もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第360話 「凱旋!安寧の焔が護る郷!」

ライがフルスイングした元気玉は、カカロットが作った時と大きさこそ変わらないものの、その中にはライ自身と、そしてサザロナの元気も含まれており、これ以上とないほどに眩く輝き、白熱して熱気を放出している。

 

「は、離せ…!このままじゃあお前も巻き込まれて死んでしまうぞ!!」

 

サザロナの霊尾によって拘束され、動けないフリーザは必死にサザロナに呼びかける。それもそのはず、このまま元気玉がフリーザに直撃するまで彼をこの場に留めるという事は、自分も元気玉を喰らってしまう事を意味する。

 

「構わねぇさ。何度悔やんだか分からない…あの時は無力で何もできなかった…だけど、今はこうして一緒に戦えてる!この時代の父ちゃんとお母さんは生き延びることができそうなんだよ」

 

顔に纏った結晶の兜の右半分が壊れ、露わになったサザロナの素顔を見たフリーザは、何を言っても無駄だと気付く。

 

「チクショオオオオ!!」

 

 

「サザロナさん…!」

 

気を失った霊夢を抱えて避難していたトランクスは、自らもろともフリーザを元気玉で倒そうとするサザロナを見て歯を噛み締める。

 

「…あっ!」

 

だがその時、自分の目の前を誰かがすごいスピードで駆け抜けていったのを見た。

 

 

フリーザとサザロナの視界が真っ白に染まるほど、元気玉は近づいている。放たれる熱気が全身を包み、灼けつくようだ。

そしていよいよ元気玉が着弾し、その付近の地表部分を消し飛ばした。

 

「ぐああ…があああああああ…!!」

 

隣からフリーザの断末魔の悲鳴が轟き、真っ白な闇の中に呑みこまれていく。体の感覚が末端から消失していき、まるで暖かい風呂に浸かってるような気分だ。

 

「あったかい…」

 

「じゃなくて、熱いでしょ!!」

 

だが、突然その心地いい感覚が消え、全身が針で刺されるような鋭い痛みが襲う。だがその中にも確かに暖かい感覚は残っており、何が起きたのか分からない。

 

「…アンタは…」

 

サザロナは、真っ白な闇の中、博麗霊夢に抱きかかえられていた。初めて感じるような、または久しぶりに感じたような…とにかく、不思議な安堵感が押し寄せてきて体がどっと重くなる。

サザロナを抱きかかえているのは博麗霊夢だった。その髪は深紅に染まるとともに炎のように揺らぎ、青と赤色の細かな粒子のようなオーラを纏っている。

 

「もう大丈夫よ、私とあなたは今、現実とは離れた次元にいる」

 

目を覚ました霊夢はフリーザの敵意をきっかけに最後の超夢想天生を発動し、ギリギリでサザロナを助けに来たのだ。霊夢のおかげで、元気玉による影響はサザロナには一切及ばない状態となっている。

やがて元気玉は地表を削り取るように滑ってそのまま宇宙空間へと昇っていき、安全な場所で炸裂して消えていった…。

 

 

「も、もう降ろしてもらっていい!」

 

「あらそう?」

 

元気玉が過ぎ去った後、サザロナは慌てて霊夢の腕から降りた。

 

「なんかよくわかんないけど、不思議とずっと一緒に居たくなるのよね、あなた」

 

「…そう。でも私はこの時代の人間じゃないから、やっぱり…家族と一緒に居るのが一番いいと思うよ」

 

サザロナはそう言いながら、地面の上に転がっていた暗黒五星球を拾い上げた。もうフリーザの気も微塵も感じられず、暗黒五星球もこれ以上誰かに寄生しようという気もなさそうだ。

 

「おーい、ライ!!」

 

すると、サザロナは遠くにいるライへ向かってその暗黒五星球を投げ渡した。

 

「…いいのですか?」

 

それをキャッチしたライはサザロナに疑問を問う。

 

「だって約束通りトドメを刺したのはアンタでしょ?それに、いずれは七つ揃えるために奪い合うんだから一緒じゃない?」

 

ライは小さく笑い、体の緊張を解いて通常の姿に戻る。

 

「それもそうですね。こちらは3つ、そちらは4つ…」

 

