もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

400 / 551
400話に達してしまいました。


第400話 「悪のサイヤ人」

「本当は…優勝したら伝えようと思ってたんだけど…」

 

シロナはマイクを受け取ると、静かにそう呟き、観客席の中に居るカズラを見つめる。カズラは少し驚きながらもシロナを見つめ返す。

 

「実は私…カズラ君のことが好きなの!」

 

「ええっ!!?」

 

会場からもどよめきが起こり、審判も驚いている。一番驚いているのはカズラ本人だが、驚きすぎて立ち上がってしまったがために会場中からの視線が一気に浴びせられる。

 

「え、驚いた」

 

横に座っていたブルマも咥えていた煙草を取り落としながら呟いた。

 

「お、俺ですか…!?」

 

「そう…俺…!だから…付き合ってくれないかな!?」

 

耳まで真っ赤にしながら震える声でそう叫ぶシロナ。その瞬間、カズラの胸がドクンと大きく脈動し、熱い血潮が全身を駆け巡る。

 

「俺でよかったら…喜んで…!」

 

カズラがそう返答すると、周囲からパチパチと拍手が起こり、やがて大音量に変わっていく。

 

(あれ…?でも、何だ…この感じ…前にもあったような…)

 

「なんということでしょう!私、以前に『武道会場で男女の選手同士が軽いノリで結婚してしまう』なんて夢枕を見たことがありますが…あれは正夢だったのでしょうか!?」

 

審判までもがマイクに向かってそんなことをのたまっている。

 

「カズラ君…」

 

シロナが安堵した表情でカズラの名前を呟いた瞬間、後ろから肩に手を置かれ、振り返る。そこには俯いたサザンカの姿が。

 

「サザンカ…?」

 

だが、どこか様子がおかしい事に気付く。方に置かれた手の力が強くなり、やがてシロナの肩をギリギリと締めるように掴むようになる。

 

「いたっ…!ちょっと…」

 

次の瞬間、顔を上げたサザンカと目が遭った。その表情は何かに焦ったような、大事な何かを奈落へと落としたかのようなものだったが、次の瞬間には目がグルンと裏返って白目を向き、全身から赤黒い邪悪なオーラが湯気のようににじみ出る。

 

「キギィィィ!!」

 

そして、歯を食いしばったまま叫び声をあげ、直後に口を開くと、その中で赤い閃光が迸る。何かとてつもなく悪い予感を察したシロナは咄嗟にサザンカの横っ面を殴り飛ばす。

よろめくサザンカだが、すぐにシロナの方へ向き直り、再度口を開くと同時に中の気を解き放った。

 

カッ

 

周囲のすべてが深紅に染まるほどの強烈な光が放たれ、大気と地面の振動以外何も感じられず、音すらも消し去られている。

だが、シロナは分かっていた。すぐに光が止むと、そこには想像したくもない最悪の光景が広がっていた。

 

「…なんてことを」

 

この武舞台を除いて、周囲のすべてが綺麗さっぱり吹き飛んでいた。武道館も、周りの木々も、観客席も…そこにいた人々も、そっくりと武道館の敷地一帯が。

 

「な、な…」

 

すぐに確認できた生存者は、シロナ自身と、近くにいた審判、粉になった観客席があった場所でうずくまっているブルマと、彼女に間一髪で守られたカズラ。そして…

 

「…カカッ」

 

全身から溢れるような赤黒い闘気を吐き出しながらゆらりとこちらを見る、明らかに正気ではないサザンカの姿だった。

咄嗟に身構えたシロナ。その判断は正しく、次の瞬間、サザンカの強烈なパンチが硬質化させていた片腕を打ち砕いて腹へ直撃した。シロナは弾丸のように弾き飛ばされ、武道会場だった瓦礫に激突しながら遠くまで吹っ飛ばされる。天下一武道会の開催地であるこのパパイヤ島の空港まで飛ばされ、滑走路を捲り上げながらようやく止まる。

 

「あらら…」

(腹に硬質化を集中しなかったら穴開いてたかも…)

 

シロナの左手首から先が吹き飛んでおり、腹は服が破れその奥で結晶化した部分がバキバキに砕けてしまっていた。

 

「はっ!?」

 

その直後、悪寒がしたシロナは思わずその場から飛びのく。案の定、シロナがいた場所が突然爆発し、大穴が空いた。

シロナは後ろを向いた姿勢のままオーラを纏って高速で跳ぶ。が、同様にオーラを纏うサザンカが一瞬で彼女に追いつき、大振りなパンチを繰り出す。

 

「クカカカカッ!どうしたんだ?またあの無駄なパンチを数撃ってみろよ」

 

