もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第3話 「カカロット修行の旅へ」

その時は夜だった。大きな穴から這い上がるように姿を現した少年は、眼前に広がる広大な景色に目を奪われていた。幻想郷の夜は恐ろしい。妖怪が跋扈し、瘴気で溢れかえることもある。だが少年はそんな事など知らなかった。

しかも、天空には大きな満月が浮かんでいたのだ。

 

──…

 

「はっ!」

 

カカロットは慌てて目を覚ました。その瞬間、後頭部に痛みが走り、思わず顔をしかめた。

落ち着いてみると、どうやら自分は木の根っこの間に寝かされているようだった。

 

「見た事のない木だ…花、か?」

 

木はカカロットが見た事のないピンク色の小さな花を無数にくっつけていた。上から花弁が絶え間なくゆっくりと落ちてきて、顔に当たるそれをうっとうしそうに吹き飛ばした。

 

「お目覚め?」

 

「お前は…!」

 

その声が聞こえた途端、カカロットは瞬時に立ち上がり、身構えた。前方から霊夢が歩いてくるではないか。

先ほど、一度彼女によって負けているカカロットは額に汗をかき警戒しながら霊夢を睨みつけた。

 

「そんな警戒しなくていいわよ。話を聞きたいだけだし」

 

「話だと?」

 

「そう、アンタ…昨日出たって言う巨大猿について知らないって言ったわよね?」

 

「ああ、それがどうした?」

 

「それが変なのよね…」

 

霊夢は顎に手を当てながら、カカロットの腰から伸びている茶色い尻尾をまじまじと見つめた。そして、胸ぐらを掴むと、じっと顔を近づけてカカロットの顔を見つめる。

 

「…な、何だ?」

 

「あの破壊規模と現場の足跡を見る限り、あんなに巨大そうな猿が忽然と消えるのもおかしい…死んだのならば血やら何かしら証拠が残っているハズ。そして現場には、猿みたいな見た目のアンタが封印されていた…つまり、アンタが何かしら巨大猿と関係があるのでは?」

 

「俺が?」

 

「ええ、そして昨日は満月だった。満月の日は地上の妖怪が特に力を持つ時とされているんだけど、もしかしたらアンタもそういうたぐいかも知れないわよ」

 

霊夢がパッと手を放すと、カカロットはそのまま尻もちをついてしまった。

 

「もし良ければ聞かせてくれないかしら?アンタが何者なのか」

 

「…いいだろう。敗者は勝者に従うのがルールだと…アイツらも言っていた」

 

 

その後、カカロットは霊夢に自分について分かっていることをほとんど話した。

 

…これは俺を物心つくまで育ててくれたヤツから聞いた話だ。

ある日、地底の世界に小さな球が降って来たらしい。そこから出てきた赤子が俺だ。俺は地底に住んでいる奴に育てられた…。大して力はないが、そこらのでかい獣みたいに狂暴で、おまけによくものを喰うでなかなか手が付けられなかったらしい。

自分がサイヤ人という存在であると自覚したのは、物心ついたころだ。俺はそれまで自分が周りと同じ、妖怪の一種だと思っていたが、ある日、旧都のはずれに例の球体が捨てられていた。そこに自分の名前が彫られていたことから、これが自分の物であったと分かった。中にはスカウターが保管されており、俺に向けて書かれた文書もあった。

 

「これを読んでいるサイヤ人へ

 貴殿にはその惑星の制圧を任せている

 遂行するように」

 

俺は周りの者に尋ねた。何で今までこれを黙っていた、と。だが、まともな返しは来なかった。自分がサイヤ人という種族であるという事が、俺は孤独であったという意識を生んだ。確かに、様々な妖が居た地底世界でも、俺のような奴は一人もいなかった。正直、俺自身もサイヤ人とは何者なのか、どういう奴らなのか分からない…。

 

それから、俺はスカウターを装着すると、1人で生きることを決めた。そして、1人で暮らすうちにある意識を持つようになった。自分は孤独…しかしそれは考えを変えれば、俺は唯一無二の特別な存在だということ!

