もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第38話 「紅美鈴の意地!これが気功砲だ!!」

ボロボロになったウスターが医療班に運ばれていく。ざわつく会場であったが、もう一度審判式神が登場すると静まり返った。次は、いよいよ2回戦、準決勝である。

 

「お待たせいたしました、ただいまより準決勝第一試合を始めたいと思います!」

 

先ほどとは打って変わって、観客が一気に沸き上がる。

 

「両選手は舞台へお願いいたします!」

 

審判がそう言うと、美鈴と明嵐が舞台上へ上がった。両者は互いに向かい合い、拳をもう片手で包み込むように被せ、試合前の挨拶を交わす。

 

「貴方のような素晴らしい格闘者との試合、誇りに思います」

 

と、明嵐が言う。美鈴はそれを聞くと、嬉しそうに言葉を返す。

 

「それは私だって同じです。お互い悔いのないように頑張りましょう」

 

「では、両者見合って…」

 

 

「マジメタイプの武道家同士の対決だな」

 

「え、ええ…そうね」

 

マジメタイプと聞いて霊夢がそうぎこちなく言った。マジメ…と言われればそうかもしれないが、あの明嵐は美鈴ほどお堅い感じはしなかった。

それは実際に戦って言葉を交わした霊夢にしか分からない事であった。

 

 

どこからか太鼓の音が響き始めた。最初はドン…ドン…とゆっくりリズムを刻んでいたが、だんだんとスピードを上げていく。そして最高潮に速くなったところで、銅鑼の音が響いた。

 

「試合開始!!」

 

審判の声が聞こえた瞬間、明嵐と美鈴はお互いに飛び出した。拳と拳をぶつけ合い、火花を散らす。

明嵐は美鈴のガードを解くように緩やかな動きで腕を美鈴の胸元へ近づける。そこから腹へ向けて抜き手を繰り出した。美鈴もそれを察知すると当たる寸前で上体を後ろへ倒し、そのまま連続ハンドスプリングで距離を取った。そしてそのまま空中へ避難する。

それを追う明嵐は、右手から濃い黄緑色の気功波を放つ。だが美鈴はそれを蹴って打ち返した。

 

「ほっ!」

 

跳ね返されて来た気功波を更に殴りつけて逸らす明嵐。そして美鈴へと迫り、空中戦を持ちかけた。

美鈴はそれにノってやると、明嵐を追って浮かびあがった。

 

「でやああ!!」

 

空中で激しい攻防戦を繰り広げる両者。お互いの拳を全て防ぎ、的確なカウンター攻撃をお見舞いする。が、それすらも防ぎ、さらなる反撃に出る。何手も先の考えを読み合い、実行する。非常に高度な戦いであった。

地面へ向かって落下をしながら取っ組み合い、明嵐が美鈴の腹へ拳を叩きこんだ。一瞬怯んだ美鈴であったが、武舞台上へ着地すると、一気にタイルを蹴って駆け出す。それを見た明嵐も、同じように駆け出した。

 

ヒュン…

 

その瞬間、二人が武舞台上から消えた。

 

 

「ふ、二人とも消えやがった!」

 

カカロットが驚きながらそう言った。

 

 

ガガッ ビッ パパパ…

 

「お、音だけが不気味に響いています!一体何が起こっているのでしょうか!?」

 

打撃の音だけが会場に響き渡っている。しかも、たった短い間に武舞台上の端から反対側の端まで移動しながら戦っているようだ。

 

ドォン

 

そして次の瞬間、ようやく両者が姿を現した。二人は互いに手を組み合い、押し合いをしている。が、美鈴はやや苦しそうに汗をかきながら力を入れているのに対し、明嵐は汗をかかないどころか息すら乱れさせず、涼しい顔で対応している。

 

「ふふっ、君は素直だね」

 

「えっ?」

 

明嵐はそう言うと、前へ傾けていた体に力を抜いた。勢い余った美鈴は前へ倒れ込むようにバランスを崩してしまう。

そんな美鈴を自身の後ろへ投げ飛ばし、その上へ瞬時に移動して蹴りかかる。その蹴りは美鈴に直撃した。

 

