もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第373話 「魔導士サラガドラ」

こうして、サラガドラは暗黒魔界最強の魔導士として君臨した。メチカブラの魂を喰らう事で得られた圧倒的な魔力のおかげで、体中から飛び出していた銃器類を引っ込めることができるようになった。

しばらくの間、サラガドラはアブラ、チーチン、バビディと共に古城跡に棲みつくようになった。ありとあらゆるご馳走や世界中の美味いものを食べつくし、はるばる芸人を呼び寄せ、女も数え切れないほど手に収めたという。それも手に入れた魔力が成せたことだ。

しかし、かつて思い描いた全ての夢を叶えたサラガドラだが、同じような日々を繰り返すうちにだんだんと気力が失せ、怠さのままに何もしない日々が続いた。

 

「退屈だ…」

 

もう何を食べても、何を見ても、何をやっても面白いと感じることが無くなってきた。といっても何もしない日々を過ごし続けるのも嫌なので、古城跡の書物庫に入り浸ってはひたすらに本を読みふける生活を送った。

ある時、サラガドラはとある古びた歴史書を発見する。何の気なしにそれを呼んでいると、何故かとても興味を惹かれるページがあった。

 

「『サイヤ・ハーツ』…?」

 

サイヤ・ハーツ。遥か遠い昔、ヒトの細胞の数ほど存在した宇宙を消し去ってゆく神々に徹底的に抗戦し続けたふたりの戦士がいた。ひとりは黄金の闘気を身に纏い、ひとりは蒼紅の輝きを放ち、神々の身勝手に晒される人間たちを救ったと記されていた。

 

「へえ…そんなヤツがいたのか。ほんとかなぁ?」

 

久々に感情が湧きたった。まさかそんな者が本当に存在していたのか?だとすれば彼らは今どこで何を?何故歴史から姿を消した?生まれた疑問は尽きなかった。

 

 

 

「サラガドラ!この女と妙な鳥が城ン中でコソコソしてやがったんで捕まえたぜ」

 

アブラとチーチンがそう言って連れてきたのは、メチカブラを殺したときにその場にいた女科学者トワと、紫色の羽毛に黄色い目と十字の瞳を持つ謎の鳥だった。

 

「君は…メチカブラと一緒に居た人だね。生き残っていたとは驚いた…気付かなかったよ。今までどこに居たのかな?」

 

俯いたまま身じろぎすらしないトワ。表情は見えないが、床に染みができるほどポタポタと汗をかいているのでよほど焦っているか、恐怖に支配されているらしい。

 

「ここの地下に…設けていた研究ラボに…おりました…」

 

「案内しな」

 

トワを連れて、彼女が教えた場所に行くと、確かにそこには隠されたラボが存在していた。中に入ると、複数のコンピュータや様々な研究器具、そして培養液で満たされた大きなカプセルがふたつ、その中には、それぞれ筋骨隆々で大柄な男と、トワに似ている女が浮かんでいた。

 

「これは?」

 

「私が造っていた人造人間です…」

 

「そうか。何のために?」

 

「それは…!」

 

ビクッとして顔を上げたトワの目の前には、冷酷な目でこちらを見下ろすサラガドラの姿。嘘を吐けば、死ぬ…。トワは正直に白状した。

 

「サ、サラガドラ様を殺して…メチカブラの魂を取り出すために…」

 

「なるほどね。名前は?この2体はあとどれほどで完成する?それまでに何か必要はことがあるのか?」

 

「え…?男がライ、女がパストで…恐らく、あと5日ほどで…完成までに必要なものは全てコンピュータにプログラムしてあります!」

 

「へぇ、教えてくれてありがとう。じゃあ君は死んでもいいな」

 

次の瞬間、サラガドラの腕から射出された魔力の弾丸がトワの体を縦一列に何発も撃ち抜いた。トワは目を見開きながらゆっくりと後ずさり、ライとパストのカプセルの間に倒れ込んだ。

 

「が…か…!」

 

トワは死を悟りながらも、後ろに回した片手でふたつのカプセルの基盤にたどり着き、それを触って新たなプログラムを入力する。

 

『サラガドラを殺し、メチカブラの魂を解放せよ』

 

「完成が待ち遠しいな。ところで完成したら自動でそこから出てくるのかな?…ははっ、そんなに睨むなよ」

 

息絶えたトワを肩に担ぐサラガドラを、カプセルの中のライとパストはしきりに睨みつけていた。

 

 

 

「それで、君は一体何だい?」

 

トワを始末し終えたサラガドラは、同時に発見された不思議な鳥を相手に語り掛けていた。半透明な鳥かごの中でじっとしているが、その十字の瞳はサラガドラを見つめ返している。

 

(僕はドギドギ)

 

「うおっ…?ははは、そういうことか…頭の中に直接言葉を送っているんだな」

 

(過去の時間を食べることで時の調和を担っているよ。でもメチカブラに呼び出されてここに来た)

 

「そのメチカブラはもういない、僕が殺した。君はどうする?」

 

(…僕は)

 

