もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第366話 「決戦、トキトキ都へ!」

「…シロナさんこそ、遊んでこないんですか?」

 

カズラはシロナにそう尋ねた。

 

「んー?あはは、私はいいかな…ここで見てる方が楽しいの。だって、私にとってはこんな何にもない日が来るなんて思いもしてなかったんだから」

 

シロナは微笑みながらそう言った。カズラは、その笑みと言葉の中に、この人が歩んできた数々の壮絶な経験の一端を垣間見たような気がした。

 

「思い出したくないなら無理に聞きませんけど…よかったらシロナさんの昔の事、聞かせてくれませんか?」

 

「…ほーう、そんなに私の事が知りたい?」

 

それから、シロナは自分の生い立ちを離した。幻想郷という今はない別の世界で生まれた事、フリーザという宇宙人との戦いで両親が亡くなった事、人造人間スカーとの出会い、ヴァンパイア王国での出来事、人造人間との戦い、レイムの事。

カズラは思った。それだけの経験をしていれば、もっとシロナがそれらを気に負って性格にまで影響を与えていてもおかしくない。しかし今のシロナは朗らかで、力強くて、それで…

 

「すごいです…シロナさんは。俺は昔から自分ひとりじゃ何もできないんです。サザンカに初めて助けてもらった事があって、それからはアイツに頼りっぱなしで」

 

「それでもいいんだよ。人ってのはジグソーパズルのピースみたいなもんで、出来ない事と得意な事でデコボコしてるの。でもデコボコが集まれば、足りないところを補ってもらえる。そうやって人の輪ってのはできてると思うんだ。だから、カズラくんだけじゃなくて、サザンカもきっと…君に助けられてる部分があると思うよ」

 

「…そ、そうですかね…?」

 

「うん、きっとそう!」

 

 

 

 

「なんでカズラと姉貴があんなに仲良く喋ってやがる…?」

 

波打ち際で、サザンカは明らかに不機嫌な様子で遠くに見える海の家を睨みながらそう呟いた。

 

「なにを独り言言ってんだコラ!ボケっとしてると沈めちまうぞ!」

 

サザンカとアザミは海に来てまでいつもの喧嘩を始めてしまう。

それを少し離れたところで、浮き輪を使って海面で浮かんでいるだけのコナギとグラジアが困惑してそれを眺めている。

 

「コナちゃん、あれ、止めなくても…?」

 

「いいんじゃない?いつものことらしいよ」

 

 

 

 

しかし、トランクスは周りに人が大勢いる浜辺の上で棒立ちし、突然頭の中に響いてきた謎の声を聞いていた。

 

『もしもし、君がトランクスかい?』

 

「誰だ…お前は!」

 

『ぼくの事が知りたいのかい…じゃあ教えてあげちゃおうかな。ぼくの名前はバビディ…ライの仲間だと言えばわかるよね?』

 

「バビディ…そうか…。お前がオレに何の用だ?魔人ブウを復活させるエネルギーは、もう集めなくていいのか?」

 

トランクスもバビディの事は知っていた。トランクスはこちらの時空へ流れ着いてから、自分なりにこの時空の歴史の成り立ちを調べていた。フリーザが地球のツルマイツブリ山で倒された事、Dr.ゲロはピッコロ大魔王に殺されている事、そして魔人ブウもまた封印されているところをピッコロ大魔王の手によって消滅させられている事。

 

『くくく…なんだぼくの事知ってるんじゃない。あの魔人ブウが誰かに消されていた時はびっくりしたけど…今となってはどうでもいいんだよね~…。まあそんなことよりもさ、ぼくが君に言いたい用っていうのは…見てもらった方が早いと思うんだよね』

 

バビディがそう言うと、彼の声に加えて謎の映像がトランクスの頭へ流れ込んでくる。

そこは少しの光だけが射している暗い部屋。その光景の真ん中で、太い柱の前に何者かが座り込んでいる。

両腕を広げた状態で、手の平に杭を打ち込まれ磔にされているその者は…

 

「時の界王神様!?」

 

バビディからテレパシーあの時襲撃された時の界王神がひどく弱った姿で項垂れている。その姿を見たトランクスは思わず叫び、バビディの小さく笑う声が聞こえる。

 

『そうさ、時の界王神さ…大丈夫、死んじゃいないよ』

 

「お前たちは一体、何のために時の界王神様を…!!」

 

『何のために?ん~いい質問だねぇ、痺れるよ…ぼくらはね、この死にかけの小娘と引き換えにしたいものがあるんだよ』

 

「まさか…」

 

『そうだ、君が持っている暗黒ドラゴンボールを全て持って来い。時間はあんまりやれないね』

 

「…オレはトキトキ都へ帰るために暗黒ドラゴンボールを集めていた…」

 

『心配はない。それくらいぼくの力でやってやるさ』

 

トランクスが暗黒ドラゴンボールを集めていた目的は、神龍の力を使ってトランクスの剣を修復し、それを使ってトキトキ都へ帰る事だった。その目的を容易くやってやると言われたので、少し面食らった。

 

