もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第36話 「私はとことん止まらない!!」

「!?…はやい!」

 

次の瞬間、女苑から繰り出されたパンチを受け止めるカカロット。

続いて放たれた突きや蹴りも同じようにガードするが、その一撃が一発ごとに鋭さ、スピード、重さ…全てを増していたのだった。

 

(コイツ、一発撃つごとに強くなっていってる…!?)

 

「私は負けないんだから!!」

 

バキッ

 

そして、ついにそのうちの一発がカカロットの顔面にめり込んだ。

 

「ぐっ…!」

 

しかし、女苑は休むことなくさらにカカロットへ攻撃を仕掛ける。するどい気の刃を体から無数に放ち、それぞれがブーメランのように回転しながらカカロットへ向かう。

 

「波!!」

 

だがカカロットも負けじと気功波を放ち、それをかき消す。が、次の瞬間、目の前にまで迫っていた女苑のキックがカカロットの腹へ突き刺さった。

 

「げ…!」

 

「ど、どうしたのでしょうかカカロット選手!このまま依神選手の逆転となってしまうのでしょうか!?」

 

カカロットは腹を押さえながら後ろへよろめき、女苑は息切れしながら睨みつけている。

 

(どういうことだ…ここへ来て、この女成長していやがる…一秒ごとに、一撃攻撃を放つごとに戦闘力が増しているのか!?)

 

女苑は再びカカロットへ殴りかかる。カカロットはそれを押さえ込むが、それでもなお突進を続ける女苑によって武舞台上の端へと追いつめられる。

たまらず上へ跳躍して避けるが、追跡してきた女苑の蹴りを背中に受け、地面へ向けて吹っ飛ばされる。

 

「オラァ!!」

 

そして両腕を上にあげ、赤い炎のようなエネルギー弾を生成し、それを投げつけた。それに気付いたカカロットだが、避けるのは間に合わないと踏み、起き上がって両腕をクロスさせて威力に耐えようとした。

 

ボガァン…

 

会場全体を衝撃が襲い、破損した武舞台のタイルの破片が砂嵐のように飛び交う。

 

 

「カカロット…!」

 

霊夢が心配そうにつぶやく。

 

 

「…煙が晴れてきました、カカロット選手は…!」

 

土煙が晴れると…そこにはカカロットが立っていた。

が、しかし、その道着の上着はボロボロに破れ、ズボンにも穴が開いている。黒いアンダーシャツが露わになり、さすがのカカロットもいくらかダメージを受けたようだ。

 

「かろうじて立っています!!凄まじいタフネスです!!」

 

「今ので倒せたと思ったのに…!」

 

女苑が空中に浮かんだままそう言った。

 

「…さすがだ、やはりお前はこの戦闘において一挙手一投足が高みへと昇っている!だから俺も、そろそろちょっと本気を出してやる」

 

カカロットはボロボロになった上着を脱ぎ捨てた。

 

「おや、これは…まさか!」

 

審判が驚いた声を上げる。

脱ぎ捨てられた上着は地面に落ちると、ドスンと音を立てた。続いて、リストバンドと靴を脱いだ。ゴトリと音が鳴り、明らかにそれが普通の物よりも重いという事が分かる。

 

「これで軽くなったぜ」

 

カカロットは以前の大会同様、開催が告げられてからずっと重りをつけて生活していた。しかも、前回よりも重さが増している。

 

「な、何ですって…」

 

「さぁ、もう一度かかってこい。面白くなって来た…こうなったらとことんお前を強くしてやろうじゃねえか」

 

「面白いのはこっちよ…随分な化け物が、さらに力を隠してたなんてね」

 

女苑は、自分でもどんどん実力が上がっているのを感じていた。それにより生まれたのは、絶対な自信。もう自分は以前のような、姑息な手を使わなくともこの幻想郷の強豪と十分渡り合っていける。

 

「いくわよ、もう私はとことん止まらないわ!!」

 

地面に降りると、カカロットに殴りかかる。カカロットもそれをガードし、反撃に出る。

武舞台上でとてつもない攻防戦を繰り広げる。両者ともに譲らず、次々と繰り出される技と守りの応酬が、観客を沸かせていった。

 

「ははははは!!」

 

カカロットは紫色のエネルギー波を放つ。だが女苑もそれを見切ると、それをさっと避ける。

が、既に背後に回っていたカカロットは膝で背中を蹴りつけ、女苑は破損した舞台へめり込んでしまう。すると、離れた場所の床下から女苑が飛び出した!