「…!?」

 

しかし、手ごたえが全くなかった。それどころか、自分の蹴りは相手の体をすり抜けるようにして、当たってはいなかったのである。

 

「残像か!」

 

背後に迫る美鈴は手刀を振り下ろす。しかし、残像を残して高速で動き、攻撃を避けるとともにその背後へ移動したのは、明嵐も可能なことであった。

同じように攻撃を加えようとする明嵐だが、また美鈴が消えた。と同時に攻撃を放つが、またしても明嵐が同様に消え、背後に迫る。それを何度も繰り返し、舞台上を目まぐるしく移動していく。

 

「ま、全くついていくことができません!何という闘いなのでしょうか!!」

 

だがその時、後ろへ現れると思っていた明嵐が、美鈴の目の前に現れた。てっきり今までのやり取りと同様に背後に来ると思っていた美鈴は思わず一瞬だけ動きが止まり、その隙を突かれてパンチを喰らった。

 

「いって…」

 

舞台上に着地し、膝をつく。

 

「言っただろう、君は素直だって。いや、素直すぎるんだね。これまでの私の戦い方に順応してしまうと想定外の動きをされた場合に対応が出来なくなってしまう」

 

口調の変わった明嵐の言葉を聞いた美鈴は驚いた。

 

「なるほど…それが貴方の本当の…」

 

美鈴は汗をかき、息を切らしているのに対して明嵐はあれほどの戦いであれほど動き回ったにも関わらず全く疲れたそぶりを見せていない。

 

「ならば私もそろそろ技を見せていくとしましょうか…『接地拳』!!」

 

姿勢を低く構える美鈴。目つきが変わり、その身体を気が海流のように流れるのを明嵐は感じ取った。

 

「へぇ、それがさっきの接地拳なんだね。なかなかの迫力だ。どれ、その強さを私にも見せておくれ」

 

明嵐は、接地拳を発動した美鈴に攻撃をしかける。素早いパンチの連打を全て受け流し、明嵐の腹の前へよせた拳から、強烈な気功波を放つ。

だが、それを躱す明嵐。さらに放った蹴りを、美鈴は腕で受け止め、もう片方の腕で明嵐の足を殴りつけた。

無数の連撃を繰り出す明嵐と、それにカウンターを放つ美鈴。その熾烈な攻防戦はほとんどの観客には全く捉えられない程の勢いで行われていた。

 

「紅美鈴、君は実に素晴らしい武道家だ。妖怪でありながらここまで気を上手く扱えるのは全く以って賞賛に値するよ」

 

「そりゃどうも」

 

「だが、私の攻撃にその接地拳が耐えられるかな」

 

明嵐は全身に黄色いオーラを纏い、さらに攻撃を加えた。

 

「!?」

 

(馬鹿な…この一瞬で、一気に力が何倍にも上昇した…!?)

 

上から繰り出されたパンチを受け止める美鈴。あまりの威力を前に、その足が舞台上に大きくめり込んでしまった。

すぐカウンターを放とうとするが、直前に受けた攻撃がとてつもなく重く響いたため、それが遅れてしまう。それを待っていたとばかりに、明嵐はカウンターを使われる前にもう一度攻撃を放った。

 

「くっ…!」

 

またしてもカウンターの出が遅れた。

そのまま、美鈴は反撃に出られる間もなく一方的に攻撃を受け続けていく。

 

「自身を圧倒的に上回る敵の前では接地拳はあまり役立たないようだね」

 

攻撃の最中、明嵐はそう言った。

しかし、美鈴は不敵に笑う。

 

「…ふっ、私の接地拳の本領はこれだけではないんですがね」

 

「なんだって?」

 

明嵐は目を見張った。自分が攻撃を放つよりも、遥かに洗練された動作であった。極限にまで集中し時間を圧縮して、ようやく捉えられた動きだ。

 

「”発勁”!!」

 

美鈴が武道の道に走ってから、毎日欠かさず行い、体に染みついた憲法の基本形の攻撃。その動作は遥かに明嵐の反応できるレベルを超えていたのだ。

繰り出された気を乗せた一撃は明嵐の腹に命中する。

 

