もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第381話 「溟にしるべがともるまで」

「どこですか…?ここ…」

 

「さぁ…?わたしたち、謎かけの魔人の出す問題に不正解でここまで飛ばされたのよね…」

 

またまた時の巣から遠く離れた荒野。そこにはウラーナとの勝負に負けた時の界王神とコナギがポツンと立っていた。ウラーナの作った結界領域のルールによってここまで飛ばされてしまったふたりは途方に暮れていた。

 

「とにかく、早く戻ってサラガドラの企みを阻止しないと…」

 

「そうですね…って、あれ…?」

 

「どうしたの?」

 

「何か、聞こえませんか…?」

 

コナギにそう言われた時の界王神は耳を澄まし、目を閉じて周囲へ意識を向ける。

 

「トー…キー…」

 

「トキトキの声だわ!?」

 

聞こえてきたのは、時の界王神が管理する、時を生み出すという神の鳥「トキトキ」の鳴き声だった。時の界王神はすぐさま鳴き声が聞こえる方へ走り出し、コナギもそれを追いかける。

 

「声はこっちから…」

 

そして大きな岩山の横を通り過ぎると、その先に生えている大きな枯れ木の枝に鳥かごが提げられていた。

 

「トーキー!」

 

「トキトキ!!」

 

黄色と白色の長い羽毛に覆われたフクロウのような姿をしたトキトキを発見した。暗黒の力で生成されたであろう黒い鳥かごに囚われ、その足と翼は傷つけられていた。

 

「無事でよかった…ずっとここにいたの?」

 

トキトキはホッとしたような顔で頷くと、そっと自分の後ろへ目を向けた。彼女らもそちらを見ると、そこにはもうひとつの鳥かごがあった。

 

「あなたは…?」

 

その中に居たのは、紫色の羽毛に赤い嘴、黄色い目に十字の瞳を持ったカラスのような鳥だった。

 

(ぼくはドギドギ。頼む…サラガドラを止めてくれ…)

 

 

 

 

ドン…!

 

体の芯から響き、心臓が震えるような大きな音と共に放たれた魔力の砲撃がライに直撃した。胸のど真ん中に命中した砲撃は、ライの肉体を貫通した。

いや、それは貫通という言葉で表せる様相ではなく、通過した地点にある物体をその圧倒的な熱と破壊力でクッキリと消し飛ばしていた。即ち、ライの胴体が丸ごと消え去り、残されたのは両の手足と頭部のみ。それ以外は全て虚空の闇の中へと消えていった。

 

「ふ…」

 

サラガドラは不敵に笑った。

しかし、次の瞬間、その表情が歪む。なんとサラガドラの腹部もライと同様に吹き飛び、大きな風穴が空いていた。

怯むサラガドラに対し、首だけになってしまったライの目に宿る闘志は揺るがない。目の前に舞ってきた自らの腕に噛みついて口に咥え、そのまま回転しながら勢いをつけてそれを振り下ろした。

 

「が…!」

 

その一撃はサラガドラの首筋へヒットし、大きくひしゃげた。紫色の鮮血が、三日月のように飛び散って周囲を染める。サラガドラはそのまま仰向けに倒れ込んだ。

 

「ライ!」

 

パストは地面に落ちて転がるライの頭へ駆け寄る。トランクスたちは衝撃の光景を眺めていることしかできない。

 

「バカなことを考える…」

 

「姉さん…トワの描いた…暗黒魔界再興を必ず達してください。頼みましたよ…」

 

ライの頭を抱き上げて静かに顔を上げるパスト。ライの考えは、自らがサラガドラの一撃を受ける寸前、パストの魔術でライとサラガドラの感覚を繋げることだった。ライの受けたダメージがそのままサラガドラへも伝達され、サラガドラは自身の力で自身へ致命的な一撃を与えてしまったのだ。

