もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第29話 「龍向日葵を発見せよ!」

「な、何だと…これだけじゃ超神酒ではないっていうのか?」

 

「その通り。超神酒は幻想郷に伝わる酒だ…当然、というよりも運よく材料は幻想郷にある。『50年に一度花を咲かせる”龍向日葵”の種の油』、『オオナマズの皮膚の出汁』、『天界の桃の果汁』の三つ…これを適量酒に混ぜることで味が変わり、真の超神酒が完成するんだよ」

 

「集めないといけないってことねー…」

 

カカロットとこいしはガクリと肩を落とした。が、超神酒を持ってくると言った手前、勇儀たちはまだかまだかと待っていることだろう。ここで諦めて帰ってしまっては、自分としてもすっきりしない。

 

「しゃあねぇ、その材料とやらを集めに行くか」

 

カカロットは肩をグルグルと回し、意気込んだ。

 

「私も行く!」

 

こいしがふわりと浮かんでカカロットの後ろへ着いた。

 

「場所くらいは教えてやる。龍向日葵は幻想郷で最も向日葵が集う場所にあり、オオナマズは大きな山の池におり、天界の桃はその名の通り広大な天界に存在する。そして、お前たちは本当に運がいいようだ。丁度今年は龍向日葵の咲く年だ。いいね?」

 

「ああ、いってくる」

 

カカロットがそう言うと、二人は全速力で駆け出し、元来た洞窟の中を進んでいった。

 

 

 

二人が幻想郷へ戻ると、丁度太陽が真上の正午であった。

一番最初に目指す場所は、幻想郷で最も向日葵の集まる場所。ここに関しては、カカロットは覚えがあった。昨年の幻想郷一武道会のために一人で特訓がてら幻想郷を回っていたころ、一度だけ見かけたことがあった。その時期は春あたりだったので花はよく咲いていなかったが、あれは間違いなく向日葵畑であった。

 

「ここだ」

 

カカロットは例の向日葵畑へとたどり着いた。位置的には妖怪の山のある場所の反対側、つまり南に位置するが、人間の里からはさほど遠くはない場所にある。

さっそく、カカロットとこいしは向日葵畑に飛び込み、「龍向日葵」らしき花を探しにかかる。

 

「どこだ龍向日葵!!」

 

背の高い大量の向日葵は、まだ完全に花を咲かせておらず、種さえもまだ見えない。その中をかき分けながらどんどん奥へと進んでいく。

茎を折ってなぎ倒し、または引っこ抜き、または花びらをむしってしまう。それでも龍向日葵らしきものは見つからず、そもそもこの時期ではいくら花を咲かせる年とはいえ種は落とさないのではないかとも思い始めた。

 

「おい、そっちはあったか」

 

「ぜんぜーん、ないよー」

 

遠くからこいしの声が聞こえた。どうやらあっちもそれらしいのは見つけていないらしい。

これは早々から骨が折れそうだ…とカカロットは思った。

 

「仕方がない…オオナマズと桃から探しに行くか?」

 

そう呟きながら、カカロットは向日葵畑から顔を出した。

と、その瞬間、どこかからか発せられる強大な妖気を感じ取った。同時に、こちらへ向かい来る凄まじい威力の極太のレーザー。黄金にも輝いているように見えるそれは、ちょうど向日葵畑から飛び出し始めていたカカロットを消滅させるかの勢いで放たれていたのだ。

 

「うわ!」

 

それが直撃する寸前で頭をひっこめ、ギリギリでかわす。極太のレーザーは上手く向日葵の上スレスレを通過し、逆の孤を描くようにして空の彼方へと消えていった。

 

「危なかったぞ、一体誰だ!?」

 

そう声を荒げるカカロット。当たりを見渡しても誰もいない。

しかし、近くから強い妖気を感じて、カカロットはそちらを向いた。

 

「危なかったぞ、とは何様?人の庭を荒らしておいて」

 

女の声が聞こえた。

その女は日傘をさしていて、顔はよく見えない。服はチェックのベストと長めのスカートを着用し、姿こそ普通の女のようであるが、その秘められたパワーは並ではない、とカカロットは気付いた。

 

「人の庭だと?ここはお前の場所か?」

 

「だったら何だというのかしら」

 

「”龍向日葵”という花を探している。何か知っているか?」

 

「龍向日葵…?何故あなたがそれを…。いいや、それよりもここを荒らした罰、受けてもらうわよ」

 

