もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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ここからリメイク前には投稿していなかった、完全なる新エピソードになります。


第326話 「アザミの如く棘あれば!」

「だからねー、ピッコロ大魔王はちきゅうをしんりゃくしにきたオサルの怪獣と戦ったんだってー」

 

街中の公園の砂場、そこで遊んでいた女の子はふたりの友達に向かってそう話した。

 

「おれそれ知ってるよー。レッドリボン軍って悪い奴らをやっつけたのもピッコロ大魔王なんでしょ?」

 

「じゃーなんでピッコロ大魔王はワルモノなんてテレビで言ってたんだよ?」

 

「知んなーい、イジワルだったんでしょ」

 

女の子がそう言った時、ふと自分の後ろから影が差してきたので振り返った。すると、そこには座り込んで真剣な顔でこちらを見つめるサザンカの姿があった。学校の鞄を持ち、制服姿であることから下校途中であったらしい。

 

「そのピッコロって、今何してんの?」

 

真剣な顔のサザンカにそう言われた女の子は驚いた顔で友達と顔を見合わせる。

 

「昔にゆくえふめーになったってテレビで見たよ。そっきんだった怪獣もそれきりいなくなったし…」

 

「なんで行方不明になったの?」

 

と、サザンカが問い返した瞬間…

 

「知らねぇ。裏でぶっ殺されたんじゃねぇのォ?」

 

さらに自分の背後から聞こえたドスの効いた低い声を聞いて、サザンカはゆっくりと顔と目線だけをその方へ向ける。バックからの夕日に照らされる大柄な体躯…ドレッドの黒髪を後ろでまとめ結い、厚い唇に凶悪な面構えをした、ライダージャケットを着込んだ”女”だった。公園の入り口には大きな青いバイクが停めてある。

 

「アザミかよ…いつまでそんな面白くもねぇ乗りモンに跨ってる気だ?」

 

「お前にゃ言ってもわかんねぇよ。それよか、お前と決着がついたらもっと面白いだろうぜ」

 

サザンカとアザミは互いに向き合いながらゆっくりと歩き、遊具の無い広い場所へ移動する。その間にも、ふたりの間には異様に緊迫した視線が飛び合う。

 

「先週、オレのチームのヤツらがこの公園でテメェに金取られたってよ」

 

アザミはライダージャケットを脱ぎ捨て、サザンカに詰め寄る。

 

「おかしいな、ゼニ支払いてぇって言ったのは奴らだぜ」

 

次の瞬間、サザンカの顔と同じくらい大きなアザミの拳がミサイルの如く飛び、サザンカの顔面に命中した。しかし、同時にサザンカの蹴りがアザミの腹にめり込んでいた。

 

 

 

「なぁカズラ、聞いてくんねぇ?」

 

放課後、新入生向けの部活動の見学を終えて帰宅しようとしたカズラに、同じクラスの男子生徒が話しかけてきた。決して真面目そうな見た目ではないその生徒二人は、カズラと同じ中学からこの高校へ入学していた。

 

「なんだよ」

 

カズラは素っ気なさそうにそう答えた。

 

「D組にいる西中からきたヤロウが生意気でさぁ」

 

「今日はサザンカと一緒じゃねぇの?」

 

「知らねー。今日は見てないけど…まさか、サザンカにソイツをやっつけさせる気か?」

 

とカズラが答える。

 

「だってサザンカのヤツ、俺らが困った顔するとすぐケンカ引き受けてくれるしよォ」

 

「あんなヤベー女、それくらいしか使い道がねーじゃん。せっかくおだてて使ってやろうと思ったのにさ」

 

「あ…そ。ま、今日は諦めて明日探してみればいいんじゃ?」

 

「そうすっかー」

 

生徒二人組は背を向けて下駄箱の方へ歩き出す。

が、カズラは彼らの背中を見ながら顔をしかめ、その拳を握りしめる。

 

「あ、ちょっと待てよ」

 

それをカズラは呼び止め、彼らを振り向かせる。その瞬間、カズラは彼らの顔面を思いきり殴りつけた。

 

「な、お前何すんだ!」

 

ふたりは怒ってカズラに掴みかかって腹を殴り、ケンカが始まった。カズラは二人がかりでの攻撃になかなか反撃できず、壁に背中を叩きつけられ、何度も殴られる。鼻血が垂れるも、それでも相手に食いついて離れなかった。

 

「おー、おめぇ根性あるなぁ」

 

その時、横から別の誰かが声をかけてくる。

 