この魔術をかねてより使用していてはサラガドラに気付かれる。だから直前に使う必要があった。

ライは既に何も喋らない。元より、ライとパストは前身であるミラの細胞を使って作り出された、科学者トワの復讐を遂げるための兵器だ。暗黒魔界を手中に治め、全宇宙を支配するための計画を悉く潰されたトワの怨念と復讐心の賜物。暗黒ドラゴンボールを集めることも、トランクスたちと対立したことも、全てはサラガドラを倒すための準備に過ぎなかった。計画は狂ったが、それでもこうして目的は───

 

「──達成された、とでも?まあ、全て例えばの話だ…現実に起こすにはさすがに無理があっただろ」

 

パストの背後でゆっくりと立ち上がるサラガドラ。彼は自分の頭を両手で掴むと、ゴキゴキと音を立てながら首を元の角度に戻し、腹に空いた風穴は中で無数の銃のパーツが組み合わさることで塞がっていく。

 

「新時代に、君らは不要だ」

 

サラガドラの腕の銃がパストの後頭部に押し付けられる。

 

「…私たちが不要?ふざけるな!新時代ってのは暗黒魔界が支配する時代の事だ!テメェこそ消えるがいい!」

 

振り向いたパストの口から魔力が柱となって放出され、サラガドラは勢いに押されて大きく下がる。黒い目に赤い瞳、纏うそのオーラは以前とは比べ物にならない程激しく噴き出している。ライが見せていたパワーアップと同じく「超パスト」に変身していた。

 

「はははっ!」

 

笑いながら弾丸を飛ばすサラガドラ。パストは腕を振るい、魔力を打ち水のようにまき散らす。その魔力は弾丸に当たると爆発し、相殺する。爆炎の中から現れたサラガドラは強烈な蹴りを繰り出すも、パストの体を包む結界がガードする。

 

「ほぅお、やるねぇ。でも、アホだよお前」

 

しかし、サラガドラがさらに力を込めると結界はガラスのように砕け散り、その靴先がパストの顔面へめり込んだ。そして右腕が巨大なカノン砲へ変化し、それを大きく振るってパストを殴り、そのまま近くの壁へ押し付けた。

破壊された壁の残骸に埋もれるパストは頭と口から血を流しながらそれらを跳ね除けて立ち上がり、魔術でふたりに分身しながらサラガドラへ襲い掛かった。分身と同時に一発のエネルギー弾を撃ち、それは不規則な軌道でサラガドラの周囲を旋回し、隙を見てその体にぶつかった。が、それらはすぐには爆発せず、ギチギチと万力のようにサラガドラの体に圧を加える。

 

「「そのまま臓物ブチまけて死に腐れ…!!」」

 

額に何本もの青筋が浮かび、鋭い歯を剥き出した鬼のような形相で唸るようにそう言ったふたりのパスト。しかし、サラガドラは全くそれを意に介していないようなすまし顔でパストへ両腕の銃を向け、それぞれ5発の弾丸を子気味よくパパパパパと撃ってパストを貫いた。

 

「ガハ…ッ!」

 

分身の方は紙が破けるように消え失せ、本体のパストは崩れ落ちる。傷から血が流れるも、なんとかその箇所を押さえながら膝をつくだけに留まる。が、息が乱れ、思うように体が動かなくなる。

 

「お前はそこで見てな。僕が新時代を作るさまをな」

 

サラガドラは地面に転がっていた暗黒ドラゴンボールを拾って自身の周囲へ浮かばせ、そのまま祭壇の方へ向かっていく。とてもではないがライはもう戦える状態ではないし、この場で自分とサラガドラ以外に動ける者はいない。ただひとつ、希望はあるにはあるが…彼女らをまた呼ぶわけにはいかない。できるだけ精神と時の部屋にいてもらって少しでも強くなって出てきてもらいたい。

 

「待て…!」

 

パストは震えながらも立ち上がると、紫色の電気のような魔力で生成した鞭を手にサラガドラへ飛び掛かる。

 

「邪魔だな」

 

