もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第340話 「炎の如く、日々を力強く生きろ」

ライが消えていったあと、サザンカたちは一気に脱力し、その場にへなへなと座り込んだ。

 

「これで一件落着か?」

 

と、そこへ紅蓮が歩み寄り、サザンカとトランクスに声をかけた。そんな紅蓮の姿は、髪は黒く戻り、その全身に走っていた赤黒い紋様は一通り消え失せていた。そして、下腹部に埋まっていた暗黒一星球は無くなっており、それは紅蓮の右手に握られていた。

 

「お前…自分で外したのか?」

 

「これか?恐らく、これは寄生した対象の辛い記憶や恐怖を呼び起こし、精神に傷を入れてそこに付け入るのだろう。ならばそのトラウマを克服すれば寄生による支配を断ち切れる。私は自分でそうした。まあ…さっきのあの妖獣は、無理やり引き剥がされたようだがな」

 

そう言いながら紅蓮は暗黒一星球をサザンカに手渡した。

 

「これが目当てなのじゃろう?なら、それを持って自分らの場所へさっさと帰れ」

 

「お、おお…ありがとな」

 

「色々あったけど、これで一星球もゲットだな!」

 

「ガウッ」

 

額に浮かんでいた暗黒六星球をライに奪われたことで暗黒ドラゴンボールの寄生を解かれた禍虎が音もなく現れた。5メートル近くはあった体は元のサイズである3メートルほどに縮み、背中でわずかに立ち上る紫炎を除けば普通の虎と変わりない様子だ。

 

「おうおう、なにドラゴンボール取られてんだよオメーよー」

 

サザンカとアザミがそう文句を言いながら禍虎に飛びつき、背中に抱き着いたり顎をわしゃわしゃしたりしてじゃれあい始める。が、禍虎の目線は怨霊の少年…本当の名を晴太…の方に向いていた。

と、その時、トランクス、サザンカ、カズラ、アザミの体が淡く発光し、黄色い光の粒があたりに漂い始める。この時代の暗黒ドラゴンボールを回収し終えた事で、ドギドギがサザンカたちを元の時代へ戻そうとしているのだ。

 

「また行っちゃうの?ゆっくりお茶でも飲んでいけばいいのに」

 

霊夢がサザンカにそう問いかける。

 

「悪いがそういうわけにはいかないらしい…。正しい歴史ってのが大きく変わっちまうんだと」

 

「よくわかんないけどそういうことなのね…。あ、そうだ!前も聞こうと思ったんだけど!」

 

「ん?」

 

「アナタ、なんでカカロットに似ているの?」

 

霊夢自身、おかしなことを聞いてしまったと思っているだろう。しかし、ただ顔が似ているとかそういう話ではなく、佇まいというか、雰囲気というか、ふとした時の細かい表情などが面影があると感じたからだ。

 

「カカロット…?そりゃ…アタシの親父の名前だぞ」

 

「え…!?」

 

サザンカの返答に対して霊夢が驚いた瞬間、彼らの姿はパッと消えてしまった。サザンカたちは元の時空へと帰っていったのだ。

その場には、霊夢と紅蓮、そして禍虎と晴太だけが残された。

 

「ガウッ」

 

禍虎が小さく鳴くと、晴太の体も薄くなって消えかかっているのに気づいた。

 

「あれ…?」

 

「きっと、もうあの世へ昇ってしまうのね」

 

と、霊夢が悲しそうに言った。300年前に亡くなった子供である晴太は生前の死に方を悔やんで怨霊となっていたが、今回の戦いで後悔を拭い去り、自らの人生を肯定できたことでその魂が成仏しようとしてるのだ。

 

「そうなんだ…せっかく、僕の人生が最高だったって思えて…強くなれたと思ったのに…」

 

晴太も残念そうに呟き、禍虎も大人しくしゃがんで消えゆく晴太を見つめている。

 

「晴太」

 

紅蓮が声をかける。

 

「もしも貴様が昇った先が天の浄土だとしても、地獄であったとしても、新たなる生を受けようとしても…炎の如く、日々を力強く生きろ。それだけできれば…また…私やトラジと会えることもできよう」

 

「うん!じゃあ、また!」

 

じゃあ、また。あの時に交わすことができなかった言葉を交わした紅蓮と晴太は互いに微笑み合い、別れるのだった。禍虎…いや、トラジも寂しそうな顔でそれを見届ける。

 

「紅蓮…」

 

その背中を後ろから見ていた霊夢は、紅蓮が負わされた悲しみの運命を痛感した。

だがその時、突然地面が激しく揺れ、なんとこの妖怪の山の反対側の斜面を突き破って特大のエネルギー波が空へ向かって伸び、それと共にDr.ウィローが大気圏外へ向けて吹っ飛ばされていった。

 

「どうやら、下の方は決着がつきそうだ。貴様も早く行ってやったらどうだ」

 

「え、ええ…そうね。アナタはどうするの?」

 

「私は…さあ、どうするか。私の体は300年のうちにずいぶんと変わってしまってな…これ以上歳は取ら無さそうだ。適当に、気ままにやってみるかのぉ」

 

紅蓮はそう言うと、スタスタとどこかへ向かって歩き始める。それを見たトラジも駆けだし、紅蓮の横について一緒にどこかへと向かう。

 

「お前も来るのか?面白いものは何もないぞ」

 

「ガウン」

 

 

 

 

「よし…ウィロー!幻想郷の元気玉を喰らいやがれ!飛んでいけ──ッ!!」

 