三人ともそちらに向くと、そこには例の「D組にいる西中からきたヤロウ」が立っていた。人相の悪い、黒髪のロン毛の男だった。

カズラと取っ組み合っていたふたりはゲッという顔でカズラから手を離す。

 

「話聞いちゃったぜ、サザンカとかいうやつにオレをシメさせるんだって?やってみろよ、アザミさんが黙ってねぇぞぉ」

 

「ア、アザミって…マジかよ…!」

 

アザミの名を聞いたとたん、ふたりは青ざめる。

 

「そうそう、あのアザミさんだよ。プロボクサーどもをぶちのめしたり、半グレ連中を一人残らずぶっ潰したりした、な。アザミさんのチームに入ってるからなぁ、オレは。くっくっく…おっかねぇぞ…マフィアも道あけて歩くってよ」

 

ヤロウはアザミの名前とその数々の荒くれぶりを喋り、それだけで自分が強くなった気になって満足気にニヤニヤしている。カズラとケンカしたふたりは相変わらず青い顔で縮こまっているが、そんな中、カズラがずいっと前に出た。

 

「知ってるよ。陸軍の大佐だった父親からえらく鍛えられたからな」

 

そう言うと、ヤロウは驚いたように口ごもりながら付け加える。

 

「よ、よく知ってんな…でもオヤジさんが亡くなってからおふくろが再婚するためにジャマだからって捨てられたんだぜ、あのヒト。苦労してんだよ…」

 

「捨てられたっていうか、叔父さんとこに引き取られたんだろ」

 

「お、おう…んでその叔父さんがひでぇ男で、毎日殴られながら無理やり車の修理手伝わされてたんだよ」

 

「でも触ってるうちにだんだん車とかバイクが好きになってきて、それだけは感謝してるって言ってたよ」

 

「そうさ、その修理工場が大メーカーのものになった時、その腕を買われて社長の養子になったんだぜ…っていうか、なんでおめぇそんなにアザミさんのコト、詳しいんだ…?」

 

「なんでって…アザミは小学生の時から知ってんだよ。今でもたまに会ったりするぜ」

 

ヤロウとふたりはこれまた鳩が豆鉄砲を食ったような顔で唖然とカズラの方を見ている。

 

「でもサザンカとアザミをケンカさせようとしたって無駄だぜ。確かにあの二人はよくケンカするし死ぬほど仲悪い癖に、決着ついたことはないんだよなぁ、いつも最後はぐだぐだで終わっちまってさ!」

 

 

 

一方、その頃。

公園で、サザンカとアザミは息を荒くしながら睨みあっていた。互いの顔はボコボコに腫れあがり、流れた血がポタポタと垂れている。

 

「なんでテメェは…オレの前に跪かねぇんだ…?」

 

「そんなへぼいパンチじゃ…片膝つくのもめんどくせぇよ…」

 

アザミはサザンカの胸ぐらを掴み上げ、サザンカもアザミの髪と耳を引っ張る。間に散っていた火花もいよいよヒートアップし、ついに最後の決着がつくクライマックスに突入しようかといった、その時…

 

「わははは、モス!そりゃ餌じゃないぞ!」

 

散歩中の飼い犬を公園で遊んでいた子供に差し向けて怖がらせ、それを見て笑っているオッサン。

 

「おい何やってんだババア!」

 

すぐ近くの交差点で、横断歩道をゆっくりと渡るおばあさんに暴言とクラクションを浴びせる若者たち。

それを見た瞬間、サザンカとアザミは取っ組み合うのをすぐにやめ、それそれの方向へ飛んでいく。サザンカは最低な飼い主をぶん殴って犬ごとぶっ飛ばし、アザミは車をひっくり返すほどの勢いで突進し、おばあさんをおぶって横断歩道を渡らせる。

 

「…またかよ」

 

そう言いながら、アザミは乗って来たバイクにまたがってエンジンをかけた。

 

「次こそは決着つけるぞ、サザンカ」

 

「こっちのセリフだぜ、ゴリラ女」

 

有耶無耶になったケンカの決着を次こそつけることを約束し、この場を去ろうとするアザミの背中を見送るサザンカ。

 

 

 

 

────────────────

 

─────────

 

──────

 

 

月の都、という異世界がある。人間が誕生する前の原始の時代、地球上には後に「月の民」と呼ばれる民族が暮らしていた。しかし、地球の生命の数が爆発的に増え、それによって生物たちの「生存競争」に巻き込まれることを危惧した月の民は、生命の気配が全く存在しない「月」へと移住するのだった。

月の民を束ねていた王、「月夜見王」の指示のもと、月に降り立った月の民はそこへ自分たちだけが暮らす都を作った。もともと月で暮らしていた玉兎たちを支配下に置き、月の民は繁栄と栄華を謳歌するのだった。

