「フュージョン?合体?そんなことできるのか?」
スカッシュの話を聞いたサザンカは怪訝そうにそう言った。
「できるともよ。まあ条件とか、儀式がきちんと行えたかで成功の可否はあるがね。まず、合体する両者の体格や身長はある程度同じでなければならない。そして互いの気は全くの一緒じゃないとダメだ。体格身長に関しちゃある程度融通が利くが、気の大きさは両者共に狂いなくドンピシャに揃ってなきゃいけない」
「気の大きさも私たちなら調整が利くよね。そんなに難しくないのかも」
シロナもそう言いながらうなずいた。
「アタイが故郷のメタモル星にいたころは、アタイだけが強すぎて誰とも合体なんてできなかったんだが…それでもやり方はちゃんと覚えてる。じゃあ次に合体するための動作を教えるぞ」
スカッシュは席を立つと広い所へ赴き、シロナとサザンカに加えてトランクスとブルマも見ている前で動作の説明と共に実際にやって見せた。
「まずふたりがある程度の距離を置いて立つ。そしてこうする!腕の角度に気を付けろ。『フュー』…腕を頭上を通して反対にしながらつま先立ちで相手に近付く!この時足を動かすのは三歩分だ。『ジョン』!腕を素早く反対に戻して外側の足を上げて膝を内側へ向ける!やはり足の角度に気を付けろ。『ハッ』!!こうしてふたりの指を合わせるんだ、またまた足の角度に気を付けろよ、特に外の足を真っすぐ伸ばすのを忘れるな」
一通りフュージョンポーズをやって見せたスカッシュ。シロナは何ともないような顔でそれを見ていたが、サザンカは眉をひそめながら若干顔を赤くし、ブルマとトランクスも困ったような顔をするしかなかった。
「…恥ずかしい」
「アンタが恥ずかしがるのかよ!!」
しかし、この場で最も恥ずかしがっていたのはスカッシュ本人だった。
「もしかしてアンタが故郷でもフュージョンできなかったのって…」
「わかってる!わかってるから皆まで言うな!」
「…ていうか今思ったんだがよ、そのフュージョンのやり方ってのはまあ分かった、練習すりゃいいって事だよな。でもよ…一体、誰と誰が合体するんで?」
サザンカがそう言うと、周りの全員が彼女の方を見た後、シロナに目を向けた。
「…マジで?」
「さぁ悪いけど時間が無い!スカッシュさん、ふたりにフュージョンの指導をよろしくお願いします」
サザンカが文句を言って暴れかねないと判断したトランクスは咄嗟にそう言って無理やりフュージョンを習得させようと踏み切った。サザンカは腑に落ちない顔で了承し、シロナはやる気満々な様子で頷いた。
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…ここで再び時代は遡り、エイジ763
ターレスが帰還したことによりカカロットは一命を取り止め、さらに精神と時の部屋での修行を終えた霊夢が参戦し、フリーザとの決戦は文字通り佳境へと差し掛かっていた。
霊力を開放しても、夢想天生を発動しても霊夢の力はフリーザに及ばなかったが、それでも霊夢には修行の中で編み出した最終奥義が隠されていた。
「たった今、お前は私がさらなる力を発動させる条件を満たしたんだ。それと同時に、お前の敗北が決定した」
「何だと…!?」
霊夢はそう宣言すると、周りの空気を確かめるように両手を少し広げ、顔をかすかに上へ向けた。すると体を覆っていた赤と青のオーラが、今度は逆に体内へと吸収され、さらに凝縮される。フリーザから見れば、まるで周囲の漂う熱が筋となって霊夢に集約していくように見えた。
「これは一体…?」
フリーザはその光景を見て、そう呟いた。
霊夢に取り込まれた霊力は、霊夢本人の姿を変えてしまう。まばらに逆立っていた髪はオレンジ交じりの赤色へと変わり、炎のように揺らめきだす。閉じていた目はカッと見開くと、その瞳も真紅に染まっていた。その直後、太陽の光のような、うねる様な赤いオーラが解き放たれた。
「さぁ…第2ラウンドを始めましょう」
”夢想天生”。霊夢だけが生まれ持って備えていたこの特別な能力を、かの霧雨魔理沙は名前を付けてゲームの一部にすることで制限を付け、弱体化させた。この能力の本質は、”あらゆる攻撃の無効化”であるが、今までは夢想天生を発動すると霊夢の性格は好戦的で荒々しい物へと変わり、生存性を高める能力である夢想天生をフルに扱いきれないという矛盾と弱点を抱えていた。しかし、精神と時の部屋で血の滲むような努力の末にそれを克服し、さらに夢想天生の能力を高めたこの姿こそ、あえて名前を付けるとすれば「超夢想天生」と呼ぶに相応しかった。
「ふん、ただ赤くなっただけだ!いずれにせよこのフリーザ様に地球人如きが勝てるはずがない!!」
フリーザは超夢想天生を発動した霊夢にも臆することなく攻撃を仕掛けていった。
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「どうやら時間が無さそうだから早いとこやっちまおう!じゃあふたりとも、動作は一通り繰り返したようだから実際にやってみてくれ」
カプセルコーポレーションの庭でスカッシュの指導のもと、動作の流れは掴んだサザンカとシロナは、いよいよフュージョンを実際にやってみることとなった。
「なぁ、もうひとつ聞きたいんだが…合体してひとりになるってことは、もしかして記憶とか心の中も読まれちまうってことなのか?」
サザンカが最後にそう質問した。
「いや、そうじゃない。フュージョンってのは正確にはふたりで行う”変身”に近いんだ。ふたりの人間が特定を儀式を行うことで、肉体を犠牲にして一時的に別人格の人間をひとり作り出す、って言い方のほうがいいか?だから新たに生まれた別人格の人間はある程度の意識や記憶は引き継いじゃいるが完全に精神が融合しているんじゃないから読み取れるわけじゃねぇんだ」
「なるほど…じゃあまあいいか…」
「サザンカ、そろそろいい?」
シロナは既に位置についている。
「テメェは少しの抵抗もないのか?」
「え?だって30分経てば元に戻れるんだし、別に減るもんじゃないでしょ?」
「…そうだよな」
サザンカとシロナは定位置につくと、スカッシュに教えられたフュージョンの動作を行う。
「「フュー…ジョン!ハッ!!」」
最後に掛け声とともに両手の人差し指を突き合わせ、フュージョンの動作は完了する。次の瞬間、ボワンと音を出しながらふたりを中心として大量の煙が放たれた。
「うわっ!」
ブルマたちは思わず顔を覆い、周囲を覆う煙の奥に一人分の影が見える。
「…失敗だな」
スカッシュが小さく呟いた。
煙が晴れてくると、その中心にいた人物の姿を見てブルマやトランクスは度肝を抜かれた。そこには、異様なほどに痩せ細っているひとりの少女が立っていたのだ。
「ゼー…ハー…」
今にも死にそうな顔で息を切らし、その場から一歩も動かない。
「フュージョンできたのかしら…?もしかしたら、こう見えて滅茶苦茶強いのかも…」
「いや、失敗だ」
と、ブルマが希望を見出すも、スカッシュはきっぱりとこれは失敗だと断言してしまう。
「上の指が少しズレていた。動作は完璧でも、最後にぴったりポーズが揃わないと失敗して逆に弱くなっちまうんだ。30分経てば元に戻るから、そしたら再チャレンジだな」
「ゼー…は…ハイ…」
それを見ていたトランクスは、実際にフュージョンをした事はないがどういった技かは既に知っていたので、成功させる大変さはよく分かっていた。
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…またまた時代は遡り、エイジ763
霊夢はフリーザとの最終決戦を開始した。これまで幾度となく進化を繰り返し、カカロットやブロリーを追い詰めてきたフリーザであったが、超夢想天生を発動した霊夢には終始まともに攻撃を加える事すらできなかった。
「貴方は今別次元にいる。貴方の声や身体、気功波の類までも、現世へ干渉することができない。貴方はこの世界で一生を終えるの。誰にも相手にしてもらえずね」
自分や仲間へ対する敵意を察知する事を条件として超夢想天生を発動した霊夢は一切合切神羅万象この世の全てから一次元浮いた存在へと成っており、あらゆる攻撃や現象による干渉を受け付けない。さらに、この状態で触れた相手を自身と同じ次元、”霊次元”へ移動させる事が可能で、霊夢はフリーザを追い詰めると共に霊次元へと訪れていた。
「なんだと…!?」
「貴方に地獄は生ぬるい…この場所で、死ぬまで悔やみなさい…己のしてきた事を…」
「ま…待てッ!!」
フリーザが止めようとするのも空しく、霊夢はゆっくりと、泡のようにその姿を消した。その後、フリーザは周囲に無茶苦茶にエネルギー波を乱射しまくるが、そのすべてが周りの山にも地面にもあたることなく、虚しく消えていった。霊次元ではあらゆる現象が現世と遮断されているため、何をやっても意味をなさない。
物体が元の次元と霊次元を移動するには霊夢がその体に触れていなければならない。よって、霊夢のみが先に帰ってしまったためにフリーザは元の次元へ脱出することができず、永久にこの霊次元を彷徨い続けるほかはない。
「お…オレ様をここから出せ…ここから出せえええええッ!!」
「わっ!」
霊夢と同時にこの戦いの場へやってきたブルマとブロリーは、突然目の前に現れた霊夢を見て驚いた。
「やあ」
「やあ、じゃないわよ!フリーザはどうなったの?」
「私が異次元の空間に閉じ込めた…ヤツはそこで己がしてきたことを悔いながら一生を過ごすでしょうね」
「なんだかよくわからないが、やったんだな!?これでフリーザを倒したって事になるんだな!?」
「ま、そーなるわね」
ブロリーは全身の力が抜けたように座り込み、安堵のため息をついた。ブルマも気を探って確かめるが、フリーザらしき気は微塵も感じられない。
「よ、よかった…これで親父や仲間たちも安らかに眠ることができるだろうな」
「ええ…これで全て終わった…さ、帰りましょうか…」
口ではそう言いながらも、霊夢は引き絞った弓のように緊張していた。神経がピリピリして、何だか胸騒ぎを感じるのはきっと疲れているせいだろう。
(でも変ね…私の姿が元に戻らない…敵を倒せば自動で元に戻るはずなんだけど)
そう一縷の疑問を抱える霊夢。だが、そんな無粋な事は今は言うべきではない。ここにいるブルマとブロリーはフリーザをやっつけた事を喜んでいる。そこに水を差すべきではない。そう、ふたりとも喜んで…
「あ…ああ…!」
しかし、ブルマだけは顔を向こうへ向け、震えていた。遅れてブロリーが気が付き、もう一段階遅れて霊夢が気付く。
「フリーザだ───ッ!!」
今までブロリーたちが寄りかかっていた岩山の上に、フリーザが片膝をついてこちらを見下ろしていた。その目は怒りに燃えながらも、顔は邪悪な笑みで歪んでいた。体から立ち昇るオーラは、心なしか以前よりもさらに凶悪になったように感じる。
ズギャ…
そのつかの間、フリーザが撃ち出した光線が、霊夢の額を貫いた。
…否、光線は霊夢の額の目の前に突如出現した暗黒ドラゴンボールによって防がれていた。
「これはまさか…!」
霊夢は知っていた。この黒い星が埋め込まれた赤い球体を。この時代へ現れた暗黒五星球は寄生する対象を霊夢へと定め、その宿主を守った。そう、寄生するために…。
「うわあああ!!」
暗黒五星球は霊夢の額に当たるとその中に入り込んでいく。次の瞬間、赤黒い瘴気が周囲を包んだ。
強敵に備えてシロナとサザンカがフュージョンの練習をしている最中、過去の歴史上では博麗霊夢が暗黒ドラゴンボールに寄生され、その力を振るおうとしていた…。