もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第396話 「波乱の萌芽」

天下一武道会、1回戦第1試合のミスター・サタン対豹牙天龍は、サタンの勝利という形で決着がついた。

続く第2試合は、シロナとシンという名の謎の青年の戦いだった。

 

「では、試合開始ィ!!」

 

審判の男の試合開始の合図と同時にシロナはサッと格闘の構えを取るが、シンは後ろ手を組んだまま不敵に笑うきりで一向に戦おうとする素振りを見せない。

 

「どうしたの?戦わないの?」

 

「ふっふっふ…私は貴方とは戦うつもりはありませんよ」

 

「え?なんでよ?」

 

「貴方は…この星の“神”という存在をご存知ですよね?」

 

「ピッコロの事でしょ?知ってるわよ」

 

「少しお話ししましょう、私のことについて」

 

審判は小声で話をしているだけで一向に戦おうとしないふたりを見て少し困惑しつつ、観客に対してフォローを入れる。

 

「りょ、両者睨み合っております!これが!一流同士の戦いの作法でしょうか!?」

 

「私は“界王神”です」

 

「…なにそれ?」

 

「まず、人間がいる惑星には“神”がいます。その各星の神々の頂点に立つのが“界王”というもの。その界王たちを束ねる“大界王”もいますが…その界王たちの神に当たるのが、私のような“界王神”と呼ばれる者です。私はまだ未熟な方ですが…フリーザ程度なら片腕で倒せますよ」

 

「へぇ~~」

 

「そんな界王神より、貴方にお願いがあります。どうかこの場ではなく、別の場所で話を聞いてくださいませんか?」

 

「まあいいけど…じゃ、早いところ決着を付けようか」

 

「え?いや、そうではなく…一刻を争う事態かもしれないのですよ?今すぐに私と一緒に…」

 

「あのさ」

 

その時、シロナの言葉と共に発せられた微かな殺気を、界王神シンは感じ取り怯む。

 

「私今日は絶対優勝するためにここへ来たの。シンだの神だの何だか知らないけど、邪魔しないでちょうだい!」

 

シンは汗をかき、シロナの目つきと闘気から、彼女は本気で試合を勝ち進もうとしていること、そしてその実力は自分を越えていることに気付く。

 

「わかりました…では、この天下一武道会が終わった後に話をしましょう。その時では遅いかもしれませんが」

 

「何があるのか知らないけど、まあ何が起こっても私たちがドカーンといっちょ頑張れば…大丈ブイでしょう!」

 

にこやかにそう言ったシロナに対し、シンは不安な表情を浮かべながらもうっすらと期待の笑みを見せる。

 

「審判の方」

 

「え?は、はい!?」

 

「私はこの大会を棄権します」

 

数秒唖然とする審判だったが、すぐにマイクを持ち直して声を張り上げる。

 

「たった今、シン選手から棄権が宣言されました!よってこの試合、シロナ選手の勝ち!!」

 

「えー、何だったんだよ」

 

「もしかして手を合わせることなく実力差を悟った…ってのか…?」

 

シロナはふうとため息をつき、舞台から降りて立ち去っていくシンを見送ると、自分も控室の方へ戻っていく。

ざわめく観客であったが、審判が次の試合についてアナウンスすると静まった。

 

「気を取り直して…続いて1回戦第3試合のカードを発表します!」

 

モニターに表示されたのは、凶悪な面構えをした怪獣のような男の顔と、サザンカの顔だった。

 

「第3試合はギラン選手vsサザンカ選手です!それでは、武舞台へお願いします!」

 

「ギラン?なんだアイツ、怪物じゃねえかよ」

 

対戦相手の写真を見たサザンカは小さくそう言った。

 

「サザンカ、気を付けてね」

 

ちょうど戻ってきたシロナがサザンカに声をかけ、当のサザンカは少し頷いて武舞台の上へ上がっていった。そこには既に対戦相手となるギランがサザンカを待っており、恐ろしい怪獣のような風体で威圧感を放っている。

鼻先に一本の角、後頭部からはトサカが伸び、顎には白く長いひげを蓄え、背中には大きな翼を持ち、でっぷりと太ったドラゴンのようなギラン。

 

「オレさまの相手に選ばれたことを後悔するんだな、オレはガキ相手でも甘くねぇぞ」

 

「はっ、そうかよ!」

 

審判がさり気なくふたりのやり取りを止め、マイクを構える。

 

