もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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前回から始まった天下一武道会ですが、少し訂正した箇所があります。
16個のブロックで予選を行い16人の選手が本戦に出場するという書き方をしましたが、さすがにちょっと多いなと思ったので半分の8ブロック、選手は8名に変更しました。


第395話 「ミスター・サタン見参!」

「えっ、サタンさん!?」

 

「知り合いか?」

 

待機室から選手たちの様子を見ていたシロナは思わず叫び、サザンカがそれに疑問を投げる。

 

「私の戦友って言うか、仲間って言うか…なんだけど…あんな感じだったっけ?」

 

サタンは、かつては人造人間と戦う宿命を背負った記憶兵器の戦士のひとりであり、パオズ山での決戦においてはシロナと共に死力を尽くして戦った。その際に、サタンは子供のころに武道の世界チャンピオンになる夢があったと語っており、きっと人造人間との戦いが完全に終結した今、再び夢を叶えようと邁進しているのだろう。

かつてのサタンは冷静で硬い雰囲気があり小豆色のスーツを着ていたが、今のサタンは同じ小豆色の道着と白い袴を纏い、アフロのボリュームが増し、観客へ向けて調子づいたアピールを繰り返すその姿はまるで以前の姿からは想像できなかった。

 

 

 

 

「ウオオオ───!!」

 

「サーターン!サーターン!」

 

無数のチャンピオンベルトを見せつけながら雄叫びを上げるサタン。観客たちも一斉にサタンコールを叫ぶ。

 

「今回が初出場となるミスター・サタン選手ですが、皆さんご存知の通り、彼は世界三大武道大会に数えられる二つの武道会を制し、優勝しております!そしてこの天下一武道会で優勝を収めた時、サタン選手はこの世で最強の称号でもある世界チャンピオンになれるのです!」

 

一通りアピールを終えたサタンはスタッフへベルトを渡し、対戦相手である豹牙天龍と向かい合う。

 

「対する豹牙天龍選手は、200人を超える門下生たちを抱える一大流派“豹牙流拳法”の最高師範である偉大な格闘家であります!」

 

「おお!」

 

「すげぇ!」

 

審判による紹介を聞いた観客は、サタンだけでなく天龍に対しても歓声を上げる。

 

「最も世界チャンピオンに近い男か…。俺の豹牙流がどこまで通じるか…」

 

今や、豹牙天龍は口ひげを蓄えた中年の武道家だ。トレードマークのおかっぱ頭はそのままに、審判の言う通り200人以上の門下生を抱える豹牙流の最高師範としての貫禄に満ち、純粋な地球の人間としては五本の指に入る強さを持っている。

 

「では…試合を開始してください!」

 

盛大な銅鑼の音がゴングとして鳴り渡り、いよいよ試合が開始される。

天龍は構えたまま、同じく構えを取ったサタンの力量を図ろうとする。

 

(隙が無い…異様な闘気だ)

 

天龍は真っ先に、サタンの体は普通の人間とは異なる構造を持っているかもしれない、と考えた。

 

(相手の手が読めない以上、初撃を許すのは危険!先に俺が!)

 

そして電光石火の如き勢いで駆けだし、一瞬でサタンの目の前へ近寄ると、螺旋の気を纏わせた拳を渾身の力で打ち出した。

 

ゴィィン…!!

 

サタンは天龍の拳と自分の顔面の間に手の平を入れてガードする。その瞬間、思わず耳を塞いでしまいたくなるような鈍い金属音が鳴り渡り、まるでこの武舞台の上で巨大な鐘を鳴らしたかのようだった。

 

(なんだ…この手応えは…?)

 

「気付いたかね?私の体は特別なんだ」

 

異様な手応え…天龍は推察する。サタンが構えた瞬間、彼の気の質が変わった。その時、彼の体は異質な…例えるなら、鋼鉄の工具のように変化したのだ。

 

(このサタンという男…強い!俺も界王拳を使わなければ…!)

 

天龍は既に10倍の界王拳を使用している。しかし、サタンから繰り出される徒手格闘の猛攻が天龍に襲い掛かり、それ以上倍率を高める隙を見出せない。

 

「豹牙螺旋弾!!」

 

身を翻しながら距離を取り、空中でサタンへ向けて腕を構える。全身から漏れ出た青いオーラが螺旋を描くように回転しながらその掌へ集まり、ひとつの気弾が形成される。そして、天龍は弾丸のように回転するそれを撃ち放った。

 

「ほう、“トリック”かね…」

 

が、腕を水平に振るい、天龍の気弾を打ち返す。

 

「それはこんなに観客がいる前で使うべきものではないだろう!?」

 

「なっ!?」

 

天龍は豪速で向かってくる自身の気弾を両手で抱え込むように受け止める。このまま受け流そうとも考えたが、サタンが言う通りここは何千人以上の観客に囲まれた武舞台…流石に逸らすこともできないだろう。

