「ぐ…はぁ…はぁ…やっと外れた…」
メチカブラ・コアとサザロナがブロリーの体内へ入っていった後、サラガドラの撃ち出した刃状の弾丸によって壁へ縫い留められ固定されてしまっていたパストは、サラガドラの力が弱まったおかげでそれを抜き取り、ようやく解放されていた。ボロボロになってもう動かせない右腕を庇いながら、少し遠くの方で繰り広げられている戦いを見る。
一方、フュージョンが解除される瞬間を利用してメチカブラの攻撃を回避し、その顔面へ渾身の一撃を叩きこんだサザンカとシロナ。メチカブラは後ろへ吹っ飛び、壁へ後頭部を打ち付けた。
「そろそろ時間が来るとは思ってたけど、助かったね」
「ああ…だがこれからどうする…?もう一回合体する暇はねぇし、そもそもヤツがそんな隙をくれるとは思えねぇ」
「このまま私たちで頑張るしかないよ」
メチカブラはゆっくりと顔を上げ、ノイズのような叫び声を上げる。
「うまい事避けたな!しかし、分裂した貴様らは随分と弱々しいな。そんな力ではこのワシを倒すことはますます難しくなったなぁ、ええ?」
そう言いながら右手の拳を床へ叩き付けると、黒い稲妻のような魔力の波動が放射状に放たれる。同時に足元から伝ってくる電撃のような魔力にも触れてしまって動きを止められ、サザンカとシロナはもろに直撃を受けてしまう。
さらに、メチカブラが振り回した腕によって石ころのように吹っ飛ばされ、はるか遠くの肉の壁へ激突する。ふたりはクレーター状に凹んだ肉の壁から床の上へ滑り落ちた。
「ぐえ…」
サザロナだった時には難なく避けられた攻撃であっても、今のふたりとメチカブラのパワーは天と地ほどの差があるため、先ほどのようにはいかなかった。ふたりはたった一撃でまともに動けないほどのダメージを負い、全身から血を流しながらその場で倒れたまま動けない。
「ふはははは!逃げ惑え…地獄へ送ってやろう…!」
メチカブラは上を向いて大口を開くと、余りある魔力を吐き出し、それは高く昇って天井近くに集まっていき見る見るうちに巨大な塊となっていく。黒い球体であるが全体にひびが入ったような模様が走り、深紅の光が漏れだすそれは正しく暗黒の太陽と形容するにふさわしい様相を呈していた。周囲も真っ赤に染まり、体が溶け出してしまいそうなほどの熱気が降り注いでくる。
「クソ…」
小さく文句を漏らすサザンカ。もはや成す術はない。絶体絶命のピンチに陥り、頭には絶望の二文字が浮かぶ。
しかし、背後で立ち上がったシロナだけは違った。息を切らしながらも立ち上がり、拳を握り締めて天に浮かぶ黒い太陽を見上げる。
そして、メチカブラは人差し指を下へ曲げた。すると黒い太陽はゆっくりと降下し、サザンカとシロナを焼き尽くさんと襲い掛かる。感じていた熱気がさらに激しくなり、吸い込む息すらも灼熱と化して思わず咳込む。
「大丈夫…サザンカ。私が絶対に守るから…!」
シロナはそう言いながら腰を落として構え、拳に気を集中させる。サザンカは理解した。シロナは何としてでも、あの黒い太陽がぶつかってくる前にアレを破壊しようとしている事。アレに対しては気功波の類は撃ったところで焼け石に水…最悪の場合吸収されてしまうことも考えられる。であれば、圧倒的な破壊力を直接ぶつける必要がある。当然、シロナがやろうとしているように素手で打撃を与えれば、たとえ防ぐことができたとしても助からないだろう。シロナの特性上いくらか望みはあるのかもしれないが、それでも…
「待って…」
サザンカはシロナの腕を掴み、引き留めた。驚いたシロナが振り返り、こちらを見る。
今、自分はどんな顔をしていたのだろうか…シロナはサザンカの顔を見た後、泣きそうな顔で目を細め、その後ニコっと微笑んだ。
頭上からは、相変わらずゆっくりと黒い太陽が堕ちてくる。
「ぐああああ…!!」
トランクス渾身の蹴りを受けたサラガドラは弾丸のようなスピードで吹き飛び、刻蔵庫の壁を突き破ってその瓦礫の中へ埋もれた。
「ハァ…ハァ…!」
半分が見えなくなった視界でそれを見届けたトランクスは激しく息を切らしながら地面に四つん這いになる。既に満身創痍…胸に埋め込まれた暗黒四星球は今にも外れそうだった。
「…よくもやったな、トランクス…!」
だが、その状態のまま立ち上がることすらできないトランクスに対して、サラガドラは確かに大ダメージを受けたものの、瓦礫を押しのけてゆっくりと立ち上がった。胸へ強烈な衝撃を受けたからか、口からは大量の紫色の血液が流れている。
「ゴホ…だが、ここまでだ…」
サラガドラは足元をフラつかせながらもトランクスに歩み寄り、大きな拳を振り上げる。抵抗しようと膝立ちになったトランクスの顔面を殴り、さらに膝蹴りを喰らわせ、続けて次々と殴打や蹴りを叩き込む。
トランクスは最後の一撃を喰らった後に大きく吹っ飛び、地面の上に倒れ込んだ。右腕を前へ突き出し、指先を全て前方へ向けた状態で構える。左腕で右腕を掴んで固定し、右の5本の指の中心に小さな電気が発生する。それはバリバリと音を立てながら大きく膨れ上がり、青白い雷球を作り出す。
「『ハタタガミ』…!!」
雷球は一瞬にして人間ひとりくらい軽く呑み込めるほどのサイズに膨張する。発生した電磁力により、注意の砂や金属を含む瓦礫が宙に浮かび上がる。
「はは…参ったな…とてもじゃないが防げないぞ…」
掠れたように小さく笑って、トランクスは半ば諦めたようにそう言った。
「トランクス!」
後ろから時の界王神の声が聞こえる。
(…すみません、時の界王神様…あとはサザンカちゃんとシロナさんに任せます。あのふたりなら、きっとメチカブラを倒して帰ってくる。そうすれば、今のサラガドラであれば彼女たちで倒せるはずです。…だけど)
「最後の抵抗だ…」
トランクスはなけなしのエネルギーをかき集め、最後にそれを放とうと腕を上げる。トランクス自身を中心にドーム状に気が広がり、それは掲げられた腕を一点にして放出される。
「トランクス!動かないで!」
「え!?」
が、時の界王神の言葉で反射的に硬直し、気功波を止めてしまうトランクス。
同時に、サラガドラのハタタガミも発射された。
ド…ン!!
