もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

337 / 551
第337話 「壊天瓦解!黄金の旋風!」

「かああああああああ…!!」

 

サザンカは叫ばずにはいられなかった。突然身体に湧き上がってきたエネルギーは体内で暴れ狂い、心拍数と体温を急激に高め始めたからだ。同時に、周囲の大気を揺るがすほどの気が発せられている。

 

「す、すごい力だわ…!」

 

幻想郷が…いや、地球そのものが小刻みに震え、霊夢は少年を庇いながらその場に突っ伏してしまう。また、この妖怪の山の地下深くで戦闘を行っていたウィローやカカロット達も、尋常ならざるエネルギーの波動を感じ取っていた。

 

「なんの騒ぎじゃ…!?」

 

「…なんだよこりゃ…一体、どんな野郎が、この上にいやがるんだ…?」

 

超サイヤ人2となったことで鋭く逆立っていた金色の髪が、全身から溢れるオーラに揺らされながら後ろへ向かって靡く。その髪はゆっくりと、だが見る見るうちに伸びてきていた。

全方位へ向けて閃光のように眩い黄金のオーラが展開され、そして次の瞬間、弾けた。

 

「うがああああああああああ!!!」

 

バチッ… バチバチッ…

 

太陽の如き黄金の気に包まれ、その周囲には今まで以上に激しいスパークが舞い散り、サザンカ自身の身体そのものが淡く発光しているかのようだ。

それよりも目を引かれるのは、今までのサザンカの超サイヤ人は背中まで後ろ髪が垂れており、超サイヤ人2になるとその後ろ髪も鋭く持ち上がっていたが、今度は全ての髪が後ろへ向かって伸び、さらに腰のあたりまで長くなった。また前髪が二房、左右へ向かって垂れている。

さらに眼窩上隆起が起き眉毛が消え、元のサザンカとは別の方向で凶悪な面構えとなっていた。

 

「…ほう、驚いたな」

 

紅蓮は小さく呟いた。

 

「アタシもどういうことかわかんねぇけど…これなら負けそうにねぇぜ」

 

睨みあう両者。一触即発の空気が流れ…最初に仕掛けたのはサザンカだった。一気に駆け出し、紅蓮に殴りかかる。紅蓮は霊尾でそれをはじき返そうと構えるが、突然サザンカの姿が消えた。

 

「…!?」

 

それに驚いた瞬間、紅蓮の腹へサザンカの拳がめり込んだ。

思わず体をくの字に曲げ、唾を吐き出す紅蓮。サザンカとの戦いの中で初めて苦痛を伴う打撃を受けた紅蓮は目を見開き、顔を歪める。

サザンカは、どうだ、と言わんばかりににやりと笑うが、次の瞬間に腹へ強烈な衝撃を感じて前のめりになった。肺の空気が全て押し出され、せき込む。紅蓮が反撃の拳をお見舞いしたのだ。

しかし、すかさずサザンカも蹴りを紅蓮の側頭部へヒットさせ、すぐに紅蓮も同様に蹴りを放ち、サザンカの脇腹へ当てて見せた。

 

「すごいわ…!あのふたりは全くの互角よ!」

 

「う、うん…」

 

霊夢はサザンカと紅蓮の戦いを見てそう言った。怨霊の少年も驚きを隠せない様子で頷いているが、どうやらその驚きは戦いの様子によるものだけではなさそうだった。

 

「小娘、貴様は先刻に、モノサシがどうだかと抜かしていたな…?それはどういうことか説明しろ!」

 

紅蓮はそう言いながらサザンカの顔面を殴る。血の混じった唾がサザンカの口から飛び、地面に垂れる。が、サザンカは怯まずに頭を前に突き出し、紅蓮の顎へ頭突きを喰らわせる。

 

「あぁ…!?アタシそんなこと言ったか?」

 

「ぐっ…言っていただろうがたわけ!貴様のモノサシじゃこれが最高なんだとか何とかな!」

 

