もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第384話 「否!栄冠は我に在り」

時の界王神によって連れて来られた、博麗霊夢をはじめとした暗黒ドラゴンボールに寄生されたところをサザンカやシロナに救われてきたかつての強敵たち。暗黒神龍を顕現し、今にもサラガドラの願いを叶えようとしていた暗黒ドラゴンボールは彼らに吸い寄せられて願いを叶えることを中断し、再び寄生してしまった。

暗黒ドラゴンボールの瘴気に侵された彼らはその場で立ち尽くしている。

 

「ぐ…お…サザロナァアア…!!」

 

顔面にサザロナの頭突きを受けたサラガドラは、鼻血を拭いながら後ろへ下がる。しかし、彼の視線はサザロナの後ろ…寄生された霊夢の方へ向いていた。憎しみや怒りではない感情の入った、どこか喜びの混じったその視線に一瞬だけ違和感を感じるサザロナだが、すぐに再びサラガドラへ殴りかかる。

 

「バカが!」

 

しかし、サラガドラはサザロナの腕を掴んでそれを受け止めた。

 

「さっきは油断したが…今や僕は大魔導士なんだぜ…!僕自身が戦わなくても使えるヤツらはまだいるんだよなァ~!」

 

サラガドラがそう言いながら目を細めた瞬間、周囲に無数の邪悪な気の反応が出現した。すぐ近くやかなりの遠方まで、地点はそれぞれ全くのバラバラだが、パッとでは予想も付けられないほどの大量の軍勢が現れている。

 

「かつてメチカブラが従えていた機械兵と魔導兵どもだ!お前以外の雑魚どもは雑魚どもに任せる!…さぁ、僕らは僕らでタイマンと行こうじゃないか」

 

トキトキ都のあらゆる場所から時の巣へ向けて押し寄せてくる、サラガドラが従える暗黒兵団。それらは全て自我を持たぬ人形に過ぎないが、暗黒魔界の科学力と魔力によって作り出された兵器たちだ。

彼らはサラガドラによって下された命令を遂行するためだけに動く。サザロナ以外の全ての敵を殲滅せよ。

 

「…来た!」

 

時の界王神がそう言った。一切の隙間なく、まるでカーテンを降ろすかのように迫りくる暗黒兵団。時の界王神は苦々しい顔で生唾を呑み込んだ。

自分に課せられた役目は大きい。サラガドラの鎖に拘束された仲間たちを守らなければならない。暗黒ドラゴンボールに寄生された者たちは何も言わずに立ち尽くすばかり。彼らがやられれば再び暗黒ドラゴンボールはサラガドラの手に渡るだろう。なので彼らも同様に守らねばならない。

 

「…やれるだけやるしかない!」

 

時の界王神は押し寄せる軍勢を睨み、攻勢の構えをとる。

しかしその瞬間、どこからか飛んできたエネルギー弾が、前面にいた暗黒兵団たちを吹き飛ばした。時の界王神が驚いてそちらを見ると、なんと暗黒ドラゴンボールに寄生されたはずの霊夢やターレスたちが敵へ攻撃を加えた様子だった。

 

「まさか、彼らは…寄生されても、自我を保っているのか!?」

 

トランクスがそう言った。

 

「あー?なんか最初はやばいと思ってたけど、二回目だからかな?案外大丈夫なのよね」

 

「それよりも、この溢れる圧倒的なパワーに支配されることなく意のままに操れるというのは素晴らしいものだな!」

 

霊夢と月夜見王がそう返した。彼らの体には寄生した暗黒ドラゴンボールが埋め込まれ、そこを中心に赤黒い血管のような筋が全身に走っているが、目の色や目つきだけは依然とほとんど変わりなかった。

霊夢は背中から伸びる6本の霊尾の先端から瘴気と霊力を混ぜ合わせた砲弾を発射し、ガーリックは瘴気の力によるエネルギー波を繰り出し、月夜見王は赤黒い膜に覆われた体から繰り出される強力な肉弾攻撃で兵団を蹴散らし、トラジは巨体を利用して突進で敵を弾き飛ばす。博麗紅蓮は5本の霊尾を巧みに操りながら群がる兵団を一体残らず粉々に砕いていく。ターレスはパワーに任せたボディプレスや、瘴気を口から吐き出して暴れまくる。

 

「コイツらの相手は私たちが請け負った!だから…アンタはアンタの戦いを済ませなさい!」

 

霊夢は離れた場所でサラガドラと組み合っているサザロナに対して叫ぶ。

 

「…ははは、ああ分かったよ…母ちゃん!」

 