サラガドラはドギドギのおかげで新たな暇つぶしを見つけた。それは、ドギドギが見せてくれる様々な時空の歴史を、映画を鑑賞するように眺める事だった。

初めはライとパストが完成する5日間の間だけ暇を潰せればいいと思っていたが、想像以上にのめり込んでしまった。その中で、サラガドラは特別目を惹かれた歴史に注目した。

 

「…これだ」

 

サラガドラはある計画を思いついた。「暗黒ドラゴンボール」、「サイヤ・ハーツ」、「歴史の改変」。

 

「僕の夢はまだ叶え終わっていない!ははははは…例えば、彼らがまだ生きていれば…!例えば、彼らが”そう”だとしたら!例えばその歴史だけが続いてゆけば…例えば、例えば、例えば…」

 

僕の夢を叶えた時、初めて僕は幸福になれる!そりゃそうだろう、自分が想い描いた好きな夢を叶えられるのは幸福な者の特権だ!さぁ、これから楽しくなるぞ!

 

 

 

「おお、やっと完成したか。君は確か、名前は…」

 

「パストでございます、アナタ様」

 

先に完成し、カプセルから出てきた方の女型人造人間、パストはそう言いながら跪いた。

 

「もう一体はまだ?」

 

「じきに…」

 

パストがそう言った瞬間、もう一方の男型人造人間、ライのカプセルにヒビが入ったかと思うと、次の瞬間には内側から破裂するように砕け散った。溢れる培養液と共に飛び出してきたライが、なりふり構わないと言った様子で目に殺意を抱きながらサラガドラへ殴りかかった。

 

「おお!」

 

サラガドラは驚いて声を漏らすも、冷静に腕を掲げようとする。しかし、ライの拳がサラガドラへ命中する寸前、サラガドラが発砲する寸前…ライの体は勢いよく後ろへ引っ張られ、固い床の上に背中から叩きつけられた。

 

「おいテメェ!サラガドラ様に何してんだコラァ」

 

パストがライの上に飛び乗り、その顔に思い切りビンタを喰らわせた。反抗しようとするライだが、姉のパストの表情を見てすべてを察した。

 

──今は堪えて…!従順なフリをして、トワからの使命を達する時を待つのよ…

 

パストは、サラガドラよりも先にライを痛めつけて制裁を加えることで、これから先何度もライと自分の命を救う事になる。

思惑通り、パストが先に動いたことで、サラガドラは腕を下ろした。

 

「…まあいいか。君らはもちろん僕に協力するよな?」

 

「「サラガドラ、アナタ様の望み通りに」」

 

ライとパストは跪き、そう言った。

 

 

 

「あの科学者が作っていた仮面を僕が改良した。これを使って、このブロリーと言う男を連れて来い」

 

「分かりました、仰せのままに」

 

赤いワイシャツに白いスーツとお馴染みの服装に身を包んだライが、柔らかい微笑みを浮かべながらサラガドラの命令を了承した。

 

「そうしたらいよいよ計画が本格的に動くからね。ライとブロリーで時の巣を襲撃、パストと僕で時の界王神の捕縛、アブラ、チーチン、バビディとその他でトキトキ都を制圧する。そうしたら僕が各時代に暗黒ドラゴンボールをばら撒くから…しばらく様子を見てから回収だ」

 

「しばらく…?すぐに集めなくていいので?」

 

「もしも僕らの他に暗黒ドラゴンボールを集め始める人たちがいた場合、そいつらが誰なのか把握したいからね。恐らくはタイムパトロールのトランクスだと思うけど…もしかしたら誰か連れてくるかもしれないし。3個か4個くらいまでならくれてやってもいい。どうせいずれは僕の元へ呼び出すから」

 

「分かりました…では」

 

ライはサラガドラから例の仮面を受け取り、ブロリーの元へと向かった。

そして無事にブロリーを洗脳し手駒に加え、トキトキ都を襲撃し、トランクスがサザンカたちの時空へ現れるのである。

 

 

─────

 

──────────

 

 

「それが…サラガドラの全てか…?」

 

パストから話を聞き終えたシロナとサザンカ。

 

「知っている限り、のよ。アイツが結局最終的に何がしたいのかは私らも知らねぇわ。口では全時空のキリの掌握だって言ってるけど、それもどうだか…」

 

「でも、目的が何だとしても…暗黒ドラゴンボールを使われちゃったらまた色んな時空が混乱しちゃうんでしょ?それは止めないと」

 

シロナの言葉を聞いたサザンカ、少し考え、何かを決めたように立ち上がった。

 

「なぁ姉貴、あの時…アタシらは本気だったよな」

 

思い起こされるのは、先ほどの戦闘。ふたりはフュージョンして全力で挑んだにも関わらず、サラガドラに大したダメージを与えることもできずに一撃で敗北した。

 

「うん…まあそうだけど…」

 

「それに加え、あの使い魔みてぇなピンク色のヤツにさえ、アタシは勝てなかった…。だからよ、ホントに不服で、ホントは嫌だけど…パストに修行つけてもらうってのはどうだ?」

 

「は?」

 

「ええ!?」

 

 

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