紅蓮は反撃の拳でサザンカを殴りつける。さらに蹴りや殴打、そして霊尾を縦横無尽に振り回す事による攻撃の応酬を繰り出し、サザンカは成すすべなくそれらを喰らい続けてしまう。

 

「私の息子は人柱として妖怪に捧げられた…しかし妖怪は昔と何も変わらず、何も省みておらん!息子の死は無意味だった、全く価値のない最低な人生だった!私はあの子の人生が最低ではないと証明するために、この世の妖怪を一匹残さず鏖にせねばならないのだ!!」

 

「だから眠みぃコト言ってんじゃねぇ!」

 

サザンカはボロボロになりながらも、紅蓮が言葉を強めた際に生じた攻撃の隙を見て跳躍し、顔面へ膝蹴りを叩きこんだ。

 

「テメェの子供の人生を最低だったなんて決めつけてかかってんじゃねぇよ!!その子はいつもどんな顔をしてた?どんなことを言っていた?よく思い出してみろ!!」

 

さらに、サザンカは全身を覆っている弾けるスパークを右腕に集中させ、右腕が青白く輝く炎のようなオーラに包まれる。そして紅蓮の下腹部に埋まっている暗黒一星球目がけて狙いを定め、紅蓮が怯んでいる間に渾身の一撃を叩きこむのだった。

紅蓮はサザンカの攻撃によって与えられた衝撃で白目を剥き、後ろへ大きく仰け反りながらも、遠い昔の記憶を思い出す。300年も昔…永く眠っていた間に忘れてしまっていた…ほんの些細な出来事まで。

 

──おっ母、ネコ飼っていい?

 

──おっ母の作った粥が一番うまかよ

 

──おっ母…

 

気付けば、紅蓮の目からは涙の筋が流れていた。

 

「人はみんなそれぞれ心の中に”モノサシ”ってモンがあってよ…自分の基準っていうか、アタシ的には最高だった…みたいな、価値を測るモンでさ…でも、わかるだろ?アタシのモノサシとテメェのモノサシ、テメェの子供のモノサシももちろん違う、他のヤツももちろん違ぇのよ。だから他人の人生を勝手に評価しちゃならねぇし、他人に自分の人生を評価させちゃならねぇんだ。自分の人生は自分のモンだからな…って、アタシを育ててくれた人が言ってたんだがな…」

 

サザンカは紅蓮を諭す。

 

「ごめん…晴太…」

 

紅蓮はそう呟くと上を向き、数秒してから顔を下げる。すると、その顔からさっきまでの涙は消え失せており、以前と変わらない冷酷な表情でサザンカを睨みつけた。

 

「だがそれはそれじゃからのぉ。私があの子の…ひいては貴様の人生を勝手に評価していた事は悪かったなぁ。だが私のモノサシじゃあ、妖怪を根こそぎぶっ殺すのが正しい事だからなぁ」

 

「…そーかよ、そういうことならどっちのモノサシの方が強いか、ぶつけ合おうじゃねぇか!」

 

それからの戦いは、互いが一歩も譲らぬ凄まじいものだった。互いが本能的に気付いていた。どちらのパワーも互角であり、ならば勝敗を分けるのは精神力…つまり、モノサシの力強さが決定付けると。

紅蓮は霊尾を地面に叩きつけ、衝撃波を放ってサザンカを怯ませるとともに地中から岩塊を隆起させ足元から突き上げる。が、超サイヤ人3となっているサザンカは飛び出してきた岩塊を足場として利用し蹴りつけると前方へ向けて跳躍し、紅蓮に迫る。平然とそれを見据える紅蓮は鼻先まで拳が迫ったところで瞬間的に移動して姿を消し、サザンカの頭上で回し蹴りを構える。

 

「うおっ!」

 

サザンカは咄嗟に腕を顔の横に掲げてそれをガードすると、強すぎる威力を前に大きくよろめいてしまう。それを隙と見た紅蓮はさらに続けて蹴りを仕掛けるも、サザンカは上へ飛び上がると身を翻しながらその脳天へ拳骨をお見舞いする。

視界に火花が散り、意識を手放しそうになる紅蓮であったが、頭上へ向けて霊尾を突き出すと、サザンカは紅蓮の後方へ着地する。そこを狙ってさらに霊尾を四方八方へ縦横無尽に振り回して攻撃する。

 

「ぬうう…!!」

 

だがサザンカはそれを躱しながら周囲を駆け、苛立った紅蓮は唸る。そして、再び全ての霊尾を地面に叩きつけて衝撃波を放った。しかも今度は一度きりではない。

 

ドン! ドン! ドン!!

