もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第365話 「海へ遊びに行こう!」

「あっついねって…シロナさんこんなところで何を…?」

 

「プールの掃除と草むしり、水泳部の人たちから1000ゼニーで頼まれてやってるんだ。ふー」

 

シロナはそう言いながらプールサイドをデッキブラシで磨いていく。

いやいや、おかしいだろう。シロナさんは教育実習生として俺とサザンカのクラスに入ってきた。だが生徒から金をもらって仕事をするのは、教師を目指す人としてまずいだろう。

そう心の中で思うも、カズラは特に何も言わず、頬と額に滲む汗を感じながらそこに立ってシロナが働いているのを眺めていた。

 

「よしっ、終わり」

 

シロナはそう言いながら立ち上がり、ポケットから煙草を取り出して火を付ける。

 

(煙草吸うんだ…)

 

しばらく煙を吸っては吐いてを繰り返した後、腰の両側に手を当ててプールの水面を見る。

 

「…泳いじゃおっか」

 

「え!?」

 

シロナは煙草と携帯電話、財布などを出してそこに置くと、ジャージ姿のまま高くジャンプし、そのままプールへ飛び込んだ。バシャンと大量の水が飛沫となって跳ね、カズラにもかかる。

 

「あっははははは!きんもち~!」

 

シロナは仰向けのまま水に浮かび、背泳ぎの要領で自在に泳いで見せる。カズラは引きつった顔でその様子を見ていた。仮にも自分らより5歳近くも年上の大人が、服のままプールに飛び込んでケラケラ笑っている。

 

「カズラくんも入りなよ!すごい気持ちいいよ!」

 

「え!?いや、俺は…」

 

「じゃあそこで干からびるといいわ!あはははは…」

 

そう言われたカズラは対抗心が燃え上がり、汗をかきながら少し笑うと、シロナと同じようにジャンプして思い切り水の中へ飛び込んだ。飛沫がシロナの頭にかかり、シロナは思わず顔を背ける。

 

「…カズラくん、服着たままじゃん…」

 

「そりゃシロナさんも同じでしょう」

 

「あはは、確かにそうだ!」

 

ふたりは水に入ってお互いに見つめ合ったまま、何故か次の言葉が出なくなった。キョトンと上目遣いでカズラを見上げる引き込まれそうな黒い瞳、水の滴る黒髪、水気で素肌に張り付いているジャージ…

 

「あは、あははは!なんか恥ずかしいね!」

 

「はい…」

 

シロナも思わず顔を背け、誤魔化すように笑った。

 

「…出よっか」

 

「はい…」

 

両者共にひんやりした水から上がったはずなのに、何故か体と顔は熱いままだった。

 

「今日も暑いからすぐに服も乾くよね」

 

ふたりは軽く服の水を絞り出し、昼過ぎの熱気が降り注ぐ中、下校しようと校門へ向かった。シロナも教育実習生としての仕事は既に終えているので帰宅できる。

 

 

 

一方その頃、校門近くでは。

少し困ったような顔で立っているサザンカの前には、あのグラジアとコナギがいた。ふたりが通っているオレンジスターハイスクールのあるオレンジシティからわざわざやってきており、ふたりはサザンカに対して頭を下げていた。

 

「この間はごめんなさい!これ、お詫びのお菓子です!もらってください!」

 

コナギは紙袋に入ったお菓子をサザンカに渡そうとするも、当のサザンカは首を振って口を開く。

 

「いやいや、だからいらねぇって!悪いのはあの摩多羅隠岐奈って変な女で、もうアイツをシバいたから何もねぇ、あの話はもう終わっただろ!」

 

「そ、そんなことはない…これはお礼でも、ある…受け取ってもらえて、初めてこの話は、お、終わり…!」

 

グラジアも大柄な体を縮こまらせながらぎこちなくそう言った。

 

「ンなこと言ったってなぁ…」

 

こめかみを指で掻くサザンカの背後に、もう一つの影が。

 

「ようサザンカァァ~~!!今日こそ決着つけようぜェ~~!!」

 

「うるせぇなテメェはコラァ!!」

 

大声で後ろから怒鳴り込んできたのは、アザミだった。この町の不良たちを束ねる女番長であり、そのガタイに見合った体には常人を優に超えるパワーとタフネスが備わっている。早速サザンカに掴みかかるアザミと、そのアザミの鼻の穴にペットボトルを押し込もうとするサザンカ。

 

「「あっ」」

 

「お前…!」

 

が、アザミと目が合ったグラジアとコナギは気まずそうに固まった。件の事件ではアザミもコナギの指示を受けたグラジアによって教習を受けており、すぐに回復したとはいえ首にケガを負わされたのだ。

