もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第327話 「侵食する暗黒の瘴気!」

「で、アンタ結局どこの誰なのよ?」

 

サザンカも暮らしているブルマの家で、トランクスは正座していた。目の前には腕を組んで仁王立ちし、こちらを睨んでいるブルマがいる。トランクスは何故か、蛇に睨まれたように動けなかった。この時間、サザンカはまだ学校から帰ってきていない。

 

「名前はトランクスといいます」

 

「それは知ってる。アンタは怪我をして、ここで手当てしてあげた…その怪我の原因である戦いの時、ウチの屋根を壊していったけど…それはいいのよ、全然。でも、自分の素性を話せないような人を長く泊めておくわけにはいかないの」

 

ブルマの言う事も最もだ。厳しいブルマの前でハッキリとしないことを言って誤魔化そうとしてしまえば、長い事そこを問い詰められることになるのは容易に想像ができる。

かくいうトランクスも、そんなブルマの一面はよく知っている。仮にも、自分の世界においてはトランクスの実の母だからだ。

 

「えっと…その」

 

「…あたしがハッキリさせておきたいのは、アンタほどの使い手があれほどの怪我をするなんてただ事じゃないなと思ったのよ」

 

トランクスはそう言われて驚いた。

…このブルマは自分の世界の母さんと同一人物であっても、育ち方など違うところも多い。そのひとつが、こっちのブルマは亀仙流の武術を一通り修め、達人級の武道家でもあるという点だ。トランクスが秘める絶大な戦闘力を見抜かれてしまってもおかしくはない。

 

「隠そうとしたって無駄よ。あの時、倒壊した町の建物から邪悪な気の残穢を感じた。何かとんでもない事が起こってるのは分かってるわ」

 

…やはり、母さんはどこの世界でもすごい人だ。

トランクスはそう思い、観念した。

 

 

 

「なるほど…つまり、トランクス…アンタは元は別の並行世界にいた人間で、タイムパトロールと言う歴史の歪みを修繕する組織に属していて、拠点だったトキトキ都を襲撃された。そこに住む時の界王神っていう偉い神様に頼まれて、強い戦士を連れて帰らなければならない」

 

「その通りです。そしてトキトキ都へ帰るための入口を開くには…オレの持っている剣を、ドラゴンボールの力を使って治すしかないんです。そのドラゴンボールは暗黒ドラゴンボールという特別な種類らしく、普通のものとは異なり、誰が作ったのかも分からない。しかもそれは過去の歴史にバラバラに飛び散っているんです」

 

「それを集めるのをサザンカに手伝ってもらいたい、って事よね」

 

ブルマはトランクスの話を一通り聞き終えてからそう言うと、煙草を咥えて火を点けながら椅子に腰かける。

 

「…まあ分かってると思うけど、あの子はあたしの子供じゃないのよ。博麗霊夢とカカロットって言う人たちの子供なのよ。そのふたりが死んでしまった時に、訳あってあたしが引き取らせてもらったの」

 

トランクスは心の中で、「通りで」、と思った。この時空はやはり自分が生まれた世界や、セルゲームでセルと戦った世界とは色々と大きく道筋が異なっており、サザンカのあの驚異的なパワーも、カカロット…つまり()()()()()()()()の血を引いているとなれば合点がいく。

 

「あの子には武術なんて教えたことはないけど…やっぱりサイヤ人の本能って言うのかしら、すぐにあたしじゃ手に負えないくらいの力を見せるようになった。それでも、それこそ我が子のように大切に育ててきたつもりよ。あんたは下手をしたら取り返しのつかない事になるかもしれない戦いに、サザンカを巻き込むってことよね?」

 

そう言われたトランクスは何も言えなくなり、沈黙という形で肯定した。

 

「まあ、サザンカが帰ってきたら、どうするつもりなのか…あたしからちゃんと聞いておくわ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

ブルマは立ち上がると、トランクスがいる部屋を後にした。

 

(そう、これは俺の勝手な都合だ…申し訳ないのは分かっている。でもオレは…時の界王神様を放っておけないんだ…)

 

その時だった。トランクスの目の前が突然光り輝き、紫色の羽毛に覆われた鳥…ドギドギが姿を現した。

 

「君はあの時の…!」

 

ドキドギはトランクスの心に語り掛ける。

 

(時空を駆ける戦士、トランクス。とある歴史で暗黒ドラゴンボールの瘴気が感じられた。さっそく行こう)

 

 

 

 

丁度、アザミはペダルに足をかけてバイクに飛び乗ろうとしていたところだった。ふと、まだ公園の入り口に立っているサザンカの方に振り返ると、見知らぬ男が彼女に話しかけていた。

 

「サザンカちゃん!次の暗黒ドラゴンボールが見つかったんだ!一緒に行こう!」

 

「うおお、いきなりすっ飛んできてびっくりするじゃねぇか!」

 

その様子を見たアザミは眉間にしわを寄せ、歯を噛み締めた。

 

「あのクソヤロォ…!いつの間にあんなイケメンと知り合いやがったんだァ…?」

 

「ドギドギ!僕らをその歴史へ連れて行ってくれ!」

 