 

間髪入れずに連続で攻撃を放ち、襲い掛かる衝撃を前に耐える事しかできないサザンカだが、再び右腕に気を集中させ青白いオーラを纏わせると、それを前に掲げたまま衝撃波に向かって突っ込んだ!

その拳はまるでガラスを破るように衝撃波を破壊しながら突き進み、紅蓮の胸に命中する。

 

「カハッ…」

 

苦し気に息を乱すが、すぐに反撃の蹴りをサザンカの鳩尾に叩きこみ、吹っ飛ばす。想像を絶する苦しみに襲われるサザンカだが、溢れ出る超サイヤ人3の気がそれを和らげてくれる。

血の混じった唾を吐き、態勢を整えたサザンカに向けて、紅蓮は次なる一手を仕掛けようとしていた。展開した5本の霊尾を自身の前で纏め合わせ、一本の巨大な槍を形作り、それに自身の霊力と瘴気を充填する。

 

「『博麗剛鎚(ハクレイハンマー)穿竜(せんりゅう)』」

 

そのまま槍の切っ先を向けたままサザンカに突撃していく。咄嗟にそれを両手で掴むように受け止めると、紅蓮も負けじと霊力と瘴気を後方へ噴射しながら威力を高めてくる。

 

「ふんんん…!!」

 

サザンカも歯を噛み締め、額に筋が浮かび上がるほどに力を込める。全身を覆っていた黄金の気はさらに激しく、バーナーの炎のように鋭く膨れ上がる。

 

「フッ…どうした小娘?私のこの攻撃を見事破って、証明して見せろ…貴様のモノサシの方が強いとな!」

 

「うるせぇ…よ…!モノサシってのはなァ、好き勝手人さまに迷惑かけていい言い訳にするモンじゃねぇんだよ…!」

 

「何だと…!?」

 

「教えてやらァ、『人殺すのがオレん中じゃ最高』、『騙して金取んのが最高』…そんなモノサシが世の中でまかり通るわきゃねぇ…だから子供は子供のうちに、大人からちゃんとしたモノサシってモンが何なのか教わって、それを杖にして生きてかなきゃならねぇんだ」

 

「うるさい、甘ったれた小娘のくせに…!私は母親から妖怪は滅ぼすべき邪悪な存在だと常日頃教わり続けた!それに間違いはないはずだ!私はそれしか知らなかったし、私を憎悪の沼に落とした全ての事柄が”そんな時代だったからしょうがない”で片付く…進んだ現代に住む貴様に分かってたまるかァ!!」

 

「しょうがなくねぇよ」

 

サザンカは静かに、しかし強くそう言い放つと、紅蓮の束ねた霊尾を両脇に挟み込むようにして掴んだ。

 

「なっ…!?」

 

「どんな時代だろうが関係ねぇよ。正しいモノサシの使い方ってのを、大人はガキに教えていかなきゃな」

 

そして次の瞬間、サザンカは脇に抱えていた紅蓮の霊尾を思い切り引き千切って見せた。

 

「そ、そんな…まさか…!」

 

紅蓮は狼狽え、ゆっくりと後ずさる。

 

「だから大人もガキも、しょうがねぇなんて理由で死んじゃいけねぇんだよッ!!」

 

紅蓮の顔面にサザンカの全身全霊を込めたパンチがクリーンヒットし、そのままサザンカは紅蓮を押し倒し、下から隆起してきた岩盤に叩きつけるのだった。

 




今の状態の紅蓮の外見は、最終決戦仕様の鬼舞辻無惨(白髪)におっpaいがついた姿を想像してください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。