もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第346話 「六花が静かに眠るなら」

「ふふふ…なかなかいい街じゃあないの。ねぇサザンカ、ちょっとあそこでコーヒーでも買ってきなさいよ」

 

パストは、サザンカとカズラを連れて街へとくり出していた。テイクアウト可能なカフェの前で、パストはサザンカにそう命じた。

 

「…」

 

しかし、サザンカはそっぽを見上げたまま何も反応しない。その様子に苛立ったパストは、サザンカの足を思い切り踏みつける。

 

「聞こえなかった?私はコーヒーを買って来いと言ったのよ。すました顔してんじゃあないわよ。それとも、まさかあの男と私の感覚が共有されているコト、忘れたわけじゃないわよね?」

 

サザンカは仕方ないといった様子でカフェの中に入り、少ししてテイクアウトのコーヒーを買って戻ってきた。

 

「…ほらよ」

 

「あらありがとう」

 

パストはコーヒーに口をつけ、数口飲む。

しかし次の瞬間、飲むのをやめたパストはカップの蓋を開け、その中身をサザンカの腹目がけて引っ掛けた。かなり湯気が出ていることから、淹れたての熱い状態であったはずだ。

 

「まずい。なんでこんなの買ってきたの?」

 

「なっ…お前それはないだろ…!」

 

パストのあまりに横暴な行動に怒りを露わにしたカズラが肩を掴みながらそう言った。

が、パストは全くそれを意に介さず、それどころかこれ見よがしにサザンカの顔面に肘鉄を叩きつけたのだった。そして、カズラの方へ顔を向け、「何か文句ある?」と言いたげに冷ややかな目で睨みつけた。カズラはそれに気圧され、一歩後ろへ下がるもすぐに反撃の言葉を絞りだそうとするが、

 

「よせカズラ…お前は黙ってろ…ッ…」

 

サザンカが鼻血を流しながらそう言ったので、カズラは腑に落ちない顔で静かになった。

 

「あはははははは!!そうそう、そういう顔よ!アンタのそういう顔が見たかったんだよなァァ~!」

 

パストは笑いながらサザンカの耳を引っ張り、愉悦に満ちた表情でさらに続ける。

 

「弟からアンタの話を聞いた時からどうやって痛めつけてやろうか楽しみで仕方なかったんだよォ!アンタだけが過去の歴史へ飛ぶのを妨害し、邪魔くさいトランクスと分断して嬲り殺す!トランクスもきっとアタシが選んだあの歴史で捻り殺されてる頃だろうなァ」

 

「おい…テメェさっきよりもだいぶ品が悪くなってきたな。飲めもしねぇコーヒー啜ってみたり上品な女言葉無理して使ってても、興奮すると素のドブカスみてぇな品性と態度が出てくるんだな」

 

「おいおい、今のは私の聞き間違いかしら…誰の品が悪いって?誰がドブカスみてぇな品性だって?」

 

「うるせぇよノータリンがよ。全部テメェに言ってんだ」

 

「そろそろ本気でブチ砕いてやろうか」

 

「やってみろよコラ」

 

その瞬間、パストの繰り出したハイキックがサザンカの側頭部にヒットした。凄まじい衝撃と激痛を受けたサザンカが横へよろめくと、すかさず追撃として繰り出したパストの膝蹴りが鳩尾に深くめり込む。

 

「かは…ッ!」

 

サザンカは苦しみながらその場でうずくまる。パストはその髪を掴み、無理やり立たせると拳を振りかぶった。

しかし、すでにその場で通行人たちが足を止めて自分らの方を見ていると気付くと、手を止めて振り向く。

 

「何見てんだ?コイツは人のモノ盗んで逃げようとした窃盗犯なんだよ、首を突っ込んでくるんじゃないよ」

 

パストのオーラに圧倒された通行人たちはその場から散り、周囲には誰も寄り付かなくなる。

 

「さぁて、生意気な小娘には灸をすえてやらねぇとなァ」

 

カズラはパストの手によって何度も殴られ、蹴られ、いたぶられていくサザンカを見るも、何もできない自分を呪いながらその光景をただ見ていることしかできなかった…。

 

 

 

──────────

 

 

 

久方ぶりに感じた戦闘の焦燥と緊迫が、すでに高まり切っていたシロナの限界の壁を刺激し、超サイヤ人2への覚醒を促した。

 

