もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第377話 「VSチーチン!ヘビー級対決!」

「ぐあああ…!!」

 

カタッツは地面の上を転がり、何とか起き上がろうと体を持ち上げる。

 

「な、何が起こった…!?急に私の体が重くなったようだった…」

 

「信じられない…あの速度で飛んでいたカタッツさんを叩き落とすなんて…!」

 

「ああ…」

 

振り落とされたコナギとグラジアもそう言いながら、目の前に降り立った怪物を見上げた。全身が黒い鱗に覆われ、背中には巨大な翼を折り畳み、恐竜のような趾行性の脚を地に付け、強靭な両腕を振り上げる。

 

「クハハハ!そうだ、これがオレの力だ!」

 

見上げるほど大きな竜の姿へと変身したチーチンは、地鳴りのように低い声を響かせながらそう言った。目の周りは黒く落ち窪み、歪に生え揃った牙が口外にまで飛び出している。そして、腕や肩回りは分厚い筋肉が覆っていてマッシブに見えるが…

 

「でも、なんか…太ってない!?」

 

胴体部分はでっぷりと丸々しく、チーチンが人の姿だった時よりもかなり太って見えた。

 

「それを言うな!オレだって気にしてんだよ!」

 

チーチンはコナギとグラジアに向けて剛腕を振り下ろした。

 

「パワーは一級品だがな!!」

 

間一髪、グラジアがコナギを抱きかかえてその場から離れた。チーチンの一撃は外れてしまったが、それが当たった地面が大きくめくれ上がった。

 

「ありがとうグラジア…!」

 

「うん…でもアイツ、滅茶苦茶強い…!」

 

グラジアは離れた場所にコナギを降ろし、自分は再びチーチンの元へ戻る。

尻尾を振るって攻撃を繰り出すチーチンだが、グラジアはそれを素早い身のこなしで躱し、さらに振るわれる腕の一撃を殴って跳ね返す。

 

「やっぱり強いな、地球人!だが…今のオレの魔術をくれてやる!」

 

チーチンはそう言いながら大きく息を吸い込み、何かを吐き出そうと身構えた。

 

「まさか…炎…!?」

 

グラジアがそう言って驚き、距離を取ろうと後ろへ下がる。

 

「いや、そんなものは吐けない」

 

「ズコー!」

 

「オレ様が吐くのは、これだ~!」

 

ブォォォォ…!

 

次の瞬間、チーチンは大きな鼻の穴から風のような息を吐き出した。それを浴びてしまったグラジアは腕で顔を覆う。確かに突風のような凄まじい鼻息だが、何も吹き飛ばされるほど強くはない。

しかし、次の瞬間に強烈な違和感が襲った。

 

「…!?」

 

グラジアは、急に足がガクンと曲がって膝をつき、地面に倒れ伏してしまった。そう、突然自分の体が何十倍にも重くなってしまい、とてもじゃないが支えきれなくなってしまったのだ。

 

「クハハハ、どうだ!これがオレの能力!オレの鼻息を浴びせたモノに、オレの体重を移すことができるのだ!オレにとってはどうってことない重さでも、お前じゃ辛いだろう?」

 

「う…ぐ…!」

 

「トドメだ!そのまま潰れて死ねェ!」

 

チーチンは足を振り上げ、グラジアを踏み潰そうとする。

 

「グラジア!!」

 

コナギも心配そうに彼の名前を叫ぶが…

次の瞬間、チーチンが上げていた方と反対の足に何かがぶつかり、バランスを崩してその場に倒れ込んだ。

 

「ぎゃああ~!」

 

「大丈夫か!?」

 

ダメージから復帰したカタッツが、チーチンの足へ体当たりしてグラジアを救ったのだった。

チーチンの意識が逸れた事でいつの間にか体にかけられた重さが解けていたグラジアは立ち上がって頭を上げる。

 

「ヤツは…面倒な術を使ってくるな」

 

「でも…動きは遅い…」

 

「その通りだ。いくらでも攻撃は当てられそうだ」

 

カタッツは飛び上がりながら連続でエネルギー弾を発射してチーチンの顔面へぶつけ、グラジアは足へ突進し、その箇所が凹むほどの打撃を次々と与えていく。

 

「クハハハ…効かん効かん!」

 

が、それらはチーチンには全く通っておらず、カタッツは頭突きで、グラジアは軽く足で小突かれただけで大きく吹っ飛んでしまう。

 

「そして、そら喰らえ!」

 

続けて、地面へ落とされたふたりに降り注ぐ重さの鼻息。

 

「ぐお…!」

 

「く…!」

 

突然何トンもの重量がその身に乗せられ、カタッツもグラジアも身動きが取れなくなってしまう。

その様子を少し離れた場所からずっと見ていたコナギも、自分が何かできないかと考える。

 

(助けに行く…?いや、でも…あたしが行ったところで何もできない…!このままじゃ…)

 

そう思いながら下を向いてしまうコナギ。垂れた金髪の髪が視界の周りを覆い、汗がその毛先から落ちる。

…その時、思い出した。コナギの金髪はグラジアを守るため、周りからナメられないように染めたものだ。そして、他にも同じ理由で手に入れたものがあったはずだ!

