もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第345話 「羅刹激昂、天を衝く!」

シロナの一撃によって後ろへ倒れ込み、上半身が地面にめり込んでしまった大猿ターレスはピクリとも動かない。

 

「えっと、倒したけどどうやって暗黒ドラゴンボールを取ればいいの?」

 

シロナがそう言うと、トランクスが大声で上空から返す。

 

「サザンカちゃんはボールを直接触って取り除いていたはずだ!」

 

「なるほどねえ」

 

シロナは崩れた岩盤の瓦礫をひとつずつ退かし、大猿ターレスの顔を出す。ターレスは目を閉じ、気絶しているようだった。体から発せられていた瘴気も消えている。

そして、その顎先に埋め込まれている暗黒二星球に手を伸ばす。

 

「えっ!?」

 

しかし、シロナの指が触れようとした瞬間、暗黒二星球は小刻みに震え出し、それに合わせて再び周囲に瘴気が出現する。

 

「グオアアアアアッ!!」

 

大猿ターレスの体も瘴気に包まれ、彼自身も苦しむかのように目を覚まし、仰向けのままジタバタと暴れ出す。

 

「きゃっ!」

 

予測しなかった行動によって、シロナは大猿ターレスの腕にはたかれ、勢いよく吹っ飛んで地面を転がった。シロナは慌てて起き上がり、事の成り行きを目撃する。

立ち上がった大猿ターレスは瘴気に包まれ、苦し気に暴れ回りながらも、その身体はみるみるうちに小さくなっていく。だが、どうやら様子がおかしく、ただ大猿化が解除されて元の姿に戻ったのではないらしい。

確かに体は縮んだが、その背丈や体格は人の倍近くはあり、その全身は黒い体毛に覆われている。しかし上半身が異常に筋肉質に発達し、頭部からは左右へ伸びる一対の長い角を持ち、頭髪にあたる部分から背中にかけての体毛は黄金に染まっていた。

 

「オアアアアアアアアアウ!!」

 

そして、耳をつんざくような甲高い咆哮を轟かせ、全身から赤黒い瘴気を稲妻のような形へ圧縮して全方位へ爆発させた。

 

「大丈夫かい!?」

 

トランクスがすかさずシロナの元へ駆けつけ、肩を貸そうとする。が、シロナの腕を掴んだ瞬間、その腕が力なく関節の逆側に垂れ下がったのでひどく驚いた。

 

「シロナさん、腕が…!」

 

「え?あ、ホントだ…でも大丈夫だよ」

 

シロナがトランクスの助けを断ると、いつの間にか腕は元に戻っていた。それどころか、顔や足に受けていた小さな傷もほとんど治っている。

 

「君は一体…」

 

「私、普通の体じゃないんだよね、無駄にしぶといし。死ぬ気で自爆しても、全身ぶつ切りにされても死ななかったなぁ」

 

唖然とするトランクスを尻目に、シロナは正気に侵食されたターレスへと歩みを進める。

 

「でも、これでやっと久々に面白い戦いができそうかな?」

 

シロナとターレス、両者は互いに睨み合う。そして、乾いた風が一陣凪いだ瞬間、ターレスは剛腕を振り下ろし、シロナを狙った。

が、シロナは後ろへ飛んでそれを躱し、反撃のパンチをお見舞いしようと繰り出した。だが、ターレスは頭突きでそれをあえて受けると、その角に当たったシロナの拳が跳ね返される。

反動で怯んだシロナが視線を正面へ向けた時には、そこにターレスの姿は無かった。嫌な予感がし上を見上げると、上空へ跳んでいたターレスは体を丸めて縦に回転しながらシロナへ向けて突っ込んできた。慌てて飛びのくように回避すると、回転突撃が当たった地面が大きく割れ、凄まじい瘴気の波動が全方位へ放たれる。それを蹴りで防ぐシロナだが、地面にぶつかった際にバウンドして彼女の背後へ降り立っていたターレスは、両腕を振り上げ、ふたつの拳を思いきり叩きつけた。

 

「くっ…!」

 

それをもろに喰らったシロナは間一髪受け身を取るも、足元の地面が筋状に盛り上がっているのに気付く。それは、今ターレスが地面に叩きつけた拳が埋まった地面から一直線に自分の方へ伸びてきていた。そして次の瞬間、地面に走ったその筋から暗黒の瘴気が噴き出し、シロナは上空へ跳ね上げられてしまう。

 

(空中で受け身を…!)