カカロットは空にうっすらと見える赤い点に向かって、元気玉を勢い良く投げ飛ばした。雲を突き抜け、思いを乗せた元気玉が天高く昇っていく。それは遠すぎて詳細に確認することはできなかったが、元気玉は地上へ向けて急降下してくる赤い光にぶつかると、青白く弾け、その勢いのままに赤い光をぐんぐんと宇宙空間へ押し出していき…一気に爆ぜた。

 

「ふう…終わったな」

 

ポッカリと大穴の開いた妖怪の山の中で、カカロットは空に映る爆発を見ながらそう言った。ウィローの気が途端に小さくなり、やがて何も感じられなくなった。

 

「おーい、大丈夫だった?」

 

紅蓮を見送り終えた霊夢が大急ぎでカカロットの元へ駆け寄ってくる。

 

「おお…こっちは何とかなったぜ。あの女はどうなった?」

 

「色々あって、ひとりでどこかに消えちゃったわ。別に悪さしようとしてた訳じゃないみたいだし」

 

「そうか…」

 

そこへさらに天龍と美鈴も走ってくる。

 

「はははは!久しぶりだなカカロット、神子さまに頼んで上等な酒でも取り寄せて飲むか?」

 

「いえいえ、カカロットは紅魔館で貯蔵している選りすぐりのワインを飲むべきですよ」

 

他にも、カカロットが帰って来たと知った様々な者たちが押し掛けてきた。カカロットが解放されたのは、実に2時間も後の事だったらしい。

そんなカカロットを見ながら、霊夢は考える。あのサザンカは、どうにも前からカカロットの面影があると感じていた。そして、彼女は言った…「カカロットは父親の名前だ」、と。それにもうひとつ…サザンカからはカカロットのものの他に、別の誰かの面影も見えていた。今まではそれが誰だったのか分からなかったが、紅蓮と並んでいるところを見て気付いた。サザンカと紅蓮は似ていた、と。

だとすれば。自分自身こと博麗霊夢は、300年前の博麗の巫女である紅蓮と血縁があり多少似通っているかもしれない。つまり…サザンカは、霊夢の面影も持っていたということだ。

 

「…まさかね」

 

しかし、考え過ぎか。それは万が一にもありえないだろう。

霊夢はそう考えながら、人ごみから解放されたカカロットに寄り添うのだった。

 

 

 

 

 

 

…───ここは「時の巣」。

時を生み出す鳥であるトキトキが住まうトキトキ都、その中央に位置する時の巣であるが、ここは暗黒の瘴気で満たされ、赤紫色の不気味な霧が立ち込めている。

崩れかけた宮殿のような建物の中に足音が響く。

 

「ただいま戻りました」

 

帰還したライがそう言いながら広間へ入り、頭を下げた。その先の暗がりの中に、複数人の人影が揺らいでいる。その中には、ライと共に時の巣を襲撃した”滾り爆ぜる仮面のサイヤ人”らしき姿も見える。

 

「あらおかえり。で、どうだったの?」

 

その時、ひとりの女性がライに声をかける。

 

「ええ…とりあえず六星球のみ回収できました」

 

ライがそう報告をした瞬間、紫色の気でできた鞭のようなものが、ライの上半身を打った。さらに続けて鞭はライを引っ叩き、ライは膝をつき頭を抱えて次の衝撃に耐える。

 

「何考えてんだテメェはよぉ~~ッ!せっかくふたつ出現した時空へ行かせたのに、ひとつだけとはどういう事だオイィ!ライよぉ、テメェの頭ん中は脳みそじゃなくクソでも詰まってんのかぁ~~!?」

 

「ご、ごめんなさい姉さん!でも結局奴らも最後にはここへ来る手筈ですし、とりあえず一個だけでもいいと思ったんですよ…!」

 

「…まあ確かにそうだよなぁ、テメェのいう事も正しいなぁ。まあ顔上げてみろ」

 

そう言われたライが顔をあげたとたん、声の主の女は飛び蹴りをかまし、ライの顔面へ命中させた。ライは後ろへ倒れ込み、そのまま床を滑っていく。

 

「それはそれとして、アホな弟には罰を与えねぇとなぁ~~」

 

姉はそのままツカツカとライに歩み寄り、足を振り上げる。

 

「まあその辺にしといてよ」

 

が、その声が聞こえると、姉はピタリと動きを静止させる。そして後ろを振り返り、闇の中にいる複数人のうち、ソファにもたれ掛かっていた男へ目を向ける。

 

「ライの言う通りでもあるよねぇ。まあボクとしては、結果さえきちんと功を奏せば過程ややり方はどうでもいいんだよね。だって人それぞれ違う考えややり方があるわけだから、そこをどうこう言ってもしょうがないよねーん」

 

「アナタ様がそう言うのであれば…」

 

姉はゆっくりとライから離れる。

 

「あ、ありがとうございます…サラガドラ様」

 

ライは口の端から流れる血をぬぐいながら、引きつった微笑みを浮かべる。

 

「君らは…特にライはボクの温情で使ってやってるんだ、そうやって愛想よくしとけよ」

 

ライが持ってきた暗黒六星球が床を転がり、サラガドラと呼ばれた人物の足元に転がる。その赤い水晶体に反射した姿は、怪しく笑っていた。

 

 

 

 

 




「ゴールデン・ジェネレイション」の内容を再投稿した際に、ミラ・フィーネの名前をミル・フィーネに変えたのは、ゼノバースのミラの名前を出すときにややこしくなることを考慮したからだったんですね。
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