もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第391話 「そういうものに僕はなりたい」

サザンカたちの歴史を駆ける戦いは幕を閉じた。黒幕であるサラガドラと、元凶である魔導士メチカブラを制することによって、サラガドラが目論んでいた「特定の歴史を除く全時空の消去」、メチカブラの「暗黒魔界を支配し全時空を掌握する」という野望は共に打ち砕かれたのだ。

しかし、全宇宙の時を管理する神聖な場所であるトキトキ都及び時の巣、ひいては刻蔵庫は荒れ果てていた。

 

「…時の界王神様、それは一体…?」

 

カズラやアザミたちを元の世界へ送った後、さてこの崩壊した時の巣をどうやって復元しようかと頭を悩ませていたところ、トランクスは横にいる時の界王神が古びた黒い手帳を見ているのに気が付いた。指でページをめくり、内容に目を通している。

 

「これは…」

 

時の界王神は最後のページを読み終え、手帳をパタンと閉じる。そして、遠くの方で倒れているサラガドラの遺体へ目を向け、静かに呟いた。

 

「これはたぶん…サラガドラの夢そのものね」

 

 

 

──貧しかったある少年は、貧困そのものを解決するために戦争に出兵した。しかし、過酷な戦いは容赦なく彼らに死をもたらし、万能感のままに戦地へ飛び込んだ少年は己が愚かで無力だったのだと思い知った。

 

「おいサラガドラ何書いてるんだ?」

 

「んー?別になんてことはないさ」

 

焚火を囲う仲間たちは、食べきった獣の骨を脇に寄せ、食後の余韻に浸りながら、サラガドラに声をかけた。

 

「…ただの夢だ」

 

「なんだよそりゃ、あははははは」

 

仲間たちの笑い声を聞きながら、サラガドラは何かを手帳に書き記し終え、それを胸ポケットにしまい込んだ。

 

 

<雨にも負けず 風にも負けず>

 

 

フリーザとの戦いに勝利したカカロットと霊夢たちは幻想郷へ帰り、そこでは再び日常が戻っていた。4人で暮らす彼らは、勝ち取った平和の中で健やかに暮らしていくだろう。

 

 

<雪にも 夏の暑さにも負けず>

 

 

ブロリーもまた、少し離れた場所でカカロットの家族たちを微笑みながら見つめている。

 

 

<丈夫な体をもち 慾はなく 決していからず いつも静かに笑っている>

 

 

賢者ガーリックは天界の宮殿から幻想郷を見下ろし。

 

 

<一日に玄米四合と 味噌と少しの野菜を食べ>

 

 

月夜見王の治める月の都は、滅亡とは程遠い栄華を極め。

 

 

<あらゆることを 自分を感情にいれずに>

 

 

博麗紅蓮は今日もひたすらに旅を続け。

 

 

<よく見聞きし わかり>

 

 

幻想郷を一望できる岩場の頂点に立つ禍虎は在りし日の記憶を反芻し。

 

 

<けして忘れず>

 

 

ターレスはどこか広い林の中にて、自分の宇宙船を修理し。

 

 

<野原の松の林の影の 小さな茅葺の小屋にいて>

 

 

地球へ再襲来するフリーザ、そしてクウラと対峙するカカロット。

 

 

<東に病気の子供あれば 行って看病してやり>

 

 

里で暗躍するキヨヒロと戦うシロナをサポートする霊夢。

 

 

<西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い>

 

 

ヴァンパイア王国にて、ペペロン女王と激戦を繰り広げるシロナとカカロット。

 

 

<南に死にそうな人あれば 行って怖がらなくてもいい、と言い>

 

 

デストロンガスの影響を無効化するため、カカロットはブロリーと共に暗黒惑星へ飛び立ち。

 

 

<北に喧嘩やソショウがあれば つまらないからやめろと言い>

 

 

人造人間の脅威に対し、記憶兵器と共に立ち向かうシロナと霊夢。

 

 

<日照りの時は 涙を流し>

 

 

幻想郷にやって来たレイムとウィローに対し、シロナは涙を流す。

 

 

<寒さの夏は オロオロ歩き>

 

 

全力を出してのぶつかり合いを終えたレイムは疲れ果てその場に倒れるも、死に絶えてはおらず。シロナの差し伸べる手を、葛藤しながらも取り。

 

 

<みんなにデクノボーと呼ばれ>

 

 