しかし、それをひらりと避けるサラガドラ。攻撃を空かされたパストは地面を踵で滑って止まり、鞭で床を叩く。すると床から稲妻が立ち上り、それは連続して発生しサラガドラへ命中する。

体が痺れるサラガドラに対し、パストが両手を広げて閉じるように動かすと、稲妻の槍が両サイドから出現しサラガドラを貫こうと飛び出した。

だが、サラガドラは簡単にそれを素手で掴んで受け止めると、自らの魔力を放出して相殺する。同時に纏わりついていた稲妻も取り払い、額から伸びた銃口から発射された魔力の弾丸が彼女の足を撃ち抜いた。

 

「く…!」

 

がくがくと震えながらも鞭を持った腕を振り上げ、次の攻撃を繰り出そうとするが、続けて放たれた棘状の弾丸が何本も腕に突き刺さり、背後にあった刻蔵庫を取り囲う壁に縫い留められてしまう。その拍子にパストが抱えていたライの頭部が落ち、サラガドラの足元へ転がっていく。

その瞬間、今まで動かなくなっていたライは目を開け、最後の抵抗としてサラガドラの足に思い切り噛みついた。

 

「はははは、気持ち悪」

 

しかし、サラガドラは噛まれている方と反対側の足を振り上げ、何の躊躇もなくライの頭部を踏み砕いた。

 

「ライ…!!」

 

トランクスでさえも、かつては敵であった彼の名を口にしてから絶句する。青い血と肉片、内部の機械パーツなどが押し出されて飛び散る。無残なガラクタとなったライの残骸など気にも留めず、サラガドラは祭壇へと近付いていく。

 

「待て…!そのドラゴンボールを返せ…」

 

目を覚ましたカズラが地面の上を這いながらサラガドラに足にしがみ付く。

 

「うるせぇよ」

 

だがサラガドラは一言だけ静かに低い声でそう返すと、カズラを思い切り蹴り飛ばし、トランクスの体に巻き付いている鎖の束へ叩き付けた。ガシャンと鎖が音を立て、後頭部と背中を強打したカズラは再びゆっくりと意識を手放していく。

 

「おっと、その前に…君ら全員の首を飛ばしておくか」

 

サラガドラはふとその場で足を止め、拘束されているトランクスたちの方へ向き直りながら、その腕には4門の砲が伸びた連装砲のような形状の銃火器が2基出現していた。計8門の砲口はそれぞれカズラ、トランクス、アザミ、グラジア、カタッツ、ジーメック、スラッグ、パストの頭へ向けられていた。そこへじわじわと魔力が充填されていき、砲口の奥から紫色の光が漏れ出す。

 

「暗黒神龍を呼び出した途端、願いの邪魔をされても迷惑だからな。じゃ、楽しかったぜ」

 

いつあの砲口から砲弾が発射されてもおかしくない。当然、アザミたちもそれを喰らっては即死だろう。パストも悔しさの中でも湧き上がる怒りを感じ、その目尻に薄っすらと涙が滲む。

 

「チキッショ~~…!!サラガドラァァ~~!!」

 

「何だよ」

 

サラガドラはその一言と共に、いよいよ全員へ向けて魔力の弾を放出した。

 

ドガァン!!

 

しかし、どこか遠くで何かが勢いよく吹き飛び崩れ去るような轟音が響き、同時に物凄い突風と共に何かがこの場で舞い降りる。その際の波動によって、放たれたサラガドラの魔力の弾は全てあらぬ方向へ飛ぶと同時に粉々に散り、消えてしまう。

 

「…お前は」

 

「お、おお…やっと来やがったか」

 

無表情で驚くサラガドラと、その者の来訪に希望を見出し、笑顔を見せるアザミ。

 

「サザロナ!!」

 

サザンカとシロナがフュージョンして生まれた戦士、サザロナが衣服を風にはためかせながらその場に立ち、サラガドラを睨んでいた。

 

 

 

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