サラガドラの一撃によってスラッグが倒されてしまい、邪魔の消えたアブラたちは揚々とエアバイクを走らせてジーメックらを追う。
「お前らは奴らを追いな。僕は裏切り者に制裁を与えてくるからよ」
「あいよォ!!」
次の瞬間、サラガドラは弾丸のようなスピードで飛び立ち、この場から消えた。
残されたアブラとチーチンはエアバイクのスピードを高め、グングンとジーメックたちとの距離を詰めてくる。
「サラガドラはいなくなったが、奴ら追いついてくるぜ!」
アザミがそう言うと、ジーメックとカタッツは静かに提案した。
「…二手に分かれるか。わしとカタッツで、別々のルートから時の巣を目指そう」
「そうだな。その方がどちらかが目的地へたどり着ける可能性が高まる」
「ではわしの方にはアザミ殿とカズラ殿とそして時の界王神殿、カタッツの方にはグラジア殿とコナギ殿で頼む」
彼らはアブラたちの目の前で二手に分かれ、それぞれ別の方向から時の巣を目指して飛び始めた。
「おいおい、奴ら二手に分かれたぜ。ドラゴンボールはどっちが持ってったと思う?」
「そんなもん知るかよ、だったらおれたちも別々で奴らを追えばいい!どっちもぶっ殺しゃあどっちかが持ってるだろォ!」
「そうだな、んじゃあオレは細い方のナメック星人を追うぜ」
「おれはあのデカい方だな」
その直後、なんとチーチンの体がメキメキと音を立てながら変形していき、大きな翼を持つ怪物のような姿になると、一気に飛び立ってカタッツたちの方を追っていく。アブラはエアバイクを加速させ、ジーメックたちの方へ接近していく。
「かーかかかかか!!逃がさねぇぜカスどもがよォ~~!このおれのバイクで轢き潰してやるぜぇ!」
「アイツは…!」
アブラの接近に気付いたアザミが、ジーメックの背中に立って彼を睨みつける。
「おいテメェ!さっきはよくもぶつかってくれたな!!」
「あぁ?」
「乗り手の恥を知れや!いくら俺でも、乗りモンを他人にぶつけようとしたこたァねぇよ!!」
アザミが怒りと共に怒鳴り上げるも、アブラは挑発するように薄く笑ったままわざとらしく手を耳に添えて言い返した。
「なんだテメェ、このアブラ様に何か言いてぇのかよ?かかか、魔法も使えねぇただの蛆虫がァ~」
「ヤロウ…!」
アザミは無謀にも空中を高速で飛行するアブラに向かって飛び掛かろうと構える。カズラも流石に止めようかと身を乗り出した瞬間、ジーメックが腕を伸ばし、大きな手でアザミの身体を掴んだ。
「やめなされ!気持ちは分かるが、お主では勝てんわい…落っこちて死ぬだけじゃ」
「でもよ…!俺はアイツを許せねぇ…!どーしてもあのクソをブッ飛ばしてぇ!」
アブラはアザミを挑発的な視線で睨みつける。
暴走族のトップであり、走り屋としても名を馳せているアザミの車に対する愛情は本物だ。車両を自分好みに改造し、気持ちよく走ることができたらこれ以上の楽しみはない。だからこそ、そんな車を人を傷つけるために乗り回すアブラを許せないのだ。
「…わかった」
その気持ちをテレパシーで察したジーメックは、アザミの頭の上に自身の反対の手を乗せた。
「な、なんだ…?」
「すぐ済む」
そう言うと、アザミの身体が震え、内側から弾けるような白いオーラが舞い上がった。アザミは一瞬、自分の身体が捻じれて引き延ばされるような感覚に陥り、意識が飛びかけたが、気が付くとそれは治まり、しかも体の奥から感じたことのない力が湧き上がってきているのに気づいた。
「こりゃ、一体…!?」
「お主の体内に眠る力、潜在能力を引き出させてもらった。限界以上に高まったその力があれば、存分に敵と戦うこともできるじゃろう」
「なるほど…すげぇことできるんだな」
「ゴァハハハハ!ナメック星人は歳を取れば自然とこういうことができるようになる。それにしても、お主の潜在能力はとんでもないほど大きいのう…地球人とはそれほどまでに戦闘に特化した種族なのか?」