トランクスがそう言うと、ドギドギの力によってトランクスとサザンカの周囲に光の粒が舞い始める。そしていよいよ、暗黒ドラゴンボールが観測された歴史へ飛ぼうとした瞬間…

 

「待ちやがれサザンカ!テメェ…!!」

 

走って来たアザミのタックルがサザンカにぶち当たり、サザンカに押されたトランクスまでも思わず尻餅をついて倒れ込んでしまう。そのふたりと、もつれたままアザミは、同時に別の歴史へと転送されて行った…。

 

 

 

 

──────────────────

 

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──────

 

 

「うわあっ、一体何がどうなってんだ~?」

 

アザミの声がこだました。

ここは、かつて幻想郷と月の都を結んでいた第四槐安通路(だいよんかいあんつうろ)と呼ばれる異空間の中である。周囲はまるで星々が瞬く宇宙空間の中に居るかのようなコズミックな風景を彩っており、上下の果てには赤い網目模様が走っているのが見える。この槐安通路は地上と比べて重力が軽く、体はふわふわとゆっくり落下しているようだった。

 

「テメェ、アザミ…!なんでお前までここにいるんだよ!?」

 

サザンカにそう言われたアザミ自身も、サザンカの片足に掴まってぶら下がりながら、突然こんな場所へ来てしまった事に動揺していた。

 

「まあ、しょうがないなぁ…」

 

トランクスが困ったようにそう言って笑うが、次の瞬間には表情が険しくなった。

 

「あっちの方に禍々しい気を感じる。気を付けて挑んでくれ」

 

恐らく、この間のように暗黒ドラゴンボールに憑りつかれた戦士が近くに居るはずだ。

 

「ああ…めんどくせぇ、すぐに終わらせてやるよ」

 

サザンカはそう言うと、足を振り上げてアザミを蹴り飛ばし、トランクスに抱き止めさせた。

 

「いってぇ!何しやがる!?」

 

「ちょっ、サザンカちゃん!ひとりで行くつもりかい!?」

 

そのトランクスの声も空しく、サザンカはあっという間にこの場から消えていった。

 

 

 

「危なかった」

 

霊夢は、自身の霊力を使ってハリボテのように簡単な分身を作り、それに攻撃を受けさせることで難を逃れていた。腹に風穴が空いた分身はその場で消滅した。

夢想天生を発動した霊夢は目を固く閉じ、その他の感覚を鋭くすることで独自の霊力センサーのようなものを働かせ、周囲の様子を認識している。それによって感じ取った月夜見王の変化を分析する。

ドラゴンボールで若返りを願った月夜見王は、老人の姿から順々に若返っていき、それに伴い戦闘力も全盛期の状態へとどんどん上昇しながら戻っていった。が、若返りは過剰に進行し、月夜見王は幼い少年の姿にまで戻ってしまい、戦闘力も全盛期を過ぎて大幅にダウンした。

だが、今の彼はどうだろう…?

 

「ギギ…ゴ…オ…!」

 

赤黒い瘴気のようなオーラを纏うその姿は再び全盛期に戻り、その溢れるパワーは霊夢が計り知れないほどに高まっている。黄色く染まった眼球を見開き、胸には赤黒い謎のドラゴンボールらしき球が埋め込まれており、そこを中心に上半身に赤い血管のような筋が走っている。明らかに異常な変貌だとわかった。

 

「おい、アンタ一体どうした?何があった?」

 

霊夢がそう問いかけるも、月夜見王は唸り声をあげ、歯ぎしりをするばかりで何も答えない。

しかし次の瞬間、月夜見王は一瞬にして霊夢の背後へ回り込み、その腕を振り上げていた。全く反応できなかったことに驚きつつ、とっさに体の向きを変えて回避する霊夢。が、その一撃が空ぶった際の風圧だけで吹っ飛ばされ、宙を舞う。

 

「くっ…!」

 

「ゴ…ァガハハハハハハッ!!」

 

月夜見王は不気味に笑いたてながら再び霊夢に突進する。夢想天生の超回避能力でそれを躱そうとする霊夢だが、咄嗟に右手首を掴まれ、引き寄せられる。そのまま月夜見王に両腕を拘束され、背中に膝を押し当てられる。

 

「くっ…!!」

 

肩の関節と背骨がミシミシと軋み、その苦痛に顔をゆがめる霊夢。だが、月夜見王にとっては、まだ技をかけるために霊夢を組み伏せただけにすぎない。これから霊夢の体を破壊するために、力をかけるのだ。

だが、霊夢は高速で体を回転させ、その拘束から脱した。その回転力を維持したまま空中を飛行し、月夜見王の脳天めがけてドリルの様に突撃する。

 

ガキン!

 

しかし、月夜見王は片手を掲げてそれを受け止め、反発した瘴気と霊力によって霊夢は吹っ飛ばされた。月夜見王はすかさずに、振りかぶった腕に瘴気を圧縮して細くした槍を構え、霊夢に狙いを定めると、瞬時に投げ飛ばした。

 

(やられる…!)

 

しかし、目の前に迫っていた「暗黒月破槍」は突如間に割って入った何者かに蹴り飛ばされ、方向を変えてはるか彼方へ消えていく。

 

「あ、あんたは…!」

 

そこには、堂々と仁王立ちして月夜見王を睨みつけるサザンカの姿があった。

 

 

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