 

「…聞こえてる?あの時、一か月間の契約ごとにあたしはアナタに2万ゼニーを払った。最後の契約から1か月経つ…今日はその最終日だったはず!だから、今日だけはまだ使えるでしょ?摩多羅隠岐奈…!」

 

コナギが頼ったのは、かつて契約した悪魔こと絶対秘神、摩多羅隠岐奈だった。すると、すぐに耳元に隠岐奈の口元が現れ、不敵に笑いながら囁く。

 

「ふふふ…呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン…!確かに、今日が契約の最終日だったな。いいだろう…私にとって契約は絶対だ。一方が守って一方がサボることはあってはならない」

 

「…よかった」

 

隠岐奈は消え、コナギの背中に両開きのドアが出現し、左右へ勢い良く開く。中から4本の触腕のようなオーラが揺らめきながら出現し、同時にコナギもゆっくりと立ち上がった。

 

「…きゃはははははは!!あたしもその遊びに混ぜてくんなよ!」

 

コナギはそのまま飛び出し、チーチンの顔面へ蹴りをめり込ませた。

 

「な、なんだァ?」

 

さらに、背中から伸びる4本のオーラを次々とパンチのように前へ繰り出し、連続で殴りつける。チーチンはその猛攻に怯み、じりじりと後ろへ下がっていく。

チーチンの意識が逸れた事でカタッツとグラジアは重さから解放され、異様な姿でチーチンと戦うコナギを見上げる。

 

「あの地球人に何が起こった…?」

 

「まさか、コナちゃん…」

 

グラジアは思い出した。あれは悪魔と契約してから性格が変わっていた時のコナギだ。

 

「ぬうう、鬱陶しい!これでも喰らうがいい!」

 

チーチンは特大の重さの鼻息を吐き、コナギにぶつけようとする。が、コナギがそれに対して背中を向けると、開きっぱなしの背中のドアの向こう側に鼻息が吸い込まれていった。

 

「なんだと!?」

 

「全然効かねぇよ!もっと吐き出してみろやコラァ~!」

 

続けて吐き出される重さの鼻息を、コナギは次々と背中のドアの中に吸い込んでゆく。その様子を見ていたカタッツは、何かを閃いた。

 

「グラジア、私に謀がある。協力してくれるか?」

 

「…はい!」

 

「ではお前がその最中に死んでしまわないよう、潜在能力を引き出しておいてやろう。すぐに済む」

 

カタッツは大きな手をグラジアの頭の上にのせると、グラジアの全身から青白いオーラがボワッと立ち上り、まるで雑巾を絞った時のようにエネルギーが溢れ出した。

 

「こ、これは…」

 

「お前の体の中に眠っていた潜在パワーを全て解放した。これなら、お前もあの者が相手なら有利に戦えるだろう。お前は、とにかくヤツに攻撃を加え続けてあの重さの鼻息を吐かせ続けてくれ。そうすれば…」

 

カタッツの作戦を聞き終えたグラジアは頷くと、得られた超パワーを駆使してチーチンに挑みかかる。一度の跳躍で顔の目の前まで飛び上がり、大振りなパンチを振りかぶる。

 

「クハハハ!テメェの攻撃は効かねぇよ!」

 

しかし、チーチンの顔面に当たったパンチは彼が思っていたよりも強く、巨大なハンマーに殴られたかのような強烈な衝撃が襲った。

 

「ぐえ…!さっきまでと別物みてぇな力だ…」

 

そう言いながら、チーチンは重さの鼻息を吐く。それを避けようとするグラジアだが、颯爽と前に割り込んだコナギが背中のドアで鼻息を吸い込んで防いだ。

 

「ごちそーさん。もっと吐いてみなよ」

 

だが、続けてチーチンは今度は腕を振るって肉弾攻撃を仕掛ける。これをコナギが喰らってはまず無事では済まないだろう。

 

「コナちゃん…!」

 

が、グラジアがその一撃を身を挺して受け止めた。

 

「グラジア…!」

 

「コナちゃんに止められない攻撃は…俺が受ける…!だからコナちゃんは…息を吸い込んで!」

 

「コナギ!お前はどれくらいあの鼻息を吸い込める?」

 

と、そこへ現れたカタッツがコナギにそう問いかけた。

 

「わかんねぇ!けどまだ大丈夫だよ」

 

「そうか、可能な限り吸い込んで溜めてくれ」

 

「はいよ!」

 

元から人間を超越するレベルだったグラジアの攻撃力は潜在能力を開放されたことによってさらに高まったが、それでも余りあるタフネスと巨体を誇る今のチーチン相手ではそこまで有効なダメージは負わせられていない。だが、それでもチーチンは恐れていた。先ほど、グラジアたちがトキトキ都へやって来てから初めて戦った時にも感じた、あのゾウのようなパワーと威圧感を放つグラジアの気迫に対して恐怖を感じていた。

 

(なんだコイツ…!サザンカとシロナ、トランクス以外に大した使い手はいねぇはずじゃなかったのか!?どいつも取るに足らねぇ力しか持ってねぇと聞いた…が、コイツは一体何だ!?)