それを聞いたサザロナは笑いながらさらに力を発揮し、サラガドラを押し飛ばす。吹っ飛ぶサラガドラだが足を地面につけてブレーキをかけ、ゆっくりと止まり、顔を上げる。

 

「…何故、新時代の英雄がここへ来るんだ…?何故、あの英雄がお前たちを助ける!?」

 

「ああ?何言ってんだアンタ…」

 

「言っただろ、僕はお前の両親の大ファンだとな。僕が夢見た新時代ってのは、博麗霊夢とカカロットがいつまでも英雄として存在し続ける時代なんだよ。暗黒ドラゴンボールを放って混乱させ、それをお前らに納めさせることで歴史を捻じ曲げ、そのような歪みが積み重なった結果、ふたりがフリーザとの戦いで死ぬことなく生きることができた時代を作った!」

 

「なんでそんなことをする?」

 

「…『サイヤ・ハーツ』って知ってるか?」

 

「いや…」

 

「はるか遠い昔、この宇宙において神々の身勝手に対して抗い続けたふたりの英雄だ。ひとりは黄金の闘気を身に纏い、ひとりは蒼紅の輝きを放つという…。僕は、もしも彼らが生きていたらどんなにいいだろうと思った…そしてある時!僕は君の両親の存在を知ったんだ。もちろん全ての活躍を見させてもらった。彼らは凄い…どのような局面においても必ず勝利をもぎ取り、絶対に理不尽になど屈しない!その姿を目撃した僕は確信したのさ、博麗霊夢とカカロットこそが、現代に現れた『サイヤ・ハーツ』なのだとね!古の文献に残された特徴に奇しくも一致している。…だからあのふたりが生き延びた歴史さえあればいい、彼らがいればこの世の理不尽は全て無くなったも同然だ。ほかの歴史も時空も、何もかもいらないだろう?」

 

「なるほどな…なんとなく言いたいこともやろうとしてる事もわかるけど…やっぱり、他の歴史を消すなんざ許せねぇな」

 

サザロナはそう言いながらサラガドラを睨む。そして、超サイヤ人3になることで腰のあたりまで伸びていた重たい金髪を、首の後ろ辺りからバッサリと切り落とした。軽くなった髪が再び天を衝くように逆立ち、その髪型は父親であるカカロットと瓜二つだった。

 

「なら決着を付けよう。例えば、血沸き肉踊り…人間でも神と同等の強さを発揮できる勝負…僕が見てきた幻想郷で行われていた、あの”この世でもっとも無駄なゲーム”で」

 

羽織っていた大きなマントを脱ぎ去るサラガドラ。

 

「ああ…いいぜ」

 

サラガドラの言う決闘が何を示すのかはサザロナもわかった。しかし、これはかつての決闘とは違う。美しさを競い、あくまで遊びの範疇として勝敗を決していたそれとは異なり、肉体も精神も本気で臨まなければならない。

両者は睨み合い、緊迫した風が流れる。後ろの方では暗黒ドラゴンボールに寄生された戦士たちが暗黒兵団との戦いを繰り広げている音が絶えず聞こえてくる。

だが、それらの雑音はむしろふたりが無言となって集中するのに丁度よかった。

 

ジャキッ…

 

サラガドラが両腕の肘から先を分裂させて腕を4本に増やし、その全ての腕をマシンガンと機関銃に変化させ、額からライフル銃を飛び出させる機械音が鳴った瞬間、「弾幕ごっこ」が始まった。

 

──サザロナは両手を左右へふり、それぞれの方向へ5個ずつのエネルギーの塊を投げた。それは地面に列になるように並び、そこに留まる。空中へ飛び跳ねながら、同様にエネルギーの塊を投げて空中へも10個のファンネルを設置する。次の瞬間、それら全ての──計20個のファンネルから無数の細かなエネルギー弾が放たれ、幾何学模様を描きながら舞う。

 

サラガドラはそれを見てにやりと笑うと、4本の腕と額から飛び出した銃を構え、それらに向けて無数の弾丸を発砲する。それらすべてがサザロナの弾幕とぶつかり合い、相殺される。

それを見たサザロナはさらに無数のエネルギー弾を投げ飛ばし、それらは空中を自在に動き回りながら一直線に連続して気弾を発射し続ける。サラガドラは背後から迫るそれらに対し、背中からさらに機関銃の砲身を6門伸ばし、それぞれ別々の向きへ稼働させながら掃射した。

 

「「否!栄冠は我に在り」」

 

互いの譲れぬ思いが無数の色彩となって飛び交う決闘は、どんどんヒートアップするだろう。

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