そうと決まれば、居てもたってもいられなくなった。地底の天上に浮かんでいる穴を登った先にあるという地上の世界、そこに行きたくてたまらなくなったんだ。

もちろん、飛ぶこともできない俺は登るのに何年もかかった。落ちてはまた登り始め、それを繰り返すうち、ついに昨日。俺は地上の世界へと進出することができたんだ。

 

 

「だが、俺には惑星の制圧などどうでも良かった。自分がサイヤ人であり、それが俺が俺である所以だと…誇りに思うようになったんだ」

 

「…サイヤ人、やっぱり聞いたこともないわね。外の世界にそんな国があるのかも…でも、惑星を制圧?何の事だか…」

 

カカロットの話を一通り聞いた霊夢は、何か考えながらそうぶつぶつと呟き始めた。

 

「聞きたいことはそれだけか?」

 

「まあ、そうね…」

 

「だったら俺はもう行く。俺にはやることができたんでな…」

 

カカロットは立ち上がると、自分の服を探った。そういえば、いつも身に着けていたスカウターが無くなってしまっている。さっき戦った場所に落としたか?

 

「おい、俺のスカウターを知らないか…」

 

「ふふ、これでしょ?」

 

そう言いながら振り返ると、霊夢がいたずらに笑いながらカカロットのスカウターを装着していた。

 

「…返せ!」

 

カカロットはすぐに霊夢に向かってスカウターを奪い返そうと飛びかかる。が、霊夢は軽くそれを躱し、測定開始のボタンを押した。

 

「へー、すごいわね。確かにアンタが自分で言ってた通り18だわ」

 

「貴様…」

 

カカロットがもう一度飛びかかろうとした時、空の方から何かの気配を感じた。

見上げると、何か箒のような物に乗った誰かがこちらに向かって降りてくるではないか。

 

「あ、魔理沙」

 

「よう霊夢、そんなけったいなモンつけてどうしたんだ?」

 

霧雨魔理沙は空飛ぶ箒から降りると、霊夢に向けてそう言った。が、魔理沙にとっても見知らぬ少年がその場にいることに気付く。

 

「ん、何だお前は?」

 

「お前も人間だな?」

 

「霊夢よ、何だコイツは?会話が成り立たないぞ」

 

魔理沙はそっと霊夢に耳打ちした。この魔理沙に関しては説明は不要かもしれないが、一応言っておこう。霊夢とは一緒に異変を解決したりするほどの仲で、普通の魔法使いを自称している。先ほどの空飛ぶ箒も、魔法によるものらしい。

 

「4!」

 

しかし、霊夢は魔理沙に向けて大声でそう叫んだ。

 

「うわっ、ビックリした!お前まで会話が出来なくなったのか?」

 

「この機械は対象の強さを計れるのよ。それによると、アンタの強さは4!」

 

「そりゃ便利だが、随分と低くないか?じゃあこれ計ってみろよ」

 

魔理沙はそう言うと、頭にかぶった黒い三角帽の中からミニ八卦炉なるマジックアイテムを取り出した。

 

「やめておけ。スカウターは無機物を計ることはできないんだぞ」

 

「え、でもそう言う割には表示されてるわよ。19って」

 

「ああ、このミニ八卦炉の魔力に反応してるんだろうな。ま、多分それと4を合わせた数字が私の本気って事さ。ちなみに霊夢はいくつだったんだ?」

 

「おあいにく様、私は20。本気出して100もいっちゃうのよね!」

 

「揃いも揃って俺より上だと…?」

 

カカロットは腕を組んだままわなわなと肩を震わせた。そして、霊夢が魔理沙と話している隙を見てスカウターを奪い返すと、ピョンとジャンプし、その場から離れた。

 

「ふん、俺よりも戦闘力が上だと?だが、待っていろ!お前にやられたこの屈辱は決して忘れないぞ!いつかお前を完膚なきまでに叩きのめせるまで強くなってやる!」

 

そう高らかに宣言すると、神社の階段を猛スピードで飛ぶように下っていった。

 

「んで?アイツは誰だったんだ?」

 

キョトンとしながらそう霊夢に質問する魔理沙の声が、博麗神社の境内にこだました。

さて、霊夢を倒すため、カカロットはこの幻想郷で強くなることを決意した。彼にどんな冒険、そして戦いが待っているのだろうか?それは、今は誰にも知る由は無かった…。

 

 

 

 




第3話です。
あらかじめ断わっておきますが、序盤は戦闘力に関する話が多く出てきます。もちろんいろんな東方キャラクターの戦闘力も出てきますよ。

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