もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第30話 「妖怪の山のオオナマズ様!!」

さて、風見幽香との戦いの果てに、地下に隠れていた龍向日葵を見つけたカカロットとこいし。種を拾い集め、幽香の家で油を搾り、超神酒を完成させるための一つ目の材料を手に入れた。

次に手に入れる材料は「オオナマズの皮膚」。それを求めて、二人は妖怪の山へと足を踏み入れたのであった。

 

「それにしても、オオナマズってのは何処にいるんだ?」

 

「ナマズって言うくらいだから、泥沼のあたりとか?」

 

そんな会話をしている二人を、遠くから見つめている集団があった。

そのうちのリーダー格の一人が、後ろにいる数名の仲間にハンドサインで命令を出す。仲間は素早く散り、林の中に紛れた。

 

「…む」

 

「どうしたの?」

 

「犬がいるな」

 

カカロットはそう言うと、誰もいないハズの茂みの中を睨んだ。そして右腕から光弾を生成し、それを放った。

それが茂みに掠ると、そこから声が聞こえた。

 

「うわぁっ!!」

 

声と同時に、1人の少女が茂みから飛び出した。スカートのみ黒と赤のモミジ模様があしらわれた白い天狗装束に、手には大振りの剣と丸い盾を持っており、その頭部には犬の耳が突き出ている。

その犬耳少女は驚いた様子で口笛を吹いた。すると、周囲の茂みから同じような格好をした集団が姿を見せた。背丈や髪型、顔つきに違いこそあれど、よく似ている連中だ。

 

「ほう…弾幕を撃つのか」

 

リーダー格の人物は木の上から様子を見ながらそう呟いた。

 

「何だお前たちは?」

 

「お前、ここが我々白狼天狗のなわばりと知っての事か?」

 

「天狗?ほう、聞いているぞ、何でも集団でコソコソしたやたらうるさい連中だってな?」

 

「なんだと貴様!なわばりを侵したあげく、侮辱するとは…許さん!」

 

白狼天狗と名乗った集団は、一斉にカカロットへと襲い掛かる。

しかし、カカロットは1人の剣の一撃を避け、その剣を持っている手に突きを当てて獲物を弾き飛ばした。剣はクルクルと回転しながら地面へ向けて落下を始める。

カカロットは続いて他の白狼天狗の腹や首元に次々と攻撃を当て、倒していく。最後に斬りかかって来た白狼天狗に足を引っ掛け、体勢を崩したところを殴り倒した。

丁度そのタイミングで剣が地面に突き刺さった。

 

「ふぅ…」

 

「いやぁ素晴らしいな」

 

その時、聞こえた声と共にもう1人の白狼天狗が木の上から降りてきた。だが明らかに他の白狼天狗とは雰囲気が違う。目は鋭く、そのたたずまいにはなかなか隙が無い。

 

「お前がリーダーか?」

 

「その通りだ。名は犬走椛。ここは我々天狗のなわばりでな…侵入者は追い出さなければならない…が、何かわけがあるのだろうか?」

 

てっきり他の連中と同様に襲い掛かってくると思いきや、柔らかな物腰で接してきた。この椛たち白狼天狗は、普段は主に天狗のなわばりの境界付近の哨戒をしている。天狗のなわばりは山の中腹より上の辺とされており、そこに勝手に入ったのであれば手を出されるのは無理もなかった。

カカロットとこいしは互いに顔を合わせ、説明を始める。

 

「実はオオナマズとやらに用があってな…場所を知っているか?大きな池にいるらしいんだが」

 

「オオナマズ?噂でしか聞いたことないが、確か『大蝦蟇の池』っていう場所がそうじゃないか?それほど大きくはないはずだが…そこは我々のなわばりの外だ。ここから東に行けばあるはずだ、詳しい場所は付近の妖精にでも聞くといい」

 

「そうか、分かった」

 

「ありがとー」

 

二人はそう言うと、言われた通り東を目指して移動を開始した。

 

「何かあったのかしら?」

 

その時、黒い鳥の羽根が椛の前にはらりと落ちた。上を見上げると、黒い翼を持った女性が羽ばたきながらこちらを見ていた。白いカッターシャツに、黒いスカート…頭には白い綿のついた帽子をかぶり、赤い下駄を履いている。

