もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第338話 「乱れ咲く連爆の華!」

紅蓮はサザンカによって顔面を殴られたまま地面から突き出した岩盤に後頭部から叩き付けられ、そのまま砕けた岩盤の残骸の中に小さなクレーターを作って倒れ込む。

一歩も譲らぬ勝負の果てに、そのまま紅蓮は白目をむいて気を失い、未だ超サイヤ人3となったまま意識を保っているサザンカにとって最大の好機が訪れた。

 

「オラァ!このままケリつけてやる…!」

 

サザンカは紅蓮の下腹部に浮き上がっている暗黒一星球に狙いを定め、拳を構える。このまま暗黒一星球に攻撃を加え、寄生による支配から精神を解放すれば、晴れてこの暗黒ドラゴンボールが手に入る。

 

「いっけぇ───!!」

 

戦いを見守っていた霊夢も、最後の一撃を繰り出すサザンカへ向けて思わす声援を送る。

 

プシュー…

 

「えっ…!」

 

しかし、サザンカに異変が起こった。全身を包んでいた激しい黄金のオーラが消えたかと思えば、長くなっていた髪型も通常の長さの黒髪に戻り、超サイヤ人化そのものがサザンカの意思に反して解除されてしまったのだ。

 

「クソ…こんな時…に…」

 

サザンカはフラフラと数歩歩くも、その直後に気を失い、ゆっくりとうつ伏せに倒れ込んでしまうのだった。圧倒的な戦闘能力と爆発的な気を与えてくれた超サイヤ人3であるが、其れゆえに消耗はけた違いに激しく、満足に全力を揮える時間は10分程度しかないらしい。

お互いに頭を突き合わせるような体勢で気絶した両者はピクリとも動かず、乾いた風が周囲に吹きすさぶ。

 

「ダ…ダブルノックアウト…」

 

霊夢は息を呑みながらそう呟き、この決闘は引き分けに終わったのだと悟った。

 

「う、うん…どっちもすごかった…」

 

怨霊の少年も戦いの決着について上手く言葉に表せないでいた。それに加え、サザンカと紅蓮のやり取りを聞いていると自分の中に眠っていた、何か大事なものが心に蘇ってくるのを感じていた。

しかしその時、突然この場の誰のものでもない拍手の音が響き、霊夢と少年はそれに気づいてあたりを見渡す。

 

「だ、誰!?」

 

「ええ、まさに信念と信念をぶつけ合った決闘…素晴らしい勝負でしたね」

 

ライはそう言うと、手に持っていた何人か分の影を放り投げ、空いた両手で拍手する。

気絶しているトランクス、そして意識はあるものの痛めつけられ身動きのできないアザミとカズラが地面に落とされ、転がった。

 

「う、うう…」

 

「クソ…あの野郎…」

 

「アナタたち大丈夫!?」

 

すかさず霊夢が駆け寄って声をかける。ふたりもトランクスも命に別状はなさそうだ。

ライは倒れ伏している紅蓮の側に降り立ち、ゆっくりと近づいていく。

 

「厄介そうな暗黒ドラゴンボールの宿主を倒してくれてありがとうございますと、そちらで相打ちになっているお嬢さんにお伝えください。私はこれを頂いていきますよ」

 

紅蓮を蹴って仰向けにさせると、その下腹部に埋まっている暗黒一星球を奪い取ろうと手を伸ばす。

 

ドウン!

 

が、寸前でライの顔面にどこからか飛んできた気弾が命中し、爆発した。霊夢がライへ向けて攻撃を放ったのだ。しかし、ライにとってそれは全く効いておらず、ぐるりと首を傾けて霊夢を睨む。

 

「…無駄なことをしましたね。今の一発が無ければこの歴史に住まう者であるアナタ方に手を出すことはしなかったのに…たった一度の余計な過ちで、アナタ方の人生は今…最低のどん底に落ちるのですよ」

 

ライはそう言いながら、不気味なほど丁寧に微笑んで片手を霊夢らの方へ向け、そこへ紫色のエネルギー弾を作り始める。霊夢は怨霊の少年を庇うようにして彼の前に立ち、ライを睨みつける。

 

「やってみなさいよ…!」

 

「では遠慮なく」

 

そして、いよいよ手の中の光が爆ぜようという時…

 

「人を助けようと動いたことの…何が最低だというのじゃ」

 

ライの背後で、倒れたはずの紅蓮が立ち上がっていた。下腹部に埋まった暗黒一星球もいまだ機能しており、サザンカとの戦いで多大なダメージを受けるとともにかなり消耗したはずだが、その様子は全く感じられず、凛とした態度でライに詰め寄る。

 

「愚か者は貴様の方じゃのぉ。貴様のモノサシで、この者らの人生を勝手に評価するな」

 

「まだ暗黒ドラゴンボールの寄生が解けていませんでしたか。では私が直々にアナタを捻りつぶすことで奪って差し上げましょう」

 

紅蓮とライがにらみ合う中、後ろから怨霊の少年が声をかける。

 

「あ、あの…」

 

しかし、その直後にライが攻撃を放った。手に溜めていた紫色の気弾が緑色の鮮やかな放射状のエネルギー波として発射し、紅蓮ごと霊夢らを消し飛ばそうとする。

が、その正面に立った紅蓮は一瞬で背中の霊尾を復活させ、それを前方へ向けてライのエネルギー波を割るようにして防いだ。

 

「紅蓮…!」

 

霊夢が心配の声をかける。

しかし、敵の攻撃を裂いている霊尾を一気に目いっぱい広げると、その敵のエネルギー波は散らされ、消滅する。

 