『その代わり、きちんとお前たちが持つ4個の暗黒ドラゴンボール、持って来いよね』

 

「わかった…言う通りにしよう」

 

『それとね、今までお前が一緒に戦っていた連中も連れてくるんだよ~。じゃないと時の界王神、殺しちゃうかも』

 

「なに…!?待て、彼女らは関係ないだろう…!」

 

しかし、トランクスがそう抗議するも、それきりバビディの通信は途切れ、何も聞こえないし見えなくなった…。

 

 

トランクスは一旦全員を集め、バビディからの通信の内容を伝えた。

 

「いよいよ来たってわけか…決戦がよ」

 

「当然私たちも力添えしていいんでしょ?」

 

「ああ、敵は君たちも一緒にと言っていた。それに、またライや仮面のサイヤ人の相手をするとなれば、君たちの力は不可欠だ」

 

海の家の影で、サザンカ、シロナ、トランクスはそう言いながら決戦へと赴く決意を固める。その時、彼らの目の前に時空の歪が現れた。空間が裂けたようなその穴の先に、トキトキ都が待っているだろう。

 

「という訳だから、オレたちは着替えてから向こうへ行くよ…」

 

「ごめんね、せっかく海に遊びに来たのに…」

 

だが、残されるはずのアザミとカズラはにやりと笑うと、隣のコナギとグラジアの腕を掴み、サザンカたちにタックルを喰らわせる。

 

「テメェら何しやがる…!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ…!」

 

アザミたちに押される形でサザンカたちが時空の歪の中へ入っていく。

 

「なんで俺らが残んなきゃならねぇんだコラァ!」

 

「アザミさん、私は違うと思うんですが…!」

 

「大丈夫!いざとなったらサザンカが守ってくれる!だろ?」

 

カズラに視線を向けられたサザンカは、諦めたように少し笑った。

結果、海に遊びに来た7名は着替える暇もなく共にトキトキ都へと飛んでゆくのだった…。

 

 

 

 

「よっ…と!」

 

7人が降り立ったのは、全く見知らぬ場所。白い巨石で造られた橋の上にいるようで、下には川が流れ、両岸は若草に覆われている。遠くの方には街がある気配も感じるが、トランクス、サザンカ、シロナはすぐに気付いた。この世界は何かとてつもない不吉に支配されている。

 

「なんで来たんだ君たち…この先は君たちが思っているような楽しい場所じゃないんだぞ!」

 

トランクスはアザミたちに対して怒鳴り声を上げる。

 

「まあしょうがねぇじゃねぇか」

 

それをサザンカが諌めようとした。

 

「来ちまったモンはしょうがねぇ…とにかくお前ら、アタシや姉貴…トランクスの側ァ離れるんじゃねぇぞ」

 

「確かにそうだけど…オレたちがいつでもずっと彼らを守れるわけじゃない!今からでも元の世界へ…」

 

「もう遅いみたいだよ」

 

シロナが上を見上げながらそう言った瞬間、突然影が降りてきて周囲が暗くなった。同時に、空から巨大な岩石が降ってきて目の前に墜落した。

 

「なんだ!?」

 

上空から舞い降りてきたのは、両足に岩石を掴んだ超巨大な鷲のような鳥だった。しかもそれが10羽近くもいる。鋭い目を下へ向け、次にどこへ岩を落とすか狙いを定めている。

 

「どわあ!なんだこりゃあ!」

 

一行は次々と落とされる大岩を避けながら走り出す。

 

「ふざけやがって鳥公風情が…!」

 

「危ないでしょ!」

 

だが、サザンカが頭上へ降って来た岩を砕き、そう叫ぶ。そしてシロナとふたりで空中へ飛び上がり、鷲を叩き落とそうと飛び蹴りを繰り出す。

しかし、鷲は力強く羽ばたいて突風を放ち、ふたりの動きを止める。

 

「うお…!」

 

「ただの風じゃない…!気も一緒に飛ばしてきてる…!!」

 

次の瞬間、鷲は足の指を大きく広げながら迫り、硬直しているふたりを片足で掴んだ。

 

「何しやがる…離せ!」

 

「シロナさん、サザンカちゃん!!」

 

トランクスがふたりを助け出そうとするも、鷲は体を捻って構え、直後に勢いよくふたりを脚で投げ飛ばした。シロナとサザンカは成すすべなく遥か彼方へ吹っ飛ばされ、見えなくなってしまう。

 

「くっ…!」

 

トランクスは改めて空から襲い掛かる10羽の巨大鷲と睨み合う。鷲はギョロリとした大きな鋭い目でトランクスたちを睨み返す。鷲はただ巨大なだけでなく、気の扱い方まで交えたその戦闘力は一筋縄ではいかないレベルだろう。

 

「川へ飛び込んで逃げろ…オレがコイツらの相手をする」

 

トランクスは超サイヤ人へ変身し、後ろに居るアザミたちへそう呼びかける。

 

「はやくするんだ!」

 

「あ、ああ…行こうぜ!」

 

アザミ、カズラ、グラジア、コナギは共に川へ飛び込む。

…そこから先の記憶は、曖昧で思い出すことができなかった。

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