もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第293話 「RED ZONE」

「何を言いやがル…!シロナ、待ってろヨ!必ずワタシがお前を正気に戻してやるからナ!!」

 

スカーのその叫びは虚しく響き、ウィローとコーチンは宇宙船へ乗るために上の階へと消えていった。そしてスカーの行く手を阻んでいる光の網は、何度攻撃を加えても到底破ることはできず、スカーは途方に暮れる。

 

「クソ…どうにかしテ、この網を壊してシロナを追わなくちゃヨ…何か他に行き方が無いか探すカ」

 

そう言いながら、スカーは今来た道を戻って他の通路へと進むのだった。

だが、レイムとの戦闘によって大きなダメージを受け、かつシロナを救わねばという焦りを感じていたスカーは、この通路の先にいる者たちの気配に気づくことができなかったのだ。

 

 

 

「おや?なんか始まったみたいだね」

 

自分に与えられた部屋にて、ハーレクインはそう呟いた。今やウィローではなく、レイムの手先となった彼女は、ウィローが新たな肉体を会得したのと同時にそのパワーを発揮したのを感じ取った。

 

「でも変っスねぇ…ウィロー様が現れると感じるビビッとくるヤバイ気配がしない…どうやらまだ新しい体とやらには慣れてはいないようっスねぇ。おい、はやく次の持ってきなよ」

 

「はい、ハーレクイン様…」

 

後ろに控えていたアルティリヌスことアールがそう返事をする。すると、そこへエースとサニーも現れ、なんとその手には人間の死体が抱えられていた。

ハーレクインはそれを受け取ると、大口を開いて先端が牙の並んだ第二の口になっている舌を出し、それで死体に噛みついた。流れ出る血を口へ送り、ゴクゴクと飲んでゆく。

 

「ぷはーっ。さて、腹ごしらえも済んだことだし、ウィロー様が本腰を入れるまでに退散するとしますかねぇ」

 

次の瞬間には、ハーレクインの姿が消えていた。残された元護衛軍の三体はハーレクインが貪った人間の死体を袋に詰め、部屋の外へと運んでいく。

 

「しかし、スカール様が偽物と入れ替わっておられたなど…我々は考えもしなかった」

 

エースが呟く。

 

「またそれかい、エース。事実を受け入れるのが人造人間よ」

 

アールがそれに苦言を呈する。

 

「しかしだな…」

 

「やめなさい。今のアタシらにできるのはウィロー様に全力でお仕えする事だけよ」

 

それを聞いたサニーが足を止め、他の二人も振り返ってサニーを見る。

 

「でもさ、ふたりとも…ウチらを造り出し、意志をくださったのはスカール様だよ。そのスカール様がもうどこにもいないというのなら…ウチらに生きている理由なんか…ないよ」

 

だが、エースとアールは、サニーを見るために振り返ったのではなかった。二人はサニーの背後にある何かを見て、口をあんぐりと空けたまま目を見開いている。サニーも何があるのかと思い、二人が見つめる先に目を向ける。そこにあったものとは…

 

「誰だオマエらヨ!さてはウィローってヤロウの手下カ!?」

 

乱暴な口調で威嚇をする者、スカーの姿があった。表情や目などの細部こそ異なれど、完全にそのすがたかたちはかつて自分たちの主人であった…

 

「ス…」

 

「ス…」

 

「ス…!」

 

「「「スカール様!!?」」」

 

スカールそっくりの人造人間だった。

 

「なんだァオマエら!?ドイツもコイツもワタシの事ォスカールって呼びやがっテ!いいか、ワタシはスカーっていうんダ、スカールじゃねェ!」

 

だが、元護衛軍たちは驚いてそう叫ぶスカーに駆け寄って取り囲んでしまう。そしてスカーの体にできている傷や焦げ跡をまじまじと見つめ、一斉に世話焼きの言葉をかける。

 

「お怪我をなされているではありませんか!」

 

「すぐに修理いたしますので、工房へいらしてください!」

 

「それよりもまず、新しいお召し物はいかがでしょう?」

 

我先にという凄まじい圧を感じたスカーは思わず圧倒されてしまう。存在する意味を失いかけていた矢先、かつて信奉しそして消えてしまった主が再び目の前に現れたのだ、流石の護衛軍たちも興奮しきっているらしい。

 

「だああああああ!!邪魔だオマエラ!!」

 