「ほう」

 

ライは少し驚いたように目を開き、口をとがらせて小さく呟く。

紅蓮は胴体ががら空きになったライへ接近し、その胸に掌底突きを放つ。あえてそれを受け、胸を貫くかのような衝撃を受けるライだが、平気な顔でにやりと笑うと、紅蓮の顔下半分を片手で掴み、持ち上げた。

そして次の瞬間、ライの掌から紫色の光が漏れたかと思うと、蛍光色のような緑色の爆発が巻き起こった。

爆風でライの手の中から弾きだされた紅蓮が宙を舞う。爆発の直撃を受けた両頬と口元は赤く焼けただれ、傷ついた口内からは大量の血が流れている。

 

「ああっ…!」

 

霊夢と少年が心配そうに声をあげる。

だが紅蓮はしっかりと地面に着地し、展開した霊尾を縦横無尽に振り回して自身の周囲を球状に薙ぎ払い続ける。

ライは余裕を崩さぬ悠々とした態度で歩いて近寄り、鞭のようにしなりながら飛び交う霊尾一本一本を見切り、それに的確な一発を与えて無効化しながらグングンと紅蓮の間合いに侵入していく。

 

「ただいまー」

 

そして拳を大きく振りかぶって構える。焦る紅蓮だが、ここまで大ぶりなパンチであれば避けることができる、とタカを括って回避の体勢を取るが、次の瞬間、そんな大ぶりな構えからは考えられない速度で迫ったパンチによって顔面を殴られていた。

 

「くっ…!」

 

ボッ

 

微かに何かが爆ぜる小気味の良い音が聞こえた。と思えば、再びありえない速度でのパンチが命中する。

 

ボッ ボッ

 

また一発、一発と紅蓮が全く反応できない速度で攻撃が襲い掛かる。

紅蓮はあえて大げさに吹っ飛ぶことで距離を取り、冷静に敵の攻撃手段を見定める。そして分かった。ライは攻撃を放つ瞬間、腕の後ろで小規模の気の爆発を起こし、その爆風を利用して限界を超えた速度でパンチを繰り出していたのだ。何度も聞こえた小気味のいい音はその際の爆発の音だった。

さらに、ライは自身の背後でも爆発を起こすことで、同様にその爆風に乗って紅蓮に急接近、強烈な蹴りを喰らわせて紅蓮を宙へ弾き飛ばした。

 

「がは…!」

 

紅蓮はそのまま地面に落下し、ぐったりと倒れ込む。

 

「まあこんなものですかね。暗黒ドラゴンボールに寄生された宿主は異常な戦闘能力を得るようですが…それを見越して設計された私にかかれば大したことはありません」

 

ライはそう言いながら踵を返し、まず霊夢と少年を消し去るべく再び手にエネルギーを溜め始める。

だが、紅蓮はガバッと起き上がると跳躍し、ライと霊夢たちの間に降り立つ。

 

「思ったよりもタフですね」

 

紅蓮の下腹部に埋まった暗黒一星球は既にその肉体から外れかけており、今にも地面へ落ちてしまいそうだった。それに伴って、紅蓮の全身に走っていた赤黒い筋のような模様は範囲が大幅に縮まり、白くなっていた頭髪も黒く戻っていた。が、紅蓮は外れかけたドラゴンボールを無理やり押し込んで体に埋め込み直し、再びその瘴気を浴びて全身に先ほどと同じ模様を走らせ、髪も白くなる。

 

「もう少し…私に力を貸せ」

 

そんな限界も近づいていた紅蓮へ対し、ライは容赦せずに緑色のエネルギー弾を発射し、それを紅蓮は霊尾を振るって相殺する。鮮やかな緑と紫の爆炎が発生し、さらに連続で放たれるライのエネルギー弾を次々と霊尾で砕いていく。

 

「それよりも…小僧よ」

 

未だ絶え間なく襲い掛かるエネルギー弾を防ぎながら、紅蓮は少年に話しかける。

 

「先刻は…生前の貴様の人生を最低だと言って…すまなかった」

 

「…でも、確かに僕の死は何の役にも立たなかった…だったら、最初にあなたが言った通り、最低だったのかも…」

 

「…全部思い出したのか?」

 

紅蓮は聞こえるか聞こえないかというぐらいの小さな声で、少年には顔を見せないままそう聞いた。少年は、紅蓮とサザンカの戦いと問答を見ていた時点で、すでに記憶から薄れていた生前の記憶というものをすべて思い出していた。

 

「う、うん…」

 

「ネコは、可愛かったか?」

 

「うん…」

 

「母親は…優しかったか?」

 

「うん…!」

 

「そうか…。それでも、そういうのを全部ひっくるめて考えても…最低だったといえるか?」

 

「ううん…そんなことなかった!」

 

怨霊の少年は、目の前で背中をこちらへ向けて語り掛けてくる紅蓮に対して、頬に大粒の涙を滴らせながらそう叫んだ。紅蓮の表情はこちらからはわからない。

 

「だったら言って見せろ。本当に大切な者が側にいて、幸せだったのだな?だったら胸を張って言い張れ。自分の人生は最高だったとな」

 

「紅蓮、アンタ…」

 

しかし、そこで霊夢は気付く。紅蓮は暗黒一星球から奪い取れるだけのエネルギー全部を絞りつくし、それを自身の肉体を使って爆発させようとしている。刺し違えてでもあのライという男を倒すつもりだ、と。

 

「さぁ、貴様らは今のうちに遠くへ行くのじゃ。コイツは私が倒す」

 

 

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