第二回幻想郷一武道会。一回戦第一試合のスカーレットvs紅美鈴は、激闘の末に美鈴が勝利をおさめた。
そして、続く第二試合・霊夢vs明嵐の戦いが始まったのだが…
「…やっと…当たりましたね」
明嵐は拳を突き出したまま、そう言って微笑んだ。
「くっ…」
霊夢は流れ出る鼻血を手でふき取った。
(偶然に決まってる…決まってるわ!)
「な、なかなかやるじゃない。今度はこっちもちょっと実力を出そうかしら」
全力とまではいかなくとも、霊力をそれなりに開放する霊夢。うっすらとその身体を赤いオーラが纏っている。
「ふん!」
素早く駆けだし、明嵐の顎を殴り上げた。続いて細かい連打を胸へ浴びせ、最後に肩を蹴り、横へ吹っ飛ばした。
明嵐はよろめき、ドサッと地面へ倒れ込む。
「は…ははは、どうよ…」
「だ、ダウンです!1…2…3…4…」
倒れた明嵐を見て、霊夢は勝ち誇ったように内心でホッとした。今の連撃を受けては、流石に起き上がることはできまい。
既にカウントも後半に差し掛かり始めている。
「…確かに、強いですね…」
「!?」
しかし、明嵐はむくりと起き上がると、平然としたような顔で霊夢に向き直った。
「起き上がりました、明嵐選手!凄まじいタフネスでありますっ!!」
「そんな…今までのアンタの戦い方じゃ、今ので明らかに…!」
霊夢は動揺しながらそう言った。
「博麗霊夢…君は今、私の過去の戦いだけを見て強さを判断した。それではいけないなぁ…中身や微妙な仕草を読み取ることを怠ってしまう。如何な相手だろうとその動きを観察し、『これで十分』という絶対的な余裕を持って立ち回る…その余裕は強さの自信へと繋がるからね」
「…なんですって?」
「これは君が非常に優れた使い手だから言っているんだよ」
もう一度構える明嵐。霊夢も一緒になって構え、力を込める。
「なるほど…確かにその通り、私が悪かったわね。相手を見くびり過ぎたわ。じゃ…!」
ついに霊夢は全力の霊力を解放した。体を激しい赤色のオーラで覆い、その戦闘力を一気に伸ばした。
「そうだ霊夢、やっちまえ!お前と戦って勝つのは今度もこの俺だからな!!」
カカロットがそう叫んだ。
「へぇ、これは…」
「本気で行くわよ!」
霊夢は明嵐へ向けて飛びかかる。無数の突きを繰り出し、明嵐はそれを防ごうとする。が、その表情にはやや余裕がなくなっており、さばくので精いっぱいというようだ。
それを見た霊夢は飛び跳ね、空中でクルクルと回転しながら後ろへ下がると自分の周囲に無数の光弾を作り出し、それを一気に放った。
「うわっと…」
エネルギー弾を次々とかわしていく明嵐。その周囲には地面に着弾したエネルギー弾による煙が立ち込めており、明嵐からはほとんど何も見えなくなってしまっている。
次の瞬間、その煙に紛れて霊夢が突っ込んできた。明嵐はそれに反応することができずに、横っ腹に思い切りパンチを喰らってしまう。
「ぐあああ!」
思わず叫びながら地面を転がるように吹き飛んでしまう。
霊夢はスタッと地面に着地する。
(今のはさすがにもろに入った…これで奴も…)
「なかなかやるね、君」
「な…なん…!」
しかし、それでもまだケロッとして起き上がる明嵐。
(こうなったら…!)
霊夢は後ろへ手を回すと、そこに気を集中させる。そして腕を前へ突き出すと、渾身のエネルギー波を放った。
真っすぐに明嵐へと向かうエネルギー波。…だが…
バシィン
明嵐は自身に直撃しようとするエネルギー波を上へ逸らすように跳ね返した。
「…ま、まいった…」
それを見た霊夢は顔中に汗をかきながら、ゆっくりとそう呟いた。
「降参宣言です、霊夢選手から降参宣言が出ました!!よってこの勝負、明嵐選手の勝利です!!」
おおおおおお…!