「…!」

 

驚いて声も出ないのか、それとも目を奪われているのか、ターレスは表情を硬くしたまま動かない。シロナは激しい黄金のオーラを放ち、さらにその周囲にはスパークを弾けさせながら、ゆっくりと歩み寄る。

 

「…ナメるなよ!!」

 

ターレスは剛腕に赤黒い瘴気を溜め、その腕を地面に叩き付けるとともに地中に埋め込む。するとその腕からシロナへ向けての地面が筋状にさく裂し、瘴気の波動がシロナに降りかかる。

だが、シロナは腕を一振りでそれを斬り払い、ターレスへ急接近する。

そして、腹へパンチを一撃。衝撃が背後へ向けて突き抜け、突風を巻き起こす。さらに両手を合わせて作った拳を振り上げ、その背中に叩き下ろす。

 

「グハッ!!」

 

ターレスは前のめりに倒れ込み、地面にぶつかるとそれにより発生したクレーターに埋もれる。

 

「グオオオオオオオオ!!」

 

しかし、すぐに大猿さながらの雄たけびを上げ、起き上がると両腕を振り上げる。その両手の上に瘴気が集約されていき、巨大な球状の瘴気の塊が出来上がる。

 

「喰らえええッ!!」

 

腕を振り下げると同時にそれを高速で投げつけた。直径で2メートルほどにもなるエネルギー球は地面を捲り上げながらまっすぐにシロナへと向かう。

 

「…暗黒ドラゴンボール、もらうよ」

 

が、シロナはそれをじっと見つめ、少しも臆する様子もなくそう呟くと、前へ向かって一気に飛び出した。

 

「ウラウラウラウラウラウラ…!!」

 

そして連続で拳を繰り出し、凄まじいラッシュ攻撃をぶつけてエネルギー球の勢いを止めてしまった。

 

「何!?」

 

次の瞬間、エネルギー球は潰れて破裂した。その中から飛び出したシロナは、同時に渾身のパンチを放った。

その一撃はターレスの顎に埋め込まれていた暗黒二星球の中心をとらえていた。暗黒二星球は激しく震えだし、その後に周囲を真っ白に染めるほどの閃光を放つと、ターレスの体を離れ、今度はシロナの体へと触れてしまったのだった…。

 

 

──────────

 

─────

 

 

「あれ…?ここどこだろ…?」

 

気が付けば、シロナは見知らぬ真っ暗闇の中に居た。それでも、自分の手や姿だけはくっきりと見える不思議な空間だった。

 

「はやくサザンカが無事かどうか確かめたいのに、こんなところでもたもたしてらんないよ~」

 

そう言いながら頭を抱えてその場をウロウロしていると、ふと遠くの方で何かが佇んでいるのに気が付いた。

 

「ヒト…?まさか、こんなところで何を…」

 

シロナはそう呟き、そのヒトらしき物体の方へ近づいていく。だが、だんだんとそれが何なのか判別できるようになってくると、シロナは自分の目を疑った。

 

「これ、まさか…!」

 

シロナの目の前には、小さな赤ん坊を抱きかかえるひとりの女性の姿があった。その女性の後ろ姿は、絶対に間違えるはずがない。巫女服姿のその女性は、シロナとサザンカの母親である博麗霊夢その人だった。

 

「お母さん…」

 

そして、機嫌よく体を揺らしながら振り返ると、霊夢の腕の中で静かにおしゃぶりを咥えている赤ん坊の背中が見えた。そのお尻からは茶色い毛で覆われた細長い尻尾が見えた。

 

「もしかしてこの子…私?」

 

その赤ん坊は生まれたばかりのころの自分自身だった。気が付けば周りの景色は変わっており、秋風と共に桜の枯れ葉が舞う、かつての博麗神社の境内になっていた。

と、そこへ別の誰かがやってきて、霊夢に声をかけ、赤ん坊の自分を代わりに抱いている。

 

「父ちゃん…!」

 

それはカカロットだった。霊夢とカカロットは、生まれたばかりのシロナをふたりで可愛がり、幸せそうに笑い合っていた。その時、赤ん坊の自分と目が合い、しばらくの間見つめられたが、シロナは泣きそうになってしまったので顔を逸らした。

 