「さあ第3試合を行う選手ですが、まずはサザンカ選手!見た目と若さに囚われるなかれ、予選ではどこから発揮されているのか不明だと感じるほどの超パワーで他を圧倒し勝ち進んでおりました!対するは怪獣ギラン選手!彼は過去の当武道会にも出場した経験があるベテラン選手です!当時よりもさらに鍛え上げられた実力に期待が高まります!では見合って…試合開始ィ!!」

 

試合が始まると、真っ先にギランが動いた。その巨体からは想像もできない程の速度で飛び出し、腕を振るった一撃を繰り出す。

 

「おおっと」

 

が、サザンカは難なく後ろへ飛んでそれを躱す。ギランもサザンカを追って再び踏み込み、長い尻尾による殴打を放つ。サザンカはそれを殴って弾き飛ばし、ギランは後ろへ吹っ飛ぶ尻尾につられてバランスを崩す。

 

「くっ!」

 

今度はサザンカが仕掛け、ギランの正面へ回るとその胸へ回し蹴りを命中させた。ギランは反対方向によろめくが何とかその場で踏み止まり、胸を押さえながらサザンカに振り向く。

 

「やるじゃねぇか」

 

「アンタこそ見た目の割にゃな」

 

「ぐははは…オレは前に参加した時にパチンコ玉みてえな頭したチビに敗北してな…それ以来真面目に鍛えてきたんだ。いつかまたこの武道会でまみえると思ってな…」

 

しかし、と言ってもハッキリ言ってギランの実力はサザンカには遠く及ばないのは当然のこと。だが実力を越えて発揮されるタフネスがギランを立たせていた。

 

「手段は択ばねぇ!くらえ!」

 

次の瞬間、ギランは大きく開いた口から何かを飛び出させた。サザンカは一瞬舌でも伸ばしたのかと思い、避けようと思ったがそれよりもこれを掴んで場外へ投げ飛ばしてやろうと思い掴んでしまった。

 

「…アレ!?」

 

「ぐふふふ…」

 

それが間違いだった。ギランが口から出したものは舌ではなく、強力な粘着性を持ったゴム状の物体だったのだ。それはサザンカの全身を覆うように一瞬で巻き付いてしまった。

 

「んだこれ!」

 

「ぐははは!オレさまのグルグルガムにかかったな!ソイツからは絶対に抜け出せんぞ!」

 

「確かに…これはなかなか…」

 

サザンカはもぞもぞと体を動かして振りほどこうとするが、さすがに簡単に抜け出せそうになかった。

 

「どれ、このまま場外へ落としてやろう!」

 

ギランは動けないサザンカをひょいと頭上へ持ち上げると、そのまま場外へ投げ飛ばそうと大きく振りかぶる。

 

「テメェ!」

 

しかしその時、サザンカは突然ブチギレた。ギランの頭上でグルグルガムを容易に内側から破り、ギョッとして驚いたギランの顔面の前へ降りると渾身のパンチを叩き込んだのだった。

 

「どこ触りやがんだゴルァ──!!」

 

「ほぶゥ───!!?」

 

横面をぶん殴られたギランはまるでホームランボールのように凄まじい勢いで弧を描くように吹っ飛ばされ、見上げる観客たちはそれを目で追い、とうとう観客席の屋根の上へ落下した。

完全なる場外判定であり、ギランは頭から屋根に突っ込んで足だけ上へ向いた状態でピクピクと痙攣しながら気を失っていた。

 

「けっ、変態野郎が!」

 

どうやらギランの指が体のきわどい部分に当たっており、サザンカはそのことについてキレたらしい。ギランの態度が真摯であったため、サザンカは実力が離れていようとまともに戦ってやろうとしていたが、セクハラに関しては許せなかった。

 

「こ、この勝負…サザンカ選手の勝ち…!」

 

「すげーなあの子!」

 

「いいぞー!!」

 

審判が唖然としながらサザンカの勝利を宣言し、観客は凶暴な風体のギランを一撃でノックアウトしたサザンカの超人的なパワーを前に一気に盛り上がる。

 

「すばらしい!今回の天下一武道会は凄まじい熱気に包まれております!さぁこのまま1回戦最後の試合を行います!気になる対戦カードはこちら!」

 

モニターに映し出されたのは、黒髪を逆立てた顔に火傷のある男と、長い黒髪を後ろへ逆立てた人相の悪い男だった。

 

「出ました、1回戦第4試合はベジータ選手vsカンバー選手です!」

 

まだまだ天下一武道会は始まったばかり…だが、既にこの時点で巨大な敵の陰謀が渦巻いていることに、サザンカたちは気付いてはいなかった…。

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