そしてライはその場で浮遊し、空へ舞い上がる。その時、遠くから凄まじい勢いでやって来た仮面のサイヤ人…ブロリーがライの背後へ付く。

 

「ブロリー…」

 

サザロナとの戦いで気絶していたブロリー。その顔面を覆っていた謎の仮面は既に大部分が破損し、残されているのは右目とその周辺部分のみだ。それでも、未だに瞳は赤く、サザロナを見下ろす目に敵意は消えていない。

 

「よく覚えておきなさい。近いうちに暗黒ドラゴンボールの争奪戦が始まるでしょう。今回は止むを得ぬ事情によって共闘しましたが…次はそうはいきませんよ」

 

「分かってるよ。次に会った時は完全に叩きのめしてやるぜ」

 

ライはその言葉を聞くと、ブロリーと共に時空の歪みを開き、その向こう側へと消えていった…。

 

「サザロナさん、俺たちも帰ろう」

 

そこへトランクスが現れ、サザロナへ声をかける。ふたりの身体は既に光に包まれ始めており、ドギドギが元の時空へと帰還させようとしているのだ。

 

「ちょっと待ってて!」

 

だが、サザロナはそう言うとその場から飛び立ち、どこかへと向かっていく。その場所にいたのは、15年前の幼き日の、この時代のシロナだった。

 

「家族4人で暮らしなよ」

 

サザロナはその一言だけシロナに言うと、困惑している彼女をよそに、元の時空へと消えていくのだった。

 

「今の人、なんて言ってた?」

 

そこへやってきた霊夢が話しかける。

 

「家族4人で暮らしなよ、って…」

 

「そっか…」

 

霊夢は納得したように安心した顔で微笑みながらそう言うと、この場で無事に生き残った戦士たちをざっと見渡す。

ウスター、美鈴、天龍、ターレス、ブロリー、史奈、シロナ、そしてカカロットと私。カカロットは眩んだ目が大分回復したのか、ブロリーの肩を借りて立ち上がり、こちらを見ている。

だが、霊夢は決して戦いが終わったとは思っていなかった。

 

「う…うう…」

 

どこかからか聞こえてくる微かなうめき声。

霊夢はその出所をすぐに見つけると、そこへ向けてゆっくりと歩き出す。

 

「た…たす…助け…て…くれぇ…」

 

岩場の影に横たわっていたのはフリーザだった。暗黒ドラゴンボールの寄生が解けた影響と過度の消耗により、最終形態に戻っている。しかし、フリーザの腹から下と左腕は元気玉によって消失し、今は辛うじて生存しているという状態だった。残された上半身は苦し気に喘ぎ、うわ言のように助けてくれと繰り返すだけだ。文字通りの虫の息…放っておけば、じきに死ぬだろう。

 

「まだ生きてやがったのかフリーザ…!」

 

「なんてしぶとい奴だ」

 

そこへブロリーとカカロットが舞い降りる。

 

「俺がすぐにトドメを刺す。コイツは生かしておいても損にしかならない」

 

「ああ…また妙なきっかけを与えちまうよりさっさと殺した方がいい」

 

ブロリーは右手に小さなエネルギー弾を作り、カカロットもそれに同調する。ボロボロのフリーザの顔が光に照らされる。

 

「待って」

 

だが、それを霊夢が止めた。ふたりが驚いているのを尻目に、霊夢は自らの霊力をフリーザへ向けて放ち、分け与えた。

 

「なっ…!」

 

フリーザは苦痛が和らいだことに困惑し、上半身だけの状態で空中に浮かぶ。

 

「霊夢お前…なんてことを…!!」

 

「私の気を少しだけフリーザに分け与えた。アンタならそれだけあれば生きられるでしょ?それとも、トドメ刺されたいんなら別だけど…死にたくなかったらとっととこの星から出ていきなさい」

 

「お、おい…!」

 

カカロットもブロリーも、情けをかけられたフリーザが大人しく退散するとは思えず、警戒を解かない。それは気を分け与えた霊夢本人も十分わかっており、超夢想天生が解けていないことも証拠だ。

 

「この星から…出ていけだと…?このフリーザ様をさんざんコケにしやがって…!」

 