 

「射命丸文殿…いや、侵入者が出たもんですがね、とても敵いそうじゃなかったんで穏便に対応していたまでですよ」

 

射命丸文と言われた少女は天狗の中でも鴉天狗という種族にあたり、椛たち白狼天狗の上司に当たる。

 

「そうですか…」

 

文は地面に降りると、カカロットたちが進んでいったであろう方向を見て、にやりと笑った。

 

 

 

「ここが大蝦蟇の池とやらか」

 

二人は、目の前にある小さな池を見ていた。蓮の葉がところどころ浮かんでいて、その上でカエルが鳴いている。

池の反対側にはカエルの形をした石の祠が見え、そこには果物や米などのお供え物が置かれていた。

 

「おーい、オオナマズー!!居たら出てきてくれ、頼みがあるー!!」

 

カカロットは池に向かってそう叫んだ。

…しばらくすると、水面がボコボコと泡立ち、一瞬にして池が泥で濁ってしまった。続いて出現した黒い影。影はどんどんこちらに近づいてきて、やがて顔を出した。

 

「わしを呼ぶのは誰じゃ?」

 

オオナマズは髭をにょろにょろと動かしながらそう言った。その丸い眠たそうな目はカカロットを見た。

 

「アンタがオオナマズ様って奴か?」

 

「いかにも、わしこそ伝説のオオナマズ様であるぞ。して、お前は誰じゃ?そして用は何だ?」

 

「俺はカカロットという者だ。超神酒という酒を造るのに、オオナマズの皮膚が必要らしい…少し千切って分けてはくれないか」

 

「…ほう、わしの皮膚を…なるほど、ずっと昔に寝ていたわしの皮を剥いでいった奴がいたが、超神酒とやらが原因だったわけか。いいだろう、わしの皮膚でもヒレでもなんでも持っていくがいい。ただし…このわしを倒すことができたらな!」

 

オオナマズは池から飛び上がると、ほとりの泥場にドスンと降りた。

 

「またそういうのか…だが、それが一番簡単で分かりやすい」

 

「わしを簡単に倒せると思うなよ。わしはこの世界の…─」

 

そう言いかけた瞬間、飛び出したカカロットの拳がオオナマズの額に直撃した。目玉が飛び出そうなほどの勢いでオオナマズは驚き、ヒレで顔を押さえる。

 

「いででで!」

 

しかし、カカロットとこいしがポカーンとした顔で見つめているのに気付くと、ハッと元の顔に戻った。

 

「なかなかやるな小僧。だがこのわしを舐めるなよ、その気になれば世界を崩壊させる地震だって起こせちゃうんだぞ…!」

 

オオナマズはそう言うと、口を膨らませ、髭を震わせながら気合を込めるしぐさをする。

 

「世界を…崩壊させるだと!?」

 

カカロットはその言葉に驚いた。そんな事が出来る筈がない、しかしハッタリであるとも限らない…。

だが、オオナマズはそのまま一向に何をするでもなく、黙っている。

 

「どうした?」

 

「…それは言い過ぎた、わしにそんな力はない」

 

思わずズッコケそうになる。

 

「だがこのわしを侮ってもらっては困る。はああああ…!」

 

今度は先ほどよりも表情に力が入っている。それに呼応するかのように、周囲の地面が揺れ始める。

オオナマズから妖気が発せられ、それは尋常ではない異質さを持っていた。

 

「まさか…変身を…!?」

 

「…いや、わしにそんな能力は無い」

 

またまたズッコケそうになる。いや、今度は本当にズッコケてしまった。

 

「だが!にょほん!!」

 

気の抜けるような掛け声とともに、なんとオオナマズは膨れ上がった。2倍ほどの体長にまで巨大化したのだ。

カカロットはそれを見上げ、オオナマズはにやりと笑う。

 

「にょははははは!恐ろしくて声も出ないか?」

 

「呆れて声も出んだけだ」

 

「間抜けな魚…」

 

口々にそう言った二人に対して、オオナマズは体を揺らして怒る。

 

