もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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あけましておめでとうございます。今年もどうかよろしくお願いします。


第369話 「全てのキリをこの手に?」

「う、うう…」

 

カズラは目を覚ました。ぼやける目であたりを見渡すと、ここは見覚えのない薄暗い部屋の中…。自分に何が起こったのかを思い出して、はっと我に返る。

 

「そうだ、みんなは…!?」

 

「おー、ここにいるぜ」

 

ガバッと起き上がったカズラの横には、頭に包帯を巻かれたアザミが座っていた。さらに、その側には不安そうな表情のコナギと明らかに怒りが隠しきれていない顔つきのグラジアもいた。

 

「お前ら…!よかった、無事だったのか」

 

「ああ、俺らはあのクソッタレ共に掴まってここに幽閉されちまったらしいな」

 

アザミも悔しそうに口の端を曲げながらそう言った。

 

「サザンカとシロナさんは無事かな…」

 

コナギもここにいないサザンカとシロナの心配をする。

 

「それで、ここはどこだ…?」

 

「ここはバビディの城じゃよ、若い地球の人」

 

その時、頭上から低い声が響いてきた。カズラは上を見上げると…そこには巨人か何かかと見紛うほどの大きさを誇る何者かが座り込んでいた。

 

「ぎゃああああでっかあああああ!!?」

 

驚いたカズラは腰を抜かしたまま後ろへ後ずさる。

 

「今さら気付いたのかよ…」

 

「まあよいよい。ゴァハハハハハ!!」

 

床の上に胡坐をかいて座っているにも関わらず、その大きさが4メートル近くもありそうなその者は豪快に笑った。丸々としたふくよかな巨体に、白い衣服を纏い、その上から赤いローブを羽織った男は、肌も緑色で、額からは一対のナメクジのような触角が伸びていた。

 

「わしの名はジーメック。遠く離れたナメック星と言う星に住むナメック星人じゃが、ここで出会ったのも何かの縁!よろしく頼むぞい」

 

ジーメックと名乗ったそのナメック星人は細く鋭い目をカズラへ向けた。そして、よく見るとジーメックの後ろに別の誰かが2人いることに気付いた。外見の特徴からして、彼と同じナメック星人という種族だろうか。

 

「こやつはカタッツ。もう片方はスラッグ。共にわしと同じナメック星人じゃわい」

 

カタッツは恐らくジーメック程の身長は持ち合わせていないが体格はかなり引き締まっており、よりマッシブな印象を受ける。さらに横にいるスラッグと紹介されたナメック星人はヘルメットを被っており、紫色のボディスーツと黄色いローブを身に着けている。スラッグの身長は大柄な地球人程度の大きさで、ジーメックとカタッツに比べると小柄に見える錯覚を感じる。

彼らは全員、首元に太い鉄製の拘束具を取り付けられ、それは鎖を通じて壁と繋がっていた。ジーメックは大らかに話して笑っているが、彼ら3人は傷だらけで、かなり弱っている様子なのが伺える。

 

「誰がこんなことを…まさか、バビディってやつが?」

 

カズラはわなわなと震えながらそう言った。

 

「サラガドラ、という男じゃ。バビディなんぞ、あんな小物は受付の窓口に過ぎん。もうずいぶん前のように感じるが、サラガドラは過去のナメック星からわしらを連れて来てドラゴンボールを作らせようとした。だがわしらは断固拒否し、抵抗を続けた。サラガドラがわしらにドラゴンボールを作らせるのを諦め、暗黒ドラゴンボールの収集に舵を切り替えたのじゃ」

 

「貴様らには何のことだかわからないだろうが…私たちはなんでも願いを叶えるドラゴンボールの作り方を知っている。だが、スラッグはたまたま私たちと一緒にいたところを連れてこられただけで、それについては何も知らないがな」

 

ジーメックに続けてカタッツが口を開き、静かに言った。横にいるスラッグも不機嫌そうにため息をついた。

 

「サラガドラ…そいつが今回の事件の真の黒幕って訳か?ならどうしてそんなにドラゴンボールを欲しがってんだろうな…何か、どうしても叶えたい願いがあるってことか?」

 

と、アザミが問う。

 

「如何にも。そしてヤツが望んでいる願いこそが、この世に混乱と破滅をもたらすとんでもないことだ」

 

「と、とんでもないことって…?」

 

怯えた様子でコナギが言った。

 

「それはな、とある歴史以外の時空を全て───」

 

次の瞬間、ジーメックの言葉が遮られたかと思うと、なんと彼とカタッツ、そしてスラッグの身体が宙へ浮かび上がった。そして、首に繋がれた鎖が何かの力で振り回され、ジーメックたちはまとめて壁に叩き付けられた。

 

ガシャアアン!!