だが、フリーザは湧き上がる怒りにわなわなと震え、霊夢とカカロットたちを睨みつける。そして右腕をゆっくりと後ろへ振りかぶり、そこへ紫色の気を溜め始める。

 

「この帝王フリーザ様がこのまま逃げ帰ると思うのか…!こんな星など…やはりチリにしてやる!」

 

もはや正気を失い、血迷ったフリーザは右手を地面に置くと、溜めたなけなしのエネルギーを地球の地中深くまで撃ち込もうとする。

 

「そう…残念だわ」

 

しかし、フリーザが放った一撃は、決して地中深くへ届くことはなかった。何故なら、放出源であるフリーザ自身が、放った一撃よりも速く、突然凄まじい勢いで天へ向けて上昇を始めたからだ。

傍から見ればフリーザが消えたように見え、カカロットは唖然と上を見上げた。

 

「どこまで飛んでくのかしらね?」

 

「お前なぁ…どうせアイツの事だ、回復したらまた地球へやってくるぞ」

 

「そうかな?まあそうなったら、私たちがまたやっつければいいんじゃない?今度こそ、コテンパンにさ」

 

そう言う霊夢は、能力の感知圏外へフリーザが消えたのか、それともフリーザがどこかで息絶えたのかは定かではないが、超夢想天生は解除されていた。

 

「…そうだな、次は絶対に負けねぇよ」

 

「そうね、だって…」

 

霊夢とカカロットは、娘のシロナを肩に抱き上げ、生き残った仲間たちと共に帰還する。育ち、育てられ、生まれたばかりのサザンカの待つ───幻想郷へと。

 

 

 

 

 

宇宙の果てまで飛ばされたフリーザは、墜落した小惑星に出来た巨大なクレーターの中心で地面を這っていた。

 

「サイヤ人…そして地球人め…!今に見ていろ…このフリーザは再び力をつけ、絶対にお前たちを殺してやる…ふはははは…!」

 

「フリーザ、こんなところで何をしている」

 

「…クウラ!」

 

そんなフリーザを発見したクウラは、惨めな姿で虫のように這いつくばる弟を冷たく見下ろした。

 

 

 

 

人里の小売り店を経営する夫婦の息子、キヨヒロは驚異の過ぎ去った幻想郷の空を見上げた。

 

 

 

 

外の世界、そのどこかに存在するヴァンパイア王国にて、ゴルゴン・ツェペシュは固く閉ざされた議事堂の扉の前でため息をつく。

 

 

 

 

「サイヤ人…この恨み、晴らさねば気が済まぬ…」

 

宇宙の墓場、暗黒惑星にて、怨念によって誕生した科学者が呪詛を口にする。

 

 

 

 

荒れ果てた荒野を進む竜の形をした動く城が立ち止まる。その内部、頭部にあたる部分にて、すべての司令塔である歪な人造人間は漫画雑誌を手にし、それを眺めていた。

 

 

 

 

「惑星コーグ侵略成功の日も近いな…」

 

機械工学で栄えた惑星を狙うマシンミュータントが、カプセルの中で胎動する小さな生命体を愛おし気に見つめながらそう言った。

 

 

 

 

「はははは…まさにこの私の思うがままだ。カカロット、博麗霊夢…そしてシロナ、待っているがいい…粉々に砕き殺してやるぞ!!」

 

何巡か先の遠く離れた並行世界にて、焼き払われ煙と炎に包まれた幻想郷の上で、九本の尾を持つ巨大な獣が憎悪の炎をくすぶらせながら呟く。

 

 

 

 

「これから先何が来ようと、俺ァ負けねぇし死なねぇ。もっと強くなって…家族を守る。だから、四人で暮らそう」

 

カカロットはそう言いながら、霊夢とシロナと共に、二人目の我が子サザンカを抱き上げた。

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

──────────

 

 

「…大丈夫かい?」

 

元の時空へ帰還したトランクスたち。サザロナは戻ってきた拍子にフュージョンが解け、シロナとサザンカに分離する。が、ふたりはそのままこちらに背を向けたまま動こうとしなかった。

 

「「何でもない…少し、泣いてるだけだ…」」

 

その足元には、ポタポタと大粒の涙が落ちていた…。

 

 

 

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