「なん…あの霊夢が降参を…」
カカロットが驚きの声を上げた。ウスターもいぶかし気な表情でその様子を見ている。
「強いわね…アンタ一体…?」
霊夢は服のほこりをはらっている明嵐にそう尋ねた。
「私ですか?…これは内緒だよ、実は私ね…この幻想郷の住民じゃないんだよ」
「えっ?まさか外の世界から!?」
「…さぁ、何処から来たんだろうね?」
「何よそれ」
「博麗の巫女さんらしい、素晴らしい戦いでした!」
拍手と共に武道館に戻る霊夢と明嵐。
「チッ、お前はまた俺が倒す予定だったのに」
「しょうがないでしょ、勝敗を見極めるのも大事ってね」
「続いての試合は…第三試合です!両選手は舞台上へお願いいたします!!」
「俺の番だな…軽く叩きのめしてやるか」
カカロットとその対戦相手である女苑は舞台上へ上がった。観客席には妹紅を初め、聖や華扇の姿が見えた。皆、カカロットの成長を見にきているのだ。
「前大会の準優勝者であり最年少!今回も手に汗握る戦いを期待しております、カカロット選手!!対するは…あの格好は何なんだ!?見た目は奇抜だがその実力は如何に!!依神女苑選手!!」
(く~、勝てる気ではいたけどいざまみえるとなかなか迫力があるわね…。でも私は以前までの私じゃないわ、姉さん抜きでも強いって事を証明しなくちゃ)
(ハッキリ言って俺よりはるかに弱い…が、油断はできないな)
女苑とカカロットはそう相手を心の中で評した。
「では…試合開始ッ!!」
審判の合図とともに、両者は飛び出した。女苑の繰り出した肘打ちを、膝で押さえ込むカカロット。しかし、女苑は姿勢を低くして上手くカカロットの足の下から密着するように接近した。
「む!」
「おりゃっ!」
そしてカカロットの腹へ連続でパンチを浴びせ、徐々に武舞台の端へと押し込んでいく。
「コイツ…!」
だがカカロットは女苑の腕を掴むと振り回して強引に引き剥がす。すると女苑は空中で回転し、カカロットの脳天へ向けて蹴りを繰り出した。
がカカロットも負けじとそれを避け、距離を取った。
「素晴らしいです、完全ルーキーの依神選手もとてつもないっ!!」
「今ので終わりか?」
「はぁ…はぁ…そんなわけないでしょ…見てなさい!」
女苑は力を込める動作を取る。するとどういうことだろうか、その姿が徐々に揺らぎ始めた。まるで目まいを起こしているときのように、彼女の姿が二重にぼやけはじめる。
「せりゃあ!!」
「ほう…」
なんと、女苑が2人に分身してしまった!
驚くカカロットを尻目に2人の女苑は一斉に襲い掛かる。
「なんの!」
両サイドから向かってくる女苑の攻撃を片腕ずつで受け止めるカカロット。
「むぐぐぐ…!」
2人をはじき返し、カカロットは腕を組んだ。
「どうした?残像のような類いでもない、二人になってもスピードもパワーも落ちてない、驚いたぞ。だがその程度なのか?」
「なんですって…!」
「それともう一つ。俺の後ろにいるお前、手刀で俺を狙ってる」
「!?馬鹿な…」
いつの間にか3人にまで分身していた女苑の行動を、振り向くことも目で見ることもなく看破してみせたカカロット。超神酒探しの中で覚えた、心を無にし周りの状況を的確に把握する術だ。
後ろにいた女苑はやけになったのか、そのままカカロットへ飛びかかる。が、カカロットは跳躍して躱そうとする素振りを見せる。その地点へ移動していた女苑はカカロットが跳躍して避けることを予測し少し上へ向けて蹴りを放つが、カカロットはそれを見抜いていたかのようにしゃがんで避けた。
「ふんっ!」
そして2人の女苑を蹴り飛ばすと、最後の女苑にも向かって行く。カカロットのパンチを抑える女苑。
「足元がお留守だぜ」
カカロットはつまづかせるように足を出すと、女苑はガクッと転んだ。
「くっ、戻れ!」
女苑は再び一人に戻る。そしてカカロットの元から前転するように抜け出すと、はぁはぁと息を切らしながら舞台の端まで移動した。
「凄い戦いです!一時も目が離せません!」
「…勝てないかも…」
「ああそうだ。お前もここで諦めろ。何のために優勝したいのかは知らんが、もっと腕を磨いてくるべきだったな」
(何のために優勝…決まってる!私が幸せに成る為だ!一生困らないだけの金、食べ物、そして自分の城に服!これがあれば…誰もが私を1人でも凄い奴だって認めるハズ…姉さんだって!)
「うるさいうるさい!私は負ける訳にはいかないの!!」
その時、女苑から黄色いオーラが炎のように発せられた。武舞台に敷き詰められているタイルがカタカタと鳴り、とてつもない熱気を纏っている。
「でやぁっ!!」
以前よりも上がったスピードで、カカロットへと再び攻撃を仕掛けた。