もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第362話 「奮い立つグラジオラス! 其の弐」

「きゃははははは!おーおー、そんなに睨まないでくれよカズラ!ウチのグラジアが多少殴ったのは悪かったからさァ」

 

コナギは笑いながらソファにどかっと座り、隣にいたカズラの肩を叩いた。

ここはコナギがアジトとしている廃アパートの一室。薄汚れた部屋だが、彼女が座る黒革のソファと敷いてあるオレンジ色のカーペットは新品のようだ。

俯きながらもコナギと、そしてソファの横でじっと立ち尽くしているグラジアを睨みつけるカズラ。

 

「アンタら何が目的だ?」

 

「そりゃあ決まってるでしょう、サザンカを呼びつけんだよ。何故かサザンカがお前を助けるためにムキになるって証言がいくつも取れてる!だからお前をここで監禁し、あのバカ女をここへおびき寄せるんだ」

 

「バカ女はアンタだ、サザンカに勝てるわけがない」

 

「そうか?フッフッフ…確かにヤツの異常さはあたしもこの前痛感したが…今はグラジアもいるし、何よりあたしにゃ強力なバックがついてる!今度はこっちがヤツに異常さってのを知らしめてやる」

 

「…好きにするといいぜ」

 

「きゃははは…そう言ってくれて助かる。グラジア」

 

名を呼ばれたグラジアはゆらりと振り向き、カズラに狙いを定めて腕を振り上げた。

 

 

 

 

「やっぱ病院食ってのァ腹が減りやがるな…よし、今日は昼から焼肉食いまくってやるぜ」

 

退院したアザミは首を固定するコルセットをうっとおしがりながらも早速バイクに跨りエンジンをかける。だがそこへ、自分の子分である男子生徒が慌てた様子で現れた。

 

「アザミさん…!これ…!」

 

「おう、何がどうしやがったァ!?」

 

「さっき変な女にこれ渡されて…手紙かと思って開けたら中にこれが!」

 

それを受け取ったアザミは思わず顔をしかめ、冷や汗を流す。

 

 

 

 

「おかしい。カズラが来ねぇ」

 

サザンカは腕を組み、眉間に皺を寄せながら苛立ちを隠せなかった。昨日、カズラは自分と朝一緒に登校すると約束したはずだ。忘れていやがるのか、それとも…

 

「おいサザンカ!」

 

そこへバイクに乗ったアザミがやってくる。そして例の手紙らしきものを無理やり押し付けるように渡す。

 

「これ見ろ!」

 

「ああ?んだこれ…」

 

それを開いて見たサザンカは硬直する。その一枚のプリント用紙にはボコボコに痛めつけられたカズラの姿と文章が。

 

「『サザンカ様へ 大切な友人が危険な目にあっています。助けに来てくださいクソ女』…だとよ。ご丁寧に場所までちゃんと書いてある」

 

「借りるぜ」

 

次の瞬間、アザミの身体が宙に放り投げられ、アスファルトの上で尻もちをついた。慌てて見上げると、既にサザンカがアザミのバイクに跨り、発進していた。

 

「お、おいコラ、待ちやがれ~!!」

 

 

 

 

「きゃはははは!サザンカのヤツ、はやく来ないかな~!ねぇグラジア、アンタもそう思うよねぇ?」

 

「…お、思う」

 

グラジアはカズラの身体を持ち上げて壁に押し付けながらぎこちなく答えた。カズラは腫れた顔で鼻血を流し、反抗的な目でグラジアを睨み続けている。

 

「だよな!?じゃあこのあたしに全治二か月の怪我ァ負わせたサザンカは…ただじゃおかれねぇよな?」

 

「…もちろん…!!」

 

目が血走り、カズラを締め上げる力を強めてしまうグラジア。カズラも苦し気にせき込んだその瞬間…

 

ブロロロ…

 

外でバイクのエンジン音が聞こえ、この廃アパートの目の前で停車した。エンジンを切り、今度は不気味なほどの静けさが漂う。サザンカの来訪を察知したコナギとグラジアが真剣な顔で窓の方を見る。

 

「来たか。グラジア、行ってこい」

 

グラジアは頷き、カズラを床の上に捨て置いて部屋を後にした。ゆっくりと階段を降り、アパートの出口から雑草だらけの駐車場へと抜ける。

すると、目の前には黒いセーラー服を纏ったスケバン少女が仁王立ちしてこちらを睨みつけていた。その姿を見たとたん、グラジアは急に心臓を握られたように息を吞んだ。顔が熱くなり、脚が震える。

