もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第370話 「主人公サラガドラ」

一方、都から離れた石橋の上。

 

「ハァ…ハァ…!」

 

トランクスはその場に膝をついて座り込んだ。汗が顎先から伝って石の上に落ち、超サイヤ人が解けて元の薄紫色の髪に戻る。

目の前には、トランクスに倒された10羽の大鷲が痙攣しながら転がっている。

 

「なんと…無様な姿ですか、トランクス」

 

そこへ、コツコツと靴の音を鳴らして現れたのはライであった。相変わらず、赤いワイシャツの上に白いスーツを着て冷酷な目でトランクスを見下ろす。

 

「…ライ…!」

 

「暗黒魔界で生まれ、凶暴に育て上げられた大鷲ですが…所詮は鳥です、そのような存在にそこまで疲労しなければ倒せないとは…。まあそれはともかく…暗黒ドラゴンボールは4個すべて持ってきたんでしょうね?」

 

トランクスは俯いたまま頷いた。

 

「よろしい。では、受け渡しの予定場所へ向かいます…ついてきなさい」

 

飛び立ったライの後ろを、トランクスがフラつきながらも着いていく。

 

「サラガドラは恐らく来ません。貴方は私にボールを渡してくれればいい…」

 

「前に、初めて会った時に話したよな…?そうすれば…時の界王神様は解放してくれるんだろ?」

 

「ええ。サラガドラに勘付かれさえしなければ」

 

「その、サラガドラという男は…一体何者なんだ?」

 

「あの男は…私と姉さんを作った科学者を殺した…つまり、親の仇のようなものです。サラガドラについて説明するには、少々昔まで遡らなければなりませんが…」

 

 

 

また一方、サラガドラの城の内部。

 

──何が起こったんだっけ…?ああ、そうだ…サラガドラって名乗った人と戦って…フュージョンまでしたのに負けたんだ…

 

「…あっ!?」

 

目覚めたシロナは勢いよく起き上がった拍子に自分の顔を覗き込んでいた人物と額同士でぶつかった。ゴチン、と大きな音が鳴り、シロナは悶絶しながら再び寝ころんだ。

 

「いった~~~!?」

 

「痛ったいのはこっちのセリフよバーカ!!」

 

シロナとぶつかった人物は仰向けにひっくり返りながらそう言い返した。

 

「って、あ~~~!!アンタは~~~!?」

 

その人物が誰なのか気が付いたシロナは大声を出しながら指差した。

 

「うるさい!いちいち大声出すんじゃないよ!!」

 

なんと目の前に居たのは、かつて元の時空でサザンカを痛めつけ、シロナと激戦(一方的な)を繰り広げたパスト本人であった。シロナは驚きのあまりたんこぶの出来た額の痛みなど忘れて食って掛かる。

 

「忘れちゃいないよパスト!!私、次会ったら滅茶苦茶に殴らせてもらうって言ったわよね!?」

 

「だから大声を出すなっての!ここはサラガドラの城なんだよ、ヤツにバレたら全てがお終いなんだ…完全に気を消しな」

 

「なんでアンタの言う事聞かなくちゃいけないの!?」

 

「察しが悪いヤツだなテメーは…!私はサラガドラの敵だ!ここまで言わなきゃわからないのかい!?」

 

「…あ、そうなの?」

 

シロナは肩を落として大人しくなる。

 

「敵の敵は味方…!ここはヤツの城の中だけど…階と階の間にあるちょっとした空き部屋だ、とにかく今は気を小さくしてヤツに気付かれるな…」

 

「パスト、アンタ一体何を…」

 

「とにかくサラガドラをぶっ殺したい!そのために…ぶんへっ」

 

「何してんだテメェ」

 

喋りはじめたパストの側頭部を、いつの間にか目を覚ましていたサザンカがぶん殴った。パストは言葉を遮られて変な声を出しながら吹っ飛び、床の上にズシャアと倒れ込んだ。

 

「いった!いったい!気を消して無防備なところ殴りやがった!」

 

殴られた箇所をさすりながら喚くパスト。

 

「あ、サザンカおはよー」

 

「おう。んでコイツは何を言ってやがるんだ?前に言った通り、元気そうだからもう一度ぶっ殺してやるか」

 

「頭イカれてんのかお前!ねぇシロナ、コイツ大人しくさせてちょうだいよ」

 

「サザンカ、どーどー!とにかく何か話したいみたいだし…聞いてみてからぶっ殺そうよ」

 

「…そうだな」

 

「コイツらやっぱイカれてる~…。んで、さっきの続きだけど、私はどうしてもサラガドラをぶっ殺したい!そのために手を組まない?」

 

「手を組むだって?テメェとか?」

 

「そうよ。もちろんいいわよね?貴方たちもドラゴンボールを奪って、時の界王神を助けるためにここまで来たんだもんね?」

 

「理由を言いなさいよ。アンタもサラガドラの仲間なんでしょ?」

 

「仲間?ハッ、あんな男の仲間になんてなったつもりはない…私もライもな。アイツは…私たちにとっての”王”の魂を喰っているんだ」

 

「王…?」

 

「『メチカブラ』様さ。古代の魔導士にして、真に暗黒魔界を統べるべきお方…!私とライは暗黒ドラゴンボールを使って、メチカブラ様の魂を吐き出させる!そうすれば、あんな男は取るに足らないただの魔人に戻る…」