「…え」

 

そうして顔を向けた先には、全身から血を流し、虚ろな顔で息絶えている両親の姿があった。

その姿を見たとたん、シロナは鮮明に思い出す。両親亡き後、どれほど寂しく、辛い日々を過ごしたか。

 

「うう…!!」

 

思わずその場ですすり泣きだしてしまうシロナ。流れる涙の筋に沿って体に亀裂が走り、それがチャンスだと言わんばかりに、どこからともなく暗黒二星球が現れ、その亀裂の中に入り込んでシロナへ寄生しようと試みる。

が、しかし…

 

「確かにあの時は寂しかったけど…私は魔理沙がいた、史奈ちゃんもいた…だから平気になったもんね。だから無駄よ」

 

そう思い、口にした瞬間、シロナの体に走っていた亀裂は閉じ、暗黒二星球ははじき出された。

その瞬間、目の前の景色が変わる。

 

「お前のせいだぞシロナ」

 

霊夢とカカロットの上に覆いかぶさるように倒れているのは、霧雨魔理沙だった。青白い死人のような顔で、目はシロナの方へ向けられ、乾いた口から微かに言葉を発する。

 

「私はこんなバカにいろいろ教えてやってたと思うと後悔しか感じないわよ」

 

と、干からびたようにやせ細り、うつ伏せに倒れているパチュリーがシロナへそう言った。

 

「魔理沙…パチュリー…!」

 

シロナは恐怖に顔を引きつらせながら後ろへ下がると、何かに躓いて転んでしまう。

何に躓いたかを確認すると、そこにはアリーズ、ヒロイシ、バルバルス、ビーデルら4人の記憶兵器がいた。皆、死の直前であるかのように体を大きく損壊させ、さながら動く屍のようだ。

 

「役立たず…結局君はスカールを倒せなかっただろう…」

 

「なんで…?せっかく、私たちがアナタを生かしてあげたのに…」

 

「ご、ごめん皆…ごめん…!」

 

後ずさるシロナが何かに背中をぶつけ、恐る恐る振り返ると、そこには顔半分を破壊されたスカーの姿があった。

 

「オマエのせいなんだヨ。オマエのせいで、全員死んだんダ」

 

「うわあああああああ!!」

 

シロナは絶叫し、その全身に亀裂が入り、バラバラに砕けそうになる。再び出現した暗黒ドラゴンボールは今度こそシロナの体内へ入り込み、そのまま彼女へ寄生する。シロナの目が黄色く染まり、その全身から煙のような瘴気が発生し始める。

 

「なーんちゃって。…ごめん、さっきも言ったよね。今さら私にこんな幻見せたところで無駄だって」

 

しかし、シロナは歯を食いしばり、感情を飲み込むように落ち着くと、全身の亀裂は閉じた。目も元に戻り、瘴気もきれいに消えた。寄生に失敗した暗黒二星球は行き場を失い、仕方なくシロナの掌の中から脱出しようとしたところ、掴み捕らえられてしまった。

 

 

 

─────

 

──────────

 

 

「なるほど、こうやって暗黒ドラゴンボールをゲットするのね」

 

自身の精神世界から抜け出し、意識を取り戻したシロナの手の中には鈍く輝く暗黒二星球が握られていた。

後ろには、仰向けで大の字の状態で倒れ込んでいるターレスがいた。もう瘴気に侵食されていた暴走状態ではなく、元の姿に戻った上で瘴気の影響も消えていた。

 

「シロナさん、さすがだ…やはり君は本物の戦士だ」

 

そこへトランクスが舞い降り、手に入れた暗黒二星球を受け取る。すると、ふたりの体が光に包まれ始めた。元の時代へ、ドギドギが送り返そうとしてくれているのだ。

 

「サザンカが結局どうなってるのか心配だわ…」

 

「どこにいたとしても、ドギドギが元の時空へ返してくれるはずだ。後で探そう」

 

次の瞬間、シロナとトランクスはナメック星から消え、元の時空へと帰還したのだった…。

 

 




【現在公開可能な情報】

・現在、存在している記憶兵器の一覧

鋸、カッターナイフ、錐、斧(シロナ)
ドリル(ミル・フィーネ)
ペンチ(サタン・マーク)

・消失した記憶兵器
ハンマー(最終所持者:ブラック)
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