女はさしていた日傘を閉じ、その顔をカカロットへ向ける。赤い鋭い目が怪しく光を放ち、直後、彼女はその場から消えた。

ロケットかミサイルのように桁外れなスピードで飛び出した女はカカロットとの距離を一瞬で詰めると、その首筋へ手を伸ばした。

 

「ぐ…!」

 

無理やり宙へ引きずり上げ、今度は向日葵畑のわきに出来ているあぜ道にカカロットを叩きつけた。土煙が巻き起こり、その身体が若干地面に埋もれてしまう。

 

「やりやがったな!」

 

しかし、すぐに起き上がるカカロット。空を飛んだままこちらを見下ろす女へ対して、その手からエネルギー波を放った。

真っすぐに飛んでいくエネルギー波であったが、その女が持っている傘を振るうと、いとも簡単にはじき返されてしまった。

 

「いっ!?」

 

同時にすさまじい突風が吹き荒れ、カカロットはそれに耐えるのが精一杯になった。

 

「私は風見幽香…知らないかしら?」

 

そう言いながら接近する風見幽香と名乗った女は、カカロットの顔面を思いきり殴りつけた。

 

「知らねぇよ…!」

 

吹っ飛んでいくカカロットに追いついた幽香が、さらに追撃を加えようと仕掛ける。だがカカロットも負けじとそれに応戦し、繰り出されたパンチを弾いた。

続いて出た膝蹴りを同じく膝で受け止め、次に肘を逸らす。お互いの熾烈な攻防戦が繰り広げられている。

 

「んお?」

 

騒ぎにようやく気付いたこいしが花畑から顔を出し、様子を見た。

 

「あちゃー、やってるねぇ」

 

「あははははは!!」

 

腹のガードが開いたカカロットに対し、幽香は笑いながら手で触れた状態のまま近距離からの光弾を無数に放った。ものすごい爆発と衝撃で徐々に後ろへと押されていくカカロット。

 

「くっ…なかなか強いな…!たかが花を荒らした程度でこれか…!」

 

「これで終わりにしてあげる」

 

幽香は再び空中へ飛びあがると、日傘の先端をカカロットへ向けて構える。そして気を込めると、その日傘に妖気が集まっていき、ついには金色に輝くエネルギー弾を生成した。

 

「さっきのか…」

 

エネルギー弾はだんだんと巨大化し、ついには幽香自身よりも大きくなってしまった。その直後、そのエネルギー弾をもとに、特大の極太光線が発射された。

あまりに強大な妖力を込められた一撃だ。あのウスターの攻撃にも匹敵するかもしれない。

 

「うおおおお!!」

 

しかし、カカロットもそこまでの男ではない。幽香の放った光線を、真正面から両手で受け止めた。

 

「へぇ、これを止められるの。だけど…」

 

幽香がさらに力を込めると、光線はさらに威力を増してカカロットへと襲い掛かった。

 

「むぎぎぎぎ…!」

 

これほどの威力を前に、カカロットはいよいよ耐えられなくなって来た。踏ん張っている足がどんどんと後ろへずり下がり、手から煙が上がり始める。

 

「最後に聞くわ。なんであなたが龍向日葵の事を知ってるの?」

 

「ふん…超神酒を作るのに種の油が必要なだけだ…!」

 

「あら、龍向日葵は確かにこの太陽の畑のどこかにあるわ。でも、何年探しても私ですら見つけることができない、幻の向日葵よ。残念ね、希望が潰えて」

 

そう冷酷に呟いた幽香。

 

「はっはっは…そうか。だが、これで終わると思うなよ!!」

 

「…!?」

 

だが、そう自信ありげに言ったカカロットを見て、幽香の目に驚愕の色が浮かぶ。

 

「滅越拳だッ!!」

 

カカロットの体に紫色のオーラが纏われた。カカロット自身でさえも紫色に発光しているかに見える凄まじいオーラだ。

滅越拳により高まった能力のおかげで、カカロットはようやく幽香の光線をもう一度押さえ込むことに成功した。

 

「なんですって!?」

 

驚く幽香を尻目に、光線を両腕で抱きかかえるようにして消滅させた。

あたりに風と妖気の衝撃が起こり、畑の向日葵たちが傾いた。

 

「はっ…!」

 

カカロットは思い切り跳躍すると、一瞬にして幽香の目の前にまで移動して見せた。そして、振りかぶった拳で幽香を殴りつけた。

 

「ぐう…ッ」

 