 

「ほーん…」

 

「ライも独自でトランクスと接触して動いているはず…。だから私たちがドラゴンボールを集めるのに協力しなさい」

 

「ていうかよォ、サラガドラって一体何者なんだ?そのメチカブラって奴の魂を喰って強くなってるのはわかったが…どうしてそんな事になって、アイツは何を望んでんだよ」

 

と、サザンカが聞いた。

 

「そうね…私が知ってる範囲だけなら話してあげる」

 

 

 

「バビディの野郎…鎖ブン回して当てるなんざ、心底人を馬鹿にしてやがるぜ」

 

アザミはそう言いながら怪我の増えたジーメック、カタッツ、スラッグに肩を貸して起き上がらせながらそう言った。アザミもグラジアもバビディによって手痛い攻撃を受けてしまったが、何とか大した傷は受けずに済んだ。

 

「かたじけないのう、地球の方…」

 

「気にすんな。それよりも…バビディのバックについてやがるサラガドラって野郎は…本当にキリとやらを掌握して全宇宙を支配しようとしてやがんのか?」

 

アザミがそう言うと、ジーメックは少し考えながら言った。

 

「いや…わしが思うに、あの男がそこまで大それたことを考えるとは思えんがのう…」

 

「そうなのか?サラガドラってどんなヤツなんだよ」

 

「わしは触れた相手の記憶を読み取れる…ヤツと接触した際、一瞬だけ記憶を覗き見ることができたが…その限りではヤツの望みは別にあるような気がしてならんのじゃ」

 

「こうなったら、もうそのサラガドラの事をよく知るしかねぇな。話してくれねぇか?」

 

「いいだろう…」

 

こうして、ライ、パスト、ジーメックは、ほぼ同時に倒すべき黒幕であるサラガドラの過去について語り始めた。そう、彼の特別な<物語>が、幕を開ける。

 

 

 

「「「サラガドラは…」」」

 

 

 

 

──────────

 

─────

 

 

この宇宙に存在している、人間が棲む惑星には必ず”裏側の世界”が存在し、そこは”魔界”と呼ばれる。そして魔界の深層部であり、惑星という規模を越え”宇宙の裏側の世界”とも呼ばれる”暗黒魔界”も存在する。

悪魔や魔人、魔物が棲まう魔界であるが、そんな魔界の住民さえ恐ろしがって近寄ろうとしない暗黒魔界であるが、そこにも普通に暗黒魔界の魔人や悪魔が暮らしているのである。

 

 

「子らはよく眠っているのだね」

 

とある一軒家に住む夫婦は、ひとつのベッドで一緒に眠るふたりの子供の寝顔を見ながら小さな声で会話する。

 

「ええ、あなた」

 

「雇い主から『節の多い汚い木ばかり切ってくるな』と言われたよ…値切られて値切られて、結局わずかな金しか貰えなかった…」

 

「力を落とさないで、あなた…」

 

「魔界との戦争さえ終わってくれれば、子らにもチキンやケーキ、他にも色んな美味いものを食べさせてやれるのに…」

 

夫婦はそう言いながら、子供らの寝室を後にした。

 

「…アル、起きてるかい?」

 

「サラガドラお兄ちゃん、起きてるよ」

 

兄のサラガドラと妹のアルはむくりと起き上がり、カーテンを開けて窓の外を眺めた。目の前の広間を挟んだ向かいの家は明るく灯され、部屋の中では大勢が集まってがやがや楽しそうにしている様子が見える。美味そうなご馳走とケーキを囲み、子供たちがはしゃいでいる。

 

「いいなぁ…うちもいつか、あんなご馳走食べてみたいなぁ…」

 

サラガドラは指を咥えながらそう呟くアルに対して嘘を吐く。

 

「うん、いつかね…」

 

でも知っている。あれは貧しい僕らには何の関係も無いもの。生活の苦しい木こりの家に生まれた僕らにはいつまで待っても永遠に手に入らないもの。でもそれをアルに言ったところで何にもならないから嘘を吐いた。

 

 

「なあお前ら、知ってるか?」

 

サラガドラは街の空き地で、放置された土管の上で寝そべりながら、下から聞こえた声に耳を傾ける。

 

「うちの親が言ってたんだけどよぉ、また新しい魔界とも戦争を始めるらしいぜ。その頃にはおれたちは出兵されてもかしくねぇ歳だ」

 

「マジかよ。オレそれまでにこの街を出ようかな」

 

「それ本当の話かい?アブラ、チーチン」

 

「まあどうなるかは分からねぇがなぁ…お前はどう考えてる?サラガドラ」

 

アブラは壊れた自転車に跨りながらそう言った。チーチンは自作の短剣を研ぎながら、耳だけは彼らの話に傾けている。

 

「僕は…」

 

 

 

…何年か後、サラガドラは少年兵として戦争へ行った。

 

「頑張ってきなさい」

 

「父さんも母さんも…お前の帰りを待っているからな」

 

「お兄ちゃん…」

 

電車に乗って出兵する際、家族が送り出してくれた。

 

(ああ…生きて帰るさ。戦争さえ終われば、腹いっぱい御馳走が食える。僕が…この戦争を終わらせるんだ)

 

 

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