もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第33話 「因縁渦巻く武道会!」

それからも、予選試合はどんどんと進んでいった。その中で、ウスターにガーリックの子供と言われた選手の戦いがあった。

カカロットたちは、彼の戦いがどんなものなのか、そっと見物していた。

 

「では、はじめ!」

 

その対戦相手の妖怪は、舞台に上がるなり彼を笑い飛ばした。

 

「ははははは!とんだチビもいたもんだな、妖精か何かか?」

 

だが、ガーリックは何も言わず、表情すら変えずに飛び跳ねた。素早い動きだった…カカロットたちでなければその動きを見切れなかっただろう。

相手の顔の高さまでジャンプすると、その顔を軽く蹴りつけ、場外へと叩き飛ばした。

 

「33番の勝ち!」

 

「なるほど…確かにただ者ではないな」

 

そして、4ブロックの試合が行われてる方へ目を向けた。丁度ウスターと妖怪が戦っており、その妖怪が盛大な蹴り技を繰り出した。

が、ウスターは腕を組んで目を瞑ったままそれを足で受け止め、そのまま思い切り蹴り上げる。カウンターを受けた相手は弧を描くように吹き飛び、会場の壁に激突した。

 

「うひゃ~、アイツも容赦ねぇな」

 

「では次、9番と10番の方お願いします」

 

「はい」

 

「お前は…」

 

「む、そう言うお前はカカロット!やはりまた来ていたのだな」

 

舞台上に上がろうとしているのは、あの豹牙天龍であった。

かつてはあの豊聡耳神子から天才と称され、その慢心から邪悪な拳法家の道を進んでしまっていた。が、カカロットとの勝負で負けた事により心を入れ替え一から修行し、昨年の武道会に出場した。

 

「ところで、今回はあの鬼の奴らはいないんだろうな?姿が見えんのだが」

 

「ああ、アイツらなら今年は行かないって言ってたぞ。あっちもウスターが怖いらしい」

 

「ウスター、か…俺と当たらなければいいが…」

 

「10番の方、はやく!」

 

「あ、すみません今行きます!」

 

天龍は急いで舞台上に上がった。しかし、対する相手を見てその表情に余裕さが消えた。

カカロットもそれに気づき、対戦相手をまじまじと見た。

 

「…お前は…!」

 

「ちぇりゃあああ!!」

 

圧に負けた天龍が、相手へと飛びかかる。流れるような素早い突きの連打をその身体へ浴びせ、最後に渾身のパンチを鳩尾に叩きこんだ。

 

「な…」

 

しかし、天龍だけがその不思議な手ごたえを感じた。パンチを打ちこんだはずの拳に全く感触が無い。これはまるで…まるで相手の腹にぽっかりと穴が開いていて、そこを拳が潜り抜けてしまったような…。

 

「どうした人間、その程度か?」

 

天龍の対戦相手がそう言った。紫色の髪に、するどい黄色い目…。さらに天龍の拳を掴むと、その背中から隠していたボロボロの骨だけになったような翼を現した。

 

「スカーレット!!」

 

同じく戦いを見ていた美鈴がそう叫んだ。

 

「本選へ出るのはこの私だ!」

 

スカーレット…レミリア達の姉であり、かつてスカーレット家を追い出された狂気の吸血鬼。殺した両親にかけられた呪いで下の名前を失われてしまったが、健在なその強大な魔力は妹たちをはるかに凌駕する。

復讐の為に紅魔館を襲撃したが、カカロットたちによって幻想郷の遥か彼方へ吹き飛ばされた。

 

「ぐ…!」

 

スカーレットは天龍の顎を掴み、絞めながら持ち上げる。そして地面へ叩きつけ、そのままバウンドさせて場外まで吹き飛してしまった。

 

「やはり生きていたのか」

 

美鈴が冷や汗をかきながらそう言った。あの時、確かに倒した…と思っていたが、かなりの不死性を誇る吸血鬼だ、あの程度で死んではいなかったのだろう。そしてあの時からさらに力を蓄え、この大会に参加していた。

 

「紅美鈴…そしてカカロット。お前はこの私がぶちのめしてやるわ」

 

 

 

カカロットたちに恨みを持つ者が、こぞって参加していた。ガーリックの息子、鬼人正邪…そしてスカーレット。参加者たちは本選出場をかけて戦いを繰り広げ、ついにベスト8が決定したのだった。

 

「どうやら決まったようですね。私、本選の実況をします式神です」

 

「よお」

 

「あ、お久しぶりですね。やはり来ると思ってましたよ」

 

審判は前回の参加者であるカカロットや霊夢たちを見てそう言った。

 