めり込むとの同時に武舞台の下を掘り進むように移動してきたのだ。

 

「くらえ!」

 

そして腕に気を込め、素早く振り下ろす。

 

フッ…

 

「当たらんぜ」

 

カカロットもそれに負けないスピードで女苑の背後に移動し、拳を突き出した。

 

「うぐっ!」

 

それは女苑の顎に当たり、女苑は後ろへ下がって距離を取った。

 

 

「凄すぎる…女苑のほう、前に私と戦ったときとは比べ物にならないじゃない…」

 

霊夢が驚きながらそう呟いた。

 

 

「やるわね…とんでもないスピードだわ。でも、何とかついていくことはできる!」

 

そう言ってはみるが、既に息を切らしていた。いくら自分がどんどんと強くなっているとはいえ、まだカカロットとの差はあるようだ。

 

「くっくっく…それはどうかな?」

 

カカロットはそう言うと、手に持っていた何か黒い物を見せびらかすように取り出した。

 

「そ、それは!」

 

ハッとしたように自分の頭を触る女苑。すると、頭に乗せていたサングラスが無くなっていることに気付く。

 

「いつの間に…」

 

「俺の方が早さは上のようだな。今度はこちらから行くぞ!」

 

次の瞬間、カカロットの姿が消えた。審判や女苑が見渡しても、舞台上の何処にもいない。まるですっかり姿そのものを消してしまったかのようだ。

 

「何処に消えてしまったのでしょうか?姿が全く見えません!!」

 

「ど、どこから…!?」

 

ヒュン ヒュン…

 

「お、音が!」

 

女苑は確かに聞いた。何かが地面とこすれる音を。

そして、見抜いた。カカロットは今、自分の目の前で常識を超えるスピードで左右にフットワークしている!徐々に近づきながら!

 

(だけど分かってしまえばこっちのもの…そこよ!)

 

自分の目の前の通過するタイミングで、強烈な蹴りを放つ。

 

シュパン

 

だが、蹴りは空振り、姿を現したカカロットは女苑の胸にパンチを浴びせた。たったわずかな動作の攻撃で女苑は盛大に吹っ飛び、場外へ押し出されてしまった。

 

「い、いてて…」

 

胸の痛みを不思議に思い、そこを押さえる。

 

「場外です!依神女苑選手場外!!よってこの勝負、カカロット選手の勝利です!!」

 

「なんだ、最後は呆気なかったな」

 

「ああ、つまらない勝敗だったぜ」

 

確かにすごい戦いだったけど…と口々に喚く観客たち。

その様子を見たウスターは小さく舌打ちをした。

 

(ど素人の馬鹿どもには分かる訳がない。アイツは今、相手に10発ものパンチを放ったのだ!恐らく喰らった本人でさえも何をされたのかわかっていないだろうがな…)

 

「おい」

 

立ち上がろうとする女苑の前に、カカロットが立つ。

 

「次はもっと強くなるんだな…お前にその気があればだが」

 

「…ええ!」

 

 

「女苑…あんなにたくましく…!」

 

実はこっそりと戦いを見守っていた、女苑の姉である紫苑はそう涙ながらに呟くと、どこか清々しい顔をしている妹を見てどこかへと消えていった。

 

 

 

「続いて、一回戦第四試合を開始したいと思います!この試合で、準決勝へ進出できる選手がすべて決まります!では選手の方、舞台へどうぞ!」

 

その声が聞こえると、ウスターは歩き出す。

 

「おい、相手はあのガーリックの息子だぞ」

 

「分かっている。俺も俺とて、前と同じではないのだ」

 

声をかけるカカロットに対して、そう答える。

そして舞台上に上がり、腕を組んだままガジュニアと向かい合った。

 

「まずは、前大会の優勝者であります!圧倒的な力で数々の参加者をねじ伏せてきた最強の魔人!ウスター選手!!」

 

前回の優勝者という事もあって、これまでにないほどの歓声と声援がウスターにあてられる。

 

「対するは…その小さな体には如何なパワーが秘められているのか!?皆目見当もつきません、ガジュニア選手!!!」

 

 

「む?アイツどこかで…」

 

武道館の屋根の上から戦いを観戦していた隠岐奈がそう呟いた。

とその時、彼女の隣にあのシュネックが降り立った。いぶかし気な表情でガジュニアを見つめている。

 

「シュネックか、どうした?お前の許可を得てこの大会を開催したはずだが…」

 

「…おのれガーリックめ、執念深く息子に復讐を託したのか」

 

「ガーリックだって!?」

 

 

「…貴様、ガーリックの息子だな?」

 

ウスターはガジュニアに向かってそう尋ねた。

 

「その通り、私は偉大なる父・ガーリックの息子であり…ふっふっふ、そしてお前とは兄妹だ」

 

「な、何だとッ!?」

 

今、ガーリックの復讐劇が幕を開けようとしていた…。

 

 

 

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