地面へと一直線に吹っ飛ばされる幽香。そして向日葵畑の中に突っ込むようにして地面に激突すると、突如としてその地面が崩れ始めた。

 

「なんだ!?」

 

 

「うう…」

 

起き上がる幽香。辺りを見渡すと、どうやらここが向日葵畑の下にあった地下空間であることが分かった。天井からは向日葵の根がぶら下がっていることから、地上からそれほど下ではないと理解できる。

この地下空間は自分がいるところから楕円状に広がっていて、さらに奥には、何か光るものがあった。その部分の天井にわずかに空いた小さな穴から日の光が漏れていて、それに照らされているのは…普通の向日葵と比べて目を見張るほど色鮮やかで、花弁の先端に赤の混じった、やや小さな向日葵であった。

 

「これはまさか…龍向日葵!?」

 

幽香はそれを見てそう呟き、思わず膝をついた。何十年…いや、何百年間も探し続けてついには見つけることができなかったあの幻の龍向日葵が、まさかこのような形で見つかるなんて…。

あまりの感動に言葉を失い、ただ龍向日葵を見つめていた。

 

「どうしたんだ、もう終わりか?」

 

その時、カカロットとこいしが、幽香が激突したことにより空いた穴から空間へ入って来た。しかし、幽香はそれに目もくれずに、ただ龍向日葵の方を向いていた。

 

「何を見てるんだ」

 

カカロットとこいしも幽香の横に立ち、その向日葵を見た。

 

「これはまさか…龍向日葵か?」

 

「ええ、そうよ…まさか、地下でわずかな日の光だけを浴びて生きていたなんて…」

 

ゴゴゴ…

 

その時だった。周囲が揺れ、天井から石くれがパラパラと落ち始めた。

 

「何だ、崩れ始めてるのか?」

 

「アナタの所為よ!たぶん、ずっと絶妙なバランスで保っていたこの空間を壊したから…」

 

思わず崩れるかと思った。

が、この地下空間は少し揺れて土が落ちた程度で済んだ。しかし…

 

「射してた日の光が消えた…」

 

上の穴からわずかに射し、龍向日葵にエネルギーを与えていた日の光が消えてしまっていた。

 

「龍向日葵が…枯れていく…!!」

 

幽香たちの目の前で、龍向日葵は見る見るうちにしぼみ、枯れていく。花弁がどんどんと抜け落ち、葉が茶色くなる。茎までもが細くなり、そして…隠れていた種がポロリと落ちた。

 

「種が落ちた…」

 

一つ、また一つとボロボロ種が落ちていく。

 

「…もう二度と、この龍向日葵が花を咲かすことはないでしょう」

 

幽香が少し悲しげにそう言った。

その時だった。地面に落ちた種が一瞬にして割れ、芽を出した。芽は見る見るうちに伸びて大きくなり、驚く幽香たちの前でそのまま成長を続け、花のつぼみを出した。だが、そこで止まってしまった。

 

「どうやら新たな龍向日葵が生まれたようだな。咲くのはまた50年後か」

 

カカロットは目的である龍向日葵の種を20個ほど拾い集めると、この地下空間から出ようと歩き出した。

 

「待って」

 

「…なんだ」

 

しかし、幽香に呼び止められて足を止めた。

 

「この向日葵を見つけられたのもあなたのおかげかも知れない。花を荒らしたのは褒められたことじゃないけど」

 

「俺はただ、コイツに用があっただけだぜ。正確にはコイツから絞られた油だがな」

 

「あら、それだったら私の家で油を取っていきなさいな」

 

 

カカロットとこいしは幽香の家に上がり、特製の機械で種の油を搾り出した。

取れた油は小さな小瓶にいれ、コルク栓で蓋をした。

 

「これで一つ目の材料はゲットか」

 

油の色は黄色の中にほのかに赤が混じっており、龍向日葵の花びらの色を思い起こさせる。これが50年に一度花を咲かせる龍向日葵の種の油…。

 

「あなたたち、次は何処へ行くの?」

 

「次は…そうだ、大きな山のオオナマズって奴を倒さなきゃ」

 

「オオナマズ…妖怪の山にいるって聞いた事あるわね」

 

「急がなければいけないんだ。じゃあな」

 

花を愛でる妖怪・風見幽香の元を離れたカカロットたち。

超神酒を完成させるための次の材料は、オオナマズの皮膚!それを求めて、さっそく出発するのだった…。

 

 

 

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