 

しかし、ここ数年の出来事である。

ロケットを製造し月へ降り立った博麗霊夢達一行、月への侵略を企てた純狐とヘカーティア・ラピスラズリとの一件、さらには月に出現したオカルトボール。月の民たちにとっては短い期間に立て続けに地上との深い結びつきが多発したことにより、地上より伝わって来た穢れの力によって月の都そのものの”寿命”が発生し、蝕まれてしまう。

そう遠くない未来、月の都が滅びる事を危惧した月の賢者たちはツキノカクと呼ばれるエネルギー発生装置を造り、そこに1000年分の地上のエネルギーを溜めこんだ八意永琳と蓬莱山輝夜を投入することでその問題を解決するように月夜見王を煽り立てた。

月夜見王はただちに軍隊を編成、幻想郷の破壊という名の浄化、八意と輝夜の身柄の確保、そしてドラゴンボールの入手を目的として、大規模な襲撃を幻想郷へ仕掛けたのだった。

 

 

 

「…どうやらドラゴンボールによる若返りの効果は終わっていなかったようね」

 

月夜見王は自分の手を見つめ体を見渡してようやく気が付いた。そう、彼の肉体は縮み、少年のような体つきに戻ってしまっていたのだ。今まで着ていた服がダボダボになって纏わっている。

ドラゴンボールの力で若返った月夜見王だが、その若返りの効果は時間経過により段階的に進んでいたのだ。既に若返りは最も力に溢れていた青年期を過ぎ、より力の劣る少年期にまで戻ってしまった。

 

「ちくしょう!俺は月の王だ!地上人なんかに負けてたまるか!」

 

再び攻撃を仕掛ける月夜見王。しかし、霊夢は軽くそれを避け、腹に強烈な蹴りを叩きこんだ。苦しそうにうめき声をあげる月夜見王の顔面にビンタをかまし、折り返して頭頂部に手刀を叩きこむ。

 

「ぐ、ぐは…ア…!」

 

「…やめだ」

 

追撃を加えようとしていた霊夢だが、突如その手を止める。

 

「なんだと…」

 

「もうアンタは今の私よりも格段に弱くなってしまった。そこで私はもうアンタを倒すことに意味を感じられない、地球を滅ぼすパワーを秘めたツキノカクも月と共に消えてしまったからな。それ以上若返りが進行することはないと思うが、安全な場所にいるっていう嫦娥と一緒にどこか遠い場所で二人で暮らすがいい」

 

月夜見王は鼻血を流したまま涙を浮かべながら霊夢を睨む。霊夢はそっぽを向くと、遠くにいるカカロットの居場所を目指して飛び立った。

 

「お、俺は月夜見だ…月の王だぞ…」

 

だが月夜見王には、それが屈辱であった。片手にエネルギーを溜め、放とうと狙いを定める。

以前の大人だった月夜見王なら潔く負けを認め、戦意を喪失していただろう。しかし精神も見た目相応に戻ってしまった彼は、まだ諦めることができなかった。自分を完膚なきまでに越えた地上人を、許すことができないのだ。

 

「俺は世界の王なのだ!!」

 

飛び去ろうとする霊夢の背中へ向けて、いよいよ渾身のエネルギー波を放とうとした、その瞬間だった。

月夜見王の目の前に突然現れた、ドラゴンボールにそっくりな球体。赤黒い水晶体の中に黒い三ツ星が入った暗黒ドラゴンボールだ。

それは月夜見王の胸に触れると、ぐにゃりとその体内へ入り込む。驚いて慌てる月夜見王だったが、次の瞬間に目、鼻、口といった顔の穴から赤黒い闘気を吹き出した。

 

「グオオオオオオオ!?」

 

「…なっ!?」

 

飛び去った霊夢は、背後から聞こえる月夜見王の雄叫びを聞いて振り返った。

今まで月夜見王がいた場所が赤黒い霧のような瘴気に包まれている。同時に、そこからめまいがするほどの強力な暗黒の気が発せられている。

その後、赤黒い霧が内側から払われる。すると、そこには最も戦闘力の高かった全盛期の姿にまで”成長”した月夜見王が立っていた。強力な月の民が有する黄金のオーラは赤黒く変色し、その目は全体が黄色く染まり、胸には謎の三ツ星のドラゴンボールが埋め込まれている。

 

───次の瞬間、博麗霊夢の胴体が、赤黒い気で生成された槍によって貫かれた。

 

…今、歴史が歪んだ。

 

 

 

 

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