「…いや、俺だけが特別なんだ。あるイケすかねぇヤツがいてよ…ソイツのおかげだな」
アザミは小学生のころからサザンカと直接殴り合い続けてきた事によって、地球人としては別格の身体能力を誇っていた。が、それはあくまで肉体に蓄積された潜在能力のほんの一部が表面化していただけに過ぎず、サザンカとの喧嘩によって得られた力はそれ以上に膨大だったのだ。
「…時の界王神殿、時の巣までカズラ殿をよろしく頼みます。このわしめも、アザミ殿に尽力いたします故」
「…わかったわ。じゃあ君、行くわよ!」
「ちょ、わ!」
時の界王神はカズラの両脇を手で持ちながら、ジーメックとアザミから離れて先を急ぐ。
「かかかかか!デケェのがふたり来ようが関係ねぇ!まとめてぶっ潰してやるよォ!!」
その時、アブラの乗るエアバイクが縦半分に割れたかと思うと、内部から次々と新たなボディやパーツが溢れだし、まるでジェットフライヤーの如き大きさのエアバイクへと姿を変え、さらに増した速力でどんどん迫ってくる。
「なぁジーメックさん、アンタ過去のナメック星だかってところから連れて来られたって言ったよな?だったらよ、もしもそっちに帰ってからいつか地球人に会う事があったらよ、良くしてやってくれよ!」
「ゴァハハハハ!あたぼうじゃ!」
だが、ふたりは笑いながらそれに全く怯むことが無い。
「死ねぇ!!」
さらに、アブラは片手で大量の暗黒オイル球を投擲し、ジーメックとアザミはそれを避けながらこちらもアブラの方へ突撃していく。
「ハッ、しゃにむに突っ込んできやがって、ヤケを起こしたか!おれの”スカイレックス”と激突して無事で済むと思ってんのかよ!!」
両者が衝突しようかというその瞬間、ジーメックは飛行の角度を90度変えて真上に急上昇してゆく。巨大化したスカイレックスの車体ではそれを追えず、アブラは上を見上げることしかできない。
「なんだ!?どこに行きやがる!?…あの女はどこに…?」
だが、上へ行ったジーメックの背中にはアザミの姿が確認できなかった。まさかと思い正面へ向き直ったが、既に遅かった。
目の前に拳を振り上げながら突っ込んでくるアザミの姿。そして次の瞬間、渾身のパンチがアブラの顔面へめり込んだ。
「ぶ…ぶげ…!」
「よそ見運転してっからだ…!正面衝突はイテぇだろう…!?」
さらに拳に力を込め、思い切り殴り抜けると、アブラはスカイレックスから手を放し、アザミと共に地面へ向けて落下していく。
「ぐぞォ…喰らえや…!」
だが、アブラは大量の暗黒オイル玉を取り出し、それらすべてをアザミの顔や体に押し付ける。
「しくった…!こいつは…」
「かーかかかかか!!死ねェ!」
その時、突然空が暗くなった。アブラが上を見上げると、そこには急上昇して消えていったジーメックが落下してきていた。しかも、その体は先ほどの巨大化したスラッグを凌ぐほどの大きさとなっている。
「よくやったアザミ殿!」
ジーメックは暗黒オイル玉が炸裂する寸前でアザミを退かして自らが前に出ることでその威力をその身で軽減する。そのまま落下するジーメックはアブラを圧し潰しながら地面へ激突し、巨大な衝撃波を巻き上げるのだった…。
「へへ、やったぜ…」
見事、アブラ相手に勝利をおさめたアザミとジーメック。だが、ジーメックは暗黒オイル玉の衝撃で、アザミは落下の衝撃でそのまま気を失ってしまう。だが、巨体の下敷きになったアブラも気絶し戦闘不能となっていた。
──アザミ&ジーメックvs”魔法ドライヴァー”アブラ
勝者 アザミ&ジーメック(戦闘不能)
【現在公開可能な情報】
ジーメック、カタッツ、スラッグは500年以上前のナメック星から連れて来られました。ジーメックは後に起こる異常災害を生き延び、「最長老」と呼ばれるようになります。