ガクン

 

「ぬ!?」

 

その直後、明嵐は地面に落ちた。下を見ると、自分の足の裏がピッタリ地面とくっついて離れなくなっていた。

 

「これは…まさか!接地拳を相手にもかけることができるというのか?」

 

「その通り。抜け出せるものなら抜け出してごらんなさい」

 

美鈴はしてやったりというような顔で笑うと、宙へ浮かび上がる。武道会場全体が見渡せる高度にまで上がると、そこで目をつぶり、全身の気を練り始める。

 

 

「美鈴の奴、何をする気だ?」

 

カカロットが不思議そうにつぶやいた。

 

 

(これが私の最高の技…!次の試合にも響いては困るので”お互い死なない程度”に威力を押さえて…)

 

美鈴は両手を合わせて拳を作り、人差し指だけを突き出すような形をとる。すると、その手が明るく発光していく。美鈴の全身の気のほとんどをそこに集中させているのだ。

そして手を四角形を作るような形へと変え、その中心に明嵐を捉えた。

 

 

「まさか…気功砲!」

 

観客席にて、聖が何かに気付いた。

 

「知っているのか、聖?」

 

と、それを聞いた神子が返す。

 

「ええ…その界隈では禁忌とされているとんでもない威力を秘めた技です…しかしそのあまりの威力故、己のエネルギー消耗も激しく死んでしまう事すらあるという…いくら妖怪と言えど、それは例外ではないハズです!」

 

「美鈴、それだけはやめなさい!!」

 

事情を知っているレミリアが、美鈴に向かってそう叫んだ。

 

 

「これを使うのは貴方を今までで最強の相手と認めての行為だ!貴方ならば、これを直撃しても死にはしないハズでしょう!」

 

「くっ…!」

 

抜け出そうとするも、足が地面にガッチリくっついて離れない明嵐。

 

「『気功砲』!!!」

 

フッ…

 

美鈴の手から、巨大な衝撃波が発せられた。衝撃波はどんどんと巨大化しながら迫り、ついには武舞台全体を覆うほどの大きさになる。もうすでに、もしも明嵐がかけられた接地拳から抜け出せたとしても、逃げ場はどこにもないだろう。

あるとすれば、そこは舞台の外…場外でしかない。

 

ドゴォォォン

 

「うわあああッ!!」

 

とてつもない衝撃が起こる。

…気が付いた審判がようやく確認をする。

 

「あっ!!こ、これは何という事でしょうか…武舞台がありません!今の攻撃で消え去ってしまいました!!」

 

なんと、気功砲は武舞台を綺麗さっぱり消し飛ばし、その場所に広いくぼみを作ってしまっていたのだ。そして、その中心には明嵐の姿が…

 

「ふ…ふふふ…」

 

くぼんだ武舞台の底で、何とか耐えていた。気功砲を撃ったことでかなり疲弊した様子の美鈴はふらふらと地面に降り立ち、明嵐を見る。

確かに服はボロボロになり、焼けて煙が上がっている。が、明嵐自身は耽々とした目で美鈴を見据えており、そこまで気功砲が効いている様子は無かった。

 

「素晴らしい一撃…私も力を出さなければ消し飛んでいるところだったよ」

 

「へ、へへへ…ダメですね…参りました」

 

「出ました、美鈴選手の降参宣言!!よってこの勝負、明嵐選手の勝利です!決勝戦へと勝ち進んだのは明嵐選手!!素晴らしい技と技とのぶつかり合い、良い試合でした!!」

 

「とてつもない実力ですね、アナタは一体何者なんですか?」

 

立ち上がった美鈴がそう尋ねた。

 

「私?さて…何者なのだろうね?」

 

そう言い、先に武道館へ退場していく明嵐。それを後ろから見ながら、美鈴は考えを巡らせる。

 

(何者なのだろうだって?何を言うか…化け物め、まだまだ全然本気じゃなかったくせに!おそらく、彼女は相手に合わせて自在に実力を操作する能力を持っているに違いない…何者なんだ、奴は一体!?)

 

 

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