そして、その鬱陶しさに強烈な苛立ちを覚えたスカーは、自分の周囲へ向けて最大火力の電撃を放出した。それはエースたちにも満遍なく命中するが、彼女らはそれを受けてもなお平然としていた。

 

「な、何かお気に触りましたでしょうか!」

 

「至らぬ点があれば是非ご指摘いただきたく存じますが…」

 

「なにィ…?」

 

スカーはたじろいだ。護衛軍らは怒りに任せた最高の威力の攻撃を何ともない顔で受け切り、少しものダメージも受けずに続けて自分に詰め寄ってくる。コイツらを引きはがすにはどうしたら良いかと考え込む。さっきのレイムには遠く及ばないものの、コイツらもかなりのバケモノと言える戦闘能力を持っているに違いない。

 

(いや…コイツら、使えルかもしれんナ…)

 

その時、スカーはひらめいた。

 

(悔しいガ、どうやらコイツらはワタシを越えるとんでもないパワーを持っているらしい…。ならコイツらを使えれバ、あの光の網ヲどうにかできるかもしれん)

 

「おいオマエら!」

 

スカーがそう言うと、護衛軍たちは急に静かになり、その場で膝をついた。

 

「は、何用でございましょう?」

 

「オマエらはヨ…ワタシの言う事なら何でも聞いてくれんのカ?」

 

「もちろんでございます。我々はスカール様のために存在します…貴方様のご命令は何としてもこなして見せましょう」

 

「ワタシはスカールとやらじゃないガ…お前らがワタシに従うってんなラ、頼みごとがあるからついて来なヨ」

 

スカーがそう言った瞬間、護衛軍たちは顔を上げたまま唖然とし、その直後に何ともうれしそうな笑顔を浮かべて飛び跳ねた。そして、三人で互いに手を取り合いながらその場で踊り出す。

 

「おお!スカール様からご命令を賜った!」

 

「おそらく何十年ぶりだろう…このような感情を味わうのは!」

 

「頼みごとがあるからついて来いと…」

 

その様子を見たスカーも言葉を失う。それはさながら、友達と喜び合う子供たちのようにも見えた。

 

(なんでェコイツラ…とんでもねぇバケモノかと思いきや、いきなりこれか…?何なんだコイツらハ…一体なぜワタシをスカールと呼んで従うんダ?まあ、いいか…使えるうちは何でも使ってやルからナ)

 

キィィィ…ン…

 

しかし、スカーがそう思った瞬間だった。どこからか、微かに金属がこすれるような鋭い音がかすかに聞こえてくる。スカーにはわずかに違和感を覚える程度にしか聞こえなかったが、サニーら護衛軍はそれを敏感に聞き取っているらしく、表情を変えて周囲を見渡している。

 

「なんだァ?この音…」

 

「…スカール様、すぐにこの場からお逃げください」

 

「あ?」

 

次の瞬間、何かがスカーの真横を目にもとまらぬ凄まじいスピードで通り過ぎて行った。「何だ今のは」、そう思った時には既に目の前では惨劇が繰り広げられていた。

エースは胴体を横に3つに切り分けられ、アールは縦半分に切断されていた。いずれも、鋭い切れ味を持つ刃物によって一瞬のうちに行われたものだった。しかし、サニーだけは自身の胴体の右半分と引き換えに、敵の攻撃を逸らして自分を助けてくれていた。

 

「オマエ…ワタシを庇っテ…」

 

「いいのです、スカール様はここからお去りください」

 

スカーはサニーの見つめる先へ体を向ける。

 

「得体の知れぬ…反応を…感じたので来てみれば…護衛軍がいたとはな…。む…お前は何者だ…?何か…懐かしい感じが…するな…」

 

そこにいたのは、かつて人造人間の本拠地である蠢く拠城の内部にてシロナらと戦った、人造人間3号こと”クウザン”だった。クウザンは長い黒髪を結った侍のような姿に刀の武器を手に持っている。

 

「3号…いやクウザン…護衛軍の名にかけて、スカール様には手は出させない…!」

 

「…愚かなり…。その人形は姿こそ似てはいるが…スカールなどではない…。侵入者の排除を…邪魔するというなら斬り伏せるのみ…」

 

しかし、サニーが戦闘の構えを取るよりも前に、サニーの体は斜め真っ二つに一刀両断されていた。バイオタイプの人造人間である護衛軍の残骸が散らばり、周囲は血の海となっている。

 

「さて…次はお前だ…」

 

そして、血の滴るクウザンの凶刃は、スカーへと向けられるのであった…。

 

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