そのまま抱え込んだ自身の豹牙螺旋弾を潰し、その炸裂を受けてしまう天龍。

 

「ここは武道大会だ…そして観ているのは一般の人間たち…私たちが気を使った攻防を繰り広げたとて、それを武道だと理解できる者は少ないだろう」

 

「…確かに」

 

「だからといって、私は負けないがね」

 

「言ってくれる!」

 

天龍は全身に赤いオーラを纏い、いよいよ20倍の界王拳を使用する。

 

「おおっと!?豹牙選手の体が光っているように見えますが…!」

 

審判がそう解説しながら驚き…猛スピードでジグザグの軌道を描く天龍がサタンに突撃し、その顔面を殴りつけた。

サタンは吹き飛び、武舞台の上を滑っていってしまうが、指をタイルへ突き刺して動きを止める。が、既にその時は天龍が頭上に迫っており、渾身の踵落しを脳天へ喰らい、サタンは顔面から武舞台へ激突した。

 

「むはァ~~~ッ」

 

しかしサタンは全く効いていないことをアピールするように天龍を押しのけて両腕でガッツポーズを取りながら顔を上げ、笑顔で叫ぶ。観客が湧いたのを確認すると、天龍の足を掴み、引き寄せてから胸へ拳を叩きつけた。

 

「がは…!」

 

「どうした?もっと派手にやろう!観客が理解できる範疇で!!」

 

追撃を繰り出すサタンだが、天龍は後ろへ連続ハンドスプリングで距離を取る。だが、天龍はぎょっとして汗を垂らす。

サタンは20倍の界王拳を使っている自分の動きに難なく着いて来ている!

 

(なんてパワーだ…スピードも化け物か!?)

 

「そろそろ勝たせてもらうぞ」

 

サタンの手からガキガキと硬い音が鳴り、次の瞬間に繰り出された正拳突きが、高速移動していたはずの天龍の頬へ突き刺さる。

 

「サタンパンチ!!」

 

天龍は思い切り吹き飛ばされ、武舞台の上を転がっていく。何とか止まろうとタイルの上に手を着くも適わず、武舞台の端から投げ出され、観客席の壁へ激突した。

 

「ぐ…」

 

「決まりました!場外です!!1回戦第一試合、勝利したのはミスター・サタン選手です!!」

 

おおおおおおおおぉぉぉぉ…!!

 

再び観客席からは歓声と拍手、サタンコールが送られる。

しかし、サタンはそれに応えることなく、右手を上にあげ、開いた手を閉じる。それを見た観客はピタリと静まり、サタンはゆっくりと歩き出し、場外へ落ちた天龍の元へ向かう。そして、立ち上がる前にある程度ダメージを消しておこうとじっとしている彼の目の前へ手を差し伸べた。

 

「いい戦いだった!またやろう!」

 

「…ははっ、最も世界チャンピオンに近い男…か」

 

天龍はその手を取って立ち上がると、サタンはそのまま天龍と共に腕を上げ、今度こそ大音量の歓声に応えた。

 

「今大会の初試合を素晴らしい戦いで盛り上げてくれた彼らに、さらなる拍手をお願いいたします!」

 

 

「サタンさん、すご~」

 

「あのオッサン、いい奴だな」

 

待合室で試合を見ていたシロナとサザンカも感心してそう話した。

 

 

…続いて、1回戦第2試合が始まった。

 

「続きまして、1回戦第2試合は…こちらの選手たちです!」

 

大型モニターに映し出されたのは、シロナの顔と、白髪のモヒカン頭をした耳の尖った“シン”という名前らしい青年だった。

 

「お、私だ。じゃあ行ってくるわ」

 

シロナは早速武舞台の上へ飛び出し、かがみ込んで軽いストレッチを始める。遅れて、対戦相手であるシンがゆっくりとやって来て、笑顔を浮かべながらシロナと向かい合う。

 

「初めまして。試合が始まる前に、握手でもどうでしょうか」

 

「え?」

 

シンはシロナへ手を差し出す。

 

「ああ、いいですよ」

 

シロナはその手を握り、彼と握手を交わす。その時、両者の腕へ微弱な電流のような刺激が流れ、シロナは少し顔をしかめたが、シンはさらに目を細めてにっこりと笑った。

 

「なるほど、よい魂をお持ちだ」

 

「そうかな?」

 

「さて、両者握手を終えたところで、いよいよ第2試合を始めます!シロナ選手は武道大会そのものが初めてでありながら、予選大会でも素晴らしい実力を見せていただいたことを覚えております!対するシン選手は、いつの間にか予選を勝ち抜いていた謎多き人物であります!」

 

シロナと謎の青年、シンとの戦いが始まろうとしていた…。

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