて自動的に腕の形状が生成され、それに肉付くようにして外殻が纏わっていき腕が再生してしまう。

 

「なに…!?」

 

「驚いたか?わしの受けたダメージデータは、すぐにビッグゲテスターのメインブレインへ転送される。するとメインブレインは遠隔でわしの弱点を補強して再生させるのだ。つまり、キサマが死に物狂いでわしを攻撃すればするほど、わしは強くなるのだ」

 

「粉微塵にしてもか?」

 

「できるものならな」

 

次の瞬間、シロナでは反応できないスピードでウィローは一撃を繰り出し、腕で殴りつける。痛みに怯むシロナに対して尻尾での一撃を加え、さらに足で踏みつけ、そのまま地面とこすりつけるようにして蹴り上げる。

空中に打ち上げられるシロナだが、途中で体勢を立て直し、右手から赤いエネルギー波を放出した。それはウィローのボディに命中するが、まるで水が油にはじかれるように滑ってしまう。案の定ウィローはそれを意に介さず、シロナへ向けたハサミの腕の砲身から細かなエネルギー弾を連続で発射する。

 

「うおおおおおお!」

 

それを上手くかわし、再びウィローの懐まで接近するシロナ。先ほどのように錐の一撃や、その他斧や鋸による攻撃を加えるが、今度はそのどれもがウィローに傷一つつけることさえできない。

 

「くっ…!」

 

「これで終わりだ」

 

ウィローはシャッターのように稼働する口を開き、そこから黄色い特大エネルギー砲を放った。それは容易にシロナを呑み込み…中のシロナは猛烈なエネルギーに晒されてしまう。やがてエネルギー砲はやみ、その場で大爆発を起こす。

 

「ああっ、シロナちゃん!!」

 

永遠亭から様子を見ていた史奈が叫ぶ。

煙を上げるシロナの体が宙を舞い、離れたところの地面に落ちる。

 

「どれ…」

 

メタルウィローの力によって、シロナの周囲に赤い光が発生し、それは柱状に上へ伸びるとともにシロナをその中へ閉じ込めてしまう。

 

「そろそろ飽きたな。キサマの体を奪ってやるとしよう」

 

赤い光の中にデータ化してインプットされていた、ドクターウィローの記憶と人格がシロナの頭の中に流れ込む…。

 

バチッ!

 

「む…!?なんだ?」

 

「バカが~~…私の体を奪うだってぇ?」

 

シロナは立ち上がると同時に、赤い光の柱を気合で消し飛ばす。体を奪う事の出来なかったウィローは困惑し、一歩後ろへ下がる。

逆立った黒髪は魔力を含んだ金髪へ変わり、シロナの顔はダイヤモンドのような青い結晶で覆われ、歯をむき出した悪魔のような容貌となる。その両手も結晶のように硬質化しており、拳を握るとカチカチという音が鳴る。

 

「意味の分からない事を言ってるんじゃねぇよ!」

 

そのシロナの様子を見たスカーと史奈は声を漏らす。

 

「なんだありゃ…あんなシロナ見た事ないヨ…」

 

「うん、でも力はさっきよりも上がってる…!」

 

魔法で強化された怒り状態へと変身したシロナは、再びウィローに向かい合う。

 

「さぁ、第二ラウンド始めるか~!!」

 




この章の各話タイトルは、僕のiPhoneMusicの中に入っている楽曲のタイトルを引用しています。
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