 

「おー、でもアザミテメェいいところに来たなぁ。コイツらが詫びのお菓子を渡したいっていうからお前が受け取れよ。それで丸く収まるぜ」

 

「確かに…じゃあ、アザミさん!この間はすみませんでした!」

 

コナギとグラジアは今度はアザミにお菓子を渡そうとする。

 

「まあ俺は何も根に持ってねぇよ!サザンカにやられたんだろ?じゃあそれでいいじゃねぇか!菓子は貰っとくぜ」

 

アザミは鼻に刺さったペットボトルを引き抜きながら気前よくそう言った。

 

「よかった…」

 

ふたりはホッと胸をなでおろす。

 

「おや」

 

その時、プールから上がって歩いてきたシロナとカズラが、シロナたちのもとへやってきた。振り返ったサザンカはあんぐりと口を開けて彼らを指さす。

 

「…どゆこと?なんで姉貴とお前が…一緒んなってそんなにびしょ濡れなんだ…?」

 

「おお、サザンカ…実はさっき…」

 

しかし、サザンカはカズラの弁を聞くことなく拳を振り上げ、目を吊り上げて怒りながらシロナへ殴りかかる。

が、シロナはふわっとした動作でそれを避けると同時にサザンカの首に腕を回し、くっつき合いながらこう言った。

 

「さっき考えたんだけどさ!今度の連休、みんなで海に行こう!!サザンカの友達も一緒にさ」

 

「「「海!!??」」」

 

 

 

 

連休がやってきた。アザミが用意したキャラバンには、アザミ、シロナ、サザンカ、カズラ、コナギ、グラジア、そして運転手としてトランクスまでもが乗っていた。一行は海水浴場へ向けて車を走らせ、山を越えていよいよ海が見えそうな道路を進んでいる。

 

「なんでオレまで…?」

 

トランクスは困り顔で軽いため息をついた。

 

「まあまあいいじゃないかトランクス。アザミだってまだ車の免許はねぇんだぜ、ここは保護者としてよろしく頼むよ」

 

サザンカがそう返す。学校でシロナと会って海に行く話を出されたときは不機嫌極まる様子だったサザンカがこうして非常に上機嫌なのは、やはりカズラも一緒に出掛けると聞いたからだろう。

 

「そうだな、ライたちとの決戦も近いけど…たまにはオレも息抜きしよう!」

 

丘を越えると、目の前には陽光を受けて宝石のように煌めく大海原と、熱気を放つ海岸が姿を現した。

 

 

 

 

「海だ~~~~~~~~!!」

 

手早く水着に着替えたサザンカ、アザミ、コナギ、グラジア。サザンカは黒いハイネックホルターにショートパンツ型の水着を、コナギは青と白の花模様のタンキニを、アザミはマリンスポーツ選手のようなラッシュガードを、グラジアは赤いサーフパンツ。そして彼らに強引に巻き込まれる形で連行されていくトランクスは青いサーフパンツを。彼らは迷わず熱い砂浜の上を翔け、海に向かってジャンプした。

 

「行っちゃったねー」

 

「はい、行っちゃいましたね…」

 

残されたシロナとカズラは、車から荷物を降ろしながらそう言った。

そういうカズラも既に膝丈のサーフパンツにTシャツという装いに着替えている。大きな荷物を一度に大量に抱えたシロナとカズラはそれを海の家の一画に置き、一息つく。

 

「私も水着になろーっと」

 

「えっ!?」

 

シロナは一目のある場所でいきなり服を脱ぎ始めたのでカズラが驚いて声を上げる。だが、その下にはすでにフォーマルな競泳タイプの水着がすでに着られていた。

 

「じゃーん、実はもう着てたのでした」

 

「…そうでしたか」

 

カズラは小さくそう言うと、机の脇に腰を下ろした。

 

「あれ?みんなと遊ばないの?」

 

「いえ、俺は…ここで見てます。暑いの苦手なんで」

 

「…ふーん、じゃあ私もここで見守ってよっと」

 

カズラの隣に座り込むシロナ。暗く涼しい海の家で、ふたりの耳には風鈴の音がやけに目立って聞こえていた。

 

 

 

 

『もしもし、君がトランクスかい?ふっふっふ…』

 

「誰だ?お前は…!」

 

しかし、トランクスの耳には、最後の戦いの始まりを告げる声が響いていた。

 




【現在公開可能な情報】

登場キャラクターの好きな食べ物

サザンカ ラーメン、肉、
シロナ アップルパイ、鮭
カズラ ラーメン、じゃが芋
アザミ 肉
コナギ 果物全般
グラジア クルミ、栗、豆
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