全ての材料を苦難の末に集め、無事に超神酒を完成させ、勇儀に飲ませてやったカカロット。勇儀はすっかり回復し、以前の調子を取り戻したのだが…。
「もう地上の連中にはあらかた知らせてある。今から1か月後の7月15日に『第二回幻想郷一武道会』を開催するぞ!!」
その場へ突如として現れた、幻想郷の賢者の一人・摩多羅隠岐奈は、昨年に続き二度目の幻想郷一武道会の開催を宣言したのだった。
「何…武道会の開催だと?」
「くくく…そうだ。去年は八雲の奴が開催していたが、その時私は密かに思ったのだ…私もやってみたいってね!もろもろの準備を整えて、こうして開催を知らせて回ってるって訳だ。もちろん、今回も優勝賞品として私が持つドラゴンボールを贈呈しちゃうぞ」
「誰が参加するんだ?」
「あの博麗の巫女も、そして魔人ウスターも張り切っておったぞ」
「あの二人も出るのか…よし、それなら俺も出るぞ!」
「その言葉を待っていた。もう一度言う、開催は1か月後の7月15日だ、では当日会場でな…」
隠岐奈はそう言いながら不敵に笑うと、再び扉の奥へと消えていった。
「残念だが、私はもうとてもじゃないがついていけそうにないな…お前たちには手も足も出ないだろうからね」
勇儀と萃香が一緒になってそう言った。
「そんな事ないと思うが…まぁ気が向いたらまた出るといいさ」
「カカロット、武道会に出るとあらば、当日までさらに修行をこなすしかありませんよ。さぁ、道場へ戻りましょうか」
「ああ!」
カカロットは華扇の道場へもどり、更なる強さを目指して修行に取り掛かるのだった。
かくして、第二回幻想郷一武道会に備えて各々が準備を始めた。
「次こそはカカロットに負けないように…」
滝行を終えた霊夢は気合で体についた水を吹き飛ばしながら意気込む。
「ふん、次の優勝もこの俺様がいただいてやるぞ!」
ウスターは拳を握り締め、カカロットとの再戦と二度目の優勝を目指す。
「次こそは恥をかかないように…私だってずっと強くなったつもりですからね」
美鈴はあれから身に着けた新たな技をさらに磨く。
「…武道会…きっと奴らは必ずこの大会に来る!その時こそ父の仇を打つ時だ…待っていろ、必ず殺してこの幻想郷を私の思うがままにしてやるからな!」
そして、悪の賢者・ガーリックのその息子は父を倒したカカロットたちに対しての復讐の念を滾らせるのだった。
そして…一か月の時が流れた。
武道会会場、人間の里。
「よくぞ集まったな、お前たち!今日は昨年に続き、第二回幻想郷一武道会を開催するぞ!」
集められた選手たちの前で、隠岐奈が演説を始める。
「まずここへは65名の選手が集っている。昨年の武道会を経験した者なら知ってると思うが、その時は一つの舞台上で一斉に戦い、最後まで残った8名が本選へ出場できた。だが今年は違う、予選はまず4つのブロックに分かれ、それぞれで勝ち残った2名ずつが本選へ残れるのだ!そして、優勝した暁には何でも願いが叶う私のドラゴンボールを贈呈しようじゃないか」
がやがや ざわざわ…
「よう、霊夢」
「カカロットじゃない!アンタも当然来ると思ってたわ」
予選開始までの空き時間の中、霊夢とカカロットが対面した。会うのはガーリックとの一件以来だが、何故だかそれよりも長い期間顔を合わせていなかったような気がする。どうやら、お互いにあれから修行を続けて重ねてきたことを察したようだ。
「ふん、どうやら懲りずにまた来たらしいな」
と、あの魔人ウスターがふたりの間に割り込んでそう言った。前回同様、白いマントを羽織っての登場だ。
「ウスター…」
「今回も優勝は俺がいただく。完膚なきまでに納得のいくようお前たちを叩きのめし、ドラゴンボールも俺様のものだ」
「俺だって相当強くなったんだぜ…?負けやしねぇよ」
「わ、私だって…!」
「口も達者になったようだな。…!?」
その時、ウスターが何か嫌な気配を感じ取った。そして、バッと後ろへ振り返った。
ウスターの視線の先には、まるで子供のように見えるほど小柄な人物が立っていた。
「アイツがどうかしたのか?」
「妖精…?でも、どこかで見たような…」
その小柄な人物は、こちらの視線に気づいたようだ。薄い青緑色の肌に、大きな尖った耳と釣りあがった目。にやけた口元からは牙が覗き、こめかみに赤い模様が走っている。
「馬鹿どもが、気付かんのか…アイツはガーリックの子供だ」
「なん…ッ、ガーリックの…!?」
霊夢とカカロットに衝撃が走った。確かに、言われてみれば雰囲気や顔つきが何となく似ている気がする。子供…そう言われれば背丈が小さいのにも納得がいく。