「なんだとぉ?」

 

カカロットはジャンプし、オオナマズの横っ腹に蹴りを浴びせた。オオナマズは横へ転がり、ひっくり返ってしまう。

 

「うぎゃああ~~!!」

 

「そろそろ諦めたらどうだ?アンタが何しようと無駄って事さ」

 

「ぐぬぬ…もう巨大化もやめだ!やはり変身も巨大化も弱虫くんが苦し紛れにするもんだ!」

 

オオナマズはそう叫ぶと、巨大化した身体を元のサイズに戻した。すると、その周囲にパリパリと電気のようなものが発生し、下の泥沼を伝ってカカロットの足に響いた。

 

「いてっ、電気か?」

 

「その通り!わしの電撃を喰らうが良い!!」

 

一気に特大の雷を放電した。電撃は全く反応できない程の凄まじい速度で迫り、カカロットとこいしに命中した。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。感電して動けないところに、オオナマズの尻尾による叩きつけがお見舞いされる。

 

「ぐげげ…普通の電気じゃない…な…」

 

「くぅ~…」

 

「にょはははは、当然じゃ!わしのイカズチは標的を確実に狙う。この世のどんな生き物も避けられぬのじゃ~!!」

 

さらに放たれた電撃を避けようと横へ動くが、電撃も同じように途中で曲がり、カカロットへ直撃する。

今までに感じた事のない激痛が全身を襲ったが、何故だかカカロットは冷静になっていた。というのも、現在教えを受けている茨木華扇による修行の中で、これと関わりのある助言をもらったことがあるからだ。カカロットはそれを思い起こそうとしていた。

 

 

『あなたは目でものを見ようとしてる。それじゃあ事の本質は見抜けないわ、心の目で見るのよ。目を閉じて、音、匂い、空気の流れ…その全てで完全に敵を見切るのよ』

 

 

「心の目で…」

 

カカロットは目をつぶり、次の電撃を待った。

 

「ちょ、ちょっと何してるの!?」

 

こいしが慌てた様子でカカロットの腕を引っ張る。

 

「諦めたのはお前の方だったのう!」

 

次の瞬間、今までの物とは比べ物にならないほど大きな電撃が二人に向けて放たれた。こいしは思わず目をつぶり、歯を食いしばった。

 

バチィ

 

「な…!」

 

しかし、カカロットは自分に向かい来る電撃を気を纏わせた腕で弾き飛ばした。続いてこいしに向かっていた電撃をも蹴りで跳ね返す。

 

「信じられん…わしのイカズチを…!」

 

狼狽えるオオナマズ。

 

「心を無にし、心の目で見る…また一歩最強へ近づいた」

 

カカロットはそう小さな声で呟き、その手にエネルギーを込める。溜まった気はその形状を変え、刃のような形に変化する。

それを振りかぶり、オオナマズの目の前で振り下ろした。

 

ジョキン

 

「おのれ、わしのヒゲを~!」

 

気の刃はオオナマズの髭の先端を切断してしまった。切ったヒゲを手に、カカロットは素早く後ろへ下がった。

 

「今日のところはくれてやる!また生えてくるもんだからな…だが次に会った時は容赦はせんからな!」

 

オオナマズはそう叫ぶと、急いで池の中に潜り込んでいった。

二人はポカーンとその様子を見届けた後、我に返った。

 

「…何だったんだアイツ、まるで夢でも見てたようだぜ…」

 

「で、でもこれで材料がまた手に入ったわ!皮じゃなくてヒゲだけど…」

 

「なぁに、このヒゲにだって皮膚はある…使えるはずだろう」

 

「次は確か、天界の桃の果汁ね」

 

「天界…ガーリックの宮殿に行ったときに通ったとこだな」

 

 

こうして超神酒の二つ目の材料を手に入れた二人。残る材料は天界の桃の果汁のみ…急げカカロット!勇儀が待っているぞ…!

 

 

「なるほど、あれが噂の…。確かにとんでもないパワーを持っているようね…これは良い記事になりそうだわ」

 

黒い翼をもつ影が、彼らの跡をつけていた…。

 

 

 

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