 

シロナは全身から気を放って空中でブレーキをかけるが、その時には既に飛び上がったターレスが目の前にまで迫っており、互いに目が合った。

ヤバイ、と思うも、シロナが次の行動を選択する前に、ターレスの振り下ろした拳がシロナを吹っ飛ばした。

 

「シロナさん…!」

 

シロナは離れた岩場に激突し、その瓦礫の下敷きとなる。トランクスが慌ててその場へ降り立って岩をどけようとするも、そこへターレスが現れ、トランクスを睨みつける。

 

「くっ…」

 

トランクスも超サイヤ人に変身し、臨戦態勢に入るが、次の瞬間。

 

バコン!

 

崩れた岩山が内側からはじけ飛び、黄金の閃光と共にシロナが飛び出してくる。

 

「ソイツは私ひとりにやらせて」

 

「…わかった、ただし…本当に危なくなった時は俺も戦うからね」

 

シロナは親指を立ててサインすると、トランクスは再び空の上へ退避していく。ターレスもシロナとの一対一の勝負を臨んでいるようで、腕の拳を地面に突き、四つん這いになって構えている。シロナは腕を回し、首の骨を鳴らしながらゆっくりと、そして堂々とターレスへ歩み寄っていく。

 

「アンタの事は知ってるわ…ターレスさん。今のこの時間から少し前、幻想郷に現れて、父ちゃんやお母さんと争った…目的は、父ちゃんを仲間に入れてフリーザを倒しに行くため…」

 

その時、不意打ちかのようにターレスは素早く拳を振るう。が、シロナはそれで腕で逸らし、懐へ潜り込むように素早く接近すると胸をアッパーで殴り上げる。

 

「ここでの惨劇も聞いた限りは知ってる。でも、その惨劇があったから…今私たちは平和に暮らせている。だから本当に悪いけど、私は負けるわけにはいかないの!」

 

ターレスの体が宙に浮き、シロナは首元の毛を掴むとそのまま背負い投げの要領で地面へと叩きつけた。背中が地面を割るほどの勢いで激突する。

 

「オアアアアッ!!」

 

しかし、ターレスはすぐに跳ねるように起き上がり、タックルでシロナを吹っ飛ばす。そして拳で一撃、もう一撃、さらに追撃、と次々とシロナを殴り続ける。これにはさすがのシロナも耐えきれず、全身を打ち砕かれながら宙を舞い、そのまま成す術なく落下してしまう。

 

「…ぐあ」

 

起き上がろうとするも体に力が入らない。

 

「負けるわけにはいかない…か…それは、俺たちも同じことだ…」

 

今まで理性を失っていたかに思えたターレスが、初めて言葉を発し、シロナへそう言った。シロナは目を見開いて少し驚きつつも、仰向けになったまま口を開く。

 

「驚いた…」

 

「今の俺の力があれば楽にフリーザ如き捻り殺せる…奴は今ここで俺が仕留める。だから邪魔をするな…」

 

「申し訳ないけどそれはできないのよ。正しい歴史の流れってものがあるらしくて、それを守らなきゃいけないのよ。私だって…あそこで伸びてるフリーザをここでぶっ倒せば…違った未来もあるかもって思うけど…」

 

「それは俺も同じことだ。何度でも言ってやろう…邪魔をするなァ!!」

 

ターレスが大きく開いた口の中から赤黒い稲妻を集約したかのようなすさまじいエネルギーブレスを放出した。

それはシロナへ一直線に向かい、その体を包み込んだ。シロナは、久方ぶりに感じた戦闘の焦燥を味わった。背骨の髄から熱い液体がジワリと染み出し、こめかみが焼けるように熱くなる。

 

──死んだ父ちゃんとお母さん、そして遠い場所で暮らしてるサザンカの為にも私は絶対に負けないから!

 

シロナは、かつて自分がどこかで発した言葉をふと思い出し、ハッとした。

そうだ…いつも、自分の視界には空が広がっていた。でも、その空は自分の目の前でどんどん濁っていき、最後には結晶のように砕けてしまう。霊夢とカカロット、魔理沙、記憶兵器の仲間たち、そしてスカー。今まで自分と出会い、支えてくれた人は皆、もういない。

ならば今度は自分が支える番だ。いつまでも青く澄み、どこまでも続く安心の空に、自分がなる。その空の下で健やかに暮らすのは…サザンカだ。

 

「ハアアアアッ!!」

 

そう思った瞬間に、堰を切ったように湧き上がってくる力。その奔流が赴くままに、全身から吹き出す黄金のオーラはより大きく、激しさを増し、スパークがいくつも弾け出す。

その衝撃によってターレスのエネルギーブレスははじき返され、シロナがいた場所を中心として小さなクレーターが形成される。

 

「何だと…!」

 

そこに立っていたシロナは、まさに怒髪天、超サイヤ人よりもさらに鋭く逆立った金髪、生まれては弾けてゆくスパークを纏ったその姿。

 

「第2ラウンド、始めようよ」

 

超サイヤ人2への覚醒を遂げたシロナが、そこに立っていた。

 

 

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