もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第405話 「あの輝きを取り戻して」

その間、たったの1秒くらい。

カズラがサザンカの胸の中に吸い込まれてからの時間だ。1秒後、その胸の傷口から真っ黒な気が濁流のように溢れ、周囲へ流れ出す。

 

「うおおお!?」

 

それに押し出される形で排出されたカズラが流されていく。止め処ない真っ黒い気の濁流の中には赤い光が星のように散っており、それが周囲を海にするかの如く広がっている。

周りにいるブルマやウスター、天龍やサタンも気の濁流にのみ込まれ遠くへと流されていく。

 

「サザンカ…!!」

 

シロナは中心にいるサザンカに近付こうと、とりあえず舞空術で浮かび濁流から抜けようとするが、この超高密度に圧縮され液体となった邪悪な気に触れていると力が入らず、成す術がなかった。

しかし…

 

「サザンカァァアアアア!!」

 

カズラだけは、必死に気の濁流の中を泳ぐことが出来ていた。シロナや他の者ですら全く身動きができないというのに、なぜ普通の人間であるカズラだけが?

とにかく、カズラは濁流を遡り、ぐんぐんとサザンカに近付いていく。いや、それは泳いでいるというよりも、まるでカズラだけが濁流を存在しないものとして捉えているかのように、すんなりと走っているのだ。

 

「お前…!俺と話しただろ…だから…目ェ覚ませ!!」

 

 

 

 

 

 

「あれ、クソ…」

 

カズラはその辺に転がっていたスクーターにまたがり、後ろへサザンカを乗せて発進しようとするが、当然運転したことなど無いので発進すらできないでいた。

 

「…どけ、貸してみろ」

 

見かねたサザンカがカズラと場所を代わると、驚くほどすんなりとスクーターが発進し、あっという間に安定しスピードに乗った。

 

「うまいな」

 

「まぁな」

 

ふたりはスクーターに乗りながら夕方のハイウェイを当てもなく走り続けた。やはりこの世界はサザンカとカズラ以外に人間や目立つ生き物は存在していないようで、無人の自動車がそこら中に停まっていたり、途中で寄ったコンビニも電気は点いているが誰もいなかった。

 

「やっぱり誰もいないみたいだな…まあタダで飯食えるけど」

 

コンビニの前に座り、弁当を食べるふたり。サザンカはやはりいつもと違って食欲がないようで、もそもそとゆっくり口を動かしているきりだ。

 

「おい…口の周りについてるぞ」

 

「どこ?」

 

「反対だ」

 

カズラはサザンカの顔についていたご飯粒を取ってやる。

 

「…さんきゅ」

 

「ん…ていうか、サザンカそれだけじゃ足りねぇだろ?コンビニの飯って言うのもいつか飽きる…ラーメン食べたくないか?」

 

「ラーメン?」

 

カズラとサザンカは、西の都の商店街の中にある一軒のラーメン屋の中に入った。やはりそこには店員も客も一人もいないが、スープの入った鍋や調理道具、生麵はそこに用意されていた。

 

「やっぱ…必要そうなもんは揃ってるな」

 

「おいおいカズラ…本当にラーメン作る気か?作り方知ってんのかよ?」

 

「なんとなくわかる…幸い、誰もいないし時間もたっぷりある。サザンカに俺の最高のラーメンを食わせてやるよ」

 

どれくらい経っただろう…カズラはひたすらにラーメンを作り続けた。

 

「おい、茹ですぎだ!麺が柔らかすぎるぞ!」

 

失敗…

 

「醤油ラーメンに太麺は合わねぇだろ!」

 

失敗…

 

「これ何でダシとったんだ?」

 

失敗を重ね…ついに。

 

「できた…これはいい出来だぞ」

 

何か月が過ぎたころ、ようやくカズラは最高の一杯をサザンカの前へ出すことができた。香り、見た目ともにプロが作るものと遜色ない。

 

「…いただきます」

 

サザンカはそれを啜り、食べた。

 

「…うまいな」

 

「ほんとか!?」

 

「ああ…まずいって揶揄ってやろうかと思ったが…想像以上だった」

 

そう言ったサザンカは、ここへ来て初めて笑顔を見せた。

そしてあっという間に一杯を平らげる。カズラはその様子を見て、サザンカの調子がいつものに戻ってきていると感じた。

 

「サザンカ…」

 

「あん?」

 

「この間の話…お前も俺のことが好きだって言ってたよな?」

 

「あ、ああ…」

 

「あれ、今も変わってないか?」

 

「それは、まあ…」

 

「俺もだ。だからよ…気が早いって思うかもしれないけど…俺、考えたんだ…昔からラーメンは好きだったけど考えもしてなかったことを。俺は将来、ラーメン屋をやりたい」

 

「ラーメン屋を…?」

 

「そうだ。でもよ、ひとりでやるのって大変だと思うんだよな…まあ勉強しなきゃいけないことは山ほどあるし、それも大人になってからだけど…」

 