サザンカは白目を剥いたまま笑い、明らかな意志を持ってシロナに語りかける。その様子はとても正気ではないが、理性はあるらしいのが不気味に感じた。

シロナはさらに速度を高め、サザンカと距離を取る。

 

「ハハハハ!」

 

追いかけるサザンカは空港のバス停へ通りかかり、そこにあった大型バスのボディに指を突っ込み、そのまま掴んで車体を片腕で持ち上げる。

 

「うわああああ!?」

 

「なんだ!?」

 

その中にはまだ乗客や運転手がおり、突然浮かんだ車体に驚いている。

 

「まさか!」

 

次の瞬間、サザンカは空中に居るシロナへ向けて思い切りバスをブン投げた!

凄まじい轟音を響かせながら向かってくるバスを全身で受け止めるシロナ。その時にバスの中に取り残されている人間たちと目が合い、咄嗟に笑顔でウインクを送る。

シロナはゆっくり降下し、バスを安全に降ろそうとする…が、サザンカはそんな暇すら与えようとせず、右手に作った一発の気弾を投げる。

 

「ゴミもろとも吹っ飛べ!」

 

「やば!」

 

シロナはどうすることもできず、近づいてくる赤い気弾を見つめる事しかできず…やがて、巨大な爆発に巻き込まれる。

 

「…ん?」

 

だが、サザンカは違和感に気付き、爆炎と煙の中を凝視する。

 

「ブロリーさん!!」

 

シロナと気弾との間に割って入り、その威力を殺したのは、なんと駆け付けたブロリーだった。シロナは驚いてその名を叫び、その直後にハッとして地上へバスを降ろしに行く。

 

「テメェ…邪魔するなよ」

 

「そうはいかない。サザンカ、お前は今何をしようとした?それはとても見過ごせるものではないな」

 

サザンカを睨むブロリー。その服装は以前までと異なり、地球に滞在し馴染むためジーンズと白いTシャツという普通の地球人と変わらない衣服を纏っている。

 

「そうよサザンカ、これ以上はやめなさい!」

 

戻ってきたシロナが呼びかける。

 

「変に姉貴ぶるんじゃねぇ、反吐が出る」

 

「出るなら好きに出してなさい、とにかく私はアンタを止める!」

 

シロナはサザンカへと向かっていくが…突然、すぐ近くに猛然とした巨大な気を感じ、思わず立ち止まる。ブロリーすらも警戒するほどだった。

 

「…この時代の“悪のサイヤ人”として完全に覚醒はしていないようだな。だが、オレと戦い続ければいずれは完全な力を得られるだろう」

 

「あの人は確か…カンバー!武道会でサザンカと戦っていた…」

 

この場に現れたカンバーは武道会の時がかわいく見えるほどの桁違いの戦闘力を放っており、サザンカの背後に立ち、シロナとブロリーを物色するようにジロリとみる。

 

「このサザンカという女はオレと戦う!戦いの最中完全に覚醒させ、その上でオレが叩き折ってやればこの女はオレにつく!だから、オレと戦えェ!!」

 

カンバーは剛腕を振り上げ、サザンカの頭上へ振り下ろす。が、そこへ一瞬で超サイヤ人へ変身したブロリーが割り込み、一撃を止める。

 

(なんてパワー…!)

 

「ん…!?キサマはまさか…ほほう、面白い!」

 

カンバーはブロリーを見て何か反応を示す。

 

「シロナ!コイツは俺がなんとかする!だから君はサザンカをどうにか落ち着かせるんだ!」

 

「分かった!」

 

ブロリーはカンバーの胸元に手をかざし、そこから強烈な気功波を放つ。放射状に広がる気の波動はカンバーを吞み込むとともに押し出し、遠くの方へと追いやる。それを見たシロナも、サザンカへ接近して殴り書かり、躱したサザンカの背後へ回って羽交い絞めにし、そのままパパイヤ島を抜けて海を越え、遠く離れた陸地へ自分ごと墜落させる。

 

「ハハハハハ!!人気のないところへ移動してきたってか?律儀なもんだ、いい子ちゃんぶりやがって」

 

シロナを振り解いたサザンカは後ろへ飛び、荒れた大地の上へ降り立つとそう言った。

 

「そうじゃないよ」

 

「ああ?」

 

「アンタ、自分の尻をお姉ちゃんに引っ叩かれるところ見せたいわけ?」

 

「…クソ女!」

 

既に超サイヤ人2へと変身し、黄金の闘気と青いスパークを纏っているシロナ。咥えた煙草に指先で火を点け、煙を吐き出すと緑色に変化した瞳でサザンカをじっと睨み、挑みかかるのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。