「ここが天界か…」
カカロットとこいしは最後の材料が有る場所へとやって来た。そう、ここは天界。幻想郷のはるか上空…しかも現世から離れた場所に位置する、天人たちが暮らす世界だ。危険などは一切無く、歌って、踊って、遊んで暮らすだけのまさに理想郷と言った様相を呈している。
「お、そこのお前、ここに住んでる奴か?桃がある場所を知らないか?」
「え?私のこと?」
若草の生えた広間で寝そべっていた少女にそう声をかける。
「そうだ」
「桃だったらすぐそこの木にあるじゃない」
少女はカカロットたちの後ろ側を指差した。その方を見ると、確かに立ち並んだ木に桃がたくさんなっている。
急いで木のそばにより、よじ登っていく。
「よし、これで材料はすべてそろった…」
カカロットは木から桃を5個ほどもぎ取ると、それをこいしの帽子の中へしまった。
「やったねカカロット!」
「ああ、これでいったんアンニンのとこへ戻ろう」
「まさか地上から桃を貰いに来る奴らがいたなんてね」
木に登っていったカカロットに、下から話しかけてきた先ほどの少女。天人である比那名居天子である。青いロングヘアーに、桃の実と葉がついた帽子をかぶっている。白い服に青いスカート、そのスカートには青空を思わせるような見事な模様が映っていた。
「ああ、お前が話の分かる奴で良かった。今までの連中、全員戦いをしかけてきたからな」
「別にいいのよ、こんなまずい桃腐るほどあるんだから」
カカロットは木から降りると、桃の入った帽子をこいしに渡す。
「感謝するぞ、じゃあな!」
「あ、ちょっと待って!」
二人は急いで天界から戻ろうとする。が、天子がそれを呼び止めた。
「急いで帰りたいんでしょ?だったらいいものをあげるわ。カカロットは空飛べないみたいだし」
天子が指をパチンと鳴らすと、空のどこからか何かが飛んできた。それはカカロットの目の前で停止する。
円錐を逆さにしたような形の岩で、縄がまかれている。上は平らになっていて、綺麗に磨かれているようだ。
「これは…?」
「天人の使う”要石”よ。私が持ってるのを一個あげるわ。これがあれば念じるだけで好きな所へ乗せていってくれるのよ、便利でしょ?」
「確かにそれは便利だ」
カカロットはそう言うと、要石の上に座った。後ろにこいしが座る。
すると要石は少し浮かび、カカロットはまずは五行山のアンニンのところまで、と心の中で念じた。すると、要石はなかなかに速いスピードで飛び始めたではないか。
「うおおおお…!」
要石はそのまま天界を抜け、地底世界へと向かうのだった。
「…あれがシュネックの言ってたカカロットって奴かぁ…言われた通り要石余計に持っててよかったわ」
「おーいアンニン!材料全て持ってきたぞー!!」
「そうかい!なかなか早かったじゃないか」
アンニンのいる五行山の頂上まで、要石に乗ったカカロットとこいしが戻って来た。アンニンの目の前で早速採って来た材料を広げた。
「うん、『龍向日葵の種の油』、『大ナマズの皮』、『天界の桃』…すべてそろってるね。じゃあさっき汲み取った酒をこの鍋に移しておいたから、そこにこれらを入れてね」
アンニンの横には、八卦炉にかけられている鍋ほどではないが、それなりに大きな鍋が置かれていた。中には先ほどの超神酒の元となる酒が注がれている。
カカロットはそこへ龍向日葵の種の油を流し入れ、大ナマズの髭を投入し、最後に天界の桃を握りつぶしてその果汁を大量に垂らした。
そして、アンニンが巨大化し、その鍋を持ち上げると八卦炉の火で短時間沸かした。するとどうだろうか…鍋の中の超神酒が強烈な光を放ったようではないか。
「これで超神酒の完成よ」
アンニンは鍋をカカロットの前に置き、大量に用意していた酒瓶に注いでいく。
「これが…」
「さぁ持って行きな。待たせてる人がいるんでしょ?」
「…ああ、感謝するぜアンニン様!んで、こいしはどうするんだ?」
「私はここにいるわ。新しい暇つぶしが出来そうだし、このアンニン様って面白いから!」
「おやまぁ、それじゃあここでアルバイトでもしてくれるかい?」
「いいよ、やるやる!」
「よーし、じゃあ二人とも元気でな。俺はもう帰るぜ」
カカロットはもう一度要石に飛び乗ると、手を振って見送るアンニンとこいしを少し見て、五行山を後にした。
要石は妖怪の山の上空に到達すると、今度は急降下を始める。地底世界へと通じる穴へ入り、そこを下へ下へと下っていった。やがて旧都が見え、勇儀の家がある場所へどんどんと近づいていく。
「遅いわねぇ」
「まぁあの超神酒を手に入れに行ってるんだ…速い方がおかしいだろうよ」
屋敷の入り口に座り込んでカカロットの帰りを待っていた華扇と萃香がそう話していた。
「…あれは!」
萃香が先にカカロットがこちらへ向かってきていることに気が付いた。カカロットを乗せた要石は二人の目の前で止まり、カカロットは降りた。その背中に背負った箱の中には超神酒の入った酒瓶が大量に入っている。
「まさか、もう超神酒を持ってきたの?」
「ああ、大変だったけどな」
カカロットたちは超神酒を持って急いで勇儀の寝ている部屋まで行く。
「勇儀!超神酒を作って来たぞ!!」
「それは本当かい?」
勇儀はむくりと布団から起き上がると、目を丸くして驚いた。
「嘘じゃねぇぜ、ほら」
取り出された超神酒を見て、勇儀の顔が輝いた。
「まさか本当に持ってきてくれるとは!」
「あぁ、早く飲んで元気出しなさい」
華扇が酒瓶を勇儀に手渡す。勇儀はそれを受け取ると栓を外し、一気に飲んだ。しばらく瓶を傾けて、一呼吸の間隔も開けずにすべて飲み干してしまった。
「…ああ」
「…ど、どうだ?」
「昔を思い出す…まるで、まだ私が山に居た頃の幻想郷を思い出すようだよ。原始の味だ…何も濁りの無い自然の味…幻想郷の全てがここに凝縮されてるって感じだ」
そのまま勇儀はガバッと起き上がった。その身体には以前と同様までに回復した妖気が満ち溢れていた。
「あまりの美味さに、嫌な記憶など忘れてしまうようだ!ありがとうよカカロット!」
「良いってことさ」
カカロットがそう言ったその瞬間、彼らのすぐそばから謎の光が現れた。
「な、なんだ!?」
「やぁ、カカロットと言ったかな?お前に会うのは二度目かな」
直後に聞こえたその声。その光の中から大きな扉のような物が出現し、声はどうやらこの中から聞こえるようだ。
そして扉が開き、中から何者かがのそりと現れた。
「お前は…!」
「久しぶりだな、今回はお前たちに知らせることがあって…」
「誰だっけ?」
しかし、カカロットはポカーンとした顔でそう呟いた。それを聞いたその人物は思わずズッコケた。
「摩多羅隠岐奈だ!!前にシュネックと一緒にいただろう!」
「あ、あー!そういえばいたなぁ!」
「摩多羅…一体何の用?」
華扇がそう言った。
「茨木よ、何もやましい知らせではないぞ、特別な催し物をするのでな」
「知り合いなのか?」
「ま、まぁ…」
「もう地上の連中には知らせてある。今から1か月後の7月15日に『第二回幻想郷一武道会』を開催するぞ!!」
本当は三話くらいでパパッと終わらせるつもりだったんですが、結局6話もかかってしまいました