「…うん…」

 

「だから…俺はお前と一緒に店をやっていきたいって思うんだ。その、つまり…俺と付き合って…ずっと一緒にいてほしい!せめて店やるまでは…」

 

それを聞いたサザンカは一瞬で耳まで真っ赤になり、全身から蒸気を吹き上げて周囲の気温を炎天下並みに高めてしまった。うんうん唸りながら頭を抱えてうずくまり、少しして落ち着くと顔を上げる。

 

「…怖ェんだよ」

 

「怖い…?」

 

「いつもお前はアタシに話しかけてくれた…嬉しかった…でもよ、アタシって“悪のサイヤ人”らしいぜ」

 

「なんだそれ…?」

 

「アタシが暴走した時、全部分かった…頭の中に流れ込んできたんだ。1000年に一度現れる、原始の闘争本能を持つ邪悪なサイヤ人…自分がそんなヤツだって分かっちまったら…怖くて怖くて、とてもお前の傍にはいられねぇ…だって、好きだから…」

 

「…そんなこと気にしてんのか…」

 

「え?」

 

「あのなぁ、俺は…お前が武道会場消し飛ばして…何千人何万人って観客を皆殺しにして…空港で暴れて…シロナさんを殺そうとしているお前を見た上で言ってるんだぞ。悪のサイヤ人?なんだよそれ…それってさ…」

 

サザンカは息を呑む。

 

「すげぇかわいいと思うぞ」

 

「は?かわ…?」

 

「俺の好きな女の子にそんなステータスがあるなんて凄すぎる。だからそれも誇っていこうぜ!俺が傍にいるから!」

 

サザンカは何か言い返そうとするが、何も言葉が出て来ず、小さな声で絞り出すようにカズラに囁いた。

 

「うん…でも、まだよくわかんない…だから、アタシが納得するまで、この世界で一緒にいてくれ…」

 

 

 

 

 

「こうやって現実に帰ってこれたってことは…お前が納得してくれたってことだろ!?だから…いい加減に目を覚ましてくれ、サザンカ───」

 

カズラはサザンカの元へとたどり着き、その手を握りしめた。

その瞬間、サザンカの体が黄金の光に包まれる。視界が何も見えなく程の強烈な光だが、カズラにとってはどこか暖かく、不思議と抵抗する必要もなかった。その時は誰も気づいていなかったが、サザンカの腰元から茶色い毛に覆われた細長い尻尾が…

 

 

 

「…む!?」

 

一方、ブロリーと激闘を繰り広げていたカンバーは、サザンカの身に何か変化が訪れた事を気で感じ取った。

 

「ようやくか!あの小娘が完全な悪のサイヤ人として目覚める時が来た!」

 

「なに!?」

 

が、直後にブロリーはカンバーに殴り飛ばされ、吹っ飛んだところを強力なエネルギー弾で追撃され、落下して海の中へと沈んでいく。

 

「ま…待て!」

 

ブロリーは全身から気を放出して周囲の海水全てを退かし、カンバーを止めようと飛びかかる。しかし、カンバーが操る気で練り上げた手によって叩き落とされ、再び海底に固定される。

 

「ぐ…!」

 

「もうキサマに用は無い!」

 

カンバーはサザンカがいる方向へと高速で飛び立ち、ものの数秒でたどり着いた。カンバーの眼下では、赤黒い気で周囲を湖のように満たし、その中心で黄金の光を放つサザンカだった。その姿を見たカンバーは、武道会の時点では存在していなかったサイヤ人の尻尾が、今のサザンカには生えているのを発見する。

 

「クハハハハハハ!!いいぞ!その原始の力こそ我らサイヤ人の根源だ!」

 

喜びに顔を歪ませながら、カンバーは強張らせた右手の上に白い光球を作り出す。そして、それを空高く投げ上げ、そのまま手を握って光球を炸裂させた。

 

「『はじけてまざれ』!!」

 

炸裂した光球は太陽が二つあると見紛うほどに眩い輝きを放ち始める。

 

「星の酸素と混ぜ合わせることで、パワーボールは満月と同じ効力を発揮するようになる。さぁ、そのまま原始の姿へと変身し、サイヤ人の究極の領域をオレに見せてみろ!」

 

カンバーがそう叫び、サザンカは黄金の光に包まれたまま、空に浮かぶパワーボールを見上げた。何かヤバいと感じたカズラは慌ててサザンカの目を隠そうとするが、既に遅く、目の前で彼女の体が震えるように脈動し、どんどんと大きくなっていく。

 

「ググ…ガ…!!」

 

必死にサザンカの巨大化を防ごうと覆いかぶさるカズラだが、大きな腕に弾き飛ばされ、地面の上に転がる。

 

「サザンカ…!!」

 

カズラが上を見上げると、そこには巨大な大猿へと変身を遂げたサザンカがいた。だが、それは全身の体毛が黒色から金色に変化した“黄金の大猿”であった。

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