 

凄まじい音と衝撃が響き、顔面から壁にぶつかったジーメックたちはずるずると力なく倒れていく。

 

「バ、バビディ…!」

 

彼らは顔から血を流しながらか細い声で、部屋に入って来た敵の名を呟いた。

 

「ダメじゃないか、ナメック星人の諸君。そういう大事なことは、このぼくの口から言わせてくれなくちゃ」

 

バビディは邪悪な笑みを浮かべながらそう言った。普通の人間の腰までほどの大きさしかなく、土色のシワクチャの肌、ローブとマントを羽織り、ギョロリとした大きな眼をいやらしく細めてこちらを見ている。

手にはジーメックたちに繋がれた鎖が握られており、彼がそれを振り回してジーメックたちを壁へぶつけたのだろう。

 

「テメェ、何しやがんだ!」

 

立ち上がったアザミとグラジアが、バビディに殴りかかる。が、バビディはもう一度鎖を振るって鞭のようにふたりを打って弾き返した。

 

「ぐあ…!」

 

グラジアに覆いかぶさるようにアザミも倒れ込む。

 

「ぼくの魔術で作ったこの鎖はね、ぼくにとっては鎖そのものとそれに繋がれた物は綿のように軽く感じられるんだ。窓口の小物だとか言ってるのが聞こえたけど…その小物に手も足も出ない君らは一体何なんだい

?」

 

バビディはそう言いながら倒れたアザミの頭を踏みつける。

 

「そこまでして…貴方は一体何を叶えたいんですか…!?」

 

コナギに問われたバビディは、ゆっくりと口を開いて語り始めた。

 

「…この世には、時間が流れるのと一緒に『力の流れ』ってものがあるんだよ。それをぼくらは『キリ』と呼んだりするんだけど…パラレルワールドって知ってる?例えばぼくが、5秒後に右手を上げるか左手を上げるか…二通りの未来があるとする。この時、”現在のキリ”はその二通りの未来へ向けて分かれて流れ始める。実際にぼくはこの通り右手を上げた。すると、左手を上げる未来へ流れた力は、右手を上げた現在には流れて来ない。左手を上げた場合に発生したパラレルワールドへ流れてしまったんだ」

 

バビディは上げていた右手を少し降ろし、人差し指を上へ向ける。

 

「それってすごく勿体ないと思わないかい?じゃあ、もういいんじゃないかね…他の結末を辿った時空なんてさ。だからぼくらは暗黒ドラゴンボールにこう願うのさ!『パラレルワールドなんてものはもういらないので、今までに生まれたパラレルワールドと、これから生まれるパワレルワールドすべてを消し去ってください』ってね」

 

「愚か者め、いくら神龍といえど、そのような宇宙の理を覆すような願いを叶えられるはずがなかろう」

 

と、カタッツが反論した。

 

「チッチッチ…何のために暗黒ドラゴンボールはわざわざ過去の歴史まで散らばって、強大な力を持つ者に寄生すると思うんだい?その影響で歴史が歪んだ際に生じる『キリ』を吸収して、より強力な願いの力を蓄えるためなのさ!」

 

「暗黒ドラゴンボール…我々の同胞の誰かが作ったのだろうが…なんと恐ろしいものを…」

 

「とにかく…全てのパラレルワールドが無くなった時、そこへ流れてしまった、あるいは流れる予定だったエネルギーは全て現在の世界へ流れ着く!ぼくらはそのエネルギーをひとり占めできるってわけ!そうすれば暗黒魔界のみならず、全宇宙を支配する事すら容易いのさ」

 

「それが、サラガドラの願いとやらかの」

 

ジーメックがそう言うと、バビディは彼を睨む。

 

「そうだよ。あの方が全て教えてくれたんだ…あの方の言う通りにすれば、全てがうまくいく。今頃、暗黒ドラゴンボールを持ってきたトランクスもやられている頃だろうしね…。じゃ、ぼくはこれにて失礼するよ…」

 

バビディはそう言い残すと、一瞬でその場から消えてしまった…。

 

 

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