 

だから重さの鼻息を吐きまくり、何としてもその動きを封じることに躍起になった。だが、何度吐いても何度吐いてもそれはコナギに悉く吸い取られ、不発に終わる。腕や尻尾、脚を使った単純な攻撃を繰り出しもするが、グラジアはそれを喰らい続けてもボロボロになりながら立ち上がり、その気迫は一切衰えない。チーチンはかなり焦り、自分の能力の特性をも忘れるほど正常な思考を奪われていた。

 

「…お前、ダイエットに成功したんじゃねぇか!?」

 

コナギに言われて気付いた時にはもう遅い。丸々と太っていたチーチンの身体は、その半分以下ほどに痩せてしまっていた。

 

(しまった…!重さの鼻息を吐けば吐くほどオレの体重も減っていく…!重さを回収しねぇと、動くことすら出来ねぇほどに痩せちまう!)

 

しかし、コナギが鼻息を吸い込んで捕らえているので、重さを回収することができない。チーチンは痩せて動きの鈍る身体をグラジアの攻撃から守るため、さらに重さの鼻息を吐き続けなければならない。

 

「コナギ殿、あとどれくらい溜められる!?」

 

「あと…少しだけ…!もう限界かも…」

 

コナギがため込める鼻息ももう限界だ。

 

(隙を見せるな…!ハッタリをかませ…敵にナメられるな…!)

 

グラジアは心の中で念じ、果敢にチーチンへ挑む。だんだんと攻撃の手ごたえが出てきた。チーチンが痩せてきた影響で、こちらの攻撃はさっきよりも通りやすくなっている。

 

「このヤロウ!」

 

しかし、チーチンが勢いよく踏み下ろした足の下敷きになってしまい、砕けた岩盤へ押し付けられるグラジア。その体がメキメキと悲鳴を上げ、意識が飛びそうになる。

 

「どうだ…!?」

 

「ウオオオオオオオ!!」

 

が、グラジアは沈まない。ゾウの如きプレッシャーと共にチーチンの足を持ち上げ、その下から飛び出してくる。

いつもなら、格上が相手でもこのドラゴンの姿に変身し、重さの鼻息を吐きかけるだけで敵は動けなくなり、自分の重みで潰れるか、チーチン自身がトドメを刺すかで楽に勝利することができた。生身の姿で剣で戦うのも好きだが、楽に勝つためならこっちを選んできた。しかし、今回に限っては楽さに頼ったことが命取りとなった。初めから剣技で勝負していれば、あるいは…

 

「チキショオ~~~!!」

 

ブオオオォォォォ…!

 

焦りに任せ、特大の鼻息を吐き出す。正真正銘、吐き出せる最後の重さ。

それは…コナギの背中のドアの中に吸い込まれてしまう。

 

「ヒョ…カ…」

 

もはやチーチンはミイラのように痩せ細り、もう重さの鼻息は一切吐き出せないほど消耗していた。だが鼻息を吸い込み続けたコナギももはや限界を超えていた。

 

「ごめん、もう無理…」

 

「よくやったコナギ!ではその重さの鼻息を全て私の身体にぶつけてくれ!」

 

コナギはふらふらと力を失いながら背中のドアから今まで吸い込んできた重さの鼻息全てを一気に放出した。それを全身で漏れなく浴びたカタッツは、大急ぎでチーチンの元へ飛んでいく。

 

(私の身体が重くなる…!だが、ヤツの全体重分の重さになった私がヤツの足の上にでも乗ってしまえば、ヤツはそこから動けない!)

 

目指すは、チーチンの足の甲の上。しかし、チーチンの全体重はカタッツでも支えきれず、どんどんと高度が低下していき、このままでは足の甲にたどり着く前に地面へ落ちてしまう。

 

(あと少し…!)

 

「むん…ッ!!」

 

その寸前で、なんとグラジアがカタッツの巨体を担ぐように支えた。

 

「グラジア…!」

 

グラジアの足が地面に沈み込んでいき、歩くことすらままならない。しかし、額の血管が太く浮き出るほどに力を込め、その重量をグググ…と持ち上げていく。

 

(カタッツさんと…コナちゃんが繋いだこのチャンス…!絶対に無駄には…しない…!!)

 

「ぬううううう…あああッ!!」

 

ドズッ

 

ついに、投げ飛ばすことに成功したカタッツの体が、頭からチーチンの足の上に突き刺さった。

 

「ぶぎゃあああああ!!」

 

 

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