 

「あ、あ、あ、あ、」

 

 

───おれがどこへ行っても、いつでも、大きなゾウが後ろについてくる。ゾウはおれが言葉を発しようとするたびにおれの事をまたいで前へ出ようとするので、いつもおれは必死にゾウを隠そうと躍起になった。

 

「オレ知ってるよ、グラジアみてーに喋れないひとは”吃る”からなんだよなー?」

 

でも隠したくても隠せない。

 

「こらー!グラジアの喋り方なんてどうでもいいでしょ!グラジアは優しくてカッコいいんだから!」

 

コナギ…コナちゃんだけは特別だった。

でも、それも小さい時だけ。だんだん成長して学年も繰り上がり、中学生のころにはそうはいかなくなった。馬鹿にされるおれを庇ったコナちゃんも馬鹿にされる。でも、おれは何も言い返せない。ゾウが、前に出ようと暴れるからだ。

 

「ッ…ッッ…!!」

 

でも、暴力を振られたコナちゃんを見た瞬間、おれは気付いたんだ。

別に、ゾウを隠そうと躍起になる必要はない。おれはゾウを隠すことをやめた。檻と枷をなくしたゾウは完全におれを跨いで超えると、そのままおれ自身の力となって暴れ狂うようになった。

誰とも言葉を交わす必要はねぇ、ゾウを前に出して暴れさせれば相手は黙る。初めからこうすればよかった。

コナちゃんはおれを庇い続けるために派手な格好や言葉を使うようになった。そうすることで寄ってくる嫌な奴らからコナちゃんを守るため、おれもゾウで暴れ続ける。

 

 

おれはコナちゃんが大好きだ。だから、コナちゃんを虐めたこんなヤツは好きじゃない。

 

「許さねえ…ぶ、ぶっ殺してや、やる」

 

一気に熱が冷めたグラジアは厳しい顔つきでサザンカを睨み、常人では考えられないほどの瞬発力で彼女の目の前へ接近し、拳を大きく振りかぶる。

 

「邪魔!」

 

しかし、それを振り下ろすよりも速くサザンカのアッパーパンチの一撃を顔面へ受け、成す術なく空中へとぶっ飛ばされる。

グラジアは空中で口から血を流しながら白目をむいて気絶し、回転しながら地面へ落下し激突した。そのままピクリともせず、たった一撃でノックアウトしてしまった。

そして、サザンカは何事もないようにさっさとこの場から歩み去るのだった。

 

 

 

階段を登ったサザンカはドアを蹴り破り、部屋の中へ押し入る。そこには、部屋の中央に置かれたソファに腰かけるコナギの姿があった。その隣には両腕を縛られたカズラも座らされている。

 

「…来たな、サザンカ」

 

サザンカはコナギへ対し鋭い眼光を向ける。

 

「おーおー、そんなに睨みなさるなって。もちろんあたしの事は覚えてるよな?そうだ、あのボロ神社じゃあ世話になったわね」

 

「誰だテメェ。カズラをよこせ」

 

「なっ…まさか忘れたの!?あり得ないんだけど…!」

 

わなわなと震えながらそう言うコナギ。サザンカは頭の上にはてなマークを浮かべながら、ゆっくりと彼女に近付いてゆく。

 

「きゃはははは…まあいいわ!グラジアじゃ止められないのは想定の内…アンタはあたしが直接ぶっ殺してやりたかった!」

 

コナギは立ち上がり、数歩前に出る。

 

「さぁあたしに力を貸せ!”後戸の力”を…!!」

 

「…!」

 

次の瞬間、コナギを中心に強力な気が渦を巻き、風が吹き荒れる。ソファが後ろへ倒れ、カズラも背中から倒れ込んだ。

そして響くのは、何かが軋みながら動く音。コナギを背後から見ていたカズラは、彼女に訪れた驚くべき現象を目の当たりにした。なんとコナギの背中に一本の切れ目が走ったかと思うと、なんと両開きの扉のようにそれが開いたのだ。それによって背中に出来た暗黒の穴の中から、緑、水色、ピンク、オレンジ色のオーラが立ち上り、4枚の翼のようになってはためく。

 

「きゃはははははは!!これが悪魔との契約によって手に入れた力よ!」

 

 

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