一瞬の隙を晒してしまったトランクスは、極限状態で無限に圧縮されたような時の中、止めてしまった気功波を撃ちなおそうと思考する。
しかし、見慣れない影が突然自分とハタタガミの間に割り込んだのでハッとして我に返る。
「お前は…」
そこへ現れたのは、パストだった。何を思ったのか、自分からハタタガミを受け止めようと割り込んできたのだ。
その目は黒く染まり、赤い瞳が映っている。超パストへ変身しており、その状態で腕を振るって何かを飛ばす動作を取ると、正面からハタタガミへ突進する。
「パスト…?まあいい、消えろ…!」
サラガドラはハタタガミの威力を高め、いよいよパストへ直撃させた。凄まじい衝撃と電磁波が広がり、青白い閃光が炸裂する。
あまりの眩しさと熱さに一瞬目を逸らしてしまうトランクス。だが直後に慌てて目線を戻すと、そこにはやはり、ハタタガミの威力に耐えきれずに吹き飛ばされたパストの姿があった。
既に動かせないボロボロの右腕が肩から消し飛び、加えて全身にも大ダメージを受けて紫色の血を噴き出しながら宙を舞っている。
「テメェ、なにをボサッとしてやがんだ!」
その時、パストは目だけをトランクスへ向けてそう怒鳴った。
「テメェが溜め込んでたそのエネルギーをブチ当てる最高のタイミングを…私が作ってやっただろーが!!」
トランクスはようやく気が付いた。ハタタガミを撃ち終えたはずのサラガドラは、何故か白目を剥いたまま硬直している。全身から血を噴き出し、右腕はズタボロに損傷している。
そう、パストはハタタガミが直撃する寸前、自身とサラガドラへ「ダメージ共有」の魔術を掛けていたのだった。パストが受けたダメージと同じダメージがサラガドラにも共有されているのだ。
「いっちゃえ!トランクス!!」
「やっちまえ!」
「…ハア────ッッ!!」
時の界王神やアザミたちの声援が聞こえる。トランクスは前へ向けた片手から、先ほど放とうとしたエネルギー波を今度こそ解き放った。
力の奔流は未だに体勢を崩しているサラガドラを容易に呑みこんだ。
「ゴアギャアアアア!!」
突然、メチカブラ・コアは叫び声を上げながら両手で頭を押さえながら苦しみ出した。その姿は砂嵐のように歪み、煙状の全身が淀んだ土色に変色する。
彼が落とそうとしていた高火力の黒い太陽は空中で消滅し、最悪の結末を覚悟していたサザンカとシロナは唖然とした。
しかし…
「…はっはっはっはっは!!」
サザンカは立ち上がると、シロナを押しのけて前に立ち、大げさに笑い立てた。
「どうした?顔色が悪いなぁ?じゃあ今度はこっちからいくぜ!」
そして思いっきり飛び跳ね、メチカブラの顔面へ拳を叩きつけ、大きく吹っ飛ばす。それを見たシロナもにやりと笑い、続けて一撃をお見舞いする。
どうやらサラガドラとメチカブラは切っても切れない魔力の繋がりがあったらしく、サラガドラがやられた影響でこちらもダメージを負っているらしい。メチカブラはふたりから与えられる衝撃を無効化できず、もろに喰らい続けている。
ふたりはそんなことは知る由もなかったが、突然訪れた好機を無駄にせんと食らいつく。メチカブラは一発、また一発と交互に攻撃を喰らい、どんどん反対側の壁際に追い詰められる。
「よっしゃあ!これで最後だ!」
「ええ、いくわよサザンカ!」
そして、同時に繰り出された渾身のふたつのパンチが、メチカブラ・コアを貫いた。
メチカブラはドラゴンボールヒーローズのオリジナルキャラクターです。知らない方は検索検索ゥ!