「おほん…さて、これで本選に出場できる8名が決定したわけですが、ここでもう一度くじ引きをしてもらいます。これで本選のトーナメント表が決定します」

 

8名は審判の式神の前に並び、用意された箱の中の札を順番に引いていく。そして、トーナメント表の出た番号の箇所へ名前を書いた。

 

「これでトーナメント表が決定しました!」

 

お互いの対戦相手を見渡し、これから始めるであろう激戦に期待を寄せる。

 

 

『一回戦第一試合、スカーレットvs紅美鈴!第二試合、博麗霊夢vs明嵐!第三試合、カカロットvs依神女苑!第四試合、ウスターvsガジュニア!!』

 

 

「ガジュニアだと?ガーリックの息子でガジュニアってか?」

 

「それが本名なのかは知らんが愉快な野郎だな」

 

思っていた通りに本選まで残ったガーリックの息子を見ながらカカロットとウスターがそう話した。”ガジュニア”はその会話を聞いているのか聞いていないのか、じっと完成したトーナメント表を見ながらにやにやしている。

 

「最初の対戦相手がお前だとは…」

 

一方、美鈴がスカーレットとにらみ合っていた。

 

「ふふふ、お前は私が優勝した後、たっぷりと痛ぶってから殺してやるぞ」

 

霊夢は自らの対戦相手として当たった”明嵐(めいらん)”という女格闘家を見ていた。恐らく何のパワーも感じないため人間であり、予選での戦い方を見るに、その実力は人間としての達人レベルに達していると見える。

確かに動きはかなり洗練されており、常人ではまず敵わないだろう。しかし、それは常人から見た達人レベルであり、見たところ気も扱えぬ以上、恐らく本選出場者の中で最も未熟だろう。

 

(だけど…)

 

しかし、霊夢の勘が一縷の不安を告げていた。この明嵐、何か裏がある。確証はないが、とにかく自らの勘がこの女の何かを感じ取っていたのだ。

 

「まさか怖気づいたのかしら?」

 

眉をひそめた霊夢の前に、あの依神女苑が立ちふさがった。派手な扇子で顔の前を仰ぎ、挑発するような眼で笑う。

 

「そんなわけないでしょ。アンタなんかカカロットにやられて一回戦敗退よ」

 

「言ってくれるじゃない。あんな奴より私の方が強いってところ、とくと見せてあげるわ」

 

「それでは、本戦は今から30分後に行います!それまで待機していてください!」

 

 

 

会場は昨年と同じ場所、同じ武舞台を使用しているが、その武舞台の形状が正方形ではなく円形に変えられていた。そして武舞台を取り囲うように段になった観客席が設けられており、それはさながら古代ローマのコロッセオを彷彿とさせている。

 

「天龍は予選敗退…してしまったんだね」

 

「申し訳ございません…」

 

観客席にいた神子たちの元へ戻った天龍。師匠である神子へ負けてしまった事を告げ、静かに顔を下へ向けた。

 

「確かに、アナタは私より実力は上かもしれない、だが技術が甘かったのだろうか」

 

「ですが、カカロットや霊夢たちは無事に勝ち抜いてますよ、ここは彼らの戦いを見て学ぶべきと思います」

 

「カカロットと霊夢は勝ち残っているのですね、さらに成長した姿、見せてもらいましょうか」

 

神子たちの隣には、聖も座っていた。どうやらあの二人が本選まで残れたことを知って喜んでいるようだ。

 

 

 

「まもなく本戦第一回戦第一試合がはじまります!選手の方は集合してください」

 

アナウンサーの声が聞こえると、残った8名は待機室にまで移動する。

武舞台上に立ったアナウンサーの式神はマイクを使った軽いパフォーマンスを披露し、その手に隠岐奈の持つドラゴンボールを掲げて見せた。

 

「会場の皆さま、お集まりいただきありがとうございます。これより本選を開始したいと思います!前回同様、優勝者には、何でも願いの叶うドラゴンボールを贈呈します!!」

 

掲げられたボールには、中に青い星が5つ入っており、これは5番目の五星球である。

 

「ではさっそく始めます、一回戦第一試合!!スカーレット選手対紅美鈴選手ッ、入場をお願いします!!」

 

アナウンサーの合図とともに、武舞台と隣接している武道館から、スカーレットと美鈴が現れた。

その武道館の屋根の上に置かれた椅子には、隠岐奈が座って戦いを見物しようとしている。

 

「さて…私の新しい部下に相応しいのは誰かな?」

 

 

今、各々の因縁と思惑がひしめく武道会が始まった!!

 

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