ガーリックの子供はにやにや笑いながら後ろを向き、そのままどこかへ歩き去ってしまった。
「アイツに子供がいたなんて…でも、なんで…」
「大方、父の復讐と言ったところだろうか…しかも実力はガーリックを上回っているようだ…どうやら奴も修行を積んだようだな」
「あっはっはっは、これはこれは博麗霊夢!やっぱりアンタも来てたのね」
とその時、霊夢の後ろからまた別の声が聞こえた。
「げっ、アンタは…」
「この私、依神女苑もこの武道会に参加させてもらうわ!」
「知り合いか?」
「ええ、ちょっと前に色々と…」
依神女苑、時期的には昨年の武道会からガーリックとの戦いまでの間にあたる時期に「完全憑依異変」という異変を引き起こした黒幕だった。異変の目的は疫病神である自身が不特定多数の人に取り憑いて、富を巻き上げることであったが、霊夢に退治されてしまった。
「まさか今回も観客から金でも奪おうって魂胆じゃないでしょうね?」
「馬鹿ね、全然違うわ。何でも願いが叶うドラゴンボール…それがあれば私たち姉妹は一生裕福に暮らせるってわけよ!」
「あっっっそ!せいぜい頑張りなさい」
「えー、それでは予選試合のブロックを決めるため、クジをひいてください」
係員の指示に従って、集まった選手全員がくじを引き終えた。
「俺は1番、1ブロックの最初の試合だな」
「私は50番…3ブロックね。それにしても見事にばらけたわね」
「おや…やはり貴方たちも来てたんですね」
「あ、美鈴!」
そこに現れたのは、あの紅美鈴であった、雰囲気からして、前より相当強くなったのが分かる。
「今度こそは私が勝つので…そのつもりでいてください」
「ふっ、それは楽しみだ」
「それではいよいよ本選出場者を決める予選試合を始めたいと思います。それぞれくじ番号で指定されたブロックの武舞台の方へ集合してください」
カカロットたちはそれぞれのブロックへと移動する。
「舞台から落ちたり、気絶したり『まいった』と言ったら負けです。ただし対戦相手を死に至らしめた場合は即失格となりますので注意してください。ではさっそく1番と2番の方、上がってください」
「修行の成果、見せてもらうわよ…」
遠目から霊夢が様子を伺っていた。
カカロットが舞台上に上がると、対戦相手を見て目を細めた。
「久しぶりだなカカロット…この私を覚えているか?」
「ああ…ガーリックの時の雑魚妖怪だ」
なんと、カカロットの相手はあの鬼人正邪だった。
「この前の借りを返させてもらうぞ。そして殺してやる…私にとって優勝は興味のないことだからな…」
「勝手にしろ」
「では試合を始めてください!」
試合が開始すると、正邪は体に妖気を込め、筋肉を膨れ上がらせて巨大化して見せた。他の選手たちがその様子を見て恐怖に顔を引きつらせる。
「ぬおおおお!!」
拳を振りかぶり、カカロットに飛びかかる正邪。しかし、カカロットは直立したまま全く構えを取らない。
「あれがカカロットの構え…?完全に無になってる…気を全く感じられないわ」
それにもお構いなしの正邪の渾身のパンチがカカロットへ迫る。
が、それが直撃する寸前でカカロットの姿がふっと消えた。
「なに…ど、何処へ行った!?」
正邪はキョロキョロと左右を見渡す。しかし、戦いを見ている者たちは正邪のすぐ後ろにカカロットが移動していることに驚きを隠せなかった。正邪はカカロットの気配を読むことができず、後ろにいると気付くことができないのだ。
バキッ
「あが…」
そして、背後から背中に強烈な蹴りを浴びせた。正邪はそのまま前へ倒れ、気絶してしまった。
「き、気絶…1番の勝利です」
「どうやら今度も私が勝つのは難しいみたいね…」
心を無にし、気配を消す…超神酒の材料探しの旅の中で身に着けた新たなカカロットの技術を見た霊夢は、さすがに弱気になってしまう。
一方、カカロットの戦いを陰で見ていたガーリックの息子は不敵にほほ笑んだ。
(くくく…あんな程度の動きではこの私に勝つことは到底不可能だ。まずはカカロット、貴様から観客の見ている前でズタズタに引き裂いてくれるぞ…父の恨みを思い知るがいい!)
さぁ、ついに幕を開けた幻想郷一武道会!果たして、これから先どんな戦いが待ち受けているのだろうか!
天空璋と憑依華の異変ですが、これは両方ともこの物語上の空白の期間に起こっています。
天空璋は、霊夢とカカロットが命蓮寺での修行を開始してから幻想郷一武道会までの間、憑依華は幻想郷一武道会からガーリック戦までの間に起こった出来事です。