そんな光景を想像するサラガドラは、後悔に顔をしかめるも、直後に小さく笑う。

 

 

<褒められもせず 苦にもされず>

 

 

そして後ろを向くと、どこでもない未知の彼方へと歩き出す。

 

 

<そういうものに 僕はなりたい>

 

  サラガドラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静まった昼下がり。ブルマは自宅のリビングに置かれたソファの上でテレビを見ながらボーっと寝そべっていた。

外では喧しいセミの声が鳴り渡り、正午の日差しが容赦なく照り付けてるが、家の中はエアコンが効いているためそんなものは関係ないほどに快適だった。

 

昨日、海水浴に出かけて行ったサザンカたちは何故か帰ってこない。出かける前に伝えられた海水浴場に電話して問い合わせてみたが、彼女ら一行は荷物そのままに消えてしまい、それきり姿を見せていないらしい。

とくに心配はしていない。どうせひょんなことから何かに巻き込まれているのだろうが、シロナもトランクスも一緒なためすぐに帰ってくるだろう。

 

ブルマはそんなことを考えながら仰向けに態勢を変え、ゆっくりと目を閉じた。

 

…その瞬間だった。

 

庭からドカドカと大きな音が響き、ブルマは慌てて跳ね起きると戸を開けて外に飛び出した。

そこには、もつれあいながら草の上に倒れ込む子供らの姿があった。サザンカ、シロナ、カズラ、アザミ、グラジア、コナギ。そして、離れた場所には気を失っているブロリーの姿があった。

 

「…ああ、おかえり」

 

「た、ただいま…」

 

サザンカは小さな声でそう返した。

 

 

 

かくして、時空を旅する戦いを終えた一行は各々の帰路についていく。アザミとカズラは自宅へ、グラジアとコナギは自宅のある街へと帰っていく。その場にはサザンカとシロナ、そしてブロリーだけが残された。

 

「ブロリーが帰って来たってのは本当か!?」

 

そこへ、ブルマの知らせを受けたスカッシュが慌ててやってくる。スカッシュはブルマの家の中のベッドに寝かされたまま眠っているブロリーの顔を覗き込んだ。

 

「よかった~…死んじゃいないみたいだな」

 

「まあでも、色々あったからね~…いくらブロリーさんでも、しばらくは起きないんじゃないかな?」

 

シロナもそう返した。彼女も、幼いころにブロリーと顔を合わせていた時期があった。

 

「そうかぁ…でもよかったぜ」

 

「もう起きてる…」

 

その時、ブロリーのか細い声が聞こえた。なんと、ブロリーは既に目を覚ましており、頭を押さえながらゆっくりと上体を起こしていた。

 

「ブロリー!」

 

「悪かった…心配をかけたな」

 

「全くだぜ!今までどこに行ってたんだよ」

 

「俺もよくわからない…ただ、長い夢を見ていたような心地だったことは確かだ…」

 

ブロリーは気分が悪そうな声色でそう言うが、ブルマが水の入ったペットボトルを手渡しながら声をかけた。

 

「おかえり」

 

「ああ…今帰った」

 

「何にせよ、これでブロリーは地球へ帰ってこられたわけだし、アタシとはここでおさらばって訳だな」

 

「スカッシュ…お前はどうするんだ?」

 

「どうするって、アタイは銀河パトロールの一員になったんだぜ、そっちの仕事を続けるとするよ。ブロリー、今までありがとな」

 

スカッシュはそう言い残すと、一行に見送られながら宇宙船で地球を発っていった。空の彼方へ小さな光となって消えていく宇宙船を見上げながら、ブルマがブロリーに言う。

 

「アンタ、しばらく居候していきなさいよ」

 

「え?」

 

「だって、どこで暮らすつもりだったのよ」

 

「…ああ、そうさせてもらう。俺は疲れた…しばらくゆっくりするか」

 

 

 

 

…暗黒ドラゴンボールによって捻じれ歪められた歴史は、彼女らの活躍によってひとまず正された。

しかし、果たして捻じれた歴史とはそれだけだったのだろうか。たとえば、今サザンカやシロナがいるこの歴史すらも、ずっと昔から、捻じれ歪んでいるのではないだろうか。

 

ひとつ、可能性の話をすれば…この物語すらも、既にどこかで捻じれているのかもしれない。だとすれば、それを正すのは、果たして人か神か…

 

 

To be continued…

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