もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第354話 「恐れ見よ、奇しき赫耀の霊星を」

一方その頃、暗黒五星球に寄生された博麗霊夢の元へとやってきた人造人間ライ。

ライが氷山の上に降り立つと、霊夢はそれに反応して振り返る。黄色い目を剥き出し、全身に赤黒い瘴気を纏い、肩や肘、膝といった関節部は周囲の瘴気と同化するかのように滲んでおり、その背中からは3対計6本の霊尾が伸びている。

霊尾とは、力を極限まで極めた博麗の巫女が発現させられる能力のひとつで、これまでに自力で発動可能としていたのがシロナとレイムの2名、そして暗黒ドラゴンボールによる強化で発現したのが紅蓮であり、この霊夢の霊尾も紅蓮と同様の発現方法によるものだろう。

だが、根元が太く、先端に向かうにつれて細くなる形状で正しく「尾」と呼べるものに相応しかったこれまでのシロナたちの霊尾とは異なり、霊夢のものは管のような形状で、先端の方がより太く頑強な構造をしている。そして先端の孔からは絶えず瘴気が煙のように漏れ出している。

 

「これはこれは…恐らくは元となった貴女自身の潜在能力の強大さ故でしょうか、類を見ない程強化されているようですね」

 

ライの存在に気付いた霊夢はその場で四つん這いになり、6本の霊尾を展開させる。ライは、霊夢の額に浮き上がった暗黒五星球に狙いを定めると、背中で気を爆発させ、その爆風に乗って急接近し攻撃を仕掛ける。

しかし、ライが拳を振り下ろしている時、既に霊夢も攻撃の準備を終えていた。右側に展開した3本の霊尾を捩じるように束ねて先の尖ったハンマー状に組み上げ、一気に振り下ろした。

 

ドゴォ!!

 

間一髪でライはそれを躱すものの、地面を穿った鎚から漏れ出た瘴気が一拍置いてから爆発し、それに吹っ飛ばされる。受け身をとって着地するも、もう反対側の左側の霊尾3本による同様の攻撃が直撃し、地面に叩き伏せられる。だが、ライは遅れて発動する瘴気の爆発に曝される前に背中で自分の気による爆発を起こして吹き飛び、脱出して見せる。

そのまま後ろへ下がり、中距離から攻撃しようと構える。

 

ギュン

 

しかし、ライの顔面ギリギリのところへ鋭く尖った槍状の霊尾が迫っていたことに気づき、慌てて顔を背けてそれを避ける。

 

(なんだ…?)

 

霊夢は3本の霊尾を一直線に連結させて1本の槍と化し、それを伸縮させてライを狙ったのだ。が、その距離を見切ったライはさらに距離を置きながらエネルギー波を繰り出した。

 

ギュイン!

 

だがなんと、霊夢は両側の6本の霊尾を先ほどの様に連結させてより長い槍に仕立て、再びライへ攻撃を仕掛けた。彼のエネルギー波を貫いて掻き消し、その胸へ切っ先を食いこませた。ライが寸前のところで両手で掴んだから刺さるまではいかなかったが、もし防がなかったら…と考えるとライは青ざめた。

 

「…面白い!」

 

しかし、それ以上に湧き上がる愉快さがライの闘争心を引き出す。

霊夢は連結させた霊尾を振り回して前方を薙ぎ払う。ライは素早く下をくぐってそれを躱し、爆風を利用して高速で霊夢の至近距離へと接近する。

 

「カアアッ!!」

 

だが、ライは巨大で平たい何かに殴られ、遥か後方へ弾き戻される。霊夢は3本の霊尾を手の平のようにしてライを引っ叩いたのだ。再び吹っ飛ばされたライは霊尾の槍が届かないであろう位置の空中で静止し、霊夢の変幻自在に組み合わせて扱う霊尾を観察しようと試みる。

 

ガシャン…

 

霊夢は6本の霊尾の先端を正面へ向け、空中にいるライへ照準を合わせる。そして次の瞬間、霊尾の先端の孔から赤黒い瘴気を砲弾として連続で発射した。

 

ドドドドドド…

 

予想外の遠距離攻撃を前に、両手を正面でクロスさせて防御するしかできないライ。凄まじい爆炎と衝撃に包まれ、飛散した瘴気が雨のように地上へ降り注ぐ。そのおかげで空は真っ赤に染まり、不気味な様相を呈している。

霊夢は一切の休ませる暇なく瘴気の砲弾を射出し続けるが、暗黒ドラゴンボールから与えられる瘴気はどんどん膨張し、その消費だけでは割に合わずに溢れ出してしまう。

 

キュィィィィィィ…

 

そこで、霊夢は霊尾を自身の背後へ向け、数秒の溜めの後に後方へ向けて凄まじい量の瘴気をジェットの様に噴射した。するとその体が反作用により超高速で飛翔し、赤く染まった空の上を旋回する。

その光景は、燃え盛るような赤黒い瘴気が尾を引きながらまるで赤い彗星が天空を翔けているかのようだ。

 

「チィッ!!」

 

ライが苛立ちながら爆炎を吹き飛ばし、全身に傷を受けた状態で先ほどまで霊夢がいた場所を睨む。が、霊夢はいない…そこで空の異変に気づき、霊夢の気配がする方向を見上げた瞬間…

 

キン… ゴオッ!!

 

霊夢は全身に燃え滾る赤黒い瘴気と霊力を纏い、空から隕石の如くライへ向けて一直線に突っ込んだ。衝突を受けたライはその場で瘴気の大爆発に巻き込まれ、霊夢はその地点を通過して霊尾を地面へ突き立ててブレーキをかけ、摩擦による黒い煙を全身から発しながら静止する。

瘴気が晴れると、そこには深いクレーターの中心で細かな岩石の屑に半身が埋まってしまったライが横たわっていた。

 

「…ゴホッ」

 

だが、血を吐き出すとすぐに起き上がり、霊夢の方を見据える。だがライもやはり無傷という訳ではなく

、かなりのダメージを受けた様子で衣服は所々破けており、直撃を受けた胸部分の衣服が焼け、素肌も黒く焦げているように見える。

 

「己の武器となる部位を変幻自在に扱い、溢れ出る瘴気を惜しみなく発散し攻撃へ転用する…実に素晴らしい、私が理想とする戦い方です。しかし…」

 

ライは直立の姿勢のまま両手の拳を強く握り、全身に気を込める。緑色と紫色の蛍光色が混ざり合った奇抜な色彩のオーラがその体を覆い始めた。

これを隙と見たのか、それとも今のうちにトドメを刺すべきと霊夢は判断したのか、再び6本の霊尾を連結させた長大な槍で突きを繰り出した。

 

「ガ…!」

 

だが、霊尾の切っ先がライの鮮やかなオーラに触れた瞬間、その箇所が爆ぜた。衝撃で霊尾は弾き返され、先端が焼けて吹き飛んでしまっていた。

 

「最強はこの私です。超えられるというなら超えてみなさい…無理だと思いますが」

 

白い髪は逆立ち、血管が浮き出るほど全身の筋肉が膨れる。超ライへと変身を遂げ、赤く染まった目で霊夢を睨む。だが霊夢はそれに怯まずに霊尾から瘴気を噴きながら飛び上がり、ホバリングしながら片側3本の霊尾を纏め上げた鎚を振り下ろした。

 

ボゴン!

 

が、それも先ほどの槍と同様に、ライの体へ触れる前に気の爆発によって弾かれてしまう。霊夢は、今度は高速で飛行しながらライの周囲を旋回し、すれ違いざまに霊尾を連結させた槍で突く。やはりそれも爆発に阻まれてしまいライには届かないが、霊夢は間髪入れずに霊尾による薙ぎ払い、瘴気の砲弾、叩き付け、突きを次々と繰り出してゆくが、そのどれもが防がれてしまう。

霊夢は霊尾全てを前方へ向け、その切っ先を一点へ集めて構える。絶え間なく溢れ続ける瘴気をその一点へ集め、高密度の瘴気が圧縮された巨大な柱状のエネルギー砲として解き放った。

それはライへ一直線へ向かっていき、直撃する。瘴気の奔流とライの気の爆発が巨大なドーム状の大爆発を引き起こした。

 

キィィィィィ…

 

そして、一気に上空へと飛び上がった霊夢は瘴気を全身に纏い、すべての霊尾から瘴気を噴射してライへ向かって急降下する。先ほどライを地中へ埋めるほどの威力を発揮した突撃よりもさらに威力が高まっているだろう。

 

「カアアアアアアアッ!!」

 

真っ赤な彗星の如き、奇しき赫耀の霊星が未だ大爆発に覆われているライへ直撃する。しかし、当たったにも関わらず、音も衝撃もなにも響かなかった。

やがて瘴気と爆風が消え、晴れてくると…

 

「…不届き」

 

なんとライが片腕で霊夢の襲撃を抑え込んでいた。霊夢の頭を片手で掴み、おそらく霊夢は持っている瘴気を全て消費してライを突破しようとしたのか、先ほどまで体を歪ませるほどに溢れていた瘴気は一切無くなっている。

次の瞬間、ライが腕を回しただけで霊夢の体はいとも簡単に振り回され、地面に叩き付けられた。と同時に鮮やかな爆